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くすぐりの怖さを知っていますか

1 知ってますか (1) あなたは、くすぐりの怖さを知っていますか? 指先や爪の先で皮膚をコチョコチョ掻き回されるあのくすぐり。それは、悪ふざけやスキンシップの一環として日常にも馴染み深い行為の一つ。 でも、そのくすぐりは時に…"人が人でいられるために大事なモノ"を壊す。それは、人体とか神経とか物理的なものだけでなく、目には見えない精神的なモノ。それを、くすぐりは壊してしまう。 コチョコチョ!いやーやめてよっ!…って感じで、普通ならそこでくすぐりからは逃げられる。しつこい人だってあともうほんの少しコチョコチョしたら満足する。 でもそれは、あくまでスキンシップにおけるくすぐりでの話。 …もしも。もしもくすぐりが痛みを与える暴力をも超越する苦しみを与える手段…いわゆる拷問や処刑に使われたら、いやーやめてよ!では逃げられない。 その指先や爪の先は、じっくりと…しかし暴力的に皮膚の上を踊り神経を蹂躙する。嫌なのに笑わされて、嫌なのに悶えさせられて、そして最後には人として大事な何かが爆発する。 くすぐりとは、そんな恐怖を秘めた行為なのだ。 …私は見た。見せられた。私の中で最も頼り甲斐があり、可愛くて、美人で、時に恐ろしくて、強かった柚垣 ナツがくすぐりによって完膚なきまでに叩きのめされたのを。 (2) 「…で、ヒナコ。北村のやつなんて?」 大河山大学は頭の良さは中くらいだけど人数はこの地域では圧倒的に多い大きな大学だった。 そんな大学のキャンパス内…カフェテリアのそばで卸ヒナコ(おろしひなこ)とその友人である柚垣ナツ(ゆずがきなつ)は自販機でジュースを買っていた。 ヒナコ「返事なし…かな。」 「結局…ヤリ捨てだよ。」 ヒナコは大学生らしく、ゆるふわのパーマをあてたショートヘアで目は大きく美しい。見る者にどこかスポーティでアクティブな印象を与え、人当たりは凄く良いが、本人としてはその印象はあまり好ましく思っていない。 ナツ「あぁそう。やっぱりね。言ったじゃん…」 ナツの方は、濃いブルーのメッシュを入れた派手なヘアスタイルで、それでいてキュートな見た目をしており学内でも高い地位についている、いわゆる"パリピでイケてる"女だった。 落ち着いているヒナコに対し、ナツはグイグイ物事を進めていくタイプで異性経験も豊富なため、モテるけど異性付き合いが下手なヒナコをいつもリードしていた。 ナツ「ヒナコの次の被害者がでないために、他のみんなにも情報回しとく?」 ヒナコ「なんかそれ…私がみっともないのみんなにバレない?」 ナツ「大丈夫。名前は伏せるからさ。」 「あいつみたいなヤリモクは痛い目見させないと。」 ナツは聖人君子というわけではなかったが、友人達に手を出す者には容赦しなかった。相手が男だろうと学外の者だろうと、絶対にお灸を据える。それがナツが大勢に慕われている理由の一つでもあった。もちろん、学校の頂点に立てるくらいのルックスあってのことだが。 そんなある日…ナツとヒナコの共通の友人である"山口ちなみ"が学校から離れた場所にある繁華街のバーで酷い目にあったと報告があった。 そこはいわゆる"ぼったくりバー"で法外な値段をちなみに請求。ちなみは払えるわけもなく、別室へ連れて行かれて怖そうな女達に詰められた…らしい。 それを聞いたナツは居ても立っても居られず、繁華街へ向かった。 ヒナコ「ナツ…さすがにまずいってば。警察に言お?」 いくらなんでも暴力団みたいなのか絡んでいそうなバーに殴り込みに行くのはやばい…ヒナコは不安でナツを止めるために繁華街までついてきていた。 黒池街と呼ばれるその繁華街は、夜の街だとかそういう風に呼ばれる街でハッキリ言って治安は悪い。すこぶる悪い。 ナツ「ダメ。大事にはできないって。」 ヒナコ「でもさ…行ってどうするつもりなの?」 ナツ「話し合い。かな。別に暴力振るおうとは思ってないから大丈夫。」 ナツはそう言ったが、ヒナコは信じられなかった。ナツはそのキュートで美人な見た目からは想像できないが、高校まではガッツリ空手に打ち込んでいた武闘派でもある。だから今でも男を相手にだって怯む事なく立ち向かうのだ。 だが、その無駄な正義感が結果的にナツを…完膚なきまでに破壊する事になるのだった。


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