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SIDE OF UPDATE 〜希望の伝達者篇2〜

2 楽園へ まるで、この大脱走劇に怒りを覚えている何者かによる仕業のように荒れ狂う黒々とした海の上を無数の船が目的地もないままに浮かんでいる。 ある船は波に飲まれて転覆し、またある船は巨岩に激突し粉砕。命からがら監獄船から逃げ出したというのに、大勢の囚人達がこの地獄のような海に飲まれていく。 脱出用の船は巨大な監獄船に比べれば小さなもの。大波に飲まれればひとたまりもない。 佳奈は横殴りの雨に打たれ、口にへばりつく濡れた髪をはらい、手すりにギュッと捕まっていた。 この脱出用の船には佳奈を含めて四人の脱獄囚が乗っている。一人は、ボブヘアーに、褐色の肌が美しいエジプト系の可愛らしくも妖艶な女アスマー。もう一人は黒髪ショートヘアに長身が似合ういかにも"大人なお姉さん"といった容姿の四ツ木。三人ではこの船を操っている金髪ポニーテールの背が高い女 ホーク。本当はあと二人乗っていたが、出発前に射殺されてしまった。 四人の"乗組員"たちは終始無言だった。同じ監獄で一年以上も過ごしてきたとはいえ、知り合いですらないのだから当然だ。 だが突如、船が大きく揺れた時、四人は一斉に声を上げた。何かにぶつかったのか。そう思ったがそうではない。何かが上から落ちてきたのだ。雨に濡れたそれは白くヌメリとしており、はじめは何かの肉塊のように見えた。 四ツ木「…アップデーターよ…!」 その肉塊の正体にいち早く気づいた四ツ木が船に積んであった工具でソレに殴りかかるが、その肉塊はムクリと起き上がって四ツ木の手首を捕まえ攻撃を阻止した。 近くにいた佳奈が援護に向かおうとした時、ベタンッ!!っとまた船に衝撃が走る。 アスマー「もう一体来ましたよ…!」 アスマーがそう叫んだ。 ホーク「悪いけどそっちでなんとかしてもらえる!?」 「運転に集中させて!」 今度はホークがそう叫んだ。 空から弾丸のように降り注いできた二体のアップデーター達はそれぞれ任務を遂行し始める。 四ツ木を押さえつけていたアップデーターはそのまま彼女に絡みつき、べたんっと地に押し倒す。そしてベロベロと舌で顔を舐めまわし、長い手足を絡み付けてきた。 四ツ木「んぁぁっ!!!」 押し倒された状態からアップデーターを押し返そうとするが、その圧倒的力の差に四ツ木は敵わない。 一方、佳奈はナイフでもう一体のアップデーターの首を突き刺し、仕留めていた。それから流れるように四ツ木を襲っているアップデーターの首を背後から掻っ切った。 青色の血がブシャッ!!っと飛び散り、船の上はあっという間に青の血で染まった。 アスマー「まだ来た!」 アスマーが空を見上げれば、その曇天の空にはいくつもの飛行体が見え、そこから雨のようにアップデーターらしきものが降り注がれていた。 四ツ木「…がむしゃらすぎない?」 「奴らにとってアップデーターだって資源の一つでしょ?」 佳奈「アップデーターにしてはなんだかヤワかった…恐らく欠陥品か何かかも。」 四ツ木「なるほどね。」 「連中は、不良品で私たちを倒せるって思ってるわけだ。」 四ツ木は顔にべっとりとついた青い血を雨水で拭いながらそう言った。そして次の瞬間、ベタンッ!ベタンッ!ベタンッ!!っと三体もの欠陥アップデーターどもが船に着弾。むくむくと起き上がって佳奈たちに狙いを定めた。 アスマー「私たちが生き残れる確率は…65%…」 ペロリと先っちょを舐めた人差し指を立てて、ほんの数秒間ギュッと目を閉じていたアスマーは最もらしい数字を口にする。 四ツ木「それって信じていいの?」 アスマー「信じるか信じないかは貴女次第ってやつです。私は元、占い師ですから!」 ホーク「とにかく…!50%以上なら希望はあるってことだよね…!!」 「頼んだよ…!!」 ホークは最前線で荒れ狂う海の水を浴びながらギュッとハンドルを握った。 嵐の中、突き進む船の上で死闘が繰り広げられた。佳奈はナイフでアップデーターの首を掻っ切り、時には側頭部にブッ刺して絶命させ、四ツ木は工具で頭部を狙った攻撃を繰り出し、アスマーはびっくりするくらいの体の柔らかさを活かして相手を翻弄し、そのまま何体かを海に落とした。 嵐を抜け、朝陽に照らされる頃には死闘は終わっており、四人は充電切れのように疲れ果ててぐったりしていた。静かな波の音と涼しい風が妙に心地よい。 ホーク「…確かに65%って感じの切り抜け方だった。」 「占いも悪くないかもね。」 長時間の操縦に疲れたホークは自動運転に切り替え、へたっと床に寝そべっている。床は相変わらず水まみれで居心地は最悪だ。 アスマー「世界がもとに戻ったらいつでも占ってあげますよ…」 「半額でね。」 四ツ木「それって何の冗談?」 上品な印象の四ツ木が下品にも股をかっ開いてどかっと床に座りながらフッと笑う。 佳奈「ねぇ、占ってほしいことがあるんだけど。」 アスマー「なにをですか?」 佳奈「このバット。」 佳奈は背中に背負っていたバットを見せた。 佳奈「これの持ち主が生きている可能性を。」 アスマーはコクンと頷き、よろよろと立ち上がって人差し指をぺろんと舐め、それを風に晒す。それから耳につけている金のイヤリングをリンリンと鳴らしてしばらくその場にその音色を響かせた。 アスマー「今は80%!」 思わぬ高い数字に佳奈はつい笑みが溢れた。 単なる占いだが気休めにはなる。 佳奈「よかった…」 ホーク「おい、アレは…?」 寝そべっていたホークがむくりと起き上がり、船の外の何かを見ていた。それと同時に、佳奈たちの乗る船が一瞬にして影に飲み込まれた。 佳奈「あれは…?」 島か。いや違う。船だ。現れたのは一隻の巨船。監獄船とは違う巨船だ。妙なのは、その船は無数の提灯がぶらさげられており、笛の音色や愉快な笑い声なんかが聞こえてくるということ。 「"楽園"を求めてきたのだな?」 巨船の上から狐面の女がそう言った。遠く遠く離れているはずなのに、なぜだか佳奈たちにはその声がすぐそばから聞こえてるかのようにはっきりと聞こえた。


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