SamSuka
Kara
Kara

fanbox


悶絶の空間〜次はお前の番だ〜4: お前の正体

4 お前の正体 〜この小説は以前投稿した「悶絶の空間〜次はお前の番だ〜」の続きで最終パートです〜 イナミ レントが破壊されるまでの一部始終を見たツバサは早速、この恐ろしい事件を起こしている謎の人物の調査を開始した。 映像の資料からして、あの試練を取り仕切っている支配人は"女"らしい。 だが手がかりはそれだけ。一度、レントのいじめや暴力の被害者とされていた人間達を調べてみたがいずれも不発…彼らが犯人ではなさそうだった。 人間を破壊するレベルのくすぐりで天誅を下しているあの女は一体何者なんだ。日々、ツバサは頭を悩ませる。 「ありがとうございました。またお越しくださいませー。」 ツバサは行きつけのスーパーで今夜もインスタント食品を買う。今日の店員もいつもと同じ…身長が凄く高い地黒の落ち着いた地味目の女性。ツバサがいっつも同じ深夜帯にスーパーに行くものだからもうすっかり顔馴染みだ。 ツバサはその日も家で調査を続けていた。夜食を食べ、手がかりとなりそうな情報をネットで収集する。きっと何か…何か手がかりがあるはずだ、と。 一息ついたツバサは窓際のベッドに横になった。 捜査資料とか、その他諸々で散らかった部屋にはミニ扇風機が回る音だけが響いてる。 やがて、ツバサは深い眠りに落ちた。 夢を見た。学生時代のなんてことない夢だったが、最後にツバサは呼吸が出なくなって苦しくなって目を覚ました。 ツバサ「んんっっ!?」 目を覚まし、息を吸い込もうとするが、呼吸ができない。 何かに鼻と口を押さえつけられているのだ。 ツバサ「んぐぐっ!?」 寝ぼけ眼でぼんやりとした視界に浮かぶのは、ベッドで仰向けになっている自分を押さえつけている一人の人間…真っ赤なのっぺらぼうのようなマスクを身につけていて天井にぶち当たるほど凄く背が高い…人間。そいつがツバサの鼻と口を塞いでいるのだ。 ツバサ「むぐっ!?むぐぅぅっっ!!!」 必死にもがくが、鼻と口を押さえている真っ赤なグローブをはめた手から妙に甘い匂いが漂ってきてそれを吸い込まされたツバサはプツッと意識を失った。 全身を包み込む生ぬるくてトロッとした優しい肌触り。そして何も聞こえぬ異様な静けさ。 心地よく呼吸をしようとすると、何かが鼻の中に飛び込んできて咄嗟にツバサは目を覚ました。 そこは液体の中で、ツバサはジタバタと情けなく暴れたのち、ガバッと起き上がり、その液体から顔を出した。 ツバサ「ぶはっっ!!!な、なんだっ!?」 ツバサが浸されていたのはバスタブの中だった。バスタブは透明の液体で満たされており、ツバサの体もその液体のせいでヌルヌルのテカテカだ。 ツバサ「これは…オイル…?」 「…って…これはっっ!?」 ツバサは自分が全裸に剥かれていることに気づき赤面。そしてすぐに誰かいないか辺りを見渡す。が、誰もいない。ここは妙に薄暗い狭い部屋だ。 ツバサ「俺は…一体…」 髪の毛から垂れる拭っても拭ってもヌルヌルのオイルを無駄に拭いながらツバサは足元に気をつけてバスタブから出た。 そして思い出す…仮眠をしていたら真っ赤なのっぺらぼうマスクをした長身の人間に窒息させられ妙な薬品を吸わされたことを。 狭い部屋。拉致。ツバサの脳裏に浮かぶのはあの事件だ。 ツバサ「…はぁ…はぁ…とうとう俺の番だってか。」 ツバサは全裸で体中オイル塗れという非常にやらしい格好であり、なおかつ連続残酷事件に巻き込まれている可能性が高いにも関わらず、不敵に笑った。 ツバサ「どこからか見てるんだろ?」 「敵の懐に潜り込めるとはありがたい…さっさと汚いスピーカーから話してくれ。」 「……随分元気だね。カキノ ツバサ。おはよう。」 ツバサの予想通り、スピーカーからノイズ混じりにあの女の声がする。 ツバサ「説明はいらない。お前のことは知ってる。」 「俺を招き入れてくれて感謝するよ。」 「俺はお前の思うようにはならないし、壊れもしない。そして、お前を逮捕する。」 「…そうか。なら説明はいらないね。せいぜい頑張ってくれ。」 「それだけ啖呵を切ったのなら…もし、君が試練に失敗したら…これまでの人間たち以上の罰を与えることにしよう。」 「神経を嬲るようにぶち壊し、意識を残しながらじっっくりと…じっくりとこちょぐり嬲り…最後に頭を破壊する。」 ツバサ「…!?」 「…勝手に吠えていろ。正義は必ず勝つ。」 「正義ね…その通りだよ。制限時間は6時間…さぁ…頑張りたまえ。」 そこで音声が切れた。 ツバサはヌルヌルのまま、ヒタヒタとオイルを垂らしながら部屋を歩き回る。広さは8畳ほどだろう…あるのはバスタブ、本棚、トイレ、それから床には床下収納、そして脱出口であろう暗証番号式のロックがかかった固く閉ざされたドア。 ツバサ「俺を攫ったのは間違いだ…これまでの奴らとは違うんだからな。」 ツバサはこの時、恐怖よりも自分が嵌められてここに連れてこられた苛立ちの方が勝っていた。 イナミ レントのようになるのは恥だ。それだけはプライドが許さない。ツバサは捜査官らしく入念にそして慎重にまた部屋を見回す。それから、壁にかけてあるカレンダーに目が止まった。写真付きカレンダーなのだが写真の部分は風景でもなくアイドルの写真でもなく、"女の手・指"の写真だったのだ。グレーのツルピカのネイルをしたその手がネイルを見せつけるようにしてポーズをとり、写真に収まっている。 ツバサ「なんだこれ。」 手専門のモデルで手タレとかっていうのがいるが、それのカレンダーなんて聞いたことがない。確かに、この写真の手はすらりと指が長く、爪も綺麗で見惚れてしまうほどどこか妖艶であるがだからといってカレンダーにしてまで見たいとは思わない。 そんなことを思いながらツバサがカレンダーをめくってみれば、またも写真は同じ女の手の写真だった。だが少し違う。この写真では、いわゆるガオーポーズのように関節を曲げて爪を見せるように写真に収まっていた。 まためくる。 今度は指をくねらせているのだろうか、やや指のピントが合っていないような写真だった。 まためくる。 次も指をくねらせている。連中の好きなくすぐりでも連想させたいのか。 それにしても、このカレンダー…気のせいかめくるたびに段々と写真に写っている手が近づいてきているように"寄りの写真"になってきているような気がした。 そして最後の一枚をめくると、ツバサは思わず心臓をドクンと大きく鳴らせた。それは、手の写真ではなく、裸体の男が大の字にギチギチに縛り付けられて闇から伸びる女の手にコチョコチョくすぐられている写真だったのだ。 くすぐっている手は当然、さっきまで嫌というほどカレンダーに載っていたあの手指。くすぐられている男の肉体は明らかに悲鳴をあげており、今にも絶命しそうなほど弱り切っている。 ツバサ「?」 ふと、ツバサが最後のページの余白欄に目を落とすと、そこにはマジックでこう書かれていた…"善人の皮をかぶるのはやめろ。全て剥ぎ取ってやる"と。 ツバサ「たいそうな脅しだ。」 ツバサは仕掛け人によるこの悪趣味な脅しを鼻で笑う。それからカレンダーから目を離そうとしたその時、カレンダーが僅かに捲れ上がっているのに気がついた。 ツバサ「なんだ?」 ぺろっと裏側を見てみると、それを見たツバサは思わずカレンダーを床に落としてしまった。 ツバサ「なんだっ…!?」 カレンダーの裏には一枚の写真が貼り付けられていた。それは、女の首から上だけを写した写真。暗闇で撮られたのか、フラッシュを焚かれて不気味に照らされているその女の顔には無数の暴行の痕があり、目は虚で表情は不自然に固まったまま。誰がどう見たってそれは女の死体の写真だったのだ。 写真の下には、 "真実はここにある"と書かれている。 ツバサ「なんでこれを…」 ツバサは死体の写真を見せられたショックではなく、別の理由で感情をかき乱されていた。 不快になったツバサはカレンダーごとその写真を踏み潰し、めちゃくちゃに引き裂いて床に散りばめた。 ツバサ「随分と俺のことを調べたようだな?」 「好き勝手しやがってこの異常者が!!」 ツバサが支配人に向かって怒鳴る。きっと目の前にこのゲームの支配者がいれば即座に襲い掛かっていただろう。それは、昼間に見せている正義の番人としての姿ではなく、異常性をにおわせる怪しい姿だった。 ツバサこの時、自分でも気がついていなかったが冷静さを欠いていた。支配者に対する怒りが爆発し、とにかく何がなんでも部屋から出て支配人を殺してやる、という危険な気持ちで動いていた。 カレンダーの次に本棚を調べてみる。棚には難しそうな本が並べてあったがそれをいちいち読んでいられるわけもなく、憂さ晴らしも兼ねて本を全て棚から放り捨てた。すると、カチッと音がして棚がゴゴゴッとスライドするように動いた。本棚の向こうには部屋があったのだ。 ツバサ「なるほど。手の込んだ部屋だ。」 ツバサが警戒しながら顔だけをその奥の部屋に覗かせると、鼻に強烈なニオイが突き刺すように香ってきてつい顔を引っ込めてしまった。 ツバサ「なんだっ!?」 強烈なニオイ…それは、尿とか汗とか…それから少し獣臭さも混じっているか…そんなニオイだ。恐る恐る中を見てみると、そこはコンクリート打ちっぱなしの無骨な小さな部屋で、部屋の奥には何者かが座らされていた。 ツバサ「?」 近づいてみると、それは裸体にひん剥かれた男だとわかった。男は目隠しをされており、拘束用の鉄の椅子に縛り付けられ、バンザイさせられた状態で両手に枷をはめられ、枷にはワイヤーが取り付けられてそれが天井の金具に繋がっていた。 男の体はオイルを塗り込まれているのか、えらくヌメヌメとしておりさらに全身の至る所…腋の下や首、胸、横腹、お腹などにピンク色をした引っ掻き痕が刻まれていた。 その肉体の様子からしておそらくこの男はかろうじて生きているのだろうが、どう見ても無事ではない。引っ掻き痕や、床に散らばったままのヘアブラシ、オイル瓶からして精神が壊れるほどくすぐられたのだろう。 ツバサ「気持ち悪ぃ。」 ツバサが男を背に、元にいた部屋に帰ろうとしたその時、ゴゴゴッと音がして本棚がスライドし出口を閉じてしまった。 ツバサ「!?」 「おい!どうなってる!?」 いくら棚を蹴っても棚はびくともしない。 「穴にハマったようだね…」 ブツブツとノイズ混じりに支配人の女の声がする。 ツバサ「これが罠ってやつか?」 「そういうことだよ。今、その穴に君を含めて二人が閉じ込められている。でも出られるのは一人だけ。」 ツバサ「?」 「壁にある装置を押した方が助かる。押さなかった方は…一生この空間でコチョコチョ地獄を受け続ける。」 ツバサ「なるほどな。」 ツバサはそう言うなり、なんの迷いもなくガチャンッと装置のスイッチを押した。 ツバサ「この空間でまともに生きてるのは俺だけだ。」 「もう一人のあいつは気絶してる。迷う間もないな。」 ツバサの言うとおり、もう一人の男は既に拘束された状態で気を失っているのだ。ならば、気絶している方が罰を受ければ良い…ツバサはそう考えた。 だが…、ガコンッ!!と音がして天井から無数のくすぐりメカ─マジックハンドや回転式ブラシ─が飛び出した瞬間、これまで気絶していたはずの男がビクッと震え上がり目を覚ました。 ツバサ「!?」 「お、おいっ!?なんだっ!?誰かいるのか!?よせっ!!もうくすぐりはっっ!!」 マシンが近づいてきていることを察したのか男はひどく取り乱し、喚き出す。だが、その喚きも数秒後には笑いへと変わった。 「うがぁぁぁぁぁあああああああははははははははははははははははははははははははははははははははは!!なんでっ!?終わったんじゃながったのがッッ!!!?あひひひひひははははははははははははははははは!!だすげでっ!!誰かっっ!!死にたくなぃぃぃぃぃひひひひひひひひははははははははは!!」 ツバサはまさかの展開にやや動揺しつつも、急いで部屋を出た。 それから、部屋のあらゆる箇所を探したが脱出の手がかりは見つからない。 床下収納庫の鍵を探し当て、開けてみれば、そこにはとある事件に関する調査報告書が山のように詰め込まれていた。その事件はいずれも若い女を狙った殺人事件で、犯人はいわゆる殺人で興奮するタイプの異常者によるもの。 ツバサ「なんで…なんでお前がコレを…全部始末したはずなのに…」 ツバサの額からドクドクと嫌な汗が流れ落ちる。収納庫に入っていたものは全てツバサの本性そのものだ。それを見知らぬ女に知られていることに焦りと不気味さを感じた。 そして…あっという間にその残り時間はなくなり、1分を切った。 ツバサ「ちくしょう!番号なんてどこにもない!!」 ツバサは本棚から出した本を蹴っ飛ばし、むしゃくしゃして報告書も破いた。そしてその時に気づいた…序盤に破り捨てたあのカレンダーのことを。 カレンダーの裏…ツバサの本性を表したあの女の遺体の写真と共に記されていた言葉…"真実はここにある"。 ツバサ「…そうか…」 「そうだったのか…」 ツバサは笑い出した。 あの写真をしっかり見ていればきっと、あそこに暗証番号が記されていたのだ。だがもうカレンダーは引き裂いてしまった。木っ端微塵に。 だからこそ、笑うしかなかった。なんだ…そう言うことだったのか、と。 そしてあっという間にゲーム終了の合図が鳴り、天井の真っ赤なサイレンがやかましく鳴り響き、部屋に真っピンクのガスが噴射される。 くすぐりの罰?いいさ…俺にそんなものは効かない。 意識を奪うガスに包まれながら、ツバサはニヤリと笑う。そして、ガスを目一杯吸い込んでバタッとその場に倒れた。


More Creators