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あの夏の悶絶は思い出の中に(8日目#2)

2. 罠 (F/M) 奥の森から歩いて帰ってきて、港の方に着いた頃にはすっかり夕方であった。 夕陽を反射しきらきらと輝く海面が綺麗で、ハクは見惚れて海面のずーっと奥にまで視線を走らせた。 沈みゆく夕陽の真下にある海面は夕陽にほとんど溶け込んでしまっていて、光そのものになっているように思えた。 奥の森で涼んだおかげで汗は乾いていたが、こっちに戻ってくるまでにまたすっかり汗ばんでしまっていた。 でも、オレンジ色の海面を見ていると汗ばんだ気持ち悪さも忘れられた。 夕陽を目だけで追っていたつもりが気づくと防波堤の先まで歩いていた。 「たそがれてんのー?」 背後から無邪気な声が飛んできた。 ヒカリがいた。白い顔は夕焼けのオレンジ色に照らされている。 ハク「あれ?出掛けてたんじゃなかったか?」 ヒカリ「さっき帰ったんだよ」 「もう夕方だもん」 ハク「むこうでなにしてたんだ?」 ヒカリ「いろいろ!」 「プリン食べたり〜メロンソーダ飲んだり〜文房具買ってもらったり!」 ヒカリは買ってもらったというメロンソーダ色のラメ入りのペンをポケットから取り出して見せた。 ヒカリ「メロンソーダの匂いするんだよ、これ」 ヒカリはトコトコと走り寄ってきてペンのキャップを外し、ペン先をハクの鼻に近づけた。 ハク「メロンソーダばっかりだな…」 スンスンとペン先を嗅ぐと、いや嗅ぐまでもなく、確かにメロンソーダらしき良い匂いがした。 そういえばハクもいくつか匂い付きの文房具を持っていた気がした。コーラ匂いとか、グレープの香りとかそういうのだ。 ヒカリ「みんなと遊んだの?」 ハク「いや、今日はほとんど一人だったな。未悠とはちょっといたけど」 「あと、奥の滝で知らないお姉ちゃんがいてさ」 「水原ホトリっていうんらしいんだけど…青い髪してて。で、その人が言うんだよ──」 ハクは、言おうか言わまいかほんの一瞬すごく迷った挙句、ヒカリに"神秘の花園"のことを話した。 沙月の一言でここにいるみんなといる時間をもっと大切にしないといけないと思った。神秘の花園をみんなで探すのはきっと"良い時間の使い方"のはずだとそう思ったのだ。それに、ホトリも仲間と探す方が良いと言っていた。 ヒカリ「えっ。なにそれ。めっちゃ気になる…」 「っていうかそのお姉さんも気になるし」 ヒカリはどちらかというとお姉ちゃんの方が気になっているようだった。 ヒカリ「とにかく、それ。みんなで探そう!」 「シンとダイチ…絶対喜ぶと思うよそれ」 ハク「あの二人、知らないのかな?」 ヒカリ「知らないと思うよ?私も初めて聞いたもん」 「二人とも知ってるなら絶対私たちに教えてるはずだし。自慢みたいにね!」 確かにあの二人なら神秘だろうがなんだろうが真っ先に教えてきそうだとハクもそう思った。 ヒカリ「あ、そういえばさっきしずかに会ったよ。帰りの船が一緒でさ」 ヒカリは防波堤の下の、船着場の方を見て言った。 ハク「あれ?アイツも出掛けてたのか?具合悪いんじゃなかったっけ?」 ヒカリ「お父さんと病院行ってたんだって」 病院。その言葉を聞いた途端にハクの心臓の鼓動がやけに早くなった。 わざわざ島外の病院に行くほどというのはよっぽど体調が悪いのだろうか。 ハク「しずかが体調崩すってなんか想像つかないな」 ヒカリ「そっか。でもしずか良く体調崩すんだ」 「たまに長い間学校休むこともあるし、今回のはいつもよりは大した事ないみたいだけど」 しずかの身体が弱いなんてハクは想像もしていなかったし、それまでそんな姿は見た事もなかったので信じられなかった。 あの、高圧的で勝ち気で、しかも運動能力も高いしずかが体調を崩しやすいなんて。 ハク「へ、へえ。そうか。あのしずかもしばらくは大人しいってわけだな」 ハクは無理に笑顔を作ってつま先で硬く白い地面を軽く蹴った。 ヒカリ「ううん。もう良くなったみたいだよ?」 ハク「えっ。まじで?」 ヒカリ「マジで」 ヒカリはニコニコ笑いながらハクの口調を真似た。 ヒカリ「まぁでもそうだなー今頃家にいるんじゃないかなー。お見舞いとか行ったらしずかも喜ぶんじゃないかなー」 ヒカリはちらちらとハクを横目で見た。 ハク「な、なんでそんな見てくるんだよ」 ヒカリ「うーん。別に?」 「思った事言っただけ」 ハク「はぁ。分かったよ。ちょっと見てくる」 「お見舞いってわけじゃないけど、ここで良い事してやったらちょっとは暴力も振るわれなくなるかもしれないしな!」 ハクはやけにおっきな声でまるで自分に言い聞かせるみたいに言って、しずかの家の方へ歩き出した。 まんまとヒカリの策略に嵌められているとも気づかずに。 鉄の橋を渡り、しずかの家──久代家の門の前に立つ。門には石で出来た門柱しかないのに、なんだか足を踏み出せない。 やっぱり引き返そうか。 そう思った時、門の向こうの家の縁側にちょんと座っているしずかの姿が見えた。 しずかはハクに気がつき、左手を挙げた。 ハクはようやく一歩を踏み出し敷地内に入った。 ハクはふらふらとした足取りでしずかのいる縁側の方へ歩き出す。足取りが重い。来たものの何を話せば良いかとかそんなことは考えていなかった。 そもそも人と話すときにそんなこといちいち考えているわけもないのに、なぜだかしずかと二人になる時はそんな余計なことを考えてしまう。 しずかはやけに上品に揃えた脚を縁側から垂らして座っていた。隣には蚊取り線香が置かれている。 「どうしたの?」 しずかはハクを見上げた。体調が悪いと聞いていたが、別に変わったところは見られない。いつもと何か違うところをあげるなら、いまの第一声がいつもより少しおとなしめだと言うことくらいだ。 ハク「いや、ちょっと、様子を見に来た」 ハクは頭を掻きながら落ち着きなくつま先でトントンと土をつついた。 しずか「もしかしてお見舞い?」 ハク「たぶんな」 ハクが答えると、しずかは無言のまま手のひらをハクに向けた。 ハク「なんだよそれ」 しずか「お見舞いなんだからなんか持ってきてないの?」 ハク「バカかよ。持ってくるわけないだろ」 しずか「はあ。失格」 しずかは細い眉をこれでもかと言うくらい寄せて険しい顔をした。 ハク「失格ってなぁ人がせっかく心配してやったのに…」 上手く言い返す言葉が見つからず、ハクはつい自分でも分かっていなかった本心をぽろりとこぼしてしまった。 まずいことを言ったな。と思った頃にはもう遅く、ハクがしずかを見ると、彼女は既に意地悪そうな、愉しそうな笑みを浮かべていた。 しずか「へえ。心配してくれてたんだ?」 しずかは口角をちょびっと上げてニマニマしている。 ハク「いやそうでもないけど…いや、まぁちょっとはな」 今更撤回などできない。ハクは観念した。 この場に他のみんな──特にイチコちゃんやヒカリが居なかったことは不幸中の幸いだと思った。 こんな場面をヒカリなんかに見られたらずっとからかわれそうな気がした。 しずか「座りなよ」 しずかはぽんぽんと自分の隣を叩いた言った。ハクはその時、心臓が強く脈打つのを感じた。体温がぐんぐんと上がっていくのも感じた。 しずか「ほら早く」 しずかに急かされ、ハクはしずかに顔を見られないようにしながら素早く隣に座った。 どうしてか、少しだけ間隔を空けて座ってしまった。 しずかは隣に座ったのハクをチラリと見て嬉しそうに微笑むと、視線を海の方に向けた。 しずか「今日は何してたの」 「みんなで遊んだの?」 ハク「いや。結局みんなで集まれなくてさ」 ハクは今日あったことを話した。沙月に言われたことも。ホトリという髪の青いお姉ちゃんのことも。それから"神秘の花園"のことも。 しずか「同じ時間は来ないってそれは、ほんと、そうだね」 しずかは"神秘の花園"より、沙月がハクに言った時間についてのことに関心を抱いたようだった。 ハク「だな。時間大事にしなきゃなって思ったのに、そう言う日に限って皆で集まれないからなんかモヤモヤしたぜ」 しずか「やっぱりそれが当たり前になってくのかな。これから」 しずかはぼつりと言った。 ざわざわ。と潮騒が聞こえた。 ハク「そんなことないだろ。今日はたまたまだって」 しずか「そう?」 ハク「そうに決まってる」 ハクはやや自信なさげに言った。しずかはまだ不安そうだった。 しずか「ハク前に言ってたじゃん。ピリピリが来るって。やっぱり、来てるんじゃない?ここにも」 しずかは俯き、股の間で両手の指をモニョモニョ絡ませた。 ピリピリ。しずかはそれを恐れている。ピリピリというのはハクが勝手に命名した現象であり、それは思春期に訪れ、それまで成立していた友人関係を断ち切ってしまう恐ろしいものだ。 この時のハクには分かっていなかったが、それは、"人より上に立とうという気持ち"や"他者を蔑む気持ち"や、そして異性を過剰な意識することで生まれる"同性への敵視"が元になって生まれるものなのだ。 ハク「言ってたけどさ…」 「なんとなく、ここの皆は大丈夫だと思うんだよ」 しずか「それってどうして?」 しずかは俯いたまま、目線だけをハクに向けた。 ハク「だからそれは、なんとなく…だよ」 しずかはきっと安心したくて明確な根拠を求めているのに、口から出るのは漠然とした言葉だけだった。 しずかは再び足元に視線を落とした。 なんとかならないものか。 なんとかピリピリをどうにかする方法は思いつかないものか。 元気を無くしているしずかを元気づけられないものか。 考えを巡らせるが全く思いつかない。 ちりん、と揺れる風鈴の音さえも思考を掻き乱してしまうように聞こえるほど、ハクは神経を尖らせていた。 ピリピリから逃げる方法を知っているなら、ハクが教えてもらいたいくらいだった。 逃げる方法。 きっとそれはない。あれは必ずやってくるのだから。 だが、やってくるからと言って必ずこっちが負けるとも限らない。ハクの頭にそんな考えがよぎった。 ハク「いや。やっぱり大丈夫だよ。ここのみんなは」 ハクは再び言った。今度は自信に溢れた声で言った。 しずかは今度は目線だけでなく顔をハクに向けた。 ハク「俺たちがどうするかだ」 しずか「どうするって?」 ハク「ピリピリからは逃げられないけど、ピリピリが来たからって負けるとは限らないだろ?」 「戦えば良いんだよ」 ハクは握りしめた拳で胸をどんと叩いた。 しずかは呆気に取られたようにぽかんと口を開けている。 口を開けたまま、ハクの言ったことを咀嚼するように視線を天の方に向かって泳がせ、やがて咀嚼したそれを飲み込むように口を閉じて頷いた。 しずか「あ、そうか。そうだね」 しずかの顔が明るくなった。 ハク「だろ?」 ハクが得意げにニヤリと笑うと、しずかも同じように笑った。 「なんだ。当たり前のことじゃん」 ハクもしずかも、恐怖のピリピリをどうすれば良いかが分かったことでなんだかホッとして、安堵感からお互いに笑いあった。 ハクは、しずかと同じことで笑えるのが嬉しかった。 「ふぅ」 ひとしきり笑い終えた後、しずかはため息をついた。 ふわふわと蚊取り線香が香った。 しずか「なんかちょっと安心した」 ハク「俺も」 ハクはまだ口角を上げたまま同調した。 しずかは前を向く。しずかの瞳に、オレンジ色の海が映った。 しずか「私ね。私───ほんとに皆と──」 しずかはそこまで何か言いかけて、途中で黙った。 ハク「どうした?」 しずか「ううん。なんでもない」 ハク「なんだよ」 しずか「だからなんでもないって」 ハク「うひぃっ!?」 突然、背中に怖気に似た気持ちの悪い刺激が走り、ハクは呻き声を上げてビンと背筋を伸ばした。 しずかが「ふふふ」と笑った。 しずかが指でつぅっとハクの背筋をなぞり下ろしたのだ。 ハク「おい!なにすんだよ!」 しずか「なにって?なぞっただけじゃん」 しずかはとぼけたようにそう言いながらまた人差し指の先っちょでハクの背中をなぞり下ろした。 ハク「うひゃあっ!?」 神経に、極細のつめたぁい棒か何かの先っちょを当てられなぞられるような気持ちの悪いくすぐったさがハクの背筋に刻まれる。 しずか「下から上より、上から下になぞる方が効くね」 まるで研究員みたいに興味深げにハクの反応を観察しながらしずかはまた背筋を上から下になぞり下ろす。 弱すぎず、強すぎないその絶妙な力加減がとってもくすぐったい。 ハク「ひぃ!?」 「そ、そんなことどうでも良いんだって!」 ハクはしずかから少し距離を取り、両手を前に出して防御した。 しずか「え?どうでもいい?じゃあこれは?」 しずかは素早く手を伸ばし、ハクの脇腹を捕まえ、そのまま親指でグリグリとくすぐったいポイントを抉るようにしてくすぐった。 ハク「ぎょぁあああああああっ!!?かっ!!?かっ!!?わぁぁぁあああ!!?」 しずかの親指の先っちょが見事に脇腹のくすぐったいポイント──くすぐったい神経の塊──に突き刺さり、ハクは反射的に身体をぐねりぐねりとくねらせる。 しずか「これもどうでもいい?」 しずかは怖いくらいに落ち着いた口調で言いながら、グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリと親指を最低限の動きで操り、神経を抉る。 ハク「ふあああああああああああああっ!!?やっっやめろっで言っでんっだろっ!?っっひょはははははははははははははははははははははははははははははは!!?ひゃは!?ひゃは!?ひゃはははははははははははははははははははははははははは!!!」 ハクは両手を振り回して抵抗するが、既に脇腹を捕まえ、さらに親指の先っちょでポイントを捉えてしまっているしずかのくすぐりからは逃げられない。 しずか「やめないって。ハクいじめるの楽しいもん」 しずかは片手で脇腹を抉りながら、ハクの顔を見つめていた。ハクの悶え顔を観察しているのだ。 グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ。親指が脇腹の神経を貫くように抉り回す。 ハク「あがががががががっ!!?きっっ!!?きつぃっ!!!きつぃぃぃぃぃ!!!っっひひひ!!お前っっ!!ほんとっっ!!趣味がっっ!!悪いんだよっ!!っだはははははははははははははははははははははははは!!?ひゃっっははははははははははははははははははははははは!!!」 ここでもし、勢いで倒れてしまえばそれこそおしまいだ。あとはしずかのくすぐり地獄の犠牲者としてじっくり嬲られる。 だからハクはくすぐったさに悶えながらもなんとしてでも倒れまいと抵抗していた。 しかし、しずかはハクを絶対に獲物として喰らうつもりでいるようだった。 しずか「我慢とかやめな?無駄だから」 しずかはグッと親指をさらに深く脇腹の関係に食い込ませてグリグリ抉り、加えて余りの指の爪の先で脇腹の表面をコチョコチョコチョコチョコチョコチョ掻き回した。 ハク「わっ!?ちょっ!?ぅぁぁぁぁああああああああああああああははははははははははははははははははははははははは!!?はっ!?はははははははははははははははははははは!!!それは卑怯だろぉぉぉ!!っっひはははははははははははははははははははははははははははは!!!」 グリグリとコチョコチョのコンビネーションにハクは成す術もなく笑い転げ、そのまま縁側に倒れ込んでしまった。 そこをすかさずしずかが覆い被さるように襲いかかる。 しずかはハクのTシャツの裾から手を忍ばせ、そのひんやりとした指の先と爪の先とでハクの細いお腹をコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショ!!っと掻き回した。 ハク「くぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!?かっ!?ギブ!!ギブ!!ギブギブぅ!!っっひょはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!それ反則っっ!!っっははははははははははははははははははは!!」 ハクは目をひん剥いて必死に暴れた。生の皮膚を生指にくすぐり嬲られるのはさすがにキツい。酸素はたっぷり持っていかれるし、神経は一気に震え上がる。 しかしハクがいくら暴れてもしずかの指先はピトリと腹部に吸い付いたように離れず、コショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショとくすぐり回すのだった。 ハク「うへへへへへへへへ!!?ぐるじっ!?ぐるじぃっ!!っっひひひははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!キツいっで!!なんでこんなっっ!?っっひはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 お見舞いにきたはずなのにどうしてこんな目に遭わされないといけないのか。ハクはしずかの顔を見て抗議するが、そのしずかもハクの顔をたいそう愉しそうな目をして見つめていたので、ハクは恥ずかしくなって目を逸らし、再び悶えた。 しずか「お腹ってやっぱり素肌効くんだよね」 「服の素材によっては服の上からもめっちゃ効くんだけど」 ぶつくさ言いながらしずかは実験でもするように腹部に爪を立てて掻き回してみたり、指の先で細かくコチョコチョしたりする。 ワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! ハク「うえへへへ!?うへっ!?お前っ!!人の身体でっ!!遊ぶなぁっ!!っっははははははははははははははは!!あっっははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!ぁははははは!!?あはははははははははひひひひひひひひひひひ!!?」 ハクは文字通り指先で弄ばれている。 爪の先が皮膚を掻けば「うひい」と声を漏らし、指先が神経を滑れば激しく笑わされる。ハクはしずかによって操作される笑い人形と化していた。 しずか「あれ?私に命令してよかったっけ?」 しずかは、ずるずるずるっと指を腋の下に滑らせ、指先で腋を捕まえた。 ハク「あ"ぁ"っっ!!?」 ハクの腰が浮き、全身の筋肉がこわばった。 しずか「はい。お仕置きです」 しずかは脇の下に滑らせた指をコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!!っと激しく暴れさせた。 ハク「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!?あははははははは!!?待でっ!!!そごはマジでっっ!!っっはははははははははははははははははははははははは!!腋はダメなんだってぇぇぇぇぇ!!!あははは!?あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 服を着ていてもくすぐったくて堪らない腋の下をこうして直接くすぐられる苦しみは地獄の極みだった。 ハクはギュッと腋を閉じて両脚をビタリと閉じた状態で膝から先をバタバタと暴れさせた。 しずか「何言ってんの。あんたどこもダメでしょ?」 「ここも。ここも。ここも」 しずかは腋の下から肋骨に指を移動させゴチョゴチョ肋骨をほぐしくすぐり、さらに間髪入れずに背中の方にまで指を這わせてコチョコチョくすぐり、さらにさらに胸の表面まで爪を立ててワシワシくすぐった。 ハク「わっ!?ひゃっ!?あ"っ!!?うあああああああはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?うへへへへへへ!!?待っで!!頭がっ!!おなしくなるぅっ!!っっひははははははははははははははははははは!!!うわぁぁははははははははははははははははははははははは!!?」 いっぺんに色んな箇所に凄まじいくすぐったさが走り、ハクはそのたびにビクンビクンと身体を痙攣させて悶えるのだった。 しずかはその反応をこれまた愉しそうに眺めながら、指先でハクの神経を弄んだ。 しずか「まぁお仕置きだし?これくらいやんないといけないよね」 涼しい顔をしながらしずかは再び腋の下に指を這わせて腋の下の神経を丸ごとほぐすようにゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョ!!!っとこそばした。 ハク「うわまたっっ!!?っっひははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?かはっ!?息がっ!!あっ!!?あはははははははははははははははははははははははははははは!!!んひひ!?んひひひひひははは!!死ぬ!!死ぬ!!死ぬぅっ!!!」 ハクが青い顔をし始めると、しずかはすぅっと手をシャツの中から抜いた。 ハク「ぶへぇ」 情けない声を上げ、ハクはその場に伸びた。素肌にはまだしずかの指や爪の感触が生々しく遺っている。 ハク「はぁはぁはぁ…お前…なんでこんな…くすぐんの上手いんだよ」 ハクは息を切らしながらゆっくり上体を起こす。 しずか「まぁぶっちゃけこういうのってセンスでしょ」 「私はセンスあるってこと」 「こんな感じで──」 しずかは、まだ瀕死状態のハクの背中をサワリと爪で撫で下ろしたかと思うと、瞬時に腋を捕まえゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョ!!っとこしょぐった。 ハク「はっ!?ひゃっ!?いっ!!?ぃぃはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?ちょっ!?もういいっで!!もうっっひゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?」 再び襲ってきたくすぐり地獄にハクはぐねりぐねりと暴れて、すぐに倒れ込んだ。そこへしずかがさらに追い打ちをかける。 横っ腹を突っついたり、脇腹をゴニョリと揉んだり、背中を掻き回したり、とにかくハクの苦手なくすぐりを一度に刻み込んだ。 ハク「ひゃっ!?あっ!!?やめっっ!!?いはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?あはははははははははははははははは!!?うわぁぁぁあはははははははははははははは!!マジで死ぬぅぅ!!っっひははははははははははははははははははははははははは!!?」 ほんの少しだけくすぐりから解放されたことで、ハクの神経はくすぐりの刺激に対するほんの少しの耐性を消し去ってしまっていた。そのせいで、このくすぐりの刺激は非常に新鮮で凶悪なものになっていた。 あの休みでさえ、くすぐり地獄の一環だったのだ。 しずか「こことかやばいでしょ」 しずかはハクの骨盤のあたりをガッシリと両手で捕まえると、素早く指先と指の腹あたりを骨盤のくにょくにょした柔らかいところに押し当て、ゴリゴリゴリゴリとほぐしくすぐった。 ハク「ぎぇっ!?ぎょぇぇぇぇええええええええええええええええええっっ!!?かはっ!?かははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?しょれやばぁぁぁぁぁぁああああああ!!!ああああああああははははははははははははははははははは!!?」 それは、下半身──とくに股のあたりのあらゆる筋力を無理やり抜いてしまうような不気味で気持ちの悪いヤバイくすぐったさであった。ハクは身体を丸めて悶え苦しむ。 「ほら、やっぱり」 骨盤が効くと分かったしずかはニヤニヤしながらさらにその骨盤のくにょくにょと柔らかなくすぐったいところをゴリゴリ乱暴にくすぐった。 ハク「うげぇぇぇ!!!っっひははははははははははははははははははははははははは!!それ以上はっ!!それ以上はダメだってまじでぇ!!っっひははははははは!!!ほんどにっ!!ほんどにダメなんだってぇぇ!!っっひはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 それ以上。それ以上されると本当に──恥を晒してしまうことになりそうだった。 下半身の力。股間のあたりの力が全て抜かれ、大変なことになりそうだった。 もうダメかもしれない。そう思った直後、しずかは骨盤から手を離した。 ハク「うぁぁぁ!!」 ハクはため息のような叫び声のような奇妙な声を漏らしてばたりと倒れた。 骨盤のあたりがじゅわじゅわと熱い。 しずか「ま、こんなもんかな」 ハク「はぁはぁはぁ。あのなぁ…」 ハクはゆっくり起き上がった。 しばらくしずかの追撃を警戒していたが、しずかはもうくすぐっては来なかった。とりあえず今日のところは彼女のドS心は満たされたようだった。 「なぁ──」 もう少し。もう少しだけしずかと何か話したい。 そんな思いからハクが口を開いたその時。 「お!ほんとだ!二人ともここにいる!」 シンの声がした。 ハクとしずかが縁側から身を乗り出して門の方を見ると、シンとダイチとヒカリ、イチコちゃんと未悠とそしてユウの姿があった。六人はバラバラの足取りで門の方からこちらへ近づいてくる。 こうして皆が揃っているのを見るのはなんだか久しぶりに思えて、胸の奥が熱くなるのを感じた。 「ねえハク」 隣のしずかが小さく名前を呼んだ。 ハクはちらっとしずかを見た。 しずかはこっちに向かって歩いてくる皆の方をまるで様子を伺うような目で見ながら続けて口を開いた。 「お見舞い、ありがとね」 しずかは、ハクにしか聞こえないほど小さな声で囁くように言った。 ハクの心臓のあたりが熱くなって、鼓動が早まり、その熱さは頭に向かって登っていき、耳の辺りが火照るような感覚を覚えた。 「あ、あぁ。まあ別にいいんだよ」 ハクがそう言い終えるのと同時に、シンたちが縁側のそばに辿り着いた。


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