あの夏の悶絶は思い出の中に(10日目#2)
Added 2023-11-16 14:33:20 +0000 UTC2. 死と恐怖のくすぐり拷問 (F/M) 白い滝がざあざあと流れ落ち、水面を強く叩きつけている。 ハクたちは横一列に並び、滝を見つめていた。 これまであの滝のことなど特に気にしたことなどなかった。単に、綺麗だとか、大きいだとかそんなことしか考えてこなかった。 だから、この滝に対して恐怖を抱いたこともなかった。 だが、これからこの滝に挑まねばならないという状況になってしまった今、急にこの滝が恐ろしくなった。 これまでは単なる背景に過ぎなかった滝が、立ちはだかる門番と化したのだ。 それでもハクたちは引き下がれない。何としてでも"神秘の花園"を見つけないといけないのだから。 皆が真剣な眼差しで滝を見つめながら、どのような作戦で滝の向こうに行くのか思案している中、ハクは沙月がどこかにいないか探してみた。 ぐるりと周りを見渡す。 だが、沙月はいなかった。 ハクは再び皆と一緒に滝と見つめる。 滝の向こうに行く──そもそも本当に滝の向こうがあるのかどうか分からないが──問題点は、全員が上手く泳げる訳ではないということだ。 ユウとヒカリは泳ぐのが苦手な部類に入る。この二人をいかにサポートするかが重要になってくるのだ。 ハク「まず。本当に滝の奥に何かあるのか調べてから皆で行った方がいいんじゃないか?」 あるのか分からないものを淵の中で探すのはリスクがある。ならば、泳げる者たちで先に潜って滝の奥を調べてから潜った方が良いのではないか、とハクは思った。 シン「おー!そうだな!それは名案だ!」 シンはすぐにハクの案を採用した。ダイチも大きく頷いた。しずかも、良いんじゃない?と言ったのでハクの作戦が採用された。 シンとダイチ。そしてハクとしずかとイチコで先に潜ることになった。未悠は調査隊に何かあった時のため、待機となった。 調査隊は淵に入った。 夏の水にしてはやはり、ここの水は冷たかった。 以前潜った時よりも冷たくなっているようにハクには思えた。 皆が真っ直ぐに滝の方へ泳ぐ中、ハクは淵の底──暗い暗いその闇へ目を向けた。つい、沙月の落とし物が気になったのだ。 だが、ここからあの鉄の箱が見えるわけもなく、淵の底からはひんやりとした冷気がほわほわと込み上げて来るだけだった。 ハクは皆のあとを追って滝の方へ近づく。 岩壁から降り注ぐ水流が淵の水面を殴りつけ、滝壺は真っ白い泡と轟音で満たされていた。 友人たちの顔も見えず、これではコミュニケーションなどほとんど取れない。 一体自分が滝のどの辺りにいるのかも分からないままハクは目を凝らして滝の奥に通じていそうな穴か何かを探す。 だが、シュノーケルのレンズに沢山の泡がまとわりついてくるせいでまともに前も見えやしない。 一旦、息継ぎをし、それから潜った。身体がさっきよりひんやりした冷気に包まれた。 もう一度、滝の方に目を凝らす。 ハクの視界に、後方からにゅうと手が伸びて来た。 手──おそらくしずかのもの──はハクの見ている方向とは少しばかり違う滝の向こうを指差した。 指差された方向を凝視し、近づく。 泡を掻き分け、上体を滝のそばへと突っ込む。 真っ白な泡に全身が包み込まれ、視界は泡のみになる。 さらに強引に突き進むと、視界の泡が晴れ、目の前にはうっすらと黒く大きな何かが見えた。 それは、ぽっかりと空いた穴だった。 あった! ハクは急いで滝から身を引き、水面へ上がろうとする。 夢中になっていて息継ぎを忘れていた。 しかし、ハクは滝壺の中に飲まれた。 ぐるんぐるんと視界が回転し、どちらが水面でどちらが水底なのかさえ分からなくなる。 全身を叩きつけられるようなもの凄い圧を感じ、 水温が突然、冷たくなった。滝の音が遠くに聞こえる。 静かだ。 ハクは滝の水圧で底へ底へと叩き込まれたのだ。 かと思うと、また身体は浮上し、ぐるぐる回転してまたまた水底に沈む。 まずい。 ハクは焦りからジタバタもがいた。 どれだけ暴れても、手は水を掻くだけだった。 首につけているお守りがカンカンに熱くなっている。 もういっそ流れに逆らわずにいよう。 ハクが目を閉じて全身から力を抜いた途端、右手に柔らかな感触が走った。 指と指の間に、柔らかいものが絡みつき、ぎゅっとハクの手を握った。 握られた手が水面に引っ張り上げられ、ハクの身体がぐんと引き上げられる。 目を開けてみる。 だが、水中だからか一体誰が手を握っているのかまるで分からない。 ハクの頭は水面を突き破った。 ほとんど残っていなかった息を吐き出し、またすぐに吸い込んで、頭を振ってまとわりつく水を振り払う。 一体、自分が淵のどの辺りにいるのかさっぱり分からず、ハクはキョロキョロと辺りを見渡した。 「ハク!」 シンがバシャバシャ泳いで寄って来た。 ダイチ「おお、良かった!」 滝のそばで待機していたダイチもシンに続いてやって来る。イチコと未悠もそれに続いた。 どうやら、皆、ハクのことを探していたらしかった。 「ぷはっ!」 ハクのすぐそばからしずかが顔を出した。 さっき助けてくれたのはしずかだったのか。とハクは納得して、しずかに礼を言った。この時ばかりは恥ずかしいとかどうとか言っていられなかった。 しずかはうんと頷いてから、皆にもお礼言いなよ、と言った。 ハク「うん」 ハクは駆けつけた皆に小さく頭を下げた。 ハク「それにしても…まさか、しずかに助けられるとはな…」 ハクが恥ずかしげに言うと、しずかは、別に助けてないけど、と言った。 しずか「あんた全然見当たらないし」 「まぁ、勝手に浮き上がってきてくれて良かった」 ハクはしずかの言っていることが分からず、聞き返そうとしたがそこへシンがやってきた。 シン「しっかしお前…なんでこんなとこまで流されたんだよ」 シンに言われてハクは自分が淵のど真ん中──ちょうど暗い暗い淵の底の真上にいることに気づいた。 滝からはそこそこ離れている。 ハク「滝壺に巻き込まれてさ…」 ダイチ「滝壺って水流がめちゃくちゃだからな」 「しかも、すげぇ水圧で底に叩きつけられたりするから、急な温度差で死んじまうこともあるんだ」 ダイチはいつものようにうんちくを語っていたがハクはそれを聞いてゾッとした。 ハク「そ、そういうの先に言ってくれよ」 「あ。でも、あったぞ…穴!」 肝心な穴のことを今のいままで忘れていた。 シン「ほんとか!?」 「ハク。それってどのあたりだ?」 シンが興奮してハクの肩を掴んだ。 ハク「えっとな…思ったよりちょっと上の方だったかな。な?」 ハクは同意を求めるように、穴の位置を教えてくれたしずかを見た。 しずかは不思議そうに眉を上げて切長の目を丸くした。 しずか「なんで私に聞くの?」 しずかはキョトンとしていた。 ハク「いや、なんでって…お前が指差して教えてくれたんだろ」 しずか「指差した?私が?」 ハク「あれ?違うの?」 「じゃあ…イチコちゃん…じゃなくって、イチコとか?」 ハクがイチコを見るが、イチコは私はハクの近く泳いでないよと言った。 ハクは眉根を寄せて首を傾げた。 あれがしずかでもイチコでもなければ誰だったと言うのか。 シン「お?まさかオバケの仕業か!」 シンが嬉しそうに言うとしずかはシンに水を掛けて黙らせた。 しずか「はいはい。もうそういうのいいからさ」 「見つかったなら行こうよ」 シン「そ、そうだな」 ハクはまだモヤモヤしていたのだが、とりあえず見つかったものは見つかったのだから先へ進むことにした。それに、あの時の指はひょっとすると自分の間違いかもしれないと思った。 ダイチと未悠の提案で、ハクたちは二手に分かれて滝の奥を目指すことになった。その際、仲間が逸れないように腰に縄跳びを巻いてそれを繋ぎ合わせるという案も採用された。 もし、息がもたなくなった場合は前の人の背中をタッチする。そうすると必ずそのグループを率いている先頭者は浮上しないといけない。これで一応は事故が防げると考えた。 一方のグループはシンが先頭。次にユウ。その次に未悠。最後にダイチだ。 もう一方は先頭がハク。その次がしずかで、その後ろがヒカリ。最後がイチコだった。 シン「えー…これより、我々調査隊は未開の地へ踏み込む」 シンが握り拳をマイク代わりにして頑張って出したような低い声で厳かに告げると、すかさずしずかがため息をついて拳のマイクを降ろさせた。 ハクたちは順に、ゆっくりと淵の中へとその身を浸す。 滝壺のヤバさはもう分かっている。だから、今回は滝壺を迂回して穴に近づく。 滝に近づくと、その緊張感はより一層強くなった。さっきのダイチの解説が頭をよぎる。 ここまで滝に近づくともう言葉によるコミュニケーションは取れない。あまりに滝の音が激しいからだ。 飛沫が顔に降り注ぎ、ゴーグルがなければまともに目も開けていられない。 ハク「このあたりだ!!」 ハクが目一杯声を張り上げて言った。 いよいよ潜水に入る。 シンとハクは同時に水に沈み、ぶくぶくと体内の空気を吐き出して潜水した。 後方の皆もそれに続く。 ぐんと腰に巻き付けてある縄跳びの締まりがキツくなるのをハクは感じた。 ぐぐぐと後方へ引っ張られる。 後方の潜水が上手くいっていないか、それとも複雑な水流のせいで列が乱れているのだ。 だが、誰かが背中を叩く気配もなかったのでハクと、そしてシンは目的地へと泳いだ。 ぽっかりと空いた穴の向こうへ、闇の向こうへ。 闇がハクたちを包んだ。 音がない。 滝の音もまるでしない。 しんとしている。 耳のあたりが詰まるような感覚に襲われた。 鼻が少し痛い。 この闇はいつまで続くのだろう。 ハクはふと考えた。もし行き止まりだったら、こんなふうに皆で一列に繋がっている状態ではすぐに引き返せないのではないか、と。 まずい。 少し甘く見ていた。 ハクは焦る。 だがもう引き返せない。 こうなったらもう奥まで行くしかない。 ハクは必死に、力任せに泳いだ。 水を掻いて、岸壁に手を掛けて這うように進む。 そして。 闇は晴れた。 眩しい、キラキラとした宝石のような輝きが頭上を照らしている。 ハクは輝き目掛けて一気に浮上した。 水面から顔を出すのとほとんど同時にハクは息をたっぷりと吸い込んだので一緒に水を飲み込み掛けた。 肺に流れ込んできた空気はすごく透き通っていて冷たかった。 ざば。ざぱ。と次々に水面を突き抜ける音がして皆が顔を出した。 全員、無事だった。 「死ぬかと思ったぜ!」 ダイチが顔を拭って言った。 「ここ、どこ?」 くたくたになっているヒカリが膝をついて辺りを見渡した。 闇を通り抜けてきたハクたちの目の前に広がっていたのは─── ───海岸。 そう呼ぶのにふさわしい場所だった。 ハクたちは海岸のような場所に立っていた。目前には砂浜があり、そこにさざ波が押し寄せている。 見上げればゴツゴツ刺々した巨大な岩のアーチが空を覆っている。アーチはちょうど水面と砂浜の境界線で途絶えており、砂浜には空から降り注ぐ夏の日差しが優しく照りつけている。 まさに、海岸であり、砂浜である。 皆、言葉を失ってただただ呆然とその不思議な光景に見惚れていた。 だが。 ハク「…花園は…どこだ?」 肝心な花園が見当たらない。 ヒカリ「あれじゃないの?」 ヒカリがじゃばじゃばと水を掻き分けるように前へ進み砂浜の奥を指差す。 そこには確かに綺麗な花が密集して咲いている。 だが、花園と呼ぶほどかと言われるとそうでもない。 ユウ「ここは神秘の花園じゃないのかな」 ユウが残念そうに言った。 イチコ「でも。一応、お花もあるし…すごく秘密っぽい場所だし…ここなんじゃないの?」 ハク「花があるって言ってもなぁ…」 ハクはもう一度、砂浜の奥の花を見る。やはり、花園というほどではない。 ダイチ「まぁ、昔はすっげぇ花がいっぱいあった、とかなら納得いくな」 結局、ここが花園なのかどうかは分からないままだった。だが、滝の奥に潜むこの場所の神秘性の高さから誰もここが"神秘の場所"ではないと思う者はいなかった。 ハクたちはしばらくその砂浜に座って押し寄せるさざ波を見つめていた。 ほんの少し泳いだだけなのにかなり疲れた。 ダイチ「それにしても…帰りもあの穴通らなきゃなんないのは気が滅入るな」 ダイチが言って水の中の穴の方を睨んだ。 ヒカリ「ねぇ。なんかこっち道あるよー」 草木の生い茂っている砂浜の奥をぶらぶらしていたヒカリが言って皆を呼んだ。 その道を辿っていくと、なんと奥の淵の近くに出た。 足元には朽ちた木片がばらばらと転がっていて、おそらく昔は道として舗装されていたのではないか、とダイチが予想した。 砂浜は確かに凄いところだと思った。 あんな場所があるなんてハクは愚かずっとこの町で育ってきたシンたちでさえ知らなかったのだから本当に秘密の場所なのだろうと思った。 だが、見た限りでは花園ではなかったし、しかもわざわざ滝の奥を潜らなくても行くことができたという事実も相まってなんだか拍子抜けした、というのがハクの感想だった。 皆、あまりにくたびれたのでその日は解散になった。ちょうど時間も良い頃合いだったのだ。 だが、ハクは再び淵に戻ってきていた。 神秘の花園に肩透かしを喰らった分、沙月の落とし物を引き上げてやろうと思ったのだ。 ハクが水面を睨みつけているとそこへちょうどホトリがやってきた。 ホトリ「あ。久しぶり」 ホトリは恐らくダイビング用の荷物の入った大きなボストンバッグをどすんと地面に降ろした。 ハク「あ!」 ハクは口をあんぐり開けてホトリを見た。そして、落とし物に挑むよりも何よりもこのホトリに今日見つけたあの場所について確認したいことがあった。 ハク「神秘の花園…たぶん見つけたよ」 ハクが静かに言うと、ホトリは「えっ」と声を上げて、なぜかかなり驚いていた。それから咳払いをして「なかなかやるね」と言った。 ハク「でも…本当に花園なのかどうかは分かんないんだよ」 ホトリ「なにそれ?」 ハク「確かにすっごい変なところにあるし、多分誰かに教えてもらわないと絶対辿り着けないところなんだけど…実際、ここの皆も知らない場所だったし」 「ただ、花園なのかどうかってところが引っかかるんだよな」 ホトリ「で?どこだった?」 ホトリがハクの話を遮るように聞いた。 ハク「うん?場所?」 ホトリ「そう。その花園の場所」 ハク「それがさぁ──」 ハクはそこまで言いかけて言うのを止めた。 ホトリ「なに?言えないの?どうして?」 「答え合わせ、したいでしょ」 ホトリがじわりと詰め寄る。 ハク「そうだけどさぁ」 「ひょっとしてお姉ちゃん知らないんじゃ無いのかなって。花園の場所」 ハクは意地悪にホトリを見た。その目が、いかに憎たらしくていかに相手の嗜虐心を刺激するかをハクは知らない。 ホトリ「へぇ?私が知らないって?そんな訳ないんだからさっさと教えて」 ホトリは腰に手を当てため息をついた。まるで、込み上げる苛立ちを抑えるようだった。だがハクはまさか大人が本気でこの程度で苛立っているとは思わなかった。 ハク「先にホトリ姉ちゃんから言うってのはどうかな」 「それで合ってるかどうか教える」 ハクは腕組みをしてふんと鼻息を立てた。 神秘の花園を見つけ、そこに辿り着いたという自信がハクを調子に乗らせていた。 ホトリ「キミねえ」 「大人を怒らせると怖いよ?」 ホトリが腰に手を当てたまま、目を細めてハクを睨んだ。くっきりした二重瞼のまつ毛の長い目は細まっても綺麗だった。 ハク「姉ちゃんを怒らせてなにがあるって言うんだよ…」 ホトリ「そうだね拷問しちゃおっかなぁ」 ホトリはそう言ってニカッと笑う。 ハクは背筋に悪寒を感じた。 ハク「ごうもん?」 ホトリ「そ。苦しめて白状させんの」 ホトリの指がウネウネウネウネと宙で暴れる。 それを見たハクは完全に青ざめていた。 ハク「な、なにで…」 答えを聞く前に、ハクは既に逃げる準備をしていた。 ホトリ「そうだね…」 ハクの目の前の、ホトリの姿がゆらりと揺れた。 ハクは咄嗟に走り出した。 ハク「ぎゃっ!!?」 背後から、生暖かい指が腋に差し込まれて突き刺さった。 ハクの細い身体はビクンとうねり、そのまま動きを停止した。 ハク「ちょっ!?待って!!それはっ!」 もがくハク。 だが、背後から両腋の下をホトリに捕らえられてしまっているため逃げられない。少しでも動こうものなら、指と腋の下が擦れてムズムズしたくすぐったさが走る。 ホトリ「知ってる?こちょこちょの刑って昔、拷問に使われてたらしいよ?」 ホトリはハクの耳元で囁き、モニュッと腋の下を揉んだ。 ハク「ぐぎゃっっ!!?」 ハクの身体は完全に崩れ落ち、仰向けに倒れた、 その隙にホトリはハクに跨り、馬乗りになる。 ホトリ「さぁて」 「知っていること洗いざらい話してもらおうかな」 ホトリはハクを見下ろし、指をワキワキとさせる。爪はツルツルしていて指はとてもしなやかだった。つまり──ホトリはとてもくすぐったそうな指をしていたのだ。 ハク「いっ!?」 「ふ、ふざけんなって!そんなので話すかよ!」 ハクは自由である両腕を振り回した。 ホトリ「そんなので話すのが人間なんだよ」 ホトリは笑ってワキワキと蠢かしている指を近づけてくる。 ハクは何故か、言いしれぬ恐怖を感じていた。 しずかや未悠やレイナ姉ちゃんや宮司にこうして馬乗りくすぐりをされる時より、ずっと強い──いや、何か異質な恐怖心を感じていた。 ホトリ「本当に。話さないんだね?」 ホトリの指先はハクね腋の下のすぐそばで待機している。指は、いつでもお前の腋の下をくすぐり殺せるぞ、と言わんばかりの動きをしていた。 ハク「話さないって言ってんだろ!」 ハクはそう言ってジタバタ暴れてホトリの手を振り払おうとする。 だが、 ホトリの手はスルスルと、振り回されているハクの腕をすり抜けて腋の下にガシリと喰らいついた。 ハク「ぐぁっ!!?」 ハクの腰が浮く。背中のスジがびんと伸びる。 全身の筋肉が麻痺してように震えてまるで役に立たない。 ホトリ「腋の下…捕まえた」 ホトリの指先がぐぐぐぐぐっと腋の下を───いや、腋の下のくすぐったい神経を捕まえる。 ホトリ「さぁ。洗いざらい話してもらおうかな」 ホトリは、捕まえた腋の下の神経をほぐすように、 モニモニモニモニと腋をこね回し、 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!!っとくすぐり始めた。 ハク「ぐぁっ!!?ちょ!!?ぎぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ"っ!!?ちょちょちょちょっ!!?ぎぁぁぁあああああああああああははははははははははははははははははははははははははははは!!?」 指先と指の腹で神経を溶かすようなモニモニとした動きと、爪の先を神経に食い込ませてくすぐるコチョコチョとした凶悪なくすぐりにハクは開始一秒で笑いを爆発させた。 ホトリ「くすぐられ死にしたくなかったら白状しな」 「どうせ大人には敵わないんだからさ」 ホトリは顔を真っ赤にしているハクを嘲るような目で見つめながら腋の下を拷問に掛け続ける。 モニモニ!!モニモニ!! モニモニモニモニモニモニモニモニモニモニ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! ハク「ぐっひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!?ひゃぁぁあああああああああああはははははははははははははははははははははははははは!!?くひひ!?くひひひひひひひははははははははははははははははははははははははは!!!白状なんがっっ!!するかっっぁははははははははははははは!!!」 この一切の容赦のない鬼のようなくすぐり拷問からは一秒でも早く解放されたかったが、ホトリの"どうせ大人には敵わない"という語がハクの負けず嫌いを刺激してしまった。 ホトリ「強情な子だね」 「そういう悪い子には…」 ホトリはぐんとハクに体重をかけ、さらにハクの身動きを封じると、容赦なく腋の下を殺すような激しい くすぐりを展開した。 それは、神経を殺してしまうようなムゴイくすぐりだった。 ゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョ!!! ハク「ぐぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?やめっっ!!やめろぉぉぉぉ!!!っっひゃぁぁああああはははははははははははははははははは!!!?それはぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!」 ホトリの指がしなやかに折り曲げられ、指先と爪の先で神経を絡め取ってゴチョリと刺激する度、恐ろしいほどのくすぐったさがハクを襲う。それが繰り返し行われ、ハクの肺は早くも限界に達していた。 ホトリ「私くすぐり上手いんだよ。これで人殺せるくらいね」 「だから早く降参して白状しなよ」 「次、断ったらヤバいとこくすぐるよ?」 ホトリの言葉にはまるで温かみがない。それは、くすぐりもそうだ。しずかのやってくるようなおふざけのくすぐりの刑とはまるで違う。ホトリのくすぐりは冷たく、恐ろしい。 だが、それでもハクは負けられなかった。 ハク「うははははははははははははははははははははははははははは!!!はっっ!!?はっははははははははははははははははは!!!い、い、言わないっっでぇぇ!!!っっ!!!だっっひゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?」 ホトリ「馬鹿だね…お前」 ホトリはその顔から完全に笑顔を消すと、腋の下に突っ込んでいる指をズクリ。と腋の下のヤバいところに食い込ませた。 ハク「うああああああああ"っっ!!?」 断末魔のような悲痛な声がハクの腹の底から搾り上げられる。 ホトリの指はごねごねと腋の下のヤバいところ──くすぐったい神経の密集帯──に捩じ込まれ、そしてグチュリと神経を絡め取った。 そして。 グチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュ!!!っと音を立てて腋の下のヤバい神経をえぐり回した。 ハク「くぁっっっ!!?ぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ"っ!!?じっっ死ぬぅぅぅぅぅぅ!!!?っっぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!?」 ハクは背中のスジをぎゅんと伸ばした状態で身体を硬直させて笑い悶える。 ズクズクズクズク。とホトリの指先からはくすぐったさという悍ましき刺激が腋の下に捩じ込まれてくる。 ホトリ「そうだよ?ほんとに死ぬよ」 「私いまほとんど殺す気でやってるからね」 「もっと苦しませてやろうか」 ホトリはさらに指をズクッッと腋の下のくすぐったいところに食い込ませてジュクジュクズクズクズクズクズクズクとハクをくすぐった。 ハク「ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ"っ!!?待でっ!!待っでっ!!死ぬ!!マジでこれっっ!!マジで死ぬぅぅぅぅぅぅ!!!!っっぁぁぁああああああああああああああああああああああああははははは!!?かはっ!?かはっ!!?」 ホトリは中指と人差し指で腋の下のくすぐったい神経の塊をジュクジュクズクズクえぐっている。 その指遣いは非常に繊細で、くすぐりを極めた者の動きにしか思えなかった。 ホトリ「その小さい身体では受けきれないくすぐったさでしょ」 「ほらほら。脳に障害が残って話せなくなっちゃう前に全部お姉ちゃんに教えて?」 ジュクジュク!! ズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズク!!! ハク「かぁっ!!?はっ!!?いっっ!?いやっっだっっ!!!かぁぁぁぁぁはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?かはっ!!はっ!!!はっっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?」 ホトリの言う通り、腋の下に捩じ込まれてくるくすぐったさはハクの身体の許容量を遥かに超えた暴力的で殺人的なくすぐったさであった。 ホトリ「こうしちゃおうか」 ホトリは片方の手でハクの鼻と口を塞いだ。 生温かくてしっとりとした厚みのある手のひらがハクの呼吸口を完全に密着する。 ハク「んむぐぅっ!!?」 ハクはドキリとした。 心臓に冷や水を掛けられたような恐怖心を感じた。 殺されるかもしれない。 ハクはホトリに感じていた恐怖の形をこの時ようやくはっきりと感じ取った。 ホトリ「頭冷やしな」 ホトリは空いている手でハクの脇腹を捕まえると、脇腹にあるくすぐったくて堪らないコリコリした神経の塊を親指で一瞬にして捉え、そして、グニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュ!!!っと揉み潰した。 ハク「んぉ"っっ!!?んぉぉぉぉぉぉおおほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほっっ!!?んふぉぉぉぉおおおおおおおおおおほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほっっっ!!?ごふっ!?ごほっ!!?」 ホトリの親指はしっかりと確実に脇腹のくすぐったい神経の塊を捉え、指の腹でグリグリグニュグニュと神経を刺激している。 親指が脇腹を持ち潰すたび、ハクは呻き声に似た笑い声を発した。だが、どんな声を上げてもその声は全てホトリの大きな手のひらの中に消える。 ホトリ「苦しいでしょ」 「でも、大人を手こずらせたお前が悪いんだよ?」 「早く教えてれば…こうならなかったのにね」 ホトリは手を緩めるどころか、さらにみっちり鼻と口を覆い、脇腹を強く揉んだ。 ホトリの顔は、とても、とても、愉しそうだった。 グニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュ!!! ハク「んんんんんんんんんん"っ!!?ぐるじっっ!!!?んんんんんんんぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!?ごほっ!!?ひぬっっ!!!ひぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!ぐふぅぅぅぅぅぅぅぅう!!!けほっ!!けほっっ!!?」 無酸素状態でのこちょぐり拷問によってハクは指先をピクピク痙攣させ始めていた。脇腹に押し込まれるくすぐったさは、その一撃ずつが重く、一撃ごとにハクは脳に混乱をきたしそうになる。 ホトリはじっとハクを見ている。哀れみではなく、何かをチェックするような目つきだった。 ハクはほとんど泣きそうになりながらもそれでも持ち前の負けん気の強さでホトリを睨みつけた。 ホトリから小さく、ほんの小さく「チッ」と舌打ちするような音が聞こえた。 それがハクの聞き間違えだったのかどうなのか定かではないまま、ホトリはぎゅっとハクの鼻を摘み、口を塞ぎ、ハクから超完全に呼吸を奪った状態で、脇腹から肋そして腋の下にかけてのラインを何往復もするようにコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョっとくすぐった。 ハク「むぐっっっ!!?っぐっ!!?っっっっっ!!!?!!!!」 もはやハクから笑い声は漏れない。ハクはただその細い身体をビクンビクンと痙攣させるだけだった。目はギョロッとひん剥かれ、そこからは涙がじわじわ流れ出ている。 それでもホトリはその地獄のようなくすぐり拷問いや───くすぐり死刑を止めない。 ホトリはまるで蟲が這うかの如く指さばきで素早くコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョと腋の下から脇腹へのラインをくすぐり尽くす。 ハク「んっっっ!!!?んんっっっ!!!?んぅぅぅぅぅぅ!!!?っっ!!!っっ!!!?っっっ!!!?」 目の前がぼんやりと滲む。ホトリの冷酷な顔もぼやけてきた。 しかし、 しかし。 上半身を襲う猛烈なくすぐったさだけははっきりと感じている。 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! 雑に見えて決してそうではない。ホトリは、横っ腹は指先でワシワシと、肋骨は爪の先でコチョコチョと、腋の下は爪の先と指の先の両方を使ってコチョコチョくすぐり、それぞれの部位が最もくすぐったく感じるようなくすぐりを行っていた。 ハクは青い顔をしながら声にならない声を上げ、暴れていたが、いよいよ手脚にも力が入らなくなってきた。 脳を支配するのは、未曾有の暴力的くすぐったさそれのみだ。 ハクが異様な眠気を感じ、ついにその意識が途絶え掛けたその時、ホトリはくすぐりを止め、手を鼻と口から離し、窒息くすぐり地獄からハクを解放した。 ホトリ「さて。言う気になった───よね?」 ホトリは、自分の身体の下で死にかけているハクを気遣う様子もない。 ハクが息を整えるのに必死になっていると、ホトリは脅すようにチョンッと人差し指でハクの横っ腹をつついた。 ハク「いぎぃっっ!!?」 ハクの身体が再び跳ね上がる。 ホトリ「早く教えてもらえるかな」 「それとも…まだやられたりない?」 ホトリは指をうねらせる。 それを見たハクは本気で青ざめた。 もう一度あれをされたら今度こそ死んでしまう気がした。気絶するとかそう言うことではなく、本当に命を落としそうになる気がしたのだ。ホトリならそこまでやってくるような気がしたのだった。 ハクは洗いざらい全てを教えた。 滝の奥の穴。砂浜。花園とは呼ばないような花たちがあること。ここからでも回り道をすれば行けること。 ホトリはなぜかそれらをまるで初めて知るような素振りでハクの話を聞いていた。 ホトリ「へぇ。なるほどねぇ」 「さて。じゃあ、私は仕事にかかろうかな」 ホトリはそこでようやくハクから立ち上がった。 ホトリが青い髪を手で撫でる。ハクはそのホトリの手の動きの一つ一つを注意深く見ていた。あの手がこちらに向かってくるかもしれないと思うと恐ろしくて仕方がなかったのだ。 ホトリ「じゃあ、さっさとお家に帰りな」 ホトリはまだ地面に伸びているハクに向けて手を外側に払った。 ハク「な、なんで…」 ホトリ「いいから。急ぎなの。それとも、くすぐり殺されたい?お望みならやってあげるけど?十秒で、ね」 ホトリはフッと鼻で笑って言った。 ハクには言い返す気力も度胸もなかった。下手に言い返せば今度こそ殺される気がした。 今日はもう淵に潜る体力など残っていない。 ハクは渋々、ホトリに言われた通り家のある方へと帰った。 ◯ しずかから今日一日はくすぐられないという約束を貰ったというのに、まさかここに来て一番の地獄をあのお姉ちゃんから受けることになるとは思ってもいなかった。 ハクはへろへろになりながら帰り道を歩く。 あたりはすっかり夕暮れ時だ。 そのまま家に帰ろうとしてふとポケットに手をやった。 いつもポケットに捩じ込んでいる未悠から貰った地図が入っていないことにいま気がついたのだ。 まずい! ハクは逆のポケットにも手を突っ込んだがそこにも入っていない。 秘密基地に忘れたのだ。 すぐに思い出し、ハクは急いで秘密基地に走った。 秘密基地には誰もいない。 ハクが座卓に広げてあった地図を見つけてさっさも帰ろうとすると、上──シンしかは入れないと言う超秘密の秘密基地──からどたどたと音がして、シンがハシゴから降りてきた。 シンはなぜかスリングショットを構えていた。 シン「うお!ハクか!」 「"よそ者"かと思ったぜ!」 シンはホッとしたようにスリングショットを座卓に置いた。 ハク「間違ってないと思うけどな。俺、よそ者だし」 シン「何言ってんだよ。よそ者なもんか」 「友達じゃねぇか。ここに来た時から」 シンはハクなら絶対に言えないような台詞を軽々と口にしてみせた。シンの顔に恥ずかしさは微塵も感じられない。堂々と爽やかに笑っている。 ハクはシンがやっぱり羨ましかった。 ハク「上で何してたんだ?」 照れくさくなったハクはハシゴの上へ目をやった。 シン「ちょっと武器の調整」 「敵襲に備えてな!」 「ちょっと見てみるか?」 シンが親指でくいと上の階を差した。 ハク「いいのかよ?」 シン「特別だ」 シンはまたニカッと笑った。 シンが勝手に増築したと言う超秘密の秘密基地は、この秘密基地からせいぜい二メートルくらい上にあるだけの小さなスペースであった。 人が一人収まるのが限界だ。頑張って二人である。 シン「ここに皆を入れないのは、定員がせいぜい二人までだからなんだよ」 「皆が来ちゃったら足場抜けちゃうからさ」 「そうしたらここを作った俺のメンツが丸潰れだろ?」 ハク「そう言うことだったのか」 ハクにはなんとなくシンの気持ちが分かった。 ハク「それにしても…色々あるな」 小さなスペースには、強そうなゴム鉄砲やスリングショット、ハリセン、恐らく手製の棍棒が置いてあった。 シン「言ったろ?ここは波都を守る最前線なんだ。武器はいくらあっても良い」 「俺はここのリーダーだからな!」 シンは言ってどんと胸を叩いた。 ハク「リーダーか…」 ハクには、堂々とそう言ってのけるシンが眩しかった。 シン「お前もそうだろ?」 シンは大真面目な顔をして言った。 ハク「え?」 シン「お前も、地元じゃリーダーなんじゃないのか?いや、きっとそうだろ」 「俺には分かるぜ。今日だってそうだ。滝を越えるために二手に別れた時、先頭は俺とハクの二人だった」 「つまり、俺たちがリーダーだから自然にああなったんだ」 シンはニカニカ笑って胡座をかいて棍棒を手に取ってぺたぺた触った。 ハクは黙って考えた。 確かに、地元の友人たちの中ではよく遊びの発案をするし、他の友人たちもいつもハクの意見を聞いてきたりする。皆、自分の提案した遊びで遊んでもくれる。 でも。自分がリーダーだなんて思ったことは一度もなかった。 ハク「リーダーって…なんだ?」 ハクは腕組みをした。 思えば、考えたこともなかった。 シン「そりゃあ…強くて頭の良いカッコ良いやつのことさ!」 シンは迷いなく答えた。 ハク「いや俺は…うーん…」 自分は強いし、頭も良いとハクは思っているが、 カッコ良いやつ。だけがどうにも引っかかった。 ハク「カッコ良いって…なんだ?」 シン「うん?走るの速いとか、弱い者イジメをしないとか、ふざけたやつらをぶっ飛ばせるやつだろ!あとは…サイダーを一気飲みできるとか」 「あ、逆立ちで体育館一周できるとかも!」 ハク「なんだよそれ…」 ハクが呆れたようにため息をつくとシンは困った顔をした。 シン「うちの姉ちゃんがさぁ」 「学校に好きな人がいるって言ってたんだよ。いやこれレイナ姉ちゃんから聞いた話なんだけどな?」 「で、その男を見てみたら、なんかカッコつけ野郎でさぁ。ひょろひょろしててなんか女みたいなやつだったんだよ」 シンはえらく不満そうに言った。 シン「声も小せえし。そんで結局ソイツは誰かと浮気しまくったかなんかでヤバいことになったらしいんだけど」 「だせぇよな」 「で、まぁ、そいつを初めて見た時さぁ、俺思ったんだよ」 シンはすぅと息を吸い込んだ。 シン「カッコ良いやつってさ、カッコつけないやつのことじゃねぇの」 シンのその言葉はするりとハクの心に届いた。 ハク「カッコつけないやつ…か」 シン「そうだ。きっとそうさ」 シンは自分にも言い聞かせるように小さい声で言った。 ハク「じゃあ俺たちは…」 シン「カッコつけてるか?」 「つけてるかもな。どうなんだろうな。負けず嫌いだから…でもそれはカッコ付けと言うより…単に負けたくないだけって言うか」 「いやでもカッコつけてたらカッコ悪りぃしリーダーじゃねぇもんな」 「うん。じゃあリーダーになってる俺たちはやっぱりカッコつけじゃないんだよきっと」 シンはしばらく顎を触って難しい顔をしていたがすぐに難しく考えるのをやめ、眉を上げて明るい顔をした。 ハクは、そのシンの前向きな思考や、周りの目を気にしないような堂々とした振る舞いを見て、シンはカッコ良いやつだ、とそう思った。 シン「俺たちは、場所は違えど同じリーダー同士だ」 「だから誰にも何にも負けないぜ」 シンは棍棒をぽいと投げてハクに渡した。 ハクはそれを受け取り、握りしめた。棍棒はまだシンの熱い体温を宿していた。ハクは少しだけ、シンの持っている純真な熱い自信を分けて貰えたようなそんな気がした。
Comments
そうですね… これだけ協力して苦労して一つの目的を達成するという過程を経た今、ハクにとってこの波都の町の仲間たちはかけがえのない存在になっていることでしょうから、別れの日はハクには一つの試練になるかも知れません… それまでに彼にはやるべきことがありますから、なんとかしてもらわないといけませんね! ホトリコワイですよね😱 明日香や宮司たちと違う、本物の嗜虐心が剥き出しになってる感じが… そもそも、本来知っているはずの花園の場所を聞き出すために歳下相手にあれほどの責苦を味わわせる必要も感じられないんですよね。 ホトリからのくすぐりのシーンは、かなり気持ちよく書けたので自信作です笑💪 このシリーズでは普段ハードさをセーブしている分、久しぶりに解放できた感がありました! シンの考えるカッコよさというのは、勿論シンの個人的見解ではありますが、ハクにはかなり響いたようですね! この言葉がのちにハクにどのような影響を及ぼすのか、あるいは及ぼしているのか、その辺りも要チェックですね!笑 シンに限らずですが、少年少女は皆、大人になろうと思っていて、ちょっとでも大人ぶって何か良いふうなことを言おうとするんです。シンの発言もひょっとしたらそんな子供っぽい一面から発されたものかも知れませんが、それにしても中々良いことを言ったなぁと思います🤜 そうですね笑 シンはもうちょっと挙動を大人っぽくしないといくら良いこと言ったり、リーダーシップがあっても皆からはつっこまれ続けるかもしれません笑 ただ、そういった点が皆から好かれるポイントなのかも知れませんし、きっと皆口には出していないだけでシンを慕っているのかも知れませんね! シンの言葉がその後のハクに影響を与えたのは間違いありませんね! 死擽でのハクの行動の中にもきっと波都の町の誰かの言葉がきっかけになったものもあるかもしれません…! 今回も感想ありがとうございました!!
Kara
2023-11-26 11:24:23 +0000 UTCやっと神秘の花園?みたいなところに行けました! 滝の奥に行くのは大変だったのに、結局陸路からでも行けるというなんというか骨折り損的な展開ではありましたが、目的は達成できたので良しとしましょう! 私の作品を読んでいただいてしかも、その作品の中に入り込んだ気分になってもらえているなんてめちゃくちゃ嬉しいです! 文章書いていると、本当にイメージが伝えられているか不安になる時がありますが、自分のイメージを皆さんにも伝えられているならそれは本当に光栄ですし、書いて良かったと思えます! ホトリからのくすぐりはとんでもなかったですね…笑 こんなことならしずかにくすぐられていた方がよっぽど良かった気がします🤔 そうなんですよね…ホトリってドSの範疇を超えていてなんかすごく暴力的というか…あれはなんなんでしょうね… 宮司かホトリか明日香か…誰が一番ヤバいくすぐりなのか… テクニックで言えば宮司なのかも知れません。ただ、ホトリは容赦なさ過ぎるのでそう言った意味では危険度はMAXですね! 明日香はテクニックやばいですが割と加減できるので安心できる部類かと思われます! 残りわずかでこれ以上のくすぐりがあるのかどうか! また、まだ明らかになっていない部分が明らかになるのかどうか等も楽しみにしていただければと思います! 最後のシンとの会話まで読んでくださりありがとうございます!! 感想ありがとうございました🙏
Kara
2023-11-26 11:14:39 +0000 UTC今回の神秘の花園?砂浜?への助け合いの道で、もう波都のみんなは真の仲間という感じになって本当に別れが寂しくなりそうです。 ホトリコワイ 同じお姉さんでも明日香さんと違って何か邪気を感じますね…。 このホトリによるハクくんへのハードなくすぐりシーンはKaraさんも結構自信ありそうなのが伺えますね! シンの考える「カッコ良い」一理ありますね。 改めて「カッコ良い」ってどういう意味?と問われると漠然とした答えになりそうですが、そこをしっかりと答えられるシンは芯が通ってるなと思います。 シンは顔だけでなく考え方までカッコ良いのに、周りから「え?リーダーなの?」的な扱いなのは、握り拳をマイクにしたりとかしてるのがいけないんでしょうかね笑 この時のシンの言葉は、まだリーダーという自覚を持ってなかったハク、将来色んな戦いの中心にいることになるハクにとって頼もしいアドバイスになったことでしょう。
(´・ω・`)
2023-11-23 23:57:21 +0000 UTC神秘の花園らしき場所についに行くことが出来ましたね。まさか滝の奥にあるとは‥‥。ほんとにKaraさんの小説は読んでいて自分も未知の世界に入り込んだような感覚になります! 今回はしずかにくすぐられないとの事で無事なのかと思いきやまさかのホトリから死ぬレベルの地獄を味あわさせるとは!もしかしてホトリは今作で一番のドSなのではないでしょうか。いや恐らくドSの域超えてますよね‥‥。ホトリと宮司どちらが恐ろしいくすぐりなのか気になります笑 あと明日香さんも! あと僅な日数ですが2人より恐ろしい腕を持つ人物が現れるのでしょうか。 ラストのハクとシンの熱い話が聞けて良かったです。
ぺんだごん
2023-11-20 12:49:45 +0000 UTC