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【F/F】廃工場のヘドロンナ#1

1. ヘドロンナの噂 (F/F) ──伊勢ヶ野町 緑鶴区── ──2007年7月── 三人の女子高生は、目の前の果てしない闇に浮かぶ巨大な廃工場を見つめていた。 噂で聞いていたよりもずっと、遥かに巨大な工場だった。広大なテーマパーク一つ分くらいはある。 何に使われていたのか定かではない巨大な建物や、鉄塔がいくつも聳えており、それらの影が三人の女子高生を威圧していた。 "鬼道 逸華(きどういつか)"の左手に装着された腕時計の電子音が深夜0時を報せる。 イツカは鋭い眼光で廃工場の奥から感じる気配を睨みつけている。 大きな目に鋭い眼光。小柄で細身でありながら、イツカの全身からは闘志が漏れ出ている。 いつも深めに被っているキャップがトレードマークだ。 「ほんっとにここが噂の廃工場なの?広すぎでしょ」 イツカはだるそうに言って首元まで伸びた赤メッシュ入りの黒髪を触った。 「ここで間違いないぜ。つーか周囲にデカい廃工場はここしかねンだからな」 トーンの低い気怠げな声で金髪ウルフヘアの女が答えた。 "光島 怜津(みつしまれつ)"。胸はぺたんこで顔も中性的であるためよく美青年に間違えられるが立派な女だ。インターネットに詳しい。 「レツが調べたんなら間違い無いでしょ!とっとと調査しちゃいましょ」 まるで緊張感のない声色でそう言ったのは"池咲 彩菜(ちさきあやな)"。 やや青色がかった黒髪は腰あたりまで伸びている。また、胸が大きくスタイルも良いため学校ではよくモテている。 「"ヘドロンナ"とか"ヘドロナ"とかいうのがいるのがここなら…気を引き締めていかないとね」 イツカはそう言って首を左右に捻った。 彩菜「そのヘドロなんとかってやつが"ジョコワ"に書き込まれてた怪異なんだっけ?」 "ジョコワ"というのは、インターネット掲示板の【冗談じゃ済まないほど怖い話を集めてみない?】というスレッドの略称だ。 三人はその掲示板の"常連"だった。 イツカ「ジョコワって、なんかその略称しっくりこないんだけど?なんかテニスプレーヤーみたいじゃん」 彩菜「そう?いいじゃん。私は気に入ってるけど?ジョコワ」 彩菜はつんとした目つきでイツカを睨んだ。イツカは彩菜とは目を合わせずにぷいとよそを向いた。 イツカたち三人は、インターネット上で噂になっている怪奇なスポットに実際に訪れて掲示板にリアルタイムで投稿するといういわゆる"実況"を趣味としていた。 レツ「改めてここの噂を読み上げるぞ」 レツが携帯を開いてカチカチとボタンを押す。 レツ「I町──これはここ伊勢ヶ野町のことだな──にある巨大廃工場には"どろどろの女"が出るって噂がある。目撃情報によれば、しっかりと女の身体をしているのを見たって話もあるし、単にドロドロした何かだったって言う話もあるみたいだ」 「ヘドロの女──ヘドロンナとかヘドロナとかまたはヘドロオンナとか…まぁ呼び方は様々みたいだな」 「とにかく、このドロドロの女──ヘドロンナが厄介らしいな。なんでもコイツと遭遇するとそのドロドロの身体に取り込まれちゃうってさ」 「この工場は、数年前にとある事故がきっかけで廃工場となったと言われてる」 「その事故で女が一人死んでるんだな」 「これはニュースにもなってる」 「ヘドロンナの噂が出始めたのも、そのすぐ後だ」 レツは抑揚のない口調で説明を締め括った。気だるげにやや垂れた大きな目が、イツカと彩菜を交互に見つめた。 イツカ「話を聞く限りは、その辺の怪異と変わらない気もするけど?」 レツ「かもな。けど…以前、ヘドロンナのいるこの工場で"実況"した奴がいたのを覚えてるか?」 イツカ「去年だっけ?」 レツ「そうだ。実況の書き込みによれば、ソイツはヘドロンナと遭遇して命からがら逃げ帰ったようなんだが…それから書き込みがない」 彩菜「なにそれ。自宅で襲われましたって?自作自演じゃないの」 レツ「そう思うか?まぁその可能性もあるけどな」 レツはそう言ってから考え込むように小さな顎を触った。 イツカ「なに?なにか不安なことでもあるの?」 レツ「いや。被害が増えてんのにどうして退魔師が退魔してないのかと思ってさ」 イツカ「そんなの珍しいことじゃないでしょ」 「退魔師だって暇じゃない。毎日あちこちで起きている怪奇な事件に忙しいし」 「そこに怪異が出ると分かってるからって駆けつけて遭遇できるとも限らない」 彩菜「さすがにお詳しいわね」 彩菜がふふっと笑った。 レツはまだ納得がいかない様子でしばらく眉間に皺を寄せていたが、イツカが「どんな怪異でも私が殴って退治するに決まってるから安心しな」と言うとようやく頷いた。 レツ「そんじゃ…実況スタートだ」 レツはケータイ片手に歩き出した。 三人は、巨大な廃工場へと吸い込まれるように消えていった。 ◯ "池咲 彩菜"は先頭を歩くイツカの真後ろで退屈そうに辺りを見渡していた。 彩菜は別に、都市伝説や心霊やオカルトに興味がない。 彩菜にしてみればオカルトも心霊も一緒だし、もっと言えば妖怪と幽霊だっておんなじものだ。 イツカとレツにそれを言うといつも、心霊とオカルトは違うんだとか色々と説教を喰らう。けれど、そんなことさえ彩菜にはどうでも良い。それくらい興味がない。 それでもこうして付き合っているのは、小学校の頃からの馴染みのイツカとレツに誘われたからに過ぎない。 それに、インターネット上でも多少人気者になれるならそれに越したことはなかった。 彩菜は高校では"それなりの位置"にいる。ルックスだって抜群だし、胸もでかいしとにかくモテる。 けれど、そんなものでは彩菜は満足できない。 異性にモテること。同性からもてはやされること。それらでは彩菜の欲求は満たされていない。 いつも、常に、ずっと、彩菜の心の中では抑えきれぬ承認欲求がくすぶっていた。 無数の人間どもの海──インターネットならばその承認欲求を満たせるかも。そう思って彩菜はイツカとレツのこの心霊実況に参加したのだ。 だが結局、心霊スポットを巡る実況を見ているものなど僅かであり、その僅かな層からの賞賛など彩菜の欲求を満たすには及ばなかった。 とは言え今更やめられない。心霊に興味はないが、途中で物事を投げ出すのは嫌いな性分なのだ。 工場内は、何に使われていたのかもサッパリ分からないパイプみたいなものがそこら中に張り巡らされている。 本当に、そこら中だ。 足元から、壁、遥か上空の天井にまでとにかくびっしり張り巡らされている。 彩菜は、ここに出るヘドロンナとかいう幽霊よりもずっとパイプの方が気になった。 彩菜の後ろでは、レツが忙しそうにカチカチとケータイのボタンを連打している。掲示板に"実況"を書き込んでいるのだ。 心霊スポットを調査する時間は彩菜にとって退屈な時間になることが多い。なんせ、インターネット上で出回っている心霊スポットの噂のほとんどガセだからだ。 当然だ。幽霊なんてそうそう巡り合えるモノではない。 彩菜たちもこれまで巡ってきた心霊スポットで実際に幽霊と出会したのは3回くらいだけなのだ。 だが今回は── 先頭を歩くイツカがやけに勇み足だ。 ここに何かいると確信しているのか。 いわゆる"感のあるタイプ"の彩菜もなんだかいつもとは違う気配を感じ取っていた。 入り組んだ工場内をひたすらまっすぐに歩き続けると、大きな鉄の扉が現れた。扉は、半開きになっている。 奥は闇だ。 イツカは扉の取手を握りしめると、躊躇なく重い扉を左右に開く。 甲高い軋む音と共に意外にも滑らかに扉は滑るようにして開いた。 イツカ「よく見えないな」 イツカが目を細める。ただでさえ鋭い目つきがさらに鋭くなる。 彩菜はため息をついてケータイを取り出す。ケータイに付けてあるレツから貰った"どろんちゃん"のストラップが揺れた。 彩菜がケータイのライト機能で闇を照らすと、そこには奇妙なものが浮かび上がった。 何かが床を覆っていた。 べっとりどろりとしたそれは、赤褐色のヘドロのようなもので、それが扉の奥のこの空間の床を覆っている。 「なんだこれ」 レツがヘドロに近寄って首を傾げた。 靴だった。 大量の靴がヘドロの上に、或いはヘドロに飲み込まれるようにして散らばっている。 靴のサイズは様々だがそう大きいものはない。見たところ全て女性モノのようだった。 レツがデジタルカメラで、靴まみれのヘドロの山を写真に収める。 彩菜「なんなのこれ。きったない。臭いし」 彩菜はスンスンと鼻を動かす。ヘドロからは、唾液のような、脂のような、なんとも言えぬ香りがした。 レツ「噂のヘドロンナと関係は…ありそうだな」 レツはカチカチとケータイのボタンを押してまた忙しなく文章を打ち始めた。 彩菜「かもね。けど、これを見てヘドロの化け物だと思ったって可能性は?」 「いや。それはないな」 イツカはハッキリとそう言い切った。 イツカ「ほら、見て」 イツカは空間の奥を指差した。 奥にはまだドアがある。ヘドロの山から伸びたヘドロの痕がズルズルとそのドアへと続いていた。 イツカ「何かあるならこの奥だ」 彩菜たちはヘドロの山を回り込んで、ヘドロの痕の続いているドアを開けた。 ドアの向こうは屋外になっていた。そこには、何に使うのかも分からない機械はほとんどなく、周囲にはまた無数のパイプが張り巡らされていた。 だが彩菜でさえ、そのパイプのことなど気にならなかった。なんせ── 彩菜たちの真正面に不気味な物体が聳えていたのだから。 四角く窪んだ水のないプールのような空間に、月明かりに照らされたそれはある。 赤褐色の物体。 赤褐色のドロドロとした乾いた物体。 大きさはちょうど、200センチほどのそれに、どことなく、人の形に見えた。 彩菜「なんなのこれ…なんなの…」 彩菜は思わず呟いた。 彩菜は、赤褐色のヘドロの塊をびっしり覆う紙切れのようなものに釘付けになっていた。 イツカ「お札…か」 イツカが言う。 お札。赤褐色のそれを覆う紙切れがお札だとそう認識した途端、彩菜はぞっとした。 見れば、どの紙切れにも真黒い文字で何かが記されている。 三人とも、ヘドロの塊にただ目を奪われていた。 突然、イツカがドアの方を振り向いた。 彩菜とレツもそれに釣られて同じ方向を見た。 彩菜たちが開けたドアの前。 そこに、和装の長身の女が立っていた。 彩菜は「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、レツは無言のままビクリと肩を震わせた。 イツカはギッと女を睨んでいた。 長身の女は呆れたような目で彩菜たちを見ていた。 「あんたたち。今すぐ出てきなさい」 そう言って手で何かを追い払うような仕草をしてみせた。 てっきり霊が現れたのだと問い込んでいた彩菜はあっけに取られて口をぽかんと開けていた。レツも同様だった。 「ここはね、あんたたちガキンチョが来るところじゃないの。さぁ帰った帰った」 イツカ「お姉さんは…どこの"神社"の人かな」 イツカが女を睨んだままほんの少し口端をあげた。 「なぁに?そんなことが関係ある?まぁ教えてもいいけど」 女はそう言って腰に手を当て胸を張った。和装から漏れるほど大きな胸がぐんとさらに前に張り出される。 「私は"津軽 睦月(つがるむつき)"。"空女ノ神社(あめのじんじゃ)"の退魔師よ」 女──睦月は怠そうに答えた。 イツカ「私はイツカ。鬼道イツカ。そっちは彩菜でそっちはレツ」 睦月「ああそう。それはいいから早く出ていきなさい」 イツカ「それは出来ないかな」 イツカが挑発的に言うと、睦月は片方の眉を上げて怪訝な顔をした。 睦月「どういうことかしら」 睦月は薄らと笑みを浮かべながら首を傾げる。彩菜には、それが苛立ちを押し殺した顔に見えた。 イツカ「私たち、ここの幽霊を退治しに来たの」 「だから…立ち去るわけにはいかない」 イツカの身体が、完全に睦月の方を向く。 睦月「全く。これだから若い子は…」 睦月はやれやれといったように額に手を当てた。175cmはあろう長身──の睦月の手はとても大きかった。 睦月「イツカちゃんだっけ?あんた、そこそこやるみたいだけど…ここの怪異とは戦わない方が良いわよ」 イツカはちらりと、お札まみれのヘドロを見た。 イツカ「あれをやったのはお姉さんなわけ?」 睦月「違うわよ。私ならこんな雑に放置しない。これは、どっかのへっぽこ退魔師の仕業でしょ」 「こんなにテキトーにやっちゃってさ」 「これじゃあ動き出すのも時間の問題よ」 「とにかく。危険だから立ち去りなさい。私が、優しく言っているうちにね」 睦月は最後に声を低くしてそう──脅した。 それを受けたイツカから、闘志が滲み出るのを彩菜は感じていた。 イツカは短気でおまけに負けず嫌いで喧嘩っ早い。彩菜も短気な方だが、そんな彩菜から見てもイツカの喧嘩っ早さは異常だ。 「おいイツカ。落ち着きなよ」 レツが宥めようとするがもう遅い。こうなってはイツカの耳には何も届かない。 イツカ「お姉さんがどれほど強いか知らないけどね。私だってけっこーやるよ?」 「いいじゃん。どっちが強いかを決めて…残った方が幽霊を退治するってことで」 イツカがジリジリと睦月に近づいていく。 睦月「ほんっと…血の気が多いね若い子は」 イツカ「若い若いってうるさいね。おばさんから見たら全部若く見えるのは分かるけどさ」 イツカのその一言で、ついに睦月の顔から冷静さが一切消え失せた。 睦月「あんたの気持ちはよぉく分かったわ」 睦月はその長身の身体をくねらせるようにゆっくり、ゆっくりとイツカの方に近づいてくる。歩くたび、大きな胸が揺れる。 睦月「これはちょっとお仕置きタイムだね…」 睦月が手をすっと挙げる。 瞬間、彩菜はぴりぴりと空気が僅かに波打つのを感じた。 波打つ空気がさらに乱れる。 イツカが飛び出したのだ。 イツカの握りしめる拳が真っ直ぐに睦月に突き出された。 素早く音も立てずに突き出された一撃を、睦月はゆっくりと小さくかわした。 拳から放たれた一撃は、空をねじり、その先にあった鉄の壁をべこんと凹ませた。 睦月「なるほど…そう言う類ね。当たったら…厄介…」 睦月は拳の形に凹んだ壁を見て眉間に皺を寄せた。 睦月「ますます…放っとくわけにはいかなくなったわ」 睦月は谷間から一枚のお札を抜き出し、イツカに向けて飛ばした。 一枚の札が二枚になり、三枚になり、やがて──数えられぬほどの枚数に分裂する。 無数のお札は意思を持った生物のように イツカに向かって飛んでいく。 イツカ「なんだっ」 イツカは手を振り回して札を掴むが、たった二つの手ではお札を全て防ぐ事はできない。 イツカの身体に次々とお札がびたびたと貼り付いていく。 やがてお札は、ヘドロの塊のようにイツカの身体を覆い尽くしてしまった。 イツカの動きが止まった。 イツカ「くそ!身体がっ…」 イツカは指をわなわなと震わせている。 睦月「力の使い方を間違っては…怪異と同じよ」 「ほんと…悪い子ね」 睦月はくるりとイツカの背後に回り込む。 イツカ「まだ終わってない…!」 イツカが歯を食いしばり、背後の睦月を睨む。僅かに、イツカの首が後方へ捻じれるように動いた。 睦月はまた、眉をひそめた。 睦月「その力…誰から授けられたの?」 「まぁいいわ。お仕置きとして…その力…少しの間没収ね」 睦月は封印されたイツカの肩に手を置き、肩をモミモミと揉んで囁いた。 イツカ「何ふざけたことを…」 睦月「ふざけてなんかいないわ」 睦月が突然、イツカの脇腹をモミッと揉んだ。 イツカが「ぐひゃあ」と声を上げる。 イツカ「な、なにやって…」 睦月「あら?なにとぼけてるの」 「力の没収といえば…コレに決まってるじゃない。ねぇ?」 睦月はもう一度脇腹を揉んだ。 イツカがまた高い声で鳴く。 睦月「大丈夫よ。私、お仕置きには慣れてるから。言うこと聞かない後輩なんかによぉくやるからね」 「さて…」 睦月は細く長い指でつうっとイツカの首筋をなぞり上げ、さらに腋の下をちょろりと触った。 イツカ「ぎっ!?なんでっ…こんなっ」 イツカの顔がピクピク痙攣している。 睦月「どうしてこんなに敏感になのかって?」 「そのお札の効果よ。そのお札は、衣服を纏っていても素肌をこちょこちょされるのと同じ感覚に陥らせる」 「といっても、あんたの服…薄っぺらいしほとんど素肌みたいなものだけど」 「怪異向けだけど…こうしてお仕置きする場合にももってこいなの。でもこんなに貼り付けることはそうそうないけどね」 睦月はイツカの身体──首筋や耳周り、腋の下や横っ腹──をまさぐりながら言った。 身体をまさぐられるたび、イツカはびくびくと腰をくねらせた。 睦月「どこからこしょばされたい?」 「選ばせてあげる」 「ワキか…脇腹か…それとも…ここか」 睦月は、腋、脇腹、お腹の順にワキワキと蠢かせた指を近づけた。 イツカ「ど、どこだって一緒…!私はそう言うの別にっ…」 睦月「あ、そう。じゃあ遠慮なく…」 睦月の指が、イツカの首と耳周りに触れる。 そして、コショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショ…っと蠢き始めた。 イツカ「む"っ!!?むくくくくくくくくくくくっっ!!?」 イツカの白い首筋に、睦月の肌色の指先が這い回り、爪の先がコチョコチョと神経を掻いていく。 イツカは顔を真っ赤にして、そのくすぐったさを押し殺していた。 イツカは特別、くすぐったがりではない。 そのイツカがあんなふうに顔を真っ赤にして堪えているということは、あの睦月という女のくすぐりがそれほどに凄まじいということだ。 睦月「あらぁ?意外とやるのねぇ」 「でも…我慢は毒よ?どうせ耐えられないんだから」 睦月はそう言うと、突然、両手をずるりと腋の下に滑り込ませた。 イツカ「あっ!?」 イツカの鋭い目が大きく丸く開かれた。 睦月「よっと」 睦月は長い指の関節を折り曲げ、ガッと爪を突き立てる。程よく伸ばされた形の良い爪の先っちょが、イツカの無防備な腋の下に添えられた。 睦月「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョォ〜」 睦月は唇を尖らせ、赤子をあやすようにコチョコチョ囁きながら腋の下をくすぐり回した。 イツカ「ぶひっ!!?」 硬く結ばれていたイツカの口が弛む。 睦月「口。開けたね?」 睦月が冷たい目つきでイツカを睨み、低い声で囁いた。 そして─── 睦月「コォチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ〜!!」 甲高いコチョコチョボイスと共に、睦月の長い指がイツカの腋の下を引っ掻き回した。 イツカ「ぎひっ!?ひゃっ!!?しまっっ──っっひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!?ひゃーっひゃははははははははははははははははははははははははははは!!?」 イツカの口角がキュッと吊り上がり、細いその腹の底から乱れた笑い声が放出された。 イツカは何度か、口を閉じようとしていたがもう遅い。 睦月「ねぇ…コチョコチョ囁かれながらくすぐられると堪らないでしょ?」 「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ〜」 睦月は意地悪な笑みを浮かべながら唇をイツカの耳元に近づけコチョコチョ囁きながら細く長い指を踊らせる。 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! イツカ「ぎひひははははははははははははははは!!わっ!!分かってるっならっっ!!やめっっ!!っぅははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?かっっっひゃひゃはひははははははははははははははははははは!!!」 イツカはやかましく喚きながら暴れようとするが、せいぜいワナワナと指が震えているだけだった。 睦月「やめないわよ。これはお仕置きなんだから。ほら…コォチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ〜?コチョコチョぉ〜?コチョコチョコチョコチョぉ〜?コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョぉ〜ん」 コチョボイスのその奇妙なリズムに合わせ、睦月は指をコチョコチョ動かすリズムに変化を加えている。 ある時はコチョリッと爪で引っ掻いたり、ある時はスリスリと指の腹で撫でたり、またある時はコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!!っと素早く細かく引っ掻いたり──。 イツカ「ぎゃっっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!もっっ!!もういいっ!!もういいって!!このっ!!くそっ!!クソババアっ!!!」 笑い声を貫き、イツカの怒声が響いた。 途端に、睦月の指が止まった。爪の先はまだ、イツカの腋の下を向いている。 睦月「はぁん?クソババアだって?」 睦月は低い声でそう言って首を傾げた。 イツカ「はぁはぁはぁ!!間違ったこと…言ってないよね…私…!」 イツカはギロリと目を動かして睦月を睨む。 睦月「躾が足りてないみたいね」 「いいわ。ちょっと本気出しちゃおっか。いっつもお仕置きで使う…方法で」 睦月はまたまた胸の谷間から何かを取り出した。それは小さな小さな小瓶で、中にはくすんだ肌色のねっとりとしたペースト状のものが入っていた。 睦月はそのネトネトしたものを手のひらに垂らし、ぬちゃぬちゃと音を立てて指に塗り込んだ。 睦月「これは、"怪異の脂"で出来たお仕置き用の固形潤滑油よ。これを塗れば、その部位の神経は致死レベルに過敏になる」 「いい?」 睦月はするりとイツカのシャツの裾から手を中に忍ばせ、スルスルと腋の下まで指を移動させた。 イツカ「はぁはぁ…そんなもので…」 イツカが何か言いかけたその時、 コチョリッと睦月の指先が腋の下を引っ掻き下ろし、イツカの顔が引き攣った。 「ぎゃっっ!!?」 イツカから悲鳴が漏れる。 全身からドクドクと冷や汗が吹き出している。 睦月「やばいでしょ?多分ね…このままくすぐられたらあんたは大変なことになる。わかる?大変なことよ。きっと、オシッコ漏らしたり泣き喚いたりすることになる」 「それが嫌なら…さっきの発言を訂正しなさい」 睦月は、シャツの中に忍ばせた長い指をワキワキと曲げ伸ばしして脅しながら囁いた。 イツカ「はぁはぁ…悪いけど…事実は訂正の使用がないな──」 イツカが啖呵を切りかけた時だった。 イツカの顔に緊張が走った。 睦月のやばい脂の塗られた爪が腋の下に突き立てられたのだ。 イツカの細い全身の筋肉が強張る。 睦月「その捻じ曲がった心…お姉さんが叩き直してあげる」 睦月の指に徐々に指に力が込められ、指関節が折り曲げられていく。 イツカの顔から余裕が消えていく。 睦月の指から一気に力が抜けたその時── 睦月「コォチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ〜!!」 本気のこしょぐり地獄が始まった。 シャツの中の、ヌルヌル指が暴れ出す。 イツカ「ぶぎっ!!?あっ!!?ひゃっ!!?ぎぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?あはははははは!!?あははははははははははははははははははははははははははははははは!!?」 イツカの顔が瞬時に決壊し、目元が弛んで口角が吊り上がって無様な強制笑顔へと変貌する。 太ももがガクガクと揺れ、肩がヒクヒク上下に震え上がっている。 お札で身体を固定されていなければ、イツカがとっくに地面に崩れ落ちているレベルのくすぐりであることは間違いなかった。 睦月「さぁ大変ね。どうする?訂正する?それとも…これが良い?」 睦月は教師のような口調で囁きながら獰猛に指をコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョッと蠢かせ指先と爪の先で腋の下を掻き回している。 イツカ「ひぎぎぎ!!!っっひひひひはははははははははははははははははははははははははははははははは!!?うっ!!うるさいっ!!うるさいうるさいぃぃぃぃぃぃぃひひひひひひははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 イツカは必死に反抗心を見せ続けていたが、睦月の指がワシワシコチョコチョ動くたび、その顔はメキメキと酷いものになっていく。 睦月「そもそもの言葉遣いがなってないわね。まずは敬語を使うところからよ?」 「わかった?」 睦月は、イツカのムダ毛など一切ないツルスベの腋の下の窪んだところに指を滑らせ、そこを集中的に細かく素早くカリカリカリカリ!!コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!!っとくすぐり掻きむしった。 イツカ「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!?そごはっ!!!そこはぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!っっはははははははははははははははははははははははははははははは!!?そこは触るなぁぁぁぁぁああああはははははははははははははははははははは!!!」 イツカの目が大きく開かれ、涙がドバッと溢れ出し、腹の痙攣が激しくなる。 睦月「ここ。やばいでしょ?ここにはくすぐったい神経がみっちり詰まってるの。こういうところはこうして…爪の先で細かぁくコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ〜!!ってするのよ」 睦月はサディスティックにコチョコチョ囁き、素早く指を曲げ伸ばしして爪の先で腋の下の敏感な神経を細かく嬲った。 イツカ「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!?やめっ!!やめっっ!!?ぇぇぇえへへへへへへへへへへははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?そこはぁぁぁぁあああああああ!!!あへへへへへへへへ!!?ひぃぃぃひひひひははははははは!!!」 腋の下の窪みを直接、脂まみれの指先と爪の先でこちょぐられているイツカの顔はさっきよりもずっとグチョグチョに乱れていた。 睦月「どれだけの修羅場を潜ってきたのか知らないけど、くすぐりの真髄はまだ知らなかったようね」 「指を曲げる速度、伸ばすタイミング、効果的な爪の立て具合…全部指に叩き込んである」 「プロのくすぐりに耐えられるわけがないのよ…!」 睦月の指がまた一段と素早く動き出した。その指は素早いだけでなく、的確に腋の下のくすぐったいポイントのみを刺激している。 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! イツカ「くあっっっ!!?かっっ!!?ひゃひゃひゃひゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!あははははははははははははははははは!!!?」 睦月「まだまだこんなもんじゃないからねぇ…」 睦月の手がズルズルと下方へ滑り、イツカの細く引き締まったお腹でピタリと止まった。 睦月の爪がしっかりと腹部に突き立てられる。 イツカ「ぐぎっ!!?」 睦月「訂正…する?」 睦月は上目遣いでイツカを見つめる。 イツカは激しく息を切らしながら、口をパクパクと動かしていた。迷っているのだ。だが、睦月はイツカに迷う時間など与えなかった。 睦月「はい時間切れ」 「お仕置き執行〜」 睦月のヌルヌルの指が、今度はイツカの細くて引き締まったスベスベの腹部をワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシッ!!コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!っと掻き回し始めた。 イツカ「あっっ!!?かっ!!?ぇほっ!!?はっっっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?なっ!!?かっ!!?くるじっ!!?いっ!?いひっ!!?きっ!!?ぃぁぁぁぁあはははははははははははははは!!?」 真っ赤だったイツカの顔がみるみるうちに青くなっていく。 イツカは何度も咳き込み、必死に酸素を取り込もうとしていたが、それでも無理やりに笑わされて酸素を大量に奪われている。 睦月「お腹が捩れそう?苦しい?そうでしょう。お腹へのコチョコチョはそういうもの」 「お腹はこうして程よく伸ばした爪の先で掻きむしるのがよぉく効くの」 睦月はその通りに、腹部にツルツルした爪を立ててワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシ!!っと掻きむしり、コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!っとくすぐり回し続けた。 イツカ「ぐぇっ!!?ぇぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!?ぐるじっ!!?いっ!!?かっっははははははははははははははははははは!!?やめっっ!!!やめぇぇぇぇええええへへへへへへへへへへはははははははははははははははははははははは!!!」 イツカの顔が、悶絶の赤色と酸欠による苦しみの青色が入り混じった異様な色に染まる。 流石のイツカも、目をギョロギョロ泳がせ助けを求めるように彩菜たちの方を見てきた。 睦月「やめて欲しかったら…今すぐ言葉遣いを敬語に変えて訂正すること」 「そうしないと…ずーっとこうし続けるわよ」 睦月は真面目な口調で脅し、イツカのお腹を爪の先でゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョ貪った。 イツカ「くぁぁぁぁぁぁぁぁっっはははははははははははははははははははははははははははははは!!かはっ!!うはっ!!!けほっっ!!!くはっっ!!!それはっっ!!それはぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!」 紫色の顔になったイツカが喉を震わせ何かを言いかけた時だった。 突然。レツが動き出した。 彩菜「ちょっとレツ!なにすんの!?」 レツ「イツカを助ける!」 いつにない熱を帯びた声でレツは返事をするとそのまま彩菜の返事も待たずに駆け出した。 彩菜「はぁっ!?正気っ!?」 レツ「最近ハズレ続きだっただろ!」 「ここに怪異がいるのは確定だ」 「こんなところで阻止されてたまるか!」 「それに…もう既に実況は始まっちゃってんだから今更引き返せない!」 レツの黒い爪が獣のようにニュッと伸びる、犬歯が剥き出しになる。レツは金色の髪をなびかせて睦月に飛びかかった。 睦月「え…?あんたたち…"そういう感じの子"なの?」 睦月は驚いたような顔をしたがすぐに冷静な目つきに変わり、レツの攻撃をひらりとかわした。 睦月「ほんと全員…悪い子なんだから」 睦月は手刀のように右手を振った。 ひゅんと空気が切れる音がして、地面にスジが走った。 睦月「止まりなさい狼娘。この線を超えないこと」 「でないと…この子を本気でくすぐり殺すわよ?」 「大人気ないとか言わないでね?」 睦月は胸の谷間から抜き出した新しいお札を指で挟みながら言った。 睦月「このお札は"輪廻の札"。"始の札"とセットで使うものよ」 「これを貼れば、"始の札"を貼られてから受けたくすぐったさ全てが繰り返し与えられる」 「始の札はお仕置き開始から既に…この子に貼ってある」 「意味わかるわね?もしこの線を超えたら…このイツカちゃんはこれまでの苦しみ全てを無限に味わうことになる」 彩菜「それはやばいんじゃないの…」 レツ「でもここでイツカを戦闘不能にされるわけにはいかないだろ」 確かにイツカの戦力を失うのはまずい。けれどそれはあくまで、ここでこれ以上まだ実況を続ける前提の話である。 レツ「彩菜!お前も手伝え!お前の力があれば切り抜けられる!」 レツはそう叫んで地を蹴って線を超えた。 彩菜は、すぐには判断を下せず立ち尽くしていた。 睦月「あーあ。動いちゃった」 睦月はため息をつき、右手を前方にかざした。 手のひらから放たれた紫色の光の玉がレツに直撃した。 レツはボールのように軽々と後方へ吹き飛ばされた。 睦月「じゃあ、約束通り…」 睦月はお札──"輪廻の札"をイツカにびたりと貼り付けた。 イツカ「ちょっ!?」 既にヘトヘトのイツカの顔にまた絶望が浮かんだ。 睦月「夕立コヨミの裁きの指よ──その者をくすぐりの回廊へお連れください」 睦月が訳のわからないことをぶつくさ唱え、大量のお札を宙にばら撒いた。 すると。 宙を舞うお札からニョキニョキぱきぱきと音を立てて生白い手が生えてくる。 何本も何本も生えてくる。 その生白い手は恐ろしいほど綺麗で、恐ろしいほど指が細くて長くて──とてつもなくくすぐったそうだった。 指はワキワキと曲げ伸ばしを繰り返し、イツカの無防備な身体に狙いを定める。 それを見たイツカは完全に、凍りついていた。 睦月「言い忘れてたけど…輪廻の札でのくすぐりは、さっきのくすぐりの百倍はくすぐったいから頑張ってね?」 イツカ「ひっ!?」 睦月「さぁて…ありがたい神のくすぐりを味わいなさい」 睦月がぱちんと手を合わせたその瞬間、 無数の生白い神の手がイツカに襲いかかり、次々にイツカの腋の下、お腹に食らいつき、コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!!っとくすぐり貪り始めた。 「あっっ!!?」 イツカの目が大きく大きくひん剥かれる。 口角が異様なくらい吊り上がる。 腹がひくひく震え出す。 そしてその悲痛な声は、廃工場に響き渡った。 イツカ「ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!?あはは!?あははははははははは!!?あっっっひゃひゃひゃははははははははは、ははははははははははははははははははははははははははははは!!?やばいっ!!?やばいやばいこれ死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」 狂気の笑顔を浮かべたイツカから、苦しみに満ちた笑い声が絞り出された。 神の手と呼ばれたその生白い指たちは容赦なくイツカの上半身に群がり、およそ人間には出来ないような滑らかな指さばきでコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョと腋の下を引っ掻き回し、ワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャ!!っと腹部を泡立てるようにくすぐり嬲っていた。 イツカ「ぎゃっ!?あっ!!?あああああああああああああ!!あはは!?いひひひ!!?ははははははははははははははははははははははは!!助けて助けぇぇぇぇぇぇ!!!死ぬ!!あっ!!ごめんなさいごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!っっひひひはははははははははははははははははははははは!!!?ぎゃっ!?ちょっ!?うわぁぁぁぁぁああああ!!!」 とある神の手が突然、イツカの骨盤のあたりを親指でグリグリほじった。するとイツカはその不意打ちのくすぐったさに耐えられず失禁してしまった。 ガクガクと震えている太ももに尿が伝い滴る。 睦月「悪いけどもう遅いの。それはお札が燃え尽きるまで続く」 「だから…それまでせいぜい笑い死なないように頑張ってね」 睦月はウィンクしてそう言うと、イツカから離れた。 イツカを裁く神の指たちは、指先や爪が皮膚と神経をくすぐり嬲るコチョコチョという音が聞こえてくるほど獰猛に無慈悲に、イツカの腋の下を引っ掻き回し、お腹を掻きむしり、骨盤や脇腹を揉み殺していく。 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! グニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニグニ!! イツカ「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああははははははははははははは!!ギブギブギブギブギブギブぅぅぅ!!たすげでっ!!お願いっ!!あああああははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?くるしぃっ!!あっ!!?やめっ!!揉まないでぇっ!!あああああああああ!!」 尋常ではないくすぐり責めにより、またしてもイツカは失禁させられた。 涙や鼻水や唾液まみれのそのグチョグチョの顔には、鋭い眼光を持つ普段の勝気な顔の面影はなかった。 このままでは、お札が燃え尽きるよりも早くイツカは壊れてしまう。そして次にお仕置きされるのはレツだろう。そして最後には───。 彩菜はついに決断を下した。 彩菜は溜め込んでいた苛立ちも、この事態を突破するための闘志も全て手のひらに注ぎ込み、力を爆発させた。 彩菜の手のひらから放たれた真っ赤な光が、イツカごとお札を爆撃した。 ◯ 爆煙が立ち込める中、睦月はゆらりと立ち上がった。体内に入り込んだ煙を吐き出す。 まさか、あの小娘もぶっ飛んだ力を持っているとは思ってもいなかった。油断した。 煙が晴れる。 そこに、あの三人の小娘の姿はない。 逃げ帰ったか。それならそれで─── 安堵しかけた睦月の視界にそれは映り込んだ。 宙を無数の紙屑が舞っている。 紙屑には文字が書かれていた形跡がある。 お札だ。 無数のお札だったものが舞っているのだ。 だがそれは、睦月がイツカに貼り付けたお札ではない。 これは────。 睦月は咄嗟に、ヘドロの塊があったはずの場所へ視線を移した。 そして背筋に、ゾッとするほど冷たい感覚が走るのを感じた。 冷や汗がふつふつと噴き出す。 いない。 ヘドロの塊がいない。 すぐ背後でぼこぼこと何かが泡立つ音がした。 睦月はゆっくりと振り向く。 しゅうしゅうと音を立て、湯気を上げながら赤褐色のヘドロが蠢いていた。 ヘドロの塊から丸い形の突起が顔を出す。 それは、ドロドロと形を変えて人の顔のような形状へと変形した。 女の顔だ。 雪のように白い髪。大きな瞳。 赤褐色のヘドロの女は、パクパクと口を動かしてこう言った。 ああ。潤いを─── 褐色の腕が、真っ直ぐに睦月に伸びてきた。

Comments

reoさんありがとうございます! そうですね!2007年はまだハクたちが子供の頃…ちょうどあや子と出会った頃だと思いますね! 睦月は若い女が嫌い…というよりは、イツカたちみたいな言うことを聞かない生意気な子が嫌いみたいですね! とはいえ、確かに睦月は双夜を持て余していそうな気はしますが… イツカたちには確かに秘密があります。 それはこのヘドロンナのエピソードで少し明らかになると思います!! 女子高生にして、ベテランの睦月に手を焼かせるのは確かに相当な実力ですね! ヘドロンナはかなり厄介です…! あぶら姫と同じ液状怪異ですが…その実力は…! ご期待ください!!

Kara

2007年ってハクたちが小学生の頃ですよね。この頃は山岡家以外の退魔師も空女ノ神社に居たんですね。睦月は若い女を嫌ってるみたいですし、何となく双夜とは合わなさそうだなって思いました。 女子高生三人組は何か特殊な力を持ってるようですが、一体何者なのでしょうか。実力者である睦月のくすぐりから生き延びたのは凄いと思いますし、次回以降の活躍に期待してます。 ヘドロンナはかなり強大な怪異のようですし、次回以降くすぐりシーンが描かれるのを楽しみにしてます。

reo

ありがとうございます! めっちゃ面白い!直球にシンプルにそう言っていただけるのもまた嬉しいものですね! そうですね〜…この三人はいつもの冷やかし系キャラではなく何か秘密がありそうですよね。 睦月も警戒する威力の殴打を繰り出すイツカ。狼娘と呼ばれたレツ。そして莫大なエネルギーを発散させる彩菜。退魔師のように神から力を与えられたのかそれとも……その正体にご期待ください! 恐らく全て伝わるだろうと決めつけて過去作との関連ワードをいくつか放り込んでみました! 空女ノ神社にはもちろん山岡家以外も在籍しているのですがこれまで全然出てなかったので(空女ノ神社に関わりがあった山岡家以外の人間が描写されたのは黒島先生くらいでしょうか)今回思い切って登場してもらいました! なるほど… ヘドロンナを放置していたのは、放置するしかなかったから説…! ヘドロンナが動き出したのをみた睦月の動揺っぷりからしても、その可能性も十分にありますね。 だとしたらちゃんとそう睦月に報告するべきな気もしますがなぜ… そういえば、この当時はまだ……いえこれ以上書くのはよしておきます。 今回はしっかり3チャプター書くのでご期待くださいー!

Kara

めっちゃ面白いです!! いつものように遊び半分で心霊スポットに忍び込んだ人間が怪異に襲われて酷い目に遭うのかと思いきや…この三人もなんだか正体が怪しいですね… とても聞き覚えのある単語が幾つか… 空女ノ神社の山岡家以外の退魔師さんの登場はすごく盛り上がりました! でも、もしかして退魔師は忙しくて廃工場のヘドロンナを退魔してないんじゃなくて、退魔しようとはしたけどできなかったのでは…? だとしたら今回の怪異はかなり厄介な可能性がありますね… 次回どうなるのか… めっちゃ楽しみです!!

(´・ω・`)


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