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【F/F】廃工場のヘドロンナ#3

3. モノクロオムの擽獄 (F/F) 再び人の形を取り戻した赤褐色の魔物──ヘドロンナは、見上げるほど高い塔に並ぶようにして聳え立ち、四人の女を見下ろしている。 「なんか…さっきよりデカくなってない?」 彩菜がヘドロの砦を見上げて言った。 「驚くことじゃない。一度倒したボスがパワーアップして復活するなんてゲームではありがちだ」 金髪のウルフヘアをなびかせ、レツがニタリと笑う。 「それにしても、デカすぎでしょ。もし本当にこれがゲームだったら…私ならブチギレる」 イツカが握りしめた拳に血管を浮き立たせる。 睦月が乱れ切っていた和装を正して起き上がった。 イツカ「退魔師のお姉さん。こいつは厄介な怪異だ」 イツカは聳えるヘドロンナから目を離さないまま睦月に言った。 睦月「どういう意味かしら。厄介というのは、強さだけのことを言っているわけじゃないわよね」 このヘドロのバケモノの強さが厄介なことくらいは睦月にも分かっている。 イツカ「もちろん。このヘドロンナってやつは───」 イツカは、数分前の出来事を語り始めた。 ──数分前── 睦月から退散したイツカたち三人組は、工場の入り組んだところにあったドアをこじ開けてそこに逃げ込んでいた。 「この部屋はなんだ?」 イツカが部屋を見渡して首を傾げた。 部屋には窓がなく、いくつかのモニターと何に使うのか分からないメーターだらけの機械類が置いてある。 「知らないわ。休憩室とかじゃないのー そんなことより、感謝してよね。特にイツカ。帰りにジュースとグミ買ってもらうから」 彩菜は恩着せがましく言って、放置してあった椅子に座り込んだ。 イツカ「どっちかにしないと太るぞ。それでもいいんなら買ってあげるけど」 イツカが余計なことを言って彩菜が交戦しようとした時だった。 「おい」 テーブルに目を向けていたレツが二人を止めた。 彩菜「なに?」 反論を遮られた彩菜が不機嫌そうにレツを睨んだ。 レツ「これはなんだ?」 レツは、テーブルの上に丁寧にまとめられている書類の山から一枚だけ紙を抜いた。 【怪異生成計画其の参】 何かの表紙と思しきその一枚にはそう書かれていた。 レツは黙ったまま、書類の山を手に取って次々にページをめくる。 レツ「奇妙だな」 一通り読み終えたらしいレツがぽつりと呟いた。 イツカ「なにが」 レツ「この書類…ところどころ筆跡が違う」 イツカ「何人かが分担して書いたんだろ?」 レツ「その可用性もあるけどな。けど…」 彩菜「なにー?」 既に書類に興味がなくなっていた彩菜がテキトーに反応した。 レツ「ここには一人の匂いしかしない」 レツがすんすんと鼻を動かして言う。 イツカ「ここに出入りしてたのは一人ってこと?」 レツ「そうだ。それは間違いない」 レツはそう言ってケータイのカメラ機能で書類を一枚一枚撮影し始める。 彩菜「ちょっとどういうこと?一人しかいないのになんで筆跡が違うのよ。あ、書類をここで書いてないとか?」 レツは黙って読み込んでいる。 レツ「やっぱりおかしいな」 彩菜「なによ」 レツ「この書類…どうもやっぱり一人の人間が書いているようにしか思えない」 「これ…研究書類みたいなんだけど、全部、同じ人間の視点から書かれてる」 レツの、大きくて綺麗な瞳がわずかに曇る。 イツカ「それなのに筆跡が違う?そんなことがある?」 レツ「そうだな例えば…一人の人間に沢山手があるとか」 彩菜「それっておばけ?あ!これをヘドロンナが書いたとか?」 彩菜が名推理だといったように人差し指を立てたが、レツはすぐにそれを否定した。 レツ「それはない」 彩菜「はぁ。なんで言い切れんのよ」 彩菜が不服そうにすると、レツはペラペラと紙をめくってあるページで指を止めた。 そして、そのページを彩菜とイツカの二人に見せた。 ーーー【怪異生成計画其の参】ーーー 第十六頁 身体の再生可能能力を有した怪異は重大な戦力になりうることが考えられる。 水場や産業廃棄物ヘドロ付近で恨みを持って死んだ者は、死後に液状怪異として転化する可能性が高い。 この作用を利用し、この工場で液状怪異の生成を試みる。 ーーーーー イツカ「おいこれ…」 彩菜「これってどういう…」 書類にペンで刻まれた不気味な文章を見せられたイツカと彩菜は思わず言葉を失った。 レツ「これ…どうもヘドロンナを作るための研究書類みたいだな」 レツは相変わらずの冷静な低いトーンで言った。前髪に隠れている大きな目が、イツカと彩菜をしっかり見据えている。 彩菜「つ、作るって、あれは作られたってこと?そんなこと…出来るわけ!?」 怪異を作るなど彩菜は聞いたことがない。 レツ「間違いない。見ろ」 レツはまた別のページを見せた。 【怪異生成計画其の参】 第二十六頁 被験体第十八号 性別雌 身長174 体重58kg 結果)沼地の怪異の脂と私の皮脂を混ぜた油に漬け込んだままくすぐり殺した。だが、液状怪異には転化せず。退魔にて処分。 被験体第十九号 性別雌 身長158 体重41kg 結果)複数の怪異の皮脂を液化させたものを継続的に飲ませたままくすぐり溺れ殺した。液状怪異には転化せず。退魔にて処分。 被験体第二十号 性別雌 身長166cm 体重49kg 結果)特別研究所(本工場)にて生成した特別なヘドロ(怪異の脂と唾液と退魔師の脂を混ぜたもの)の中に練り込んでひたすら足の裏をくすぐり続けて殺害。 こちらは一部液状怪異と化したが退魔して処分。 ……… 被験体のプロフィールと狂気的な実験結果はその後、五十以上も記録されていた。 彩菜「なんなのこれ…人体実験でもしてたわけ?」 イツカ「わざと殺して怪異にするってことか…本当なら…胸糞悪いな」 イツカは歯をぎりりと食いしばる。 レツ「この研究データには、この廃工場のことが特別研究所と記してある」 「もしかするとここは、廃工場という皮をかぶった研究所なんじゃないかな」 「きっと最初っから、工場としては廃工場だったんだ」 イツカ「なるほどな。工場はカムフラージュってことか」 彩菜「ちょ、ちょっと待ってそんなことある!? レツ「このイカレた研究者が何を目的にしてそんなことしてたのかは知らないけど…」 「ここが廃工場なら都合が良いはずだ」 彩菜「どうして?」 レツ「幽霊が出る廃工場として噂を流せば…肝試しに寄ってきた奴を捕まえて実験体にできるだろ」 レツの一言に、彩菜はさっと顔を青ざめさせた。 彩菜「そんなこと…一体誰が…」 レツ「気になるのは、退魔して処分したってとこだ」 レツが黒い爪の先で書類の一文を指差した。 イツカ「退魔ってことは、神社に属するかあるいは属していた退魔師になるよな」 「それも…きっと相当な手練だろ」 「これだけ簡単に何人も処分し続けていたんだからさ」 彩菜「ま、まさかあのお姉さん…」 彩菜は津軽睦月を思い浮かべていた。彼女はやたらと、彩菜たちを帰そうとしていたのだ。かなり怪しい。 レツ「可能性はあるけどな」 レツは首を捻って小さな顎を触った。彩菜の推測に納得いっていない様子だった。 イツカ「とにかく…行ってみるか」 レツ「だな」 「っとその前に…」 レツが書類をめくる。 レツ「これを見ておいた方が良い」 レツが二人に見せたもの。それは人体実験の最後の犠牲者について記された頁であった。 被験者第五十九号 性別雌 身長176cm 体重71kg 結果)怪死の伝説の残る"底無山"山中の底無沼とこれまでに用いてきた被験者たちの脂と私の脂にヘドロを混ぜ合わせた特別なヘドロにたっぷり三時間浸してから全身をこそばし殺した。弱点は両脇腹のツボである。 死後三日でヘドロがまるごと被験者と同様の形状に変化。見事に液状怪異と化す。 液状化した際にも脇腹のあたりにやや硬い部位が存在する。そこを揉めば退魔可能。 念の為に記しておく。 ◯ 「なるほど…人工怪異…ってことね」 話を聞き終えた睦月は、刀を抜いた。 イツカ「お姉さん。その実験をやってたのは退魔師らしいんだけどね…」 睦月「私を疑っているんでしょう?」 イツカが言い終えるよりも早く、睦月が言った。 イツカ「ま、まぁ最初はそう思ったけど──来てみたら襲われてて死にかけてたし…それに、もし開発者ならわざわざ来る必要も、私たちを追い返す必要もないよね」 睦月「意外とちゃんと考えられるのね。見直したわ」 睦月は表情を和らげた。 「潤いをもっと───」 ヘドロンナが上方から声を落とし、四方八方に赤褐色の腕を伸ばした。 レツ「私が囮になる」 「弱点を揉んでやって!」 レツが獣のようにぴょんぴょんと飛び回って赤褐色の腕どもを引きつける。 だが、レツの死角から伸びてきた腕がレツに巻き付いた。 レツ「ぐぁっ!?」 巨大な赤褐色の手に囚われたレツに、また別の手が伸びる。 そしてその指は、レツの顎の下と耳周りをまるで子猫を可愛がるようにようにコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショ…っとこしょばした。 レツ「わっ!!?いひっ!!?いひひひひひひひひひひひひひひ!!!ぎひひひひひはははははははははははははははははははははははははは!!?やっっやめっっ!!?いひひひはははははははははははは!!?」 レツは嫌だ嫌だと首を窄めたり振ったりするが、赤褐色の細く長い指はレツの敏感な首筋をこちょばしたり顎下を撫でたりしてイジメ続ける。 イツカ「レツ!くそ!」 イツカがレツを助けに行こうとするのを、睦月が止めた。 イツカ「なにすんだ!」 睦月「せっかく仲間が時間を稼いでくれてるのよ。ここは…彼女のためにも攻撃に出るしかないわ」 睦月は諭すようにそう言った。 イツカはレツのいる方に向けていた闘志をヘドロンナの脇腹に向ける。 だが。 レツに異変が起きた。 レツ「ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!そこはっ!!?そこはぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!?勘弁してぇぇぇえええ!!」 上空からレツの絶叫が轟いた。 明らかにさっきよりも激しく悶えている。 睦月「何っ!?」 イツカ「くそ!"裏"だ!」 睦月「うらっ?」 イツカ「レツは、手のひらと足裏をコチョコチョされんのにとびきり弱いんだ!」 囚われのレツは、敏感だと言う手のひらと足裏にびっしりと異様に細く長い指を集結させられてコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ…!!っと嬲られていた。 レツ「ひゃっひゃっひゃっひゃひゃひゃっ!!?くぅぅぅっっ!!?にひひひひひははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?ひひひひひひはははははははははははははははははははははははははははは!!?」 レツは、細い手の指も足指もしっかりとヘドロに拘束されたまま、無防備な手のひらと足裏を好き放題にくすぐりまくられている。 レツは犬歯を剥き出しにし、唾液をだくだく溢れ出させて悲痛な笑い声を上げていた。 ヘドロンナは、レツの弱点を見抜いているのだろう──執拗に手のひらと足裏だけをくすぐり続けている。 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! レツ「ひひひひひひはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?ひょはははははははははははははは!!?ひょははははははははははははははははははははははは!!?イツカっ!!!早くこいつをやれぇっ!!!」 レツが、普段は出さないような鋭い声色で叫んだ。 イツカはレツを助けたい気持ちを抑え込み、睦月と共にヘドロの身体を駆け上がった。 睦月「気をつけて。ヘドロを踏むとヘドロに足を取られる。足先でヘドロを弾いて進むのよ。いい?」 睦月のアドバイスに、イツカはただ頷いた。 イツカの視界に、お仕置きされて搾り取られたレツの身体が落ちていくのが見えた。 彩菜「し、仕方ないわね…」 彩菜がヘドロの身体に光球を放った。 彩菜「ほらっ!!ヘドロ女!私が相手よ!!」 彩菜は震える声を張り上げた。 ヘドロンナの無数の腕が彩菜に伸びていく。 彩菜「イツカ!!!こ、これ終わったら絶対ジュースとグミどっちも奢りだからねぇ!!」 彩菜は手のひらをかざして赤褐色の腕を弾いていくが、その数の多さについに囚われてしまう。 彩菜の胴体を飲み込んだ赤褐色の手は、彩菜の脇腹をぐちゃぐちゃに揉んだ。 彩菜「ぐっぴゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?あはっ!!?あへはははははははははははははははははははははは!!?揉まないでぇぇぇ!!!」 彩菜の絶叫が地上から響く中、イツカと睦月は同時にヘドロンナの脇腹あたりに手を突っ込んだ。 イツカ「どこだっ!?硬い部位!」 睦月「落ち着いて。脇腹の神経の核の場所なら…普通の人間と変わらないはず…」 睦月はもぞとぞと手でヘドロの身体をまさぐりそしてコリコリぶよぶよとした塊を捕まえた。 睦月「あったわ!そっちにもちょうど同じ高さにあるはず!」 イツカは言われた通り、睦月の手の一度同じところに手をやった。 すると…あった。 心臓のような硬くてコリコリした半液状の塊が。 睦月「いくわよ」 イツカ「あぁっ!!」 イツカと睦月が同時に、ヘドロンナの脇腹の神経核をグニョッと握り潰すように揉み込んだ。 金属質な絶叫が響き渡った。 その音は、怪異──ではなく、普通の、ごく普通の人間のメスの悲鳴に変わった。 「にゃはははははははははははははははははははははははははは!!?やめっ!!?やめでっっ!!?くるじぃっ!!!溺れるっ!!ぃひひひひひひひひ!!?くそっ!!?あっっ!!?よくもっっ!!よくも私をこんな目にぃっ!!!っっひひひははははははは!!?」 ヘドロンナは、明らかにイツカたち以外の者に向けた恨みを混ぜ込みながら叫んだ。 睦月「安らかに眠りなさい」 睦月は静かにそう言って、ヘドロンナの身体にお札を捩じ込む。お札が、くしゃくしゃと折れ曲がりながら赤褐色の身体に沈んだ時、睦月は術を唱えた。 夕立コヨミよこの哀れな魂を─── ──清らかな場所へお導きください。 赤褐色の身体が、じゅうじゅうと煙をあげて溶けていく。 どろどろどろと、熱射に負けたプラスチックのように溶けていく。 強烈な異臭を放ちながら、溶けていく。 赤褐色の哀れな女は、跡形もなく消え去った。 廃工場に、夏の夜の湿った香りが広がった。 ◯ ──伊勢ヶ野町──廃工場もとい特別研究所から近くのコンビニエンスストアにて── 「いやぁ悪いねお姉さん。こんなに買ってもらっちゃって」 イツカが両手に抱えたレジ袋を掲げて睦月に向けてニッコリ微笑んだ。袋には、たくさんのお菓子やジュースがぎっしり詰まっている。 「いいのよ。助けてもらったお礼だから」 睦月はそう言ってイツカに手のひらを向けた。 「イツカと違って太っ腹で最高!さすが大人ね!」 自動ドアを潜って現れた彩菜がもぐもぐとグミを頬張りながら言った。 睦月「言っとくけど、大人だって誰でも太っ腹なわけじゃないからね。退魔師なんてほとんどボランティアなんだから…」 「へぇ。有名な神社の退魔師でもそんなものなのか」 ベンチに座ってアイスを食べているレツがつまらなそうに言った。 睦月「そうよ。だから…今回のお礼はありがたく味わって食べること。それと…今後はああ言う場所にむやみやたらに近づかないって約束してよ?」 睦月は腰に手を当ててふんと鼻息を立てた。 イツカ「分かってるよ。けど、今回のでまた強くなれた気がするからどっかで試したいなぁ」 イツカは棒付きキャンディを咥え、握り拳を作って得意げに笑った。 睦月「だからダメだって。どうせ聞かないんだろうけど…とにかく、あの廃工場には 絶対に…絶対に近づいちゃダメよ。あそこだけは」 イツカ「あそこに行ってもつまんないから近づかないよ」 イツカはガリッとキャンディを噛み砕いた。 その後、睦月はさっさと帰ろうとしたのだが、レツに退魔師についてのことや神社についてのことを根掘り葉掘り聞かれて結局、一時間ほどコンビニの前で話し込んでしまった。 時刻は深夜を回っていた。 イツカとレツがバイクでここまで来ているらしく、彩菜はそれに乗せてもらうとのことなので睦月は彼女たちとコンビニで別れた。 三人の姿が伊勢ヶ野の夜の闇に溶けて消えた頃、睦月はケータイを取り出した。 電話帳を開き、登録してある電話番号にかける。 睦月は、電話の向こうの相手に今夜の出来事を報告した。 「先生。ええ。はい。その子たちは恐らく…"日照院(にっしょういん)の子供達"で間違いないかと。このことはまだ宮司には言ってません。報告は…しないつもりです。なんせ今回の怪異を───」 ◯ 深い眠りから目覚めた睦月は違和感に襲われた。 昨晩は疲弊していたため、神社には寄らずに自宅で眠った───はずだった。 深い深い井草の香りが漂っている。 睦月は、畳の上に敷かれた布団の上に横たわっていた。 和室だ。 見慣れた和室。嗅ぎ慣れた香り。ここは、どう見ても睦月の属する神社の境内にある一室である。 "空女ノ神社"だ。 だが─── ───色がない。 睦月の視界には黒と白以外の色がない。浅い緑色をしているはずの畳も、焦茶色のはずの天井も、煌びやかなはずの襖も全て──モノクロオムだ。 睦月の額に冷たい汗がつうと流れた。 睦月がゆっくりと半身を起こし、指先で汗を拭った時だった。 どこからか線香の香りがほんのりと漂ってきた。 同時に、床板の軋む音が近づいてくるのが分かった。 足音だ。 襖の奥。 通路。 そこから、誰かがやってくる。 足音が近づいてくるに連れて線香の香りが強くなっていく。 つっと静かな音を立てて襖が開いた。 黒い髪。白い肌。モノクロオムの和装。光る手。 背の高い女が一人、襖の向こうに立っていた。 「あっ───"山岡宮司"」 睦月は咄嗟にそう声を漏らした。 襖の向こうの女は、空女ノ神社の宮司"山岡 月夜(やまおかつくよ)"である。 モノクロオムの世界でも、異様なまでに磨かれている爪は艶々と光沢を放っていた。 ここはどこですか。 そう聞こうとしたがやめた。 馬鹿らしい。 これは夢だろう。 長い夢だ。奇妙な夢だ。 そう思った。 月夜が足音を立てずにゆっくりと睦月の方に近づいてくる。 強烈な線香の香りが睦月の鼻を突く。 「残念ね」 月夜は、静かだがよく通る声でそう言って、物悲しげな目で睦月を見据えた。 残念。 その一言が睦月の頭の中を駆け巡る。 ドクドクと鼓動が早まる。 月夜「伊勢ヶ野の廃工場へ行ったとか」 月夜がゆっくりゆっくりと近づいてくる。 睦月「どうしてそれを」 睦月があの工場へ向かったことは誰にも言っていないはずだった。 月夜は、睦月の問いかけには答えずにただ微笑んでいた。 睦月が、月夜から不気味さを感じ取っているその間に、月夜の姿は布団の上に半身を起こしたままになっている睦月の目の前まで移動していた。 月夜「どう──だったかしら」 月夜はゆっくりと屈み込み、すうっと手を伸ばして睦月の顎を摘んだ。 大きな手が睦月の小さな顎を掴み、くいと顎を上げさせる。 月夜のゾッとするような冷たい手の感触。指を侵食するほどに大きな爪の光沢と硬さ。指の表面のくすぐったい感触。それらの感触が睦月に一つの事実を突きつける。 これは夢───ではない。 睦月は咄嗟に立ち上がった。 手を、腰に忍ばせているはずの短刀に伸ばす。 だが。 それよりも早く、月夜の両手が睦月のはだけた和装の下にある"両腋の下"にズクリと差し込まれた。 「ぐぅっ!!?」 睦月の身体がぐんと仰反る。 両腋の下に、感じたこともないような冷たくて気持ちの悪い感触が走った。 月夜の長い指の指先がしっかりと折り曲げられ、腋の下の神経を捉える。 睦月は動きを封じられた。 動けば、タダでは済まない。 月夜「津軽 睦月 副退魔長。廃工場のヘドロンナはどうだった?」 月夜は、モノクロオムの艶のある唇を小さく動かした。 睦月はただじっと月夜を見つめて──睨んでいた。 睦月には分かっていた。 宮司は、怪異討伐の結果を聞いているのではない。 この女は、自分が作り出した怪異の出来栄えを聞いているのだ。 月夜「貴女の実力では倒せない相手だったはずだけれど…どうやって生きて帰ったのかな」 「その場に…他に誰かいた?」 月夜の、黒過ぎる瞳がじっと睦月の澄んだ瞳をとらえる。 睦月の脳裏に三人の女子高生どもの顔が浮かんだ。 睦月「私を…過小評価しすぎでは?私は一人で難なくあの怪異を──」 月夜「こぉーちょこちょ」 突然、月夜が捉えた腋の下をまるごとぐちょりとこちょばし揉み込んだ。あり得ない指の動きだった。 睦月「ぶぎっ!!?」 目からじゅわっと涙が滲み出て、睦月の膝がかくんと折れる。 膝立ちになった睦月を支えているのは、腋に差し込んである月夜の両手だった。 月夜「私は──往生際の悪い子が嫌い。よく知っているはず。廃工場に、他に誰がいた?」 腋の下に触れている月夜の指先に力が籠る。 睦月「さぁね」 睦月がニタリと笑ってそう答えると、月夜はほんのわずか口角を上げそして─毛 グチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョ!!!っと抉るように腋の下をこしょばした。 睦月「ぶっ!!?ぶっひゃひゃひゃははははははははははははははははははははは!!?あっ!!?いやっ!!?いひはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?ぎぁぁぁぁぁあああははははははははは!!?」 指の腹が、しっかりと腋の下の皮膚に吸い付いてグチョグチョ動き、皮膚の下の筋肉と神経とを混ぜるように刺激する。 その異様なくすぐりは、睦月に一秒たりとも我慢させない凶悪なくすぐったさを腋の下に炸裂させた。 睦月「あっっっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?このっ!!?くっ!!?力がっ!!っっひははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!ひゃーっひゃはははははははは!!?」 まるで力が入らない。拘束をされている訳でもないのに、月夜に腋の下を捕まえられて抉りくすぐられているだけで全く抵抗ができない。 睦月のスタイルの良い長身の身体が力なくぶるぶるビクビク痙攣する。 月夜「あのヘドロンナを完全に討伐できる力を持った協力者は一体誰?」 「どこかの退魔師か…怪喰みか…それとも別の何か…。教えないと…私は貴女を笑い殺さないといけなくなる」 月夜は落ち着いた声色で言って、睦月のツルツルスベスベした腋の下をグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョグチョ抉りくすぐる。 睦月「きぃぃぁぁぁぁあははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?ぃぁぁぁあああはははははははははははははははははははははははははははははははは!!?私は誰ともっ協力してないっ!」 あまりのくすぐったさに睦月はへなへなと布団の上に仰向けに倒れてしまう。 その身体の上に、月夜が馬乗りになった。 月夜「"虹の手"で拷問されたい?」 月夜が腋の下から手を抜き、その気持ち悪いくらい長い指をうねうねとくねらせた。 虹の手。山岡月夜の手は、七色の手。それは、対象者の部位をもっとも効果的にくすぐり刺激することのできる指に変形させる能力だ。 睦月「はぁはぁはぁっ…!」 睦月は、息を整えながら身構える。ほんの少しこちょばされただけなのに、腋の下にはまだくすぐったさの余韻が残されていた。 月夜「私の"虹の手"の怖さを…知らない訳じゃないでしょう」 「これで狂わされてきた人を何人も見てきたはず」 「ほら…貴女にはこれ…」 月夜の十本の指が光に包まれ変形する。 指が今よりも細く長く、そして爪の先端が尖った形状に変形した。 月夜「ほら」 月夜がふわりと両手を下ろし、剥き出しになっている睦月の豊満な丸いオッパイをワシッと撫でた。 睦月「はぅっっ!!?」 睦月の腰がグンッと浮いて、唇が突き出た。 月夜「貴女の乳房をくすぐる専用の手指爪」 「これでコチョコチョされたいかそれとも…大人しく話すか…」 月夜が、睦月のオッパイに触れるか触れないかという距離で長すぎる指をワシッワシッと曲げ伸ばしする。 睦月「はぁはぁ…し、知らないことを話せと言うのは…無理な話ね。それよりも山岡宮司。貴女の方こそ私に話すべきでは…あの工場でのことと…そしてこの…」 睦月がそこまで言いかけたその時。 月夜の爪がダンッとオッパイに降り立ち、指関節がワシリと曲げられ、一気にワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャ!!!っと這い回り始めた。 睦月「ぐぎゅっ!!?ぎぃぁぁぁぁあああああああああああああああああああはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?ひぃぁぁぁああああああああはははははははははははははははははははははははは!!?」 敏感な丸いオッパイの表面を、ツルツル艶々の恐ろしい爪が蟲のように這い回り神経を嬲っていく。 冷たくてゾクゾクするくすぐったさがオッパイを襲い、睦月は下品に手脚を振り回して笑い悶える。 月夜「貴女に質問する権限はない。少なくとも、"この世界"では」 「わかった?」 月夜は脅すように言って、あり得ないくらい細く長い指を、あり得ないくらいの滑らかな動きで操ってオッパイを引っ掻き回す。 ワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャ!!! 睦月「ぎゃっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?いひひ!!?いひひひひははははははははは!!黙れっ!!!このっ!!!ぃぁぁぁあはははははははははははは!!退魔師のぉっ!!面汚しっ!」 睦月は、月夜とそのくすぐりに恐ろしさを抱きながらも怒鳴った。 月夜「言葉遣いがなってないね」 月夜はなぜかどこか嬉しそうに微笑むと、両手を滑らせ、人差し指の長い爪の先で乳首をコチョリッと引っ掻いた。 睦月「ぎぃっっ!!?」 鋭利で突き刺すようなくすぐったさが乳首を貫いた。 なぜか。なせが乳首がぷくっと膨れ上がった。 月夜「ほぉら」 月夜はまた、細く長い人差し指を折り曲げて艶々ツルツルの爪の先で乳首を引っ掻き下す。 コチョリッ!! 睦月「にぁぁああっ!!?」 この乳首くすぐりに性的快楽刺激など一切ない。 あるのは、純度と濃度の高いくすぐったさのみだ。 月夜は、両乳首の周りを親指と中指で押さえつけ、乳首の先端に人差し指の爪の先っちょを当てた。 睦月「いっ!!?」 月夜「このままここをくすぐられるか…それとも話して楽になるか…選びなさい」 月夜がトントンと人差し指の爪の先っちょで乳首を叩く。 睦月「ヌゥッ!!?ぐぅっ!!?せ、選択肢なんてっっないっ…!」 月夜「なら…私が選んでやる」 月夜は、セットしていた人差し指を触手みたいにうねらせ暴れさせ、カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!!っと乳首を引っ掻き、 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!っとくすぐりまくった。 壮絶な刺激だった。 睦月「にょっっっ!!?んぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおほほほほほほほほほほほほっっ!!?ほっ!!?んほぉぉぉおおおおおおほほほははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?うひょひはははははははははははー!!?」 純度100%のこちょぐったさのみが爪の先っちょから乳首に注がれる。 睦月は、その凶悪なくすぐったさに長い脚をばたつかせ、淫らに顔を崩して悶えた。 月夜「乳首専用の爪でくすぐってるから…こしょぐったさで気が狂いそうでしょう」 「話す気に…なったわね?」 月夜は声を低くして言って、乳首をさらに細かく素早く引っ掻きくすぐった。 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! 睦月「あっっへへへへへへへへへへ!!?やめっっ!!?やめっっ!!?ぇぇへへへへへへへへへへへへへへへ!!?ぃぁぁぁぁああああははははははははははははははは!!?にゃは!?にゃははははははははははははははははははははははははははははははは!!?」 弛んだ目元からは涙が、口からは唾液がだくだく溢れて止まらない。 乳首からのみ送られてくるくすぐったさが徐々に睦月の全身を蝕んでいく。 そのあまりに執拗で凶暴なくすぐったさにより、睦月の乳首の先端からは白い…ミルクがびゅるるるっと飛び出した。 それでも、月夜は乳首をこちょばし続けた。処刑器具とも言えるくすぐり爪で。 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! 睦月「ぶぇぇぇええええへへへへへへはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?あひはひはははははははははははは!!?待っで!!?待っでぇぇ!!っっへへへはははははははははははははははははははははははは!!?」 睦月が長い指をわなわな震わせもがいていると、乳首から月夜の爪が離れた。 だがそのままその指は再び──腋の下へ移動した。 月夜「頑固者ね」 月夜の両手の指が睦月の腋の下にある窪んだところに嵌め込まれる。 人差し指と中指が、くすぐったい神経の溜まっているミゾに食い込むと、指先の形状が爪の短い丸く尖ったものに変形した。 月夜「頑固者へのお仕置きはやっぱり…"腋クチュ"ね。腋クチュにはこの指先がぴったり」 睦月「はぁはぁはぁっ!!かはっ!!?な、何度やっても…何も言うことなんてっっ──」 睦月の言葉を遮るように、月夜の人差し指と中指が動き出し、クチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュ!!!っと腋の下のミゾに溜まった神経をほじくりくすぐり倒し始めた。 睦月「ひぃっ!!?にぃぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?あああああああああああああああははははははははははははははははははははははははは!!?やばぃっ!!?これはっっっ!!!ぁぁあああああ!!!」 睦月の身体が、電撃を浴びせられたように激しく波打つ。 両腋の下に捩じ込まれるくすぐったさの暴力が、睦月の心身から反抗心と生命力を削ぎ落としていく。 腋の下のミゾにピッタリとフィットした指先は、しっかりと神経を捉えたままクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュこねていく。 睦月「ぎぃぁぁぁああああはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?かへっ!!?あへっ!!?へっへへへへはははははははははははははははははははは!!!くるじぃっ!!?いっ!!?ぃぁぁぁあああははははははははははははははははははははは!!!」 指が動いて指先が神経をクチュクチュほぐすたびに睦月の腹の底から捻れたような悲痛な声が上がる。 睦月の目はもうほとんど──うつろだった。 月夜「そろそろ…気が変わった頃かな」 月夜は、涙と鼻水とヨダレでぐっちょぐちょのべたべたになった睦月の顔を片手でがしりと掴んだ。 睦月「がへっ!!?はぁはぁはぁっ!!」 ぐったりとした睦月は朦朧とする視界の中に浮かぶ、月夜の冷たい顔を見つめた。 睦月「言うことは…一つ…」 睦月が口をパクパクさせると、月夜は目を見開いた。 睦月「このっ──外道──」 月夜の長過ぎる人差し指が睦月の唇に押し当てられ言葉が遮られる。 「しーっ」 月夜はそう囁いて首を横に振った。 月夜「話すことがないなら…もうお前を生かしておく必要はないね」 「──処刑だ」 月夜は、両手をすうっと自分の身体の前まで移動させると、またその手を変形させた。 その手は大きくて、ツルツルの爪が程よく長くて、指も超長い…見ているだけで悶絶しそうになるような手だった。 月夜「私のくすぐり処刑は…くすぐったさを体外に逃さない。封じ込めて、蓄積させて狂わせ殺す」 「言い残す言葉は?」 月夜が、その大きな手に揃う長過ぎる指をワキワキと曲げ伸ばししながら言った。 冷酷な、処刑宣告が睦月の身体を貫く。 昨夜、命からがら怪異に勝利したかと思えばまたも命の危機に晒されている現実に睦月はなんだか笑えてきた。 しかも今回は──助かる見込みは零。 確実にこそばし殺される。 生きるか死ぬかではない。 死ぬのだ。 だったら── 睦月は力強く月夜を睨みつけた。 「上手くいくと思わないことね…あんたがやってきた事…殺人だけじゃない…血のつながった家族への……………なにもかも… きっと………それを許さない人が現れる いえきっと既に──」 睦月の言葉が終わらないうちに、月夜の白くて大きな手が睦月の口を塞いだ。 「むっ!?」 しっとりとした手のひらの感触が睦月の口を完全に覆う。 「全ては山岡のため」 月夜はそう囁くと、口から手を離し、入れ替わりにそのモノクロオムの艶やかな唇をぶちゅっと──睦月の唇にくっつけた。 睦月「っ!?」 睦月の顔が引き攣る。 月夜は長い舌を使って睦月の唇をこじ開けて舌を入れた。 ぎょろりと、月夜の目玉が睦月の怯える瞳を捉えた次の瞬間── 「コォチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ〜!!」 月夜の口から発せられた奇妙なコチョコチョボイスが睦月の体内に注ぎ込まれ、同時に超絶くすぐったそうな指と爪が睦月の腋の下、横っ腹、オッパイ、腹部を縦横無尽にくすぐり這い回った。 睦月「ぶむっ!!?むぅぅぅぅぅぅ!!?むぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!?おっっほほほほ!!?ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!?ぉっっひょほほほほほ!!!ごほっ!?ゴフッ!!?ぉぉぉぉぉおおおお!!?」 睦月の目玉がカッと大きくひん剥かれ、唸るような笑い声が喉から込み上げる。 だが、その笑い声が外部に出ることはなく、月夜の口内に飲み込まれてコチョコチョボイスへと変換されまた注がれる。 月夜は、睦月の体内から溢れ出す笑い声と生命力をズズッと吸い上げ、それさえもコチョコチョボイスに変換して睦月の体内に注いだ。 コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! 睦月「むぉぉぉおおおおっ!!?ぎょぉぉぉぉぉぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?じぃっっっ!!?ぃっ!!?くるじっっ!!?ぃ!!?んぉぉぉぉぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああははははははははは!!?」 腋の下、乳首、オッパイ、脇腹、お腹に凄まじい殺人的くすぐったさが炸裂し続け、それらが体内に溜め込まれていく。 睦月の唇からは、ダラダラと唾液が泡となって溢れ出していた。睦月の瞳はギョロギョロ動いて焦点が定まっていない。 「コォチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ〜!!!」 睦月の叫びをエネルギーにした月夜のコチョコチョボイスが何度も何度も睦月に注入される。 笑えば笑うほど、身体が苦しくなる。 命が吸い取られていく。 睦月「むっっっぉぉぉぉおおおおおおほほほほほほほほほほ!!?ぶほっ!!?ほっ!!?ぉぉぉおおおおお!!?っっひひひひ!!?ぉぉぉおおおおほほほほほほほほほほほほほほほ!!?んっっっ!!?んんんんんっっっ!!?んぉぉぉぉおおおっっ!!?」 睦月は抗っている。 無駄と分かっていても抗っている。 命を吐き出してたまるかと抗っている。 だが。 月夜の手が睦月の引き締まった脇腹に伸び、その異様に長い親指でぐちゃりとひと揉みしたその瞬間── 睦月「むぎゅっ!!?ぎょぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!?」 甲高い悲鳴が響き渡り、それを月夜はじゅぼっと吸い上げた。睦月の身体が、月夜の唇に吸われるように持ち上がる。 月夜は大きな両手で睦月の頭を抑え、ゆっくりと唇と唇を離した。唾液がねとりと糸を引く。 月夜は、口周りにまとわりついた睦月と自身のものの混ざった唾液をべろりと舐め上げそれから、どこかつまらなそうな顔をし、股間のあたりを摩った。 「あぁ。少しばかり熟し過ぎているね」 月夜はそう言って、ぐしゃぐしゃに乱れた布団の上で伸びている睦月だったものを見つめた。 睦月の目は、とてつもなく恐ろしいものを見た状態のまま硬直していた。 「上手くいくと思わないことだって?睦月。一体誰が…私を止められると言うの。私を止められるような人間は、私を視界に入れていない。私を止める者は愚か者だけ」 月夜は、動かぬ睦月の耳元に向かってそう囁いた。 ◯ 「ちょっとちょっと!見た!?ねぇ!」 彩菜がドタドタと騒がしい足音を立てて教室に入ってくるなりイツカとレツにケータイの画面を見せた。 「落ち着きなって。実況掲示板の話でしょ。もう何回も見たから」 イツカはモグモグとおにぎりを頬張りかったるそうに答えた。 彩菜「何その反応つまんなー」 「ヘドロンナの実況あんなに大反響だったのに」 彩菜は頬を膨らませて空いていた椅子に座った。 彩菜「このままならさ、もしかして私たち 心霊を仕事にして生きていけるんじゃない!?」 彩菜が目を輝かせるがレツが首を横に振った。 「そんなの出来るわけないだろ。それで食ってけるのはごく一部だ。心霊作家とか、ホラー映画監督とか…あとは…ライターとかな」 彩菜「怪談を話す仕事もあるみたいじゃん」 レツ「ばーか。それも一部だろ」 彩菜「はーあ。早くそういう世の中になんないかなぁ」 「そしたら就職しなくっても良いのに」 彩菜は脚を組んでため息をついた。短いスカートからむっちりした白い太ももが露出する。 レツ「夢見てる暇あったら次のスポット探してくれよな」 彩菜「探してるってーあ、ほらここなんかどう?」 彩菜はさっそくケータイの画面をイツカとレツに見せた。 口をもぐもぐさせた二人が小さい画面を覗き込む。 彩菜「T市の商店街に出る子供の霊!」 「ここで決まりでしょ!」 彩菜は勝手にそう決めてケータイを閉じてしまった。 ──完──

Comments

怪異を人工的に作ろう!なんて普通は思いませんもんね…! 人工的に作られたからこそ、怨みは強く、その怨みは生者を飲み込んでいくのです…! ほんと、倒せて何よりですよね! イツカたちが関わっているとされる"日照院"が組織なのか、誰かの名前なのか…そのあたりはですねまた別の作品でどーんと明らかにさせて頂きますのでどうか頭の片隅に置いていただけると幸いです! そうですね…!三人組はどう見ても単なる人間ではありません。三人が三人とも異質です。そんな三人を気に入って下さって嬉しいです!ありがとうございます! 彼女らが生きていればもう30を超えていますね…時の流れは残酷です。そうは言っても、退魔師とかなら40、50迎えても若くてピンピンしているのでむしろ元気いっぱいの年頃かも知れませんね…! 彼女らの再登場はまだ分かりませんが… ほんわりと期待して頂けると幸いです! 月夜のくすぐりは私も一年ぶりくらいに書いたのですが、やっぱり書きやすくて最高でしたね…! 思えば、生前の月夜のくすぐりをしっかり書いたのはこれが初めてだったかも知れません。と言っても、月夜のオーラは亡者みたいだし、やってることも怪異と変わらないのですが…! 月夜が作った怪異がヘドロンナだけとは限りませんからね…確かに今後も現れる可能性は大いにあります! 最後のT市商店街の霊はおっしゃる通り、あの子の霊です! 今作は、『擽怨』リメイクに繋がる作品になったので最後もバッチリ繋がっております! まさかあの話の前日譚を書く日が来るとは思ってもいませんでした…! 今回もお付き合い頂きありがとうございました!

Kara

人が恨みを持って死ねば怪異となる…のならば、それを人為的に生み出すこともできるということはきっと(´・ω・`)さんもお気づきになられていたのではないでしょうか… でも、そんなことは考えるだけでも悍ましい。だからそういった考えには蓋をします。普通は。 でも月夜という人はこうして簡単に蓋を開けてそれを実行してしまった。恐ろしいですねー…。何気に殺害人数とかもこれ世界のシリアルキラー並みです。 仰る通り、このまま研究が続けていたのなら、或いは誰かが研究を引き継いでいたのなら、大怨霊の生成も可能になっているかもしれません。 確かに、ヘドロンナは最低でも怨霊以上の力はありそうですね…!ヘドロンナを退魔した睦月がいなくなったのでもはや測定できる人はいないのですが…月夜がデータとしてまとめているかも知れません。 少なくとも、同じ液状怪異でも想定された退魔方法で退治されたあぶら姫よりは厄介なことは確かでしょう! そうですね…!睦月が負けたのは紛れもなく情報の力が足りなかったからです。 しかしまさかここまで特異な怪異だとは予測もしていなかったでしょう…。 睦月はあの空女ノ神社の副退魔長ですから、単なる怨霊クラスなら相手どれるはずですから…。 月夜登場の描写は『擽怨』最終話のあのシーンを思い出しながらあえて読み返さずに書きました。 モノクロの世界で足音が近づいてくるのは、もはや負け確定演出みたいなものですね笑 何を考えているのか分からない。生者を獣のように捕食する。当たり前のように人を殺す。この時の月夜はまだ生きていますが亡霊以上に悍ましいですね。 月夜によるくすぐりシーンというのは、本当に書いていても筆が止まりません笑 勝手にすらすら文章が浮かんでくるんですね。なのでとっても楽です。でもそこがちょっぴり怖い…! 月夜というキャラクターはまだ、くすぐり足りていないのかも知れません…! さて今作は結局のところ『擽怨』リメイクに繋がる作品となりました。 月夜の恐ろしさもここにきて盛り返していけたかな?というところです! とはいえ本番はリメイク2作!そこで暴れてもらいましょう! 新しく存在が明かされた三人組もどう既存のストーリーに影響してくるのか…しないのか…ご期待ください。 たっぷりの感想ありがとうございます! やる気が出ました!!

Kara

怪異が人工的に作れるなんて想像すらして無かったので、ヘドロンナの正体には無茶苦茶驚きました。かなり手強い相手でしたが、何とか倒せて良かったです。 女子高生三人組は日照院という組織に所属しているようですね。初めて聞く名前ですが、退魔師たちとは別勢力なのでしょうか?敵では無さそうですが、完全な味方という訳でも無さそうですね。 この三人は特殊能力を持つ普通の女子高生って感じで、これまでホラーシリーズに登場した女子高生キャラとはまた違う魅力がありますね。もしこの話の後も生きていれば、2022年現在では30代前半だと思いますが、今後のホラーシリーズに登場する事はあるのでしょうか。今回でこの三人の事を好きになったので、また機会があれば活躍するところを描いて欲しいです。 月夜のくすぐりは久しぶりに見ましたが、本当に悍ましいですね。この時はまだ人間の筈なのに、怪異以上に怪異らしいです。睦月をくすぐり殺したシーンは、クリーチャーが人間を捕食するような感じで凄く怖かったです。彼女が作った怪異はヘドロンナ以外にもいそうですし、いつか退魔師たちの前に姿を現すかもしれませんね。 この話の最後に出た、T市の商店街に出る子供の霊って擽怨第1話に登場した奴ですよね。この話が擽怨に繋がるのかと思うと、少し感慨深い気持ちになります。この話はホラーシリーズの前日譚という感じで凄く面白かったです。素晴らしい作品を読ませて頂きありがとうございました。

reo

【怪異生成計画】 ちょっと待って、これ最悪じゃん… 何も知らない人間に怨みを持たせて死なせれば、望む能力を持った怪異を幾らでも人為的に生成出来てしまうかもしれないって… こんな計画は一生闇に葬られていなければ大変なことになりますよ! 飛躍とは言い切れないかもしれない最悪の想像をしてしまいます……大怨霊の量産……とか、理論上は可能になるかもしれません。 このヘドロンナの時点で既に、少なくとも怨霊級の力はありそうですよね。 実験によってより精度の高い手順が確立されていないことを祈ります。 まだヘドロンナは弱点さえ分かったら退魔できましたが、この計画と発想は…突き詰めたら危険過ぎます。 こんなこと絶対にあったらダメですよ⚠️ 「怪異を退魔するには怪異の情報が必要」というのは基本ですが、津軽睦月副退魔長の実力は強かったですし、情報収集が足りなくて負けてしまった所もあると思いますね。 山岡月夜"宮司"は、とんでもないですね。 満を持して空女ノ神社宮司時代の山岡月夜が出現したその描写は、ホラー過ぎます。 そしてこれは、月夜がどんな存在なのかを睦月だけでなくこちらも既に知っているからこその恐怖でもありますね。 何が近づいて来ているのかを察することが出来るからこその怖さ。 何が凄いって、今まで沢山の実力者がいてその沢山のくすぐりだって、ちゃんとヤバいモノとして描かれてきた中で、月夜宮司のくすぐりをそのヤバいモノより更にヤバいモノとして説得力を持った描写で出せることですね。これこそ"底無"です。 感想が矢継ぎ早に捲し立てるように勢い良く溢れ出て来ました。 とても面白かったです。 ありがとうございました。

(´・ω・`)


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