【F/M】青年怪盗はくすぐり邸に沈む#1
Added 2024-08-12 13:50:34 +0000 UTC青年怪盗は恐怖のくすぐり邸に沈む#1 (F/M, FF/M) "乱太"とは世間を騒がす大怪盗である。 お宝あるところに乱太あり。そう言われるほどに、乱太は日本各地のお宝を次々に掻っ攫っている。 始まりは、大富豪の大豪邸の地下のコレクションルームから宝石が盗まれたことからだった。 そこから乱太は輸送中の純金花瓶を盗んだり、有名テーマパークに収蔵されている世界に一つの王冠にまで手をかけ、つい先日は、美術館から数億円の価値のある絵画を盗んでみせた。 誰も乱太を止められない。 誰も乱太の正体を知らない。 素顔を覆うマスクの下は美青年であると誰かが言った。 世間に明らかになっている真実は──ただそれだけだった。 ◯ 怪盗"乱太"はその夜、見晴らしの良いビルの屋上から、ターゲットの眠る"夕日野邸"を双眼鏡で観察していた。 夕日野邸──"夕日野 野雪(ゆうひののゆき)"が支配する邸宅。夕日野とは、日本を代表する巨大警備会社を運営する一族である。 夕日野の運営する警備会社に属する者は全員が女性で、質の高い監視カメラや防犯グッズを製造しており、卓越した警備力を誇る警備員を育成している。 だが、乱太がこれまで盗み出したお宝を守っていたのは他でもなく、その夕日野のメーカーが作り出した防犯グッズや育成した警備員たちだった。 夕日野からすれば、乱太の活躍は会社の信頼に関わる大きな問題である。夕日野が乱太のことを恨んでいるのは、乱太自身がよく分かっていた。 だがそこで引き下がる乱太ではない。 夕日野グループの現代表である夕日野 野雪は今年で20になる乱太とそう年齢が変わらない。たいそうな美人でありよくメディアにも露出しているが、乱太は野雪が嫌いだった。 野雪は生まれながらの才女であり、恵まれた環境で育った根っからの優等生だ。 野雪は犯罪者を許さない。どんな理由があろうとも、罪を犯した者には容赦せず、その圧倒的な権力からある法律をも変えてしまった。 犯罪者の社会復帰を許さない。犯罪者の罪をこれまでよりも重くする。そんな法律が通ってしまった。 貧しい環境で育った乱太からすれば、そんな野雪の失敗を一度も許さない思想は好きになれない。現に、野雪はその思想を押し通して犯罪者を締め付けている。 野雪に一泡吹かせてやりたかった。 乱太と同じような志を持つ怪盗はこれまでに何人もいた。彼らも、夕日野邸に挑んだが、帰った者は一人もいない。 捕まって刑務所送りにされた…という話も聞かないし、本当に夕日野邸に吸い込まれてしまったように出てこない。 夕日野邸は言わば、盗人たちにとっての最大の壁。夕日野邸を攻略すれば、日本のみならず世界中のどんな場所にあるどんな物も盗むことが出来る…そうも言われている。 乱太は、怪盗として頂点に登り詰めるため、そして野雪の地位を血に落とすため、夕日野邸に挑む。 警備や防犯を生業としている夕日野邸から何かが盗み出されたとなれば、夕日野グループの信頼は完全に失墜する。 そうすれば多少は世論も動くかもしれない。 乱太が狙うのは骨董品でもお宝でもない。 乱太が目をつけているのは、夕日野邸にある"全ての鍵"だ。 全ての鍵を盗み、全ての防犯プログラムを解除した上で、乱太はそのまま夕日野邸からずらかる。 敢えて美術品や宝には手をつけない。 鍵を盗み、プログラムを解除するということは、夕日野グループの防犯システムが大したものではないと証明することになる。 同時に、自分はなんでも盗めるんだ、と世間に知らしめることにも繋がる。 数多の警備員たちのいる森を抜け、ほとんどお城みたいな住居──夕日野邸本館に入り込むのは、乱太にとって容易いことだった。 女警備員も一人一人を相手すれば勝ち目はないが、見つからなければなんてことはない。 乱太は監視カメラの死角を選び、こそこそと足音も立てずに館の中を突き進む。 大きな階段を上がったところに、夕日野 野雪の肖像画がでかでかと展示されていた。 真っ白い肌。黒く長い髪。絵に描いたような美麗な顔。一切の誇張がされていない野雪の顔が描かれている。 自分の顔をこんなに大きな絵画にして貼り出すなんてかなりのナルシスト女だ──乱太は、ピッキングツールで絵画の隅っこを引っ掻いてやった。 乱太はまず、たくさんの鍵が収められている守衛室に向かった。 守衛室は肖像画のある広場からそう遠くなく、歩いて三分ほどで到着した。当然、守衛室の前には警備服を着た二人の女が立っていた。 二人とも背が高く、美人だが見るからに強そうだった。細身の乱太が立ち向かって勝てる相手ではない。 さてどうするか。 物陰に潜んでいる乱太が守衛室をどのようにして攻略するか頭を回転させていたその時。 突然、乱太の耳に不愉快で、聴き過ごせない小さな音が聞こえた。 それは、ノイズ音のような濁った音だった。 乱太は息を殺し、耳をそばだてる。 「……チョ……コチョ…」 恐らく館内に連絡事項等を伝えるために設置されているスピーカーからノイズ混じりに何かが聞こえている。 「チョ……コチョ…コチョコチョ…」 それは女の声のようだった。 だが、言葉の意味は分からなかった。 まさか、これは何かの暗号で、もう侵入は勘づかれているのか。 乱太は拳を握りしめる。 だが、守衛室の前を守っている二人の長身女がその放送に反応するそぶりを見せていない。 「コチョコチョ…コチョコチョ…コチョコチョ…」 スピーカーから流れる女の奇妙な歌声がはっきりとしてきた頃、突然、乱太は閉じている腋の下にむずりとした厭な感覚を感じた。 ──なんだ!? それはまるで、他人に腋の下を触られた時のような不快感。いや、くすぐったいという刺激のようだった。 当然、乱太の腋には誰も触れていない。 なのに───。 「コチョコチョコチョコチョ…コチョコチョ…」 スピーカーから流れるコチョコチョコチョコチョという歌声を耳にしていると、乱太は腋の下にまたくすぐったさを感じた。今度は、足裏にも。 ──これは、催眠音声というやつか!? コチョコチョという奇妙な囁き。そしてそれを聞いてから生じた身体の異変。乱太は、これ以上この歌声を聞いてはならないと判断し、耳を塞ごうとした。 だが───。 両耳を塞ごうとした両手首がガシリと何かに掴まれた。 「へっ…!?」 生白い大きな手。長い指。艶々に塗られた爪。 それは、守衛室の前を守っていた長身の美女警備員二人の手だ。それが、乱太を挟むようにして乱太の両手首を捕まえていた。 コチョコチョソングに気を取られていて、二人が近づいてくる気配などまるで感じていなかった。 乱太は気づく。気配を感じさせないところまでがこの放送の効力なのだと。 乱太は咄嗟に両手首を引き抜こうとするが、二人の女の力は強く、細身の乱太では敵わなかった。 そして。 「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ…」 激しくなったコチョコチョソングがフリーの両耳に容赦なく注がれる。 「ぐぁっ!!?くふぅ!!?くふふふふふふふふっ!!?」 スピーカーから流れる特大のコチョコチョソングは乱太の鼓膜を揺さぶり、脳を震わせ、神経をムズムズとくすぐる。 「ぶくっっ!!?くくくくっっ!!?くはははははははははははははははははははははははは!!!なんだっ!?これはっっ!!」 音声を聞くだけでくすぐったくなるという現象にも理解が追いつかないし、そもそもどうしてくすぐったい目に遭わされているのかも乱太には分からない。 それでも乱太は抵抗を止めない。 乱太とていざという時に抵抗できるくらいのトレーニングは積んでいるのだ。 だが、どれだけ暴れてもくすぐったさと大人の女二人の力には敵わない。 「抵抗を確認」 「強制笑わせプログラム実施」 二人の女は機械音声のように冷たい口調でぼそりと告げると、突然、ぬぅっと空いている手を乱太の身体──腋の下の辺りに伸ばした。 そして、その長い指で腋の下のあたりをコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!!っとまさぐるようにこそばし始めた。 「ぶひゃっ!!?っっひゃひゃひゃははははははははははははははははははははははははははは!!?ぃぁぁぁあはははははははははははははは!!?なんだっ!?なんだぁぁぁぁぁあああああっ!!?」 上半身の両サイドを襲う、強烈なくすぐったさと脱力感により、乱太の身体からフニャフニャと力が抜け、乱太は膝をついた。 乱太が膝をついても、二人の警備員は乱太を挟み込むようにして指先を細かく動かしワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョとくすぐりを続ける。 「ぎゃははははははははははははははははははははははははははは!!?はっ!!離せっ!!やめろっ!!!いやぁぁぁぁあはははははははははははははははははははははははははははははは!!!なんだっっ!!?うひゃぁぁぁあははははははははは!!!」 他人の指先と爪の先が敏感な腋の下のあたりに触れているというだけでも、くすぐったがり屋さんの乱太にはキツい状況だ。 それなのに、二人の女はあろうことか乱太の腕を無力化した状態で腋の下のあたりをコチョコチョくすぐり続けてくる。 息が激しく乱れ始める。 ワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! 「ぐふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!ひひ!!!ひひひははははははははははははははははははははは!!苦しっ!!?いひひひひはははははははははははははははははははははは!!!」 逃げられない乱太はせめてもの抵抗として、細い身体をぐねぐね左右にくねらせたりするが、どれだけ暴れても、二人の女の白い指はぴたりと腋の下のこちょばいところに吸いついたまま離れず、コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ神経を弄び続ける。 「っっはははははははははははははははははははははははは!!い、いっっいい加減にっっ!!!しろっ!!!っっひはははははははははははははははははははははははははははは!!うわぁぁぁぁぁあはははははははははははははははははははははははははははは!!?」 どう考えてもこのくすぐりはじゃれ合いやおふざけで受けるくすぐりとはかけ離れたものだった。 女二人の指遣いとその執拗さが、人を苦しめるためだけのくすぐりであることを証明していた。 乱太は激しく息を切らし、時には咳き込み、慣れることのないコチョコチョ攻撃に悶え続けていた。 二人の女の白い指が器用に滑らかに曲げ伸ばしされ、爪の先や指の先が腋の下やその近くの神経を引っ掻くたび、乱太は顔を真っ赤にして絶叫する。 乱太のマスクが床に落ち、乱太の綺麗な顔が露わになる。 「なんだ。噂通り可愛い顔をしているじゃないか」 突然、背後から低い女の声がしたかと思うと、乱太の死角からにゅうっと大きな手が伸びてきた。 やや浅黒い大きな手。異様なくらい細く長い指。綺麗な爪。それが、乱太の鼻と口とを容易く覆い隠す。 「むっっ!!?」 女の手のひらから薬品のような匂いがする。 「さぁ…あとで会おうね」 ずくり。 背後から、右脇の下に手が差し込まれる。 細く長い指が腋の下の絶対に他人に触れられてはならない箇所にずるりと入り込んだかと思うと───。 ゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョゴチョ!!!っと腋の下の奥にある神経を嬲り尽くし始めた。 「むぐっっ!!?ぐっっ!!?んむぉぉぉぉおおおおおおおおおおおほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほっっ!!?ごほっ!!!おっ!!?おっ!!?んぉぉおおおおおおっっ!!?」 さっきまでのこちょぐりが可愛く思えるほどの超暴力的で悪魔のようなくすぐったさが脇の下に炸裂した。 乱太はそのくすぐったさに身を震わせ、悶え声を搾り上げたのと同時に、女の手のひらから香るその薬品のような匂いを吸い込んでしまった。 瞬間、乱太の意識はぷつりと切れた。 ◯ 乱太の目覚めは最悪だった。 乱太は素っ裸にひん剥かれ、両腕を二の腕が耳につくようにバンザイさせられたまま固定させられていた。また、両脚もぴんと揃えて伸ばしたまま足首に枷をはめられている。 乱太は、奇妙な台の上で身体をIの字型に拘束されてしまっていたのだ。 さらに、乱太の素肌はヌルヌルのテカテカに照り輝いていた。 恐らく、気絶している間に表皮にオイルか何かを塗り込まれていたのだろう。 「おはよう」 白熱灯だけが光源として機能しているその薄暗い部屋の奥から、さっきの女の低い声がした。 部屋の奥の闇から現れたその女は、相当な長身で、口に煙草を咥えていた。 耳にはたくさんのピアスが付けられている。 「さて…気分はどうかな」 女は低い声で言って、細く長い指で煙草を挟んで口から離した。 あの指。あの、異様に細く長い指がさっき乱太を瞬殺したのだ。 「お前は誰だ」 乱太は女を睨んだ。 「質問するのはそっちじゃない。こっちの方だ。君の本名と年齢を教えな」 女は言って、まただるそうに煙草を咥えた。 「話すとでも?」 乱太が強がると、女はやれやれと言ったように細くて薄い眉を上げた。 「良いことを教えてあげよう。これからここに…夕日野グループの社長…夕日野 野雪が来る。私が言うのもなんだけど…彼女はかなりのサディスト…いわゆるドSだ」 女は不味そうに煙草を吸い、ふうと煙を吐き出す。 「狙っていた君を捕らえた彼女はきっと…これまで以上にドギツイ拷問とお仕置きを君に課すだろう。私と、彼女自身の指でね」 女はそう言って、指をくねくね動かして見せた。細く長い指は骨がないように柔らかく蠢いていた。 「ご本人と会えるなら光栄だな」 「そうも言ってられないと思うけどね。なんせ彼女は…拷問マニアであってプロじゃない。加減を知らないから…やりすぎる」 「さっきから何が言いたいんだ」 「さっきので分かったが君はかなりのこちょばがり屋さんだ。そんな君がこれから野雪社長と私…コチョコチョマスターの拷問とお仕置きを受けたら壊れるのは確実ということ」 「コチョコチョマスター?」 「そうだ。"コチョコチョマスターユイ"私はそう呼ばれてる」 「くだらない通り名だな」 「そうだな。けどそんな私に心身を破壊された者がもう1004人もいる」 ユイは苦笑しながら煙草を灰皿に押し付けた。 「さっきはびっくりした…まさかくすぐりなんか使ってくるとはな。けどもう問題ない。お前たちのそのふざけた方法で、俺は負けない」 さっきのコチョコチョ攻撃は予想外だった。だが今回は違う。それにさすがに長時間やられれば刺激にも慣れるに決まっている。乱太はそう睨んでいた。 「私が言いたいのはね、早いところ情報を吐いて楽になれということ。彼女が到着したらもう…後には引けない。私も雇われの身だからね。彼女の命令には全て従う」 「へぇ…お姉さんあんたは俺を心配してくれてるんだな」 「まぁそんなところだよ。君は結構タイプだ。もし取引に応じるなら…野雪社長からうまい具合に庇って連れ帰ってあげても良い。それから…毎日快楽漬けの日々なんてどうかな。私はコチョコチョ以外も"巧い"から」 コチョコチョマスターユイはまるで男性器をシゴクかのような手つきをして見せた。 「笑わせるな。あいにく…年上は好みじゃない。それに…お前たちみたいな奴らと一緒にいるなんてごめんだ。それなら狂った方が良いね」 乱太はそう吐き捨てた。 「そっか。残念。せっかく可愛がってやろうと思ったのに」 ユイはそう言いながら、オイルまみれの乱太の腹筋部に手を置いた。 ユイのスベスベした大きな手のひらが腹筋に触れただけで、乱太はむずむずとした不快感を感じ、僅かに身体を力ませた。 「これだけ教えておいてあげよう──」 コチョコチョマスターユイが乱太の耳元に口を近づける。 「──くすぐり地獄に逃げ場はない」 ユイはそう囁いて、腹筋部に爪を立ててぞぞっと爪を滑らせた。 「ぬっっ!!?」 ピクンと乱太の腰が浮く。 ゾクゾクと背筋が震え、乱太の口角がぐいと吊り上がった。 その時。 ドアが開いた。 部屋の奥の闇から、真っ白い肌の女が現れた。 白い肌。黒く長い髪。真っ黒いノースリーブのワンピースを着た夕日野 野雪が姿を現したのだ。 「ご機嫌よう。怪盗乱太さん」 野雪はその綺麗な目を細めて不気味に微笑んだ。 ◯ 「貴方はこの邸宅の構造を把握していましたね。その情報はどこから仕入れたのですか?」 夕日野グループの若女社長──夕日野 野雪は上品な口調でそう問いかけた。 乱太は口を閉ざしたままじっと、憎き野雪を睨んでいた。 「お話になられないとそういうことでしょうか」 野雪は両手をぱんと合わせ、すりすりと手のひら同士を擦り合わせた。野雪の手は大きく美しく、指もスラリと長くてピアニストのようであった。爪には、黒く長いネイルが施されている。 乱太は答える代わりに、野雪をさらにキツく睨みつけた。 野雪は苦笑するようにわずかに鼻から息を吐いた。 「では。ユイさん。手始めにこの方に…コチョコチョの怖さを教えて差し上げてください」 野雪から命令が下ると、コチョコチョマスターユイはだるそうに返事をし、準備運動のように長い指をグーパー曲げ伸ばしし始める。 「さて…じゃあ…ご招待しようか…くすぐり地獄の渦へ」 ユイの細く長い指が、今度はうにょりうにょりと触手みたいにうねり始める。 「自白する気になったのなら…早いうちにそうすることだよ。後半になってからじゃもう手遅れだから」 ユイの両手が、指先で宙を歩くようにして乱太に近づいてくる。 「余計なお世話だ。そもそも俺は…こんな手に苦しめられることはない!」 「へぇそっか…そっか…」 まるで空気をコチョコチョくすぐるような指の動き…それを見ていると乱太はなんだか腋の下やその周辺にくすぐったさを感じるような錯覚に陥っていた。 乱太が目を逸らすと、10の指はその視線の先に回り込んできた。 うにょうにょコチョコチョ…見せつけるように指は蠢いている。 むずむずくすぐったくて、乱太は目を閉じようとした。 だが。瞼を閉じれない。 野雪が無理やり、目をこじ開けさせていたのだ。 「なっ!?」 「ほらほらよぉくご覧くださいね。コチョコチョマスターユイさんのエアくすぐりを」 野雪のその上品な口調からは想像もつかないほど乱暴な力で、乱太の瞼は開いたままにされている。 乱太の視界に、コチョコチョ蠢く指が強制的に映し出されている。 「コチョコチョ蟲さんコーチョコチョ…」 ユイが奇妙な歌を口ずさみ始める。 同時に、乱太の腋の下あたりの神経がずくっと震えた。 「たーたーいーてーつーねって〜…」 ユイが、乱太の腋の下の近くの皮膚を軽く叩くように触り、さらにつねる真似をする。 「皮膚を這い上がって〜…」 コチョコチョマスターユイの十本の指が、両の腋の下付近を歩くようにして脇の下に這い上がってくる。 乱太は息を飲み、歯を食いしばって刺激に備える。 思わず、ガラ空きの腋の下を閉じようとしてしまう。 「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョッ!!!」 ユイの指先が乱太の腋の下をめちゃくそに掻き回し始めた。 「ぶはっっ!!?ぶっひゃひゃひゃはははははははははははははははははははははははは!!?しまっっ──くそっ!!?っひぁぁぁぁあああああああはははははははははははははははははははははは!!?はっ!!?うわぁぁぁぁあははははははは!!?」 想像を遥かに超えたくすぐったさにより、乱太の顔の筋肉は一気に弛み、腹の底から笑い声が放出された。 ガシャンッと大きく拘束具が鳴った。 「コチョコチョコチョコチョっ…コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョっ…コォチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ…!!」 ユイは緩急をつけた奇妙なリズムでコチョコチョと歌い、指を踊らせる。 「ぎひひひひひはははははははははははははははははははははは!!?やめっっ!!やめろっっくそっっ!!?いひぃぁぁぁぁあああははははははははははははははははははははははは!!!ひぃぁぁぁぁあははははははははははははははははははは!!!」 即座に腋を閉じたくなるようなくすぐったさ。それなのに、ワキを閉じることは許されていない。 不規則で乱暴…だが的確にくすぐったいポイントを突いてくる指先に乱太はただ笑うしかなかった。 「どうですか?お話しする気に…なりました?」 いつの間にか近くのパイプ椅子に脚を組んで座っていた野雪が問いかける。 「う、うるさぃっ!!!こんなものでっっ!!白状するかっっ!!っっはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 くすぐりの苦しみは既に理解し始めていた乱太であるが、くすぐりなどというふざけた方法で屈するのだけは御免だった。 「うふふ。そうですか。なら…"本格的に"コチョコチョしてあげてください」 乱太は一瞬、耳を疑った。 それではまるで、これまでのコチョコチョがお遊びであるかのような意味に聞こえたのだ。 だがそれは実際、その通りだった。 腋の下をコチョコチョ蠢いていたユイの指の関節がワシリと曲げられ、皮膚に爪が突き立てられる。 「ちょっ!!?」 ゾクリと寒気を含んだくすぐったさが脇の下に添えられる。 「コチョコチョ蟲さんコーチョコチョっ。たーたーいーてーつーねってー…」 爪を立てたまま、ユイが恐ろしい歌を口ずさみ始める。 乱太の額からだらだらと冷や汗が溢れ出す。 「皮膚を這い上がって〜」 ユイの指先に僅かに力がこもり、それは一気に脱力して───。 「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョォォー!!」 「ぐぎっっ!!!ぎぃぁぁぁぁああああああああああああああああああああはははははははははははははははは!!?ちょっ!!?なっ!!!?なんだこれぇぇぇええええええ!!!っっへへはははははははははははははははははははははは!!!うひゃひゃっ!?うひゃぁぁぁあああははははははは!!?」 さっきまでとは格段にレベルの違う、さらに濃度の高いくすぐったさが神経に直接刻み込まれた。 乱太は拘束されていることも忘れてワキを閉じようと暴れ、台の上で激しく跳ねた。 ユイの爪の先は、暴れまくる乱太の脇の下にぴとりと吸い付いたまま離れず、コチョコチョコチョコチョコチョコチョ神経を掻き立てるように蠢き続ける。 「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!?コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ?コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!コーチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョぉーん!」 「ぎひははははははははははははははははははははははははははははははは!!?やめっっ!!?くはっ!!?はっっはははははははははははははははははははははははははははははは!!!なんだっっ!!?これっ!!?ぃぃぁぁぁぁあああああああああはははははははははははははははははははははは!!?」 長い爪の先を突き立てた爪くすぐりは、くすぐったさを刻み込んでくると同時に、乱太の精神力を削ぎ落としていく。 ツルツルした爪の先が脇の下の薄い皮膚の下にある神経をコチョコチョコチョコチョ引っ掻くたびに、乱太は顔を真っ赤にして絶叫を繰り返した。 「コチョコチョコチョコチョコチョコチョっ!コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョっ。コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ?コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!コチョコチョ!コチョコチョコチョコチョ!!!コーチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョー!!」 「ぐぁぁぁぁっっっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?ぐへ!?ぐへへへへはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!くはっ!!!くはっ!!?かはっ!!?くるじっっ!!?っひひひひははははははははははは!!!」 予測できない指の動きから繰り出される暴力的なくすぐったさに乱太の呼吸は大きく乱され、乱太は苦しげに口をパクパクさせながらも笑いを強制させられていた。 がむしゃらに暴れているだけにも見える指──だが実際は、爪の先だけでしっかりとくすぐったいポイントのみを捉えていじめている。 カリカリカリカリ!!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! 「ぶぅぁぁぁぁああああああ!!!あっ!!!あっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?やめっっ!!?くそっ!!?っっひぁぁぁぁぁぁあははははははははははははははははははははははははははは!!!?」 終わらない。 慣れない。 ユイの爪の先から送り込まれてくるくすぐったさはいつまで経っても新鮮なまま乱太を苦しめる。 「いかがですか?ユイさんのこちょぐりは。素人のくすぐりは物の数分で慣れてしまいますが、ユイさんのコチョコチョは慣れることはない。だからこそ…彼女はコチョコチョマスターの称号を持っているのですよ」 野雪は立ち上がり、自慢げに微笑みながらユイを見つめる。 「さてこれ以上コチョコチョくすぐりぐりぐり地獄の刑にかけられたくなかったら…自白することです」 野雪がそう言った時、腋の下にずっとずーっと送り込まれ続けたくすぐったさにより、乱太は気絶する寸前だった。 ゾリッ。 「ぶひゃっっ!!?」 突然、腋の下にこれまでとは違う強烈な純度の高いくすぐったさが走り、乱太の意識は無理やり覚醒させられた。 脇の下の窪んだところにあるくすぐったい神経の詰まったところを爪で引っ掻かれたのだ。 「気絶なんて──許すと思ってる?」 ユイはそう言って苦笑した。 「ユイさん。お仕置きして差し上げて」 「了解。じゃあちょっと…ドギツイのいこうか」 強制覚醒により戸惑っている乱太をよそに、コチョコチョマスターユイは両手の指の爪先をガッと乱太の細く引き締まったヌルヌルの腹筋部に突き立てた。 「ぐぁっっ!!?」 乱太の顔が歪む。 「ちょっ…待っ───」 「コォチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョー!!」 ユイの細く長い指が暴れ出し、爪の先が ワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャ!!!っと腹部の神経を掻き回した。 「ぶばっっ!!?かっ!!?くはっ!!?あっ!!!あっ!!?ちょっ!!?いぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!?かはっ!!かはっ!!!くはっ!!?けほっ!!!くるじっ!!?ぃぁぁぁぁぁぁぁああああああははははははははははははは!!?」 爪の硬くてツルツルした感触が腹部に広がったかと思うと、身体を丸めて防御したくなるような猛烈なくすぐったさが爆発した。 そのくすぐったさは、乱太の体内から多量の酸素を奪いあげる。 乱太が慌てて息を取り込もうとすれば、それを妨害するかのようにユイがさらに激しくヌルヌルした爪でヌルヌルした腹部を掻き回す。 ワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャ!!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! 「がっっ!!?やめ"っっ!!!?っっっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!?くはははははは!!?くすぐっだっっ!!?ぃっ!!?ぃひひひははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 笑うと苦しい。けれど、笑わないと。笑わないと気が狂う──だから乱太は、既に疲弊し切っている横隔膜や肺や腹筋に鞭を打って笑い続ける。 気絶したい。意識を手放して気を失ってしまいたい。そう思っていても、コチョコチョマスターユイの爪が時折、横っ腹なんかを爪でぞりっとなぞるのでその刺激で覚醒させられてしまう。 まさに、乱太はくすぐり生き殺し状態にされていた。 「くぁっ!!!あっ!!!?かはっ!!はっ!!!こほっ!!!こほっ!!!っっははははははははははははははははははははははははははははは!!!?やばっっ!!!やばぃっっ!!!っっひひひははははははははははははははははははははははははは!!!」 乱太がいよいよ、心身の危機を目の前に感じ始めた頃、野雪の命令でユイの指は止まった。 乱太の腹部にはまだ、ユイの爪の硬くてツルツルした感触と、こちょぐったい刺激の余韻が残されている。