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擽怨─Reverse─#2-1(F/M)

1. ばんざいトンネルの噂 ──遭遇編── (F/M) 「おい。早く歩け」 尻を蹴られ、雄也はよろりとよろける。 痛いのに、何故か蹴られた雄也の方が、ごめん、と言ってしまう。 言わないと、もう一発くらい蹴られそうだからだ。いや、今度は顔かもしれない。 ──殴られる方がマシかもな。 雄也は前方にそびえる異形の壁面を見上げて息を飲んだ。 あれを前にして、まともに歩けるはずがない。 あれに向かって行くなど、自殺行為だ。 夕焼けに照らされているのは、何段にも積み上げられたブロックだ。 スプレーで"芸術的"な落書きがされている。 ブロックは塞いでいる。その奥の巨大な闇を。 巨大な闇は死へと続いている。 山の中に空いた半円状の闇。 ここは旧千羽トンネル(きゅうせんばとんねる)。通称──"ばんざいトンネル"。 "人間クローゼット"とも呼ばれている、いわゆる心霊スポットである。 「よし。なんとか入れそうだな。ラッキーじゃん」 林 将吾が積み上げられたブロックを見上げて笑った。 将吾は校則違反の染め髪、ピアス、ネックレスをした不良生徒だ。 いつも暴力的で、ことあるごとに前の席の雄也を蹴ったり、頭を引っ叩いたりしてくる。 そんな目に遭っても雄也は笑っているしかない。でも、笑っていても周りからはキモいとかって嘲笑される。 将吾は最低なやつだ。それなのに顔が良いからか、女子から人気だ。 世の中はなんて不条理なんだろうと思う。 「笹尾。お前から登れよ」 将吾がブロックを指差した。 「えっ…」 「え、じゃねぇよ」 将吾がまた雄也の後頭部を引っ叩いた。 雄也に拒否権はない。 高く積み上げられたブロックは、下から見るとそう高さはないように思えるが、実際に登ってみると高いのだろうと思う。 もし、転落して死んだらどうするつもりなのだろうか。 多分、将吾はそこまで考えていないのだろう。 後先を考える知能があれば、こんな馬鹿なことはさせない。 仕方なく雄也はブロックをよじ登る。 運動神経も良くない雄也には、登ることを前提として積み上げられていないこのブロックの山を登るなんて本当に命懸けだった。 やはり、登ってみるとかなり高い。 少しでもバランスを崩して後ろに倒れたら真っ逆様に落ちるだろう。 ブロックとブロックの間の小さな出っ張りに指をかけ、つま先をかけ、よじ登っていく。 山々に鳴り響くひぐらしの鳴き声が大きくなっていく。 汗で、指先がぬるぬるとぬめっている。 トンネルを塞いだ人も、どうせなら完全に入れないようにブロックで塞いで欲しいと思った。 この積み方では上はガラ空きだし、こうやってブロックをよじ登れば侵入出来てしまうではないか。 雄也は怒りの矛先をトンネルを塞いだ業者に向けながら、このトンネルに関する噂を思い出す。 【〜T市のうわさ②〜】 ・T市(手来市)山中にある旧千羽トンネルで、"まじない"をすると腕の長い女の霊が出る。 ・トンネルの真上から人間が沢山ぶら下がっている様子が目撃されている。その様子がクローゼットに仕舞われている衣類のようであることから、人間クローゼットと呼ばれている。 ・腕の長い女が追いかけて来ると、ばんざいをして走ると逃げられる。 噂にしては随分と具体的だ。思い出すだけで指先から力が抜けそうになる。 つい昨日、教室で女子グループがこの噂を話していた。 それを聞いた将吾たちがこのトンネルの幽霊を動画に収めるとか言い出したのが始まりだ。 そして何故か、雄也が"生贄"に選ばれた。 ──お前、幽霊の餌になれよ。 幽霊は人間に寄って来るから囮がいた方が確実に幽霊に会えるだろう。というのが将吾たちの考えらしい。 それなら自分たちで勝手にやっていれば良いと思う。 だけどやっぱり、雄也に拒否権はなかった。 だからこうして雄也は、ブロックの山のてっぺんにいるのだ。 雄也はトンネルの中の真っ暗闇を覗き込んだ。 トンネルの中の冷たい空気が鼻頭を撫でる。 外はべったり暑いのに、少しでもトンネルの中に入るだけで、気温の差を感じる。 トンネルの中はまるで、別世界のようだ。 雄也は、下を見下ろした。 地上が遥か下方に見える。 登る時より、降りる時の方がよっぽど怖い。 トンネル側のブロックの足場はヌメヌメと湿っている。 足を滑らせないよう、慎重に降りた。 トンネルの中はとてもひんやりしていた。 外の虫の声も聞こえない。 奥は闇だ。 この奥に出口があるのか疑いたくなる。 「安全そうだな」 先発の雄也が無事にトンネルに入ったのを見てようやく将吾がやってきた。 「うわ寒っ…なんかくせーなここ。まぁいいや。いくぞ」 将吾は雄也の肩をぱんと叩いて歩き出した。 将吾はここが怖くないのか。 正直、雄也もそこまで怖さを感じていない。 あんなのは噂に過ぎない。誰かの作り話だ。でないとあんなに具体的な噂が流れるはずがない。 噂では、トンネルの真ん中のあたりでつま先で地面に"人"の文字を刻み、その文字を囲うように時計回りに歩くと幽霊が出ると言う。 いかにも誰かが作ったような設定だ。 スマートフォンのライトだけを頼りに奥へと進む。 壁なんかを照らしてみると、外のブロックなんかにあった落書きがまるでないことに気づいた。 流石にここまで来て落書きをするような愚か者はいないということか。 「おい止まれ。この辺でいいんじゃね?」 将吾が命じると、雄也はぴたりと立ち止まった。 「ほら、あれやれよ」 将吾はそこでようやく動画を撮影し始めた。 雄也は、つま先で地面に"人"の文字を書いた。 大きさとかは分からないから、適当にやった。 「よし。じゃああとは回るだけだな。いいか?幽霊が出ても…お前はバンザイするなよ?」 雄也は頷いた。 どうせ何も起きない。 そう思っているのに、なんだか心臓の鼓動が早まっている。 怖いのか。 噂は、本当だと思っているのか。 まさか。 そんなはずはない。 そう言い聞かせながら、雄也は人の文字の周りをぐるりと回った。 雄也は再び、トンネルの出口の方を向く。 雄也はぎゅうと目を閉じてまた瞼を開けた。 目を凝らす。 目を細める。 目を擦る。 「おい。なにやってんだよ」 将吾がどんと背中を小突く。 それでも雄也は何も言わなかった。 いつものように、謝ることもしなかった。 それどころではない。 トンネルの闇の向こうの、半円状に切り取られた景色。 その色が、無い。 生い茂る木々やうっすらと見える道路標識のようなものにも、空にも、色が無い。 灰色だ。 それはまるで、モノクロームの写真のようで──。 自分の目がおかしくなってしまったのか。 雄也がもう一度、目を擦った時だった。 ぴと。 ぴと。 ぴと。 湿った音が聞こえて来た。 トンネルの向こうのモノクロームの景色に、ノイズが走り、まるで古いビデオのように景色に乱れが生じる。 耳鳴りがする。 モノクロームの景色に刻まれた乱れがぎくしゃくと形を変える。 それはやがて─── ──人の形となった。 それはゆーらゆーらと揺れている。 異様に長い長い腕を振子のように揺らして。 ぴと。 ぴと。 ぴと。 湿った音。 それは女の足音。 女がゆっくりと近づいて来る。 「で、出たっ!?あれ幽霊かっ!?」 将吾が騒ぎながら慌ててスマートフォンを女の方に向けた。 そうか。あの女が幽霊であると決まったわけでは──。 いや。 幽霊だろう。 この現実から目を逸らす事はできない。 噂通りの見た目だ。 それに、あのモノクロームの景色も、普通では無い。 ぴと。 ぴと。 ぴと。 近づいて来る女と共に、生ぬるい風が吹いて来る。 その奇妙な風を吸い込むのが嫌で、息を止めたりしているうちに、雄也の呼吸は乱れていた。 冷や汗がふつふつと背面を濡らす。 ぴと。 ぴと。 ぴと。 ゆーら。ゆーら。と揺れながら、腕の長い女が雄也たちのすぐそばまで近づいてきた。 白くてサラサラとした髪。浅黒い肌。そして長い腕。前屈みになっていてはっきりとは分からないが、女はかなりの長身だ。 女が顔を上げた。 瞬間、雄也は小さく悲鳴を上げた。 ──だめだ。逃げないと! 雄也はへなへなと力の入らない足で引き返そうとした。 しかし。 「おい!」 将吾が片手で雄也の胸ぐらを掴んだ。 「ここまで来て帰るなんて言わないよな!?」 将吾はすごい剣幕で雄也に怒鳴った。だがその顔からは、ダラダラと汗が吹き出している。 「で、でもっ…流石にっ…」 雄也は声を搾り上げたが──。 「お前の意見なんて聞いてないんだよ…!」 将吾は力づくで雄也を女の方に押しやった。 「うわぁっ!?」 雄也の目の前に、女の姿があった。 女は裸体だ。 浅黒い肌をしたその肉体は暴力的なほどぎゅうぎゅうに引き締まっている。 雄也は女のその恐ろしい顔を見て再び戦慄した。 まるで造形物のような笑みが、女の顔に貼り付けられている。 三日月型に開いた口の向こうは、闇である。 女はその、全てを吸い込んでしまうような闇の口を動かした。 ──助かりたい人…手を挙げてっ。 女の、妙に軽やかな声がトンネルに響いた。 雄也は女の放った言葉が理解できなかった。 全身を蝕む恐怖で、脳がまともに機能していない。 手を挙げる──。 手を。手を──。 手を挙げるって──? その時、将吾が勢いよく両手を挙げた。 バンザイだ。 それを見た雄也はようやく、女の言葉とこのトンネルにまつわる噂を結びつけることができた。 だから雄也も両手を挙げ──。 「馬鹿っ!お前はそのままでいいんだよ!」 バンザイをしようとした雄也を、将吾が蹴り飛ばした。 雄也は、女のすぐ足元まで転がった。 女の褐色の肌から、獣のような匂いがした。 「だ、大丈夫だって…!バンザイしながらもちゃんと…撮ってるからさぁ…!お前がそこの…幽霊に…襲われるとこ…!」 将吾が声を震わせて言った。 興奮している。恐怖からか、喜びからかは、分からない。 雄也は恐る恐る、すぐ目の前の女を見た。 だが──。 いない。 すぐ近くにいるはずの女の姿が消えてなくなっていた。 またふわりと獣のような香りがした。 その香りを辿るように雄也は視線をトンネルの上に向けた。 トンネルの上は真っ暗闇だ。 トンネルを覆う闇は、全てトンネルの上に溜まった闇から垂れ落ちていたのだ。 その闇の溜まりの中から、ずるりと二つの長い何かが顔を出した。 「はっ!?」 将吾の、情けない悲鳴が上がった。 闇の溜まりから突き出てきたのは、褐色の腕。あの女の──腕だ。 女は、大きな手で将吾のバンザイしている両腕を掴んだ。 「ちょっ!?」 咄嗟に腕を引っ込めようとする将吾。 だが、女の褐色の少し骨ばった細長い指は腕に巻き付いて離れない。 「やばっ!?なんでっ!?」 将吾の身体がふわりと持ち上げられる。 闇から、白い髪のあの女が顔を出した。 だめ。 だめ。 だめ。 自分だけ助かろうなんてさ。 だめ。 だめ。 だめ。 お仕置きだ。 女の、動いてもいない口の奥から声がした。 女は、将吾の身体を闇の溜まりの中へと引き摺り込むように引き上げ始める。 「やばっ!?おい!助けろって!!なぁ!」 将吾が大きく剥いた目で雄也を見た。 初めて見る目だった。 黒目が泳いでいる、怯えている目。 雄也は何も言えなかった。何も出来なかった。 腰が抜けて、動けない。 ──おいで。 女の声がして、将吾はまた、ずるりと引き上げられて闇の溜まりへと近づいた。 あの闇に吸われたらどうなるのだろうか。 考えたくも無い。何も、考えられない。 「くっそ!!離せっ!!くそっ!!このっ!!」 将吾はじたばたと脚を振り回し、抵抗する。 ──悪い子だね。 闇の溜まりから将吾の腕を掴んでいる手と、全く同じ手が二つ生えてきた。 細くて長い褐色の指が、うにょりうにょりと滑らかにうねりながら将吾の身体に近づいてくる。 「なんだっ!?」 細長い指は、将吾のバンザイしたまま開かれた腋の下でぴたりと止まった。 そして。 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!っと腋の下を掻き回した。 「はっ!?ちょっ!?やめっ!?こちょばっ!?ひはっ!?ちょっ!?ひひひひひはははははははははははははははっ!?」 将吾は突然、笑い出した。 雄也には、女が何をしてるいるのか、まるで分からない。 なぜ、将吾が笑っているのか。 将吾はとても、苦しそうだ。 ──こちょこちょこちょこちょぉ〜。こっちへおいで。 女は、子をあやすような口調で言いながら、その褐色の指を暴れさせ、将吾の無抵抗な腋の下をくすぐっている。 「ふざけんっっっにゃぁはははははははははははははははははははははははははははははは!!?ひひひひひっ!!?ちょっ!!うざぃっっんだよっ!!ははははははは!?」 将吾は得意の睨み顔で女に抵抗するが、そんな顔を作っても開いたままの腋の下を細い指先でこちょこちょと細かくこそばされればそれけで…その睨み顔は崩れてしまう。 将吾は情けない笑顔を浮かべさせられたまま、ずるずる…ずるずると引っ張り上げられていく。 いつもは敵無しの将吾も、今はただただ無力だ。 無力なまま、褐色の指先にこちょこちょこちょこちょと弄ばれている。 「くひひひひひひひひひひひひ!!?こんなっっ方法っっでっ!!俺をっっ!!っっひはははははははははははははははははははははははは!!!」 将吾は悶えながら、身体を捻って暴れ出した。 彼が出来る唯一の抵抗方法だ。 ──ほぉら…暴れない…の。 腋の下をこちょぐっていた手が、すぅっと伸びて今度は肋骨のあたりで止まった。 長ぁい指の先が、肋骨の隙間に嵌め込まれる。 「はっ!?」 将吾の顔に、焦りの汗が浮く。 つるりとした褐色の指先がグイと肋骨の隙間に食い込み、女は指先のみを器用に操ってゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリと骨の隙間の神経をほじるようにくすぐった。 「ぎゃっ!!?きゃははは!?ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははは!?やめっ!?あっ!?うは!?ははははははははははははははははははーっ!!?」 将吾の細い身体が、激しくぶんぶんと宙で暴れる。 あまりの激しさに靴が飛んだ。 将吾の身体が、また一気に闇の溜まりに近づいた。 ──素直にこっちへ来れるように、コリコリしてあげる。 肋骨の骨と骨の間に潜む敏感な神経を褐色の艶やかな指がゴリゴリとほじくり犯す様は、見ているだけで悶えそうになる光景だった。 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!! ごちょごちょごちょごちょっ!! 「きひはははははははははははははははっ!?くそっ!?ちからっっがっ!?っっひはははははははははははは!!?助けろっ!!なぁっ!!雄也ぁぁぁっ!!」 将吾はくすぐったさで崩壊させた顔面を、雄也に向けた。 雄也は、はっとする。 初めて、将吾に名前を呼ばれた気がした。 大嫌いだ。 こんなやつ。 だけど、このまま見殺しにするのは──。 雄也はあと先を考えずに、将吾の足を掴んだ。 細い足首だ。こんな華奢な脚にこれまで蹴られていたのだと思うと、なんだかため息が出そうだった。 女はまだ、肋骨の隙間を指先でこちょこちょと犯している。 「ひひひひははははははははははは!?ひひひひ!!?いひひひひひはははははははははははははははっ!!?もっど!!もっど引っ張れぇぇぇっ!!」 将吾が必死に怒鳴る。 雄也はなんとか力を入れたり、体重をかけようとするが、全然、力が入らない。 ──だめだよ。 耳元で、声がした。 その直後──。 「うわぁぁぁぁっ!!?」 将吾の呻き声が聞こえた。 はっと顔を上げてみると、肋骨をいじめていた指が今度は将吾の引き締まった脇腹に移動していた。 褐色の長い親指が、脇腹の触られるとこちょぐっいポイントの上に添えてある。 次はあそこを、くすぐるつもりなのだ。 雄也はさらに将吾の下半身に体重をかけようとするが、上手くいかない。 こうしている間にも将吾の身体は引き上げられ続けており、既に、地上までの高さは2メートルほどだ。 ──まだお仕置き…足りてないかな。 女はそう言って、将吾の脇腹のウィークポイントに親指を押し込むようにして食い込ませ、グニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュ!!っとえぐった。 「にはっ!!?ははは!?はははははははははははははは!?ちょっ!?うひゃぁぁぁああああはははははははははははははははははははははははははははははっ!!?」 恐怖のこちょこちょマッサージが執行され、将吾の身体が激しく揺れた。 雄也はなんとか振り落とされまいと必死に将吾にしがみつく。 ──ここのコリコリしてるところを〜ぐーちゅぐーちゅ…ぐーにゅぐーにゅ…。 女は愉しげに歌いながら、長い親指を操って将吾の脇腹の凹んだところを執拗に指圧する。 グチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュ!! グニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュ!! 「ぶえへへへへへへへへへへへへへっ!!?ふへっ!!?ひはははははははははははははははっ!!?やばぃっ!!?力がっっ抜けてくぅぅぅぅっ!!?ひひひひははははははは!?」 脇腹に捩じ込まれ続ける親指の一撃は、将吾からひゅるひゅると力を奪い上げていく。 将吾はするすると引っ張り上げられ、さらに地上から遠のいていく。 もはや、雄也の体重などなんの意味もなしていない。 そこへ──。 突然、女が将吾の横っ腹を不意打ちでこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!っとくすぐった。 「ふあっ!!?あひょ!?そっっそこぉっ!?あひょはははははははははははははははははははははははははは!!?ひーっっははははははははははははははははははっ!!?」 予想だにしていなかった横っ腹への爪くすぐりに将吾は堪らず激しく身を悶えさせ、脚をばったばったと振り回した。 その衝撃で、雄也は振り落とされた。 「うわっ!?」 2メートル以上の高さから落下した雄也は背面に強い衝撃を感じた。 ──ほぉら。みんな待ってるよ。 "くすぐり様"も、お前を待ってる。 女の声が、脳内に響く。 「やめろっ!?なんだよっ!?やめっっ…!?」 将吾の情けない声が聞こえて、雄也は恐る恐る目を開けた。 トンネルの天井部。その闇の溜まりに、悍ましい光景が広がっていた。 無数の手指がうじゃうじゃと闇を埋め尽くしていた。 手指は爪に至るまでヌルヌルと照り輝いている。 全て異様に細長く、滑らかな指先をしていた。 あれは全て、女の手指だ。 きっと…それはそれは恐ろしくくすぐったい女たちの手指爪──。 それらが、とうとう闇の溜まりにまで引き上げられた将吾の身体にまとわりついていた。 「いやっ!?ひぃっ!?」 全裸にひん剥かれた将吾の…その細い身体に、夥しい数の手指爪が群がっている。 女の手脚が、そして無数の手が将吾の四肢に絡みつき、獲物である将吾を完全に捉えている。 「きひひひっ!!?いひっ!!やめっ…!?た、助けてっっ!!?助けてぇぇぇっ!!」 まだ手指爪は動いていないのに、きっと素肌に触れられているだけでこしょばくて仕方がないのだろう…将吾は引き攣った笑みを浮かべながら雄也を見ていた。酷く怯えた目で。 雄也は何も出来なかった。 将吾は遥か上空だ。 飛んだって、跳ねたって、届かない。 大の字に身体を固定された将吾の、無防備に晒されている男性器に…油ぎったヌルヌルの女の指が吸い付くように巻き付いた。 「なっ!?」 細長い指は竿をぎゅうと締め付け、そのままズリッズリッズリッと竿をシゴキ始める。 「ちょっ!?ちょぉっ!!んぉぉぉっ!!?なにっっしてっっ!?」 将吾は驚愕の色を浮かべたのち、すぐに身を捩り始めた。 与えられているのは快楽なのだろうが、きっと…素直に受け止めたい刺激ではないのだろう。 竿を扱く手つきは、凄まじいものだった。まるで、その道のプロのような──。 「んんんんっ!!?はぁはぁっ!!ふざけんっっなっっ!!?ふーっ!!ふーっ!!なんでっっこんなっっ…!!」 将吾は歯を食いしばっているが、その竿はバキバキに勃起している。 他の指たちはぬるぬるとタマを撫でたり、揉んだりしてさらに将吾を苦しめる。 「はぁはぁっ!!なんだっ!?なんでっ!?はぁはぁっ!!んぁぁぁぁっ!!?」 将吾の顔が、溶けている。 口元は完全に弛み、眉は不自然に片方だけが吊り上がっていた。 「ふーっ!!ふーっ!!こんなもんっっ絶対──」 将吾が言いかけた時だった。 タマを揉んでいた指たちが、タマを爪でゾワゾワと撫でた。 そして、竿を扱いていた手が、亀頭のあたりを握ってクチュクチュクチュクチュと揉むように刺激した。 「うああああああっ!!?」 将吾の情けない声と共に、白い液体がどくっと溢れ出し、雄也の目の前にぽたぽたと垂れ落ちた。 「はぁはぁっ!!く、くそっ…!?んむっ!?」 息を切らす将吾の口が、無数の手によって塞がれた。 ──さぁ…こっちへおいで。 女の声が甘く囁く。 わらわらと、イキたてのタマに無数の指どもが群がってくる。 指はウネウネこちょこちょと蠢いており、ぎらりと光る爪の先が狙っているのは──タマだった。 ああ、今あそこをくすぐられたら──将吾は死ぬだろうな。 雄也はそう思った。 そしてそれは、現実となった。 イキたてほやほやのタマに、無数の指先が集結し、爪の先でカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!! こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!っと嬲り始めたのだ。 「む"ぉっ!!?おおお!!?おおおおおおおおおおおおおおおっ!!?おほほっ!!?おおおおおおおほほほほほほほほほほほーっ!!?んぁぁぁぁぁぁあああああっ!!?」 敏感になっているタマを、無数の指先や爪の先が掻き回してくすぐり喰らう。 将吾の目がギョッとしたまま硬直し、四肢が震え、地獄の底から聞こえるような悶え声が響いた。 それでも、無数の指たちは容赦なくタマを爪でカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ!! こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!と処刑する。 「んんんんんんんんんっ!!?んんっ!?んんっ!!?んぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっっ!!?おほほっ!?おほほほほほっ!!?はふへっ!?はへっ!!!ほへへへへへへへへへへへへへっ!!?」 将吾は狂ったようにぶんぶんと首を振り、何度も喉を震わせるような唸り声を上げた。 収縮した小さなタマをただ爪の先でこちょこちょと引っ掻かれるだけ。それだけで、将吾は死にそうなほど悶えている。 このために。 このために…女や無数の手は将吾に快楽を与えたのだ。 強制手淫によるあの快楽は全て、この地獄の苦しみを将吾に与えるためだったのだ。 将吾の目から、あり得ない量の大粒の涙がボトボトと流れ落ちている。 ずぶずぶ。ずぶずぶ。 将吾の身体が、闇を埋め尽くす無数の指の海に沈んでいく。 将吾は腰を振ったり、指を動かしてなんとか…なんとかもがいていた。 だが──。 ──逃さないよ。 褐色の女が囁く。 無数の──恐らく数千は超えているであろうこちょこちょ指どもが、一斉に将吾のその全身を貪り尽くすようにこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょぉーっ!!っと処した。 「んひぃっ!?おっ!?おっ!!?んぉぉぉぉおおおおおおおおおほほほほほほほほほほほほほほっ!!?ほほ!?ほほほほほっ!!?んほほほぉぉぉほほほほほ!!?ひぬっ!?ひぬっ!!?ひぬぅぅぅーっ!!」 将吾の白い素肌に、その細い肉体に、数千の指先と爪の先とが喰らい付き、こちょぐり犯す。 将吾の身体が、壊れるくらい波打つ。 爪が皮膚をこちょこちょ引っ掻く音が、指の腹が筋肉を揉む音が、はっきりと雄也の耳に流れ込んでくる。 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!! 「んんぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!?おほほ!!?おほほ!?おおおおほほほほほほほほほほ!!?ごほっ!?こほっ!?ほほっ!!?ほぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」 褐色の女と、数千の指に埋め尽くされた将吾の身体が、闇の中へ吸い込まれていく。 やがて、将吾の悲鳴も、指どもの蠢く音も、爪の先が表皮を掻く音も、何の音もしなくなった。 トンネルには、雄也とそして…将吾の纏っていた衣類だけが残されていた。

Comments

蛇足だなんてとんでもないです…! そうですね…。 そもそも罪を憎んで人をなんとやらという言葉はあくまでも被害に遭った当人だけが言っても良い言葉なんですよね。 法治国家では法が全てと言いますが…納得のいく結果が出るとは限らない…というかほとんど被害者の納得のいく結果は出ないのが現実ですよね。 被害者にとっては事件に終わりはないのに、最終判決が下されれば事件は強制的に終わりにされてしまいます…。 罪深き者に相応の罰を与えることが出来るのは…法の外にいる存在…生者の外にいる怪異のみなのかも知れません…! 法など通じない世界の王…くすぐり様からすれば悪事を働けばその時点で審判は終わっています。 将吾に更生の道など用意されていません。 でも恐ろしいのは、くすぐり様の扱きは死んでも終わらないということですね。 むしろ死んでからが本番というか…。 そもそも死んだから償いが出来たと考えるのも甘すぎる可能性もありますね。 罪の捕食者であるくすぐり様からの罰は、将吾にとっては過酷すぎる罰かも知れないですが、来世に活かしてもらいましょう!無事、転生出来ればですが!

Kara

素敵なコメントを有難うございます。蛇足で大変恐縮ですがKaraさんのコメント文 >「彼が本当にこれまでの行いを後悔していようが、反省していようが…それはくすぐり様の前では何の意味も為しません。」が余りにも自身の琴線に触れて響いてしまったのでどうか追伸をお赦し下さい。そうなんですよね、人道を外した行いをした場合は、本来であればその命を持ってして償わなければならない。なのに最近の世は「謝れば良いんでしょ、反省してますよ、賠償すりゃいいんでしょ?」とか「更生する姿勢が大事、例え再犯しても罪を憎んで人を憎まず」のような、被害者や被害者の家族にとってはちゃんちゃらヌルい対処が蔓延っている…そして今回私自身も男の一側面の象徴でもある将吾(転じて悪い私)が改心さえすればくすぐり様にいずれは赦されると大きな勘違いをしている…これは大罪ですね。過ちを犯した者は泣こうが喚こうが、例えそこで心底反省したとしても遅過ぎ、判決はとっくの昔に終わっており、あとはひたすら命と魂をもってそれを償わなくてはならない、人は過ちを犯した者の末路をみて過ちを起こさなくなる…これが大切ですね。 将吾の最期のシーンはYoutubeで見た、タコがフグの大群に襲われるシーンやエヴァンゲリオン2号機の悲惨な最期を想起してしまいました。上記の2シーンのように命途切れても魂が消滅するまで、くすぐりによって将吾の処刑が勢なわれる…これ以上の想像は夢の中で自身が磔になりそうなので止めておきます(と云うか処刑シーンを心込めて読み過ぎてもうトンネルにいる夢は何度も)。 素敵なお返事を大変有り難うございました。

kt

ktさんこちらにもありがとうございます! これほど罪深い男の子をくすぐられ役に回したのはもしかしたら初めてだったかも知れません…。 普段の行いが罪深いからこそ、くすぐりお仕置きシーンを書く際とても筆が乗りましたね笑 普段は他者を暴力で支配する側の人間だった彼ですが、暴力でさえないくすぐりという方法でぐちゃぐちゃに矯正させることになるとは思ってもいなかったでしょうね…。 彼が本当にこれまでの行いを後悔していようが、反省していようが…それはくすぐり様の前では何の意味も為しません。 くすぐり様の元に連れて行かれた彼は、くすぐり様に直接…ただひたすら笑わされ、搾り取られるのでしょうね…! こちらこそいつも情熱的な感想コメントをありがとうございます!!

Kara

普段敵無しの傲慢な男が、圧倒的な理力と母性を併せ持つ霊体(女神的な女性の象徴?)に仕置され、為す術なく召されていく…言葉を失う程に恐ろしく、でもとてもエロティックですね。空中で磔にされ、味わったことのないレベルの快楽で吐精させられ、遂には男の弱点を知り尽くした指先によって活きたて睾丸をこちょぐられたとき、信じられない程の涙が眼球から溢れたとあります。まさにその一瞬で将吾の身体と魂は、自身がこれからどうなってしまうのかを悟ってしまった…今風に云えば「解らせ」られてしまったのですね。そして睾丸だけでなく全身全ての性感帯を擽り包まれていく男性ですが、彼の後悔と反省は逝きつく先の「くすぐり様」に伝わるでしょうか。永遠と思える程に際限なく全身を擽り処されるのか、はたまたもっと恐ろしい方法でくすぐり様に直接召されてしまうのか…。いつも素晴らしい作品を有難うございます!

kt


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