白い光が見える。ここは夢の中だろうか? 私には視界だけがあって、体がないような感覚だった。 「あなたが私の新しいご主人様ですか?」 目の前の光が私に問いかけた。その声は澄んでいて綺麗な鈴の音のように耳に心地よかった。 「えっと……ご主人様ってどういうことでしょうか?」 私は戸惑いながら質問した。 「そのままの意味です。私は主よりあなたの命がつきるその日までお世話をするようにと命を賜りました」 「あの、そもそもここどこなんでしょう?」 「ここは夢の世界です。私があなたの夢の中にお邪魔しています」 「なるほど……」 夢なら何でもアリだからなぁ。 「それで、君は何者なんだい?」 「私は天使です。名前はありません。どうぞ好きに呼んでください」 「じゃあ天使ちゃんでいいかな?」 「はい。よろしくお願いしますね、ご主人様」 目の前の白い光がふわふわと上下する。これはきっと喜んでくれているんだろう。 「ところでご主人様は私にどんな姿を望んでいますか?具体的に想像してみてください。そのとおりに私の姿は形作られます」 うーん……難しいな……。 とりあえず天使なら羽とか生えてて欲しいけど、あんまり派手だと目立つし、かといって地味な見た目も嫌だなぁ。 私は自分の頭の中で思い浮かぶイメージをそのまま口に出してみることにした。 「翼は小さい服着るにも邪魔にならなさそうなやつで、頭にわっかが光ってて……全身もふもふで小さいのがいいかも。でもなんかこう……ちょっとセクシーな雰囲気もあってほしい!できれば可愛い感じ!」 すると私の頭の中のイメージが徐々に具現化されていくのを感じた。 そして気がつくと目の前には天使がいた。 真っ白な長い髪に透き通るような青い瞳、背中には純白の小さな羽根、全身もふもふの白い体毛に覆われていて、まるで子犬のような愛らしい姿をしていた。 「こんな感じでよろしいですか?」 「うん!すごいよ!完璧だよ!!」 私は思わず拍手をした。 「ありがとうございます。ご期待に応えられたようで何よりです」 そう言うと天使ちゃんは微笑んだ。 その笑顔はとても可愛らしく、見ているだけで癒された。 夢であるのがもったいないなぁと思うくらいに魅力的だった。 「それではこれからよろしくお願いしますね、ご主人様」 「こちらこそよろしくね。天使ちゃん」 天使ちゃんの小さな手と握手をした。彼女の手は暖かく、柔らかい感触があった。 「もうお目覚めの時間のようですね。ではまたのちほど」 天使ちゃんがそういうと夢の中での意識は薄れていった。 目が覚めると私は自室のベッドの上にいた。 いつもの朝だ。今日はいい夢を見れたなぁと思いながら起き上がった。 「ご主人様おはようございます」 「……へっ!?」 そこには今夢の中で出会ったばかりの天使ちゃんの姿があった。そうかまだ夢の続きを見ていたのか……。 「ご主人様、大丈夫ですか?」 心配そうに見つめられる。 「えっと……今って夢の中なのかな?」 「いえ、違います。ここは現実ですよ」 現実……?とりあえず自分の顔を殴ってみようかと思ったら天使ちゃんに止められた。 「待ってください!ご主人様!ご自分に危害を加えるのはダメです!」 「いや、だって夢じゃないっていうからさ……」 「落ち着いて下さい。まずは深呼吸をして心を落ち着けましょう」 言われるままに息を大きく吸って吐く。少しだけ冷静になれた気がした。 「落ち着いたみたいですね。良かったです」 天使ちゃんがほっとしたように胸を撫で下ろしていた。 「それで……これからどうしよう?」 突然人知を越えた現象に直面することってあるんだなぁ。 「まずは朝食にしませんか?ご用意してありますので是非召し上がってください」 天使ちゃんはテーブルに置いてあった食事を指し示した。 それはトーストとサラダ、ベーコンエッグというごく普通のメニューだった。 「いただきます」 「はいどうぞ」 私は用意された食事を口に運んだ。味は普通に美味しかった。 「それでどうして私のところにきてくれることに?」 「主の命によりご主人様にお仕えするためです」 「具体的には何をしてくれるの?」 「ご主人様の身の回りのお世話をさせて頂きます」 「じゃあ私のことをずっと見張っているの?」 「いいえ、そんなことはありません。必要なときにのみお傍に控えるようにしています」 「ふむ……まあ確かにお風呂とかトイレのときまで一緒だと恥ずかしいしな」 天使ちゃんがクスッと笑った。 「私は別に気にしませんよ?むしろいつでもご奉仕できますから大歓迎です」 「そ、そうか……じゃあたまになんかお願いするかもしれないけど、基本的には自由にしていていいからね?」「かしこまりました」 こうして天使ちゃんは私の元に来てくれた。 これから私はこの天使ちゃんと一緒に暮らしていくんだなぁと思うと自然と顔が緩んでしまう。 「ご主人様、どうかいたしましたか?」 「いや、これから毎日天使ちゃんに会えるんだなって思ったら嬉しくてね」 「……はい。私も嬉しいです」 天使ちゃんは照れ臭そうにしながら微笑んでいた。