【18,118字】母娘で同窓会へ行くお話
Added 2020-11-08 04:51:59 +0000 UTC※ちょっと長いです。 [newpage] 「そろそろ出発するわよー。準備できたー?」 「できたけどぉ…」 本当は行きたくない。 それが普通の感情だと思うんだけど、ママはそう思ってないらしかった。 「もう、まだ納得してないの?貴女だって就活で苦労したくないでしょ。」 「うぅ…それはそうだけど…でも、なんでよりによって巨人街なの!?」 建物も乗り物も、そして道行く人々も、すべてが私たちの20倍サイズの街。 かつて不幸な事故が相次いだことから今では基本的に私たち人間は立ち入り禁止となっている場所だ。 「前に話したでしょ。5年前の同窓会を人間の街でやったときは大変だったのよ。だから今回は巨人街でしましょうねってなったの。」 「いくらママの同級生に一人巨人が居るからって、せめてリモート参加してもらうとかさぁ…」 「そんな仲間外れみたいなことしたら可哀そうでしょ?心配しなくても大丈夫よ。きちんと認可を得てる公式バスで行くんだから。いいから早くしなさい。」 「…はぁい。」 どうしてこんな時代に生まれちゃったんだろう。 社会の授業で習った近代史を思い返しながら、お気に入りのサンダルに足を通した。 ☆ ☆ ☆ およそ100年くらい前のこと、私たち人類は3つの種類に分かれることになった。人口の99.998%を占める通常の人間と、それぞれ0.001%ずつの巨人と小人。同じように両親から生まれ、約15年を共に過ごしながらも、ある日突然、運命が分岐する。 原因は今でもわかっていない。曰く、神の御業だとか。曰く、人工的に造られた遺伝変異ウィルスの仕業だとか。誰かの意図があったかどうかに関係なく、科学的に解明されていないこの現象は人間社会を根底から覆した。 初期の混乱から20年近く続いた人間と巨人の争いは、膨大な数の尊い犠牲を伴いながらも、結果的に安定的で平和な世界を作り上げた。人種や血統に関係なく人間の中から突然現れる巨人はそれでいてみな容姿や才覚に優れており、物理的な力を使わずとも瞬く間に世界中のあらゆる分野で支配的立場へと上りつめた。 ☆ ☆ ☆ 「…ねぇ、ママのお友達の巨人さんってどんな人なの?」 「そうねぇ。人間だった頃から美人で勉強も運動も何でもできて、とにかく凄い子だったわ。」 「やっぱりそうなんだ。」 「そうよ~。『私たちの学年からもし巨人が出るなら絶対あの子』って、噂になってたくらいなんだから。」 「…ふぅん。」 観光バスに揺られながら暇を持て余してる私と隣の席で同級生について語るママの顔が窓に並んで反射している。 憂鬱さが抜けない私とは違ってママの顔はどこか誇らしげで、友達に巨人が居るとはこういうことなんだと突きつけられているようだった。 「…で、今は大きな会社の社長さんをやっててね。貴女たちくらいの若い子をいくらでも欲しがってるんですって。」 「ママに言われて調べたから知ってるよ。お給料も凄いよね。」 「あの会社に入ってくれたらママとしても安心なのよ。だから、ね?」 「はいはい。私だってあんな大企業入れるなら入りたいし。なんかコネ使うみたいなやり方が嫌なだけで。」 「使えるものはなんでも使うべきなのよ。貴女も大人になればわかるわ。」 幼稚園から大学まで一貫の女子校出身のママたちは今でもそれなりに仲が良いらしい。 高校1年生のある日、その人だけが巨人になって転校してしまった後も交流は続いていて、今でも何年かおきに同窓会を開いているそうだ。 『間もなく、巨人街に入ります。多少の揺れが想定されるため、今一度シートベルトをご確認ください。』 そのアナウンスに車内が少しざわつき始める。 もちろんシートベルトはしっかりと閉めているけれど、そんな飛行機みたいなアナウンスをバスの中で聞くことになるなんて。 「ね、ねぇ。ママは巨人街初めてじゃないんだよね…?」 「ええ、それがどうかした?」 「なんで、揺れるのかなぁ…って、ほんのちょっとだけ、不安になってたりならなかったり…?」 「そんなの…すぐわかるわ。ほら、前。」 「え?…わぁ…!」 トンネルを抜けるとそこは、普通のオフィス街でした。 もちろん、サイズだけは別格で、見上げなければならないのは高層ビルだけじゃない。 「マ、ママ!巨人が!巨人がいっぱい!!」 「ふふっ、当たり前でしょ?」 歩道の端のほうに引かれている2本の太い白線の間を進んでいるのは私たちが乗る大型観光バス。 そのすぐ脇に降って来ては何事もないように飛び去っていくのは一見すると何の変哲もないパンプスなんかに過ぎなくて、それでも一つ一つがウチの軽自動車より大きかった。 「きゃああ!?踏ま、踏まれちゃうっ!?」 「大丈夫だって言ってるでしょ?もう高校生なんだから少し落ち着きなさい。」 「そんなこと言ったってぇ!?」 巨人街というだけあって私が想像していたより遥かにたくさんの巨人が行き交っているらしく、次から次へと巨大な靴が降ってきては衝撃で揺れるため落ち着いてなんかいられない。 ゴツンゴツンとヒールが響くのを知っているのか大人のお姉さんたちは避けるように遠くを歩いてくれるけど、おそらくは巨人に成りたてだろうイタズラ盛りの女子高生がオモチャを見つけた子供のように目を輝かせながら走って来る。 『お、人間のバスはっけーん!今日はツイてるかも!』 『ちょっと、ダメだって!踏んだらまた怒られるよ?』 『踏まないからへーきへーき!ほら、写真撮って!』 『もう…しょうがないなぁ。』 腰に手を当て人間専用道路を跨ぐように立った彼女が友達のスマホに向けてポーズを決めると、それに合わせるかのようにバスが速度を落としていく。 無意識のうちに見上げてしまったらミニスカートの中は当然ながら丸見えで、同世代とは思えないほど大人っぽい紫に思わず赤面しながら視線を落とせば、健康的な生足の先には私もお世話になっているのと同じ物。 「…って、全然同じじゃないし…これがただのローファーなんて嘘でしょ…?」 私が週5で履いているそれも大きさが20倍になるだけでこんなに違って見えるなんて。 そんな感心も束の間、数m先に置かれた建造物のようなローファーから離れるようにバスが再び動き出した直後、それがグオオと勢いよく持ち上がったかと思えばバスの天井からドンッという大きな音が響いて急停車する。 『ちょっと、まだ行っちゃダメだよ。もうちょい写真撮りたいのー。』 『あー、踏まないって言ったのにぃ!すぐ潰れちゃうの知ってるでしょ?』 『加減してるから大丈夫だってー。ほーら、撮って撮って!』 真上から聞こえる彼女の声はいかにも愉しそうで、金属が軋む嫌な音や恐怖からこだまする車内の悲鳴とは違う世界のようだった。 しかし、メキョメキョという聞いたことがない音に震えながら縋るように隣を見てみたら、意外なことをママはなんてことない顔で呑気にあくびまでしている。 『おっけー?どんな感じ…お、良いじゃん!』 『でしょ。だから足どけたげなー。』 『あ、そだった。協力ありがとねーっ!』 死さえ覚悟して祈っていたというのに彼女はあまりにもあっさりとした一言を残してズシンズシンと立ち去っていく。 汗でびしょびしょになってしまった手をハンカチで拭い去るまでの短い間にバスもまた何事もなかったかのように再び走り出していた。 「死ぬかと…思ったぁ…」 「普段はあんなに生意気なのに案外子供のままね。」 「いや、むしろママはどうしてそんなに余裕なのっ!?」 「これくらいここではよくあることよ?今ではバスだって専用に作られてて昔より頑丈なんだし。」 「思いっきり潰れそうな音出てた気がするけどなぁ…」 そんな風に不安な私は少し背伸びして車内を見回してみたけどママの同級生の人たちはみんな同じように落ち着いていた。 それでも私と同じようについて来てる何人かの子たちはやっぱり怖がっていたみたいで、小学生くらいの子が泣いちゃってるのは仕方ないと思う。 「ねぇ…あとどれくらいで着くの?」 「さぁ?詳しい場所はわからないけどまだ半分くらいじゃないかしら。」 「こんな怖い場所にまだ半分も…きゃあ!?」 やっぱり来るんじゃなかったと後悔する間もなく、バスの側面に何か大きなものが取り付いたかと思えばふわりと浮き上がるような感覚に襲われる。 慌てて座席にしがみつき揺れに耐えながら窓の外を見てみると、そこに見えたのはまるで指のような何かで。 「え、な、何っ!?何が起こってるの!?」 「うーん、バスごと持ち上げられちゃったわね。」 「えええ!?」 ぐわんぐわんと揺れるフロントガラスからの景色はそれまでとは一変していた。 踏み潰されるんじゃないかいう恐怖をもたらしたたくさんの靴は見えなくなっていて、まるで高いビルから見下ろしたように地面は遥か下。 「お家に帰らせて~!」 「諦めなさい。」 ☆ ☆ ☆ 『みんな久しぶり~。元気そうで何よりね~。』 バスごと持ち運ばれること数分、私たちが下ろされた場所はレストランのテーブルの上だった。 巨人に連れ去られてるっていうのにママたちが異様に落ち着いてるかと思ったら、どうやら目の前に居るこの犯人さんこそが今日会うお相手の方だったらしい。 「相変わらず悪戯好きなんだから。うちの子なんて泣いちゃって大変だったのよ?」 「マ、ママ!そんなこと言わなくていいからっ!」 『ふふっ、ごめんなさいね?』 「ひっ!?」 こちらに向かってゆっくり伸びてきたとても綺麗な、けど私と同じくらいはありそうな人差し指に思わず後ずさってしまう。 目の前に居るこの人は胸から上しか見えていないのにそれでも学校よりも大きくて、初めて目の当たりにした巨人の大きさに圧倒されて心臓はバクバクと鳴りっぱなしだった。 『あら、怖がられちゃったみたい。』 「もう、お近づきになるために来たんでしょ。ほら、良い経験なんだからもっと近くまで行ってあげなさい。」 「押さないでってば!行くからっ!」 ニコニコとこっちをずっと見下ろされたままなのは少しだけむず痒いけど、ママに押し出された勢いのまま近寄っていく。 勇気を振り絞ってよく見えるように顔を上げてみると、ママと同じ40歳には見えないくらい若々しい美人さんが居て思わず顔が熱くなる。 『どうしたの?』 「い、いえ…お綺麗だな…って…」 『ふふっ、ありがとう。貴女も可愛いわよ~。』 「私の若い頃そっくりでしょ?」 『ええ、本当に。』 頭越しに交わされるママたちの会話は2人は本当に仲良しだったんだなと思わせる。 そんなことをぼーっと考えながらテクテクと歩き続けていたら思いのほか近づき過ぎてしまっていた。 『あら?どこ行っちゃったのかしら。』 「え、私ならここに…って胸が邪魔で見えないっ!?」 いつの間にやら私の頭上はテーブルの上へと大きく飛び出たパツパツのブラウスが屋根代わりになっていて、視界を完全に遮られたせいで私のことは見えなくなっているんだろう。 初対面の方に思わず近づきすぎてしまったことを反省しながら慌てて引き返すと、私のすぐ後ろにその屋根がドスンと落ちてきて押し出された強風によって思わず転びそうになる。 「お、上手く逃げたわね。」 「はぁっ…ビックリ…したぁ…っていうか、ママ、他人事過ぎ…でしょ…?」 『ふふっ、不用意に巨人に近づくと危ないわよ?』 「気を付け…ます…」 イタズラっぽい笑みを浮かべ自慢の胸をたゆんたゆんさせながらそう言われ、自分が感じた命の危機も計算され尽くしたものに過ぎないとわかり少し安堵する。 そうして改めて間近で目にしたその生地はかなり薄かったのか黒いブラのレース模様が浮かび上がっていて、その奥に包まれている私何人分もあるだろう柔らかな塊に思わず想像を巡らせてしまっていた。 『そんなにジッと見ちゃって。もしかして触ってみたいのかな?』 「え、いえ、そんな、つい…!ごめんなさいっ!」 『遠慮しなくてもいいのよ?ほら。』 「そうそう。いっそ挟まれて来なさい。気持ち良さは保証するわよ~。」 「え、わっ、えぇっ!?」 どうしてママがと抗議する間もなく摘まみ上げられた私は、反対の手でプチプチと外されたボタンによって露わになった谷間へと一直線。 窮屈そうなそこを押し広げてもらって爪先からスッポリ埋まると、トクントクンと優しく脈打つ温かい柔肌に押し潰されない程度に全身をむにゅりと包まれて天国のような心地だった。 「なにこれ…凄く、気持ち良…」 『お待たせー!いやー、部活が長引いちゃってさー!』 「!?」 あまりの気持ち良さに寝そうになった私の意識を叩き起こしたのは、突然やってきたかと思えばそのまま向かいの席に座った巨大な女子高生の大きな声だった。 首元のリボンの紐を緩めながら手に持っていた巨大なスマホを乱雑にテーブルに上に放り投げた彼女は、そのまま上半身をテーブルの上にぐでーんと伸ばしながらこちらへ向かって倒れ込んでくる。 「え、待って、そこにはっ…」 『ママー!早く会いたかったよー!』 「わぷっ!?」 今私が包まれている人の娘らしい美少女はその綺麗な顔を開いたままの胸元に擦り付けてくる。 母娘にしては行き過ぎたスキンシップに巻き込まれる形になった私は、圧倒的に大きな小顔に擦り潰されそうになる恐怖よりも彼女の巨体の下に消えていったママたちの安否が心配でならなかった。 「ママっ!ママぁ!!!」 『…ん?ママの谷間に何か居る…?虫?』 『虫じゃなくて人間の女の子ね。あと、テーブルの上にも居るから体を起こしなさい。』 『え、マジで?ヤバっ、潰しちゃった?』 一応気にしてはくれているのかガバっと跳ね起きるように身体を起こした彼女の下、再び光が当たったテーブルの上では私のママを初めとしてどうやらみんな無事のようだった。 一安心した私はこの子もお母さんと同じで脅かしただけなのかなと思いながら視線を上げてみると、彼女はブレザータイプの制服の裾を引っ張ってしきりに何かを確認している。 『…うん、シミとかついてなさそうかな。ふぅ、良かったぁ。制服汚しちゃうとママに怒られるし。』 「………え?」 その発言の意味を最初は理解できなかった。 しかし、彼女が私たち人間の命よりも制服の汚れ、もっと言えば母親から怒られることのほうを心配していたのだとわかって、やり切れない感情がフツフツと沸いてくる。 『というかなんで人間が?今夜のオモチャ?』 『今日はママ同窓会だって話しておいたでしょ。ここに居るのは私の大切な同級生とそのお子さん方よ。』 『あぁ、そういえば言ってたね。』 大して興味なさげにそう言った彼女はするりとリボンを引き抜くと、上のほうからプチプチとボタンを外し始めた。 よほど暑いのかパタパタと手団扇で扇ぎながら母親を真似るように解禁した胸元から、まるで鏡でも見ているかのように私と同じく少女の頭だけが飛び出している。 『ふぃー…あっつぅ…』 「こん、のっ…こっちは、もっと暑い、っての…!こっから、出しなさい、よっ…!」 『えー、妹の谷間からさえ自力で出られないのぉ?あははっ!ねーちゃんってば貧弱ぅー!』 「なっ…!」 『二人とも。じゃれ合いはその辺にして、まずは挨拶しなさい。』 『はぁーい。』 ☆ ☆ ☆ 「つまり…双子の姉妹なのに、お姉さんは人間のままで、妹さんは巨人だった…と。」 『そーゆーことっ♪』 「双子なのに、同じ遺伝子なのにっ!どうして私だけこんな目に…」 「あはは…大変ですね…」 15歳前後に訪れる運命の日に巨人になる確率はおよそ10万人に1人であり、それは人間から生まれた子でも巨人から生まれた子でも変わらない。 ただ、巨人の娘がまた巨人だったケースはほとんど記録されていないほど珍しいらしく、また一卵性双生児でありながら運命が分かれたこともまた遺伝子説を否定する特異な研究データとして重宝されているらしい。 「私も驚いたわ~。5年前の同窓会に連れて来たときは2人ともずーっと仲良く手を繋いでたものね。」 『そうなのよ~。今でも仲は良いんだけどやっぱり大きさがねぇ。』 「大きさが違うと大変よねぇ。それでも仲良しなんて偉いわ。」 『えへへー。ねーちゃんとは同じ学校に通ってるんだー。』 「こ、こらっ!相手は年上なんだから敬語使いなさいよっ!それに私は好きで巨人の学校に通ってるわけじゃっ…」 『あぁ、人間はみんな子供に見えちゃって、つい。ねーちゃんもべりーきゅーとだぞっ♪』 「痛っ、やめっ、つつくなぁ!!」 言うまでもなく人間と巨人が生活を共にすることは極めて困難なので、巨人になった人は巨人専用の学校へ転校になるのが基本だ。 逆に人間が巨人の学校に通う分には物理的な制約がないため禁止されているわけではないものの、例え大切な親友や恋人と離れ離れになったとしても命を賭けてまで転校する人なんてほとんどいるはずもなかった。 「凄いです…私は巨人の学校なんて、想像するだけで怖くて行けないです。」 「だから、私だって好きで行ってるわけじゃっ!…って、初対面なのにごめんなさい。妹への態度を引きずっちゃったわね。」 『え~そんなに私のこと好きなんだぁ?愛されてるなぁ~。』 「もう、つつくのやめなさいってば!こっちはけっこう痛いんだからねっ!?」 「あはは。でも、そんな場所に入って一緒に来るなんて、そこまで仲の良い姉妹が居るのは羨ましいです。」 『でっしょー?あ、そういえばさっきママのおっぱいに埋もれてたもんね。好きなの?』 「そ、そういうわけじゃ!でも、フカフカで最高でしたぁ…」 『2人くらいなら入ると思うし…うん、お近づきのしるしにご招待してあげよう♪』 「え、でも、きゃあ!」 遠慮というよりも彼女の性格に対する恐怖心が勝って伸ばされた右手から逃げようとしたものの、当然ながらあっけなく摘まみ上げられて胸元へと連行される。 さすが母娘だけあって大きさまでソックリなのか高1とは思えないほど発育の良い双子山が並んでいて、それらが作り出す渓谷に居た先客の隣にお邪魔することになってしまった。 「お邪魔します…と、いうか、え、その格好…」 「うぅ…言わないでぇ…」 さっきまでは顔しか見えていなかったからわからなかったけど、その中に隠されていた全身はなんと何も身に着けていなかった。 身体のサイズ以外は妹さんに瓜二つな彼女もまた全体的に発育が良く、もじもじしながら必死に隠そうとしても片腕だけでは零れそうになっているそれに思わず視線が惹き付けられてしまう。 『にっしっし♪うちのねーちゃん可愛いでしょ?あ、でも私のだから盗っちゃダメだよ。』 「私はあんたの所有物じゃないって何度言えばわかるのよ!」 『えぇ~?ねーちゃんこそ自分の立場がわかってないじゃーん。もしかしてお仕置きされたいのかにゃー?』 「ち、ちがっ!っていうか、今は私だけじゃないし、ダメに決まってっ…」 『んふふ~、問答無用~♪』 「「むぎゅっ!?」」 私たちを見下ろす瞳がじとーっと細められたかと思えば、彼女は楽しそうに笑いながら自分の胸を両手で揉みしだき始めた。 ついさっきまで人をダメにするクッションのように優しく受け止めてくれていたその両胸は、首から下のすべてをピクリとも動かせないほど強烈に圧迫してくる凶器へと変化し息が出来なくなりながらもみくちゃに翻弄されてしまう。 『んんっ♪2人居ると揉み心地が違うなぁ~。』 突然の事態にどうすることも出来ずただされるがままでいた私の身体へ抱き寄せるように2本の腕が伸びてくる。 混乱した頭のまま縋るようにその腕の間に飛び込むと、優しく抱きかかえられたその時になって初めてまともな呼吸をすることが出来た。 「大、丈…夫…?」 「はい、なん、とか…」 それでも全裸の美少女に命を助けられたことに感激する余裕もないほど苦しい状況に変わりはなかった。 そうやって上から聞こえてくる終始楽しそうな声によって巨人との圧倒的な力の差と自分たちの無力さを突きつけてられ凹んでいると、突然圧力が弱まって明るくなると同時に現れた2本の巨大な指に摘ままれる。 『あんっ♪ママってば大胆~♪』 『こーら。お姉ちゃんだけならともかくよそ様の子にそういうことしないの。大丈夫?』 「生きてますぅ…」 「私もだいじょ…っていうか、私ならともかくってなんでっ!?」 ☆ ☆ ☆ ひとまず休憩も兼ねてお外に連れ出してもらった私は改めて2人とお互いのことを語り合うことにした。 本来の目的はお母さんのほうと親しくなること…だった気がするけど、ママも止めに来ないし私としても同世代の子と話す方が楽しいに決まっている。 「なるほど…だから裸だったんですね…」 「そうなの!そのせいでここからは出れないし、暑くって仕方ないんだから!」 『冬は暖かいって喜んでたくせにぃ。』 「うっ…それは否定しないけど…」 大きな指でほっぺたを優しくツンツンされながらも恥ずかしそうに肯定するその様子は思春期女子の照れ隠しそのものだった。 人間と巨人、サイズこそ違えど確かに通じ合っているものがあるのだとこちらまで微笑ましい気分になる。 「でも、ちょっと安心しました。もしかしたら一方的なんじゃないかなって思ってたので。」 『えー!私たちは生まれてからずぅーーっと相思相愛のラブラブなのにっ!ね?』 「…まぁ、ちょっと乱暴なところとか私の意思を無視してくるところとか自分ばっかりお母さんとイチャイチャするところとか、そーゆーのを除けば、だけど。」 「確かにすっごく仲良しですよね。私もママとは仲良いほうだと思いますけど、あそこまでベタベタは出来ないっていうか。」 『ん、だって小っちゃい頃からずっと憧れだったからね。他の子みたいにママと”普通に”過ごすことが。』 「…人間と巨人じゃ、一緒に寝ることはもちろん、手を繋ぐことさえ出来ないから。」 「あっ…」 私とママとの間にあった数々の当たり前は、彼女たちにとっては当たり前ではなかった。 そんなことを考えて少ししんみりしてしまった私を気遣ってか、2人はまたさっきまでのようなじゃれ合いを始める。 『だから、これはその反動?ってやつかなー。それにママはなんでも出来るすっごい人で私の自慢だもーん!』 「だからってあんたばっかりずるい…」 『もう、ねーちゃんてば仕方ないなー。ママー、はい、ぱーっす♪』 「ちょ、なに、きゃああ!!」 「えええええ!?」 胸元に手を突っ込んだ彼女が何をするのかと考えている暇もなく、テーブルの上空数mの高さを全裸の美少女が飛んでいく。 そのまま硬い地面に叩きつけられれば間違いなく命がないであろう彼女を待ち受けていたのは、同じように大胆に開かれたままだった対岸の渓谷だった。 「むにゅっ!!」 『こら、お姉ちゃんを投げないの。落としたら死んじゃうんだから大切に扱いなさいとあれほど…』 『気を付けてるってー。それよりねーちゃんもママとイチャイチャしたいんだってさー。こんな感じに♪』 「わ、わわっ!?」 至極真っ当な指摘にさえ悪びれる様子のない彼女はニヤニヤしながら真っ直ぐ両腕を伸ばしていく。 それに伴って大きく身を乗り出した彼女の巨体が私たちの上を覆い隠し始め、彼女側に居た私は身の危険を感じて逃げざるを得なくなる。 『ほらほら、ねーちゃん気持ち良いかーい?』 「むー!むー!!」 逆さまに突き刺さったままのお姉さんごと自分の母親の胸を揉みしだく彼女の姿はどこまでも愉しそうだった。 言葉にすればとんでもない事のはずなのに、美少女と美女が戯れている光景というのはどこまでも絵になるものでズルいとしか言いようがない。 『んっ…やめな、さいっ…』 『ママのほうが気持ち良くなっちゃった~?今日はお昼からヤっちゃう?』 『みんな、見てる、のよっ…』 『あぁ…だからそんなにこーふんしちゃってるんだ?ママのえっち♪』 『んむっ…』 「おおぅ…」 母娘にしては度が過ぎたスキンシップ程度だったものがついに一線を越え、それを見ていた私の口からは思わず声が漏れる。 それでも未だキスの経験さえない私にはあまりにも刺激が強く火照った顔を冷ますように視線を下ろしたものの、20倍スケールの情事はイヤラシイ音で空間そのものを支配していてどこにも逃げ場なんてない。 「あらあらお熱いわねぇ。貴女はこういう相手いないの?」 「ってママいつの間に!?というかどうしてそんなに余裕なのぉー!?」 「そりゃ経験値が違うもの。それにしても…幸せそうで良かった…」 「ママ…?」 親友が愛娘と唇を貪り合うような濃厚な口づけを繰り広げているというのに、それを見上げているママの横顔はどこかここではない遠くを見ているみたい。 その理由が気になって聞いてみようと口を開きかけたとき、ひと際大きなリップ音がするとともに私の頭にポタリと何かが零れ落ちてきた。 「ひゃっ!何これ…生暖かくて、トロっとしてて…」 『ん?あぁ、ごめん、零れちゃった?私とママの愛の結晶♪』 『…もう。私はちょっとお化粧直してくるから、これで拭いておいてあげなさい。』 『行ってらっしゃーい。お姉ちゃんによろしく~♪』 「…?」 ☆ ☆ ☆ 「私は…このハンバーグセットで。」 『それ美味しそうだなー。私にも分けてよー。』 「それはいいですけど、人間用なんて一口でなくなっちゃうような…」 『そうだねぇ。足りなさそうだし一緒にもぐもぐしちゃうかも。』 「そういう冗談言うときは真顔はやめてくださいよぉ!?」 『にひひ♪』 店員さんにそろそろご注文をと催促された私たちは、ご丁寧に用意されていた人間用メニューからそれぞれ食べたいものを見繕っている。 怖い冗談を口走った彼女は巨人用のメニューを開くことさえしなかったので、幸いにも押し潰されないようにテーブルの上を走り回る必要はなかった。 『お待たせ…あら、注文してたのね。私はサイコロステーキにしようかしら。』 『ママそれ好きだねー。それじゃ私もいつも通り小女子(こおなご)の踊り食いにしよっかな。』 「なんですかそれ?」 そんな名前の食べ物は初めて聞くので好奇心からそれについて訊ねてみた。 すると待ってましたと言わんばかりにニヤついた彼女がメニューを開いてこちらに見せようとした途端、バタンと勢いよく閉じられると同時に伸びてきた腕の方からか細い叫び声がする。 「こらっ…人間の…前で、そのメニューは…ダメ、って…」 『あははっ!ねーちゃん息絶え絶えじゃん!お手洗いでママとナニしてたのかにゃー?』 「う、うるさいっ!」 『はいはい。お姉ちゃんあげるから早く決めてちょうだい。』 『んじゃ牛の丸焼きでー。これなら文句ないっしょ?』 「…改めて、凄い家族だなぁ…」 母娘の谷間から谷間へと家族であるはずの全裸の美少女がまるで物のように行き交っていることもそうだけど、それ以上にお互いの距離感の近さが際立っている。 いくらママのことは大好きでもそーゆー目で見ることなんて想像できなくて、巨人になることは身体的なだけではなく心理的な変化までももたらすのかもしれない。 「ママたちはあっちの人間用テーブルで食べるけど貴女はどうする?」 「そんなのあるんだ。それじゃ私もそっちで…」 『えー。オムライス分けてくれるんでしょー?一緒に食べようよぉー。』 「そうね。せっかくのお友達なんだし、そうしなさい。」 「え、ちょっ、ママぁ!」 いくら叫べども虚しいばかりで大きな指に捕まってしまった私とママの距離は開いていく一方だった。 致し方なく残った私を見下ろすニヤニヤした笑みに不安を覚えながらもテーブルの端へ移動してすぐ、そのど真ん中に私たちの家より立派なランチプレートが運ばれてくる。 「…牛の丸焼きって本当に名前そのままなんだ…」 『ん?当たり前でしょ。あ、食べてみたいとか?』 「いえ、お構いなく…」 『まぁ人間には食べづらいよねー。あっちはどう?』 「えーっと…それ、サイコロステーキ…なんですよね…?」 『ええ。一口サイズで食べやすいし、私みたいな歳だとこっちが良いわね。頂きます。』 「そ、そうなんですね…」 巨人サイズのフォークでグサリと突き刺されたそれは上品に口元へと運ばれた途端、小さく開かれた唇の間へと呆気なく消えていく。 そのままもしゃもしゃと咀嚼されている肉の塊は、私が膝を抱えて丸まった状態より少しだけ大きかった。 「やっぱり巨人の食事はスケールがちが…」 「やめ、やめなさいってば!!」 『んふふ~。美味しそう!いただきまーっす♪』 「…えぇっ!?」 悲鳴が聞こえたのは後ろではなく真上からで、右手から吊るされた牛の丸焼きにまるでトッピングのような状態で表面に貼り付いていた。 それでも重力に逆らいながら必死に登っていく彼女の足元では、巨大な歯が勢いよくガチンとぶつかるたび人間の何倍も大きいはずの牛さんがむしゃむしゃと喰い千切られていく。 『おいひー。ねーひゃんのはひはふふ。』 「食べながらしゃべらないの!!っていうか私の味がしたらダメでしょ!!ちょっと、きゃあ!!」 『はむんむ~♪』 「マジか…」 口の中には細切れになった牛さんが残っているはずなのに、ちゅるんと下半分を飲み込まれた彼女まで一緒にもっちゃもっちゃと味わわれていた。 当然ながら噛んだりはしていないのだろうけど自分と同じ人間が加えられたまま咀嚼し続ける巨人という構図は見ているこちらまで本能的な恐怖を呼び覚ます。 「えーっと、その…お味は…?」 『んふふー♪』 「ひゃっ!ちょ、そこはっ…んんっ…!」 お口の中までは見えないが牛そっちのけで舌を這わされているであろう彼女はそこから抜け出そうと必死に唇を叩いている。 しかし、それはまるで効いていないどころか逆に少しずつ呑み込まれていって、今ではその大きな胸がストッパーとなって辛うじて引っかかっているようだった。 「こらっ、中に詰める、のは、ひゃんっ!」 『…ん。ね、約束。オムライス一口ちょーだい?』 「えっと…巨人基準で?」 『んーん。人間基準でいいよ。ほら、あーん。』 「は、はいっ、わかりましたっ!」 口の中の物をあらかた飲み込んでテーブルに顎を下ろした彼女の口がガバっと大きく開かれる。 急かされているように感じスプーンに一口分のオムライスを載せ慌てて近寄った私を出迎えた全裸の美少女は、どうやら怪物のような大きな舌で押さえられていて動けないようだった。 「近くで見ると、こんなにすごい…」 綺麗な白い歯が整列している中、所々にさっきまで咀嚼されていたと思しき肉の残骸が散らばっている。 ニチャアと幾本もの糸が柱のようにかかりその奥から時おり生暖かい空気が吹き付けてくるそこは、紛れもなく巨大生物の捕食器官として矮小な生物の本能を無意識に支配していた。 「…私なんて丸飲みに出来そう…」 「バカっ!そんなこと言うと本当に…!」 『ひへほひーほ?』 「えっ…」 なんて言ったのか聞き取れずぼーっと突っ立っていた私の背中をトンッと大きな何かが突き動かした。 突然のことに対応しきれず前のめりに突っ込みそうになった私の腰は、下の方から伸ばされてきた綺麗な両腕によってギリギリのところで押しとどめられた。 「危ないじゃない!ホントに食べられちゃうわよっ!?」 「え?まさか、いくら何でもそんな…」 『あえ?ひあっあ?』 「はぁ…とりあえずここから出して。私たちもご飯にしたいから。」 『ん。』 結局何が起こったのかわからないまま彼女の手を取り唇からちゅぽんと引き抜いて遠ざかる。 聞かれないようにと手早く耳打ちで教えられた内容に驚きながらオムライスに向かって歩いていく。 『やっぱり味わかんなかったー。でも、オムライスありがとね。』 「いえ…あ、巨人用オムライスってないんですか?」 『残念ながら。色々品種改良とかはしてるらしいんだけど、巨人サイズのお米はまだ出来ないんだってー。』 「なるほど…」 単純計算で人間の8,000倍も食べなきゃいけない巨人による食料問題解決のため、ゲノム編集技術を用いた各食物の巨大化や生産量増加の改良が行われているらしい。 絶対量の改善は目覚ましいものがあるため問題そのものは解決傾向であっても、量の次は質が問題となるのは自明の理だった。 『だからまぁ私たちは肉を食べることが多くなるんだよね。人間と違って切る前のやつだけど。』 「巨人だって元は人間なのに、急に同じようなものばっかり食べることになるなんて可哀そうですね…」 『ん?んー、まぁ、そうかも?ふふ、優しいんだね。』 「いえ、もし自分がって考えたらショックだなって。オムライス好きなので。」 『なるほどねぇ。でも、巨人だから食べられるものとかもあるよ?』 「ちょっ…」 『例えばさっきの丸焼きも…どしたのねーちゃん。』 「…なんでもない。」 ☆ ☆ ☆ そんなこんなで同窓会という名の楽しいお食事会は終わり、気付いたときには1つ年上であるはずの2人ともタメ口で話せるまでの仲になっていた。 この関係が当初の目的であるコネ入社に役立つかどうかは疑問だけど私としては新しい友達が出来たことのほうが率直に嬉しい。 「楽しかったわね。みんなけっこう子育てが忙しい時期も過ぎたみたいだし、次はもっと早くしてもいいんじゃない?」 『それ賛成。私としては毎月…いえ、毎週でもやりたいくらいだわ。』 「何言ってるのよ一番忙しいくせに。さて、バス帰宅組は店員さんに連れて行ってもらえるみたいだからそっちに集まってね。」 「…?」 途中から持ち運ばれたとはいえみんなバスに乗ってきたわけだから、当然帰りもバスだろうと思っていたのでママのその一言に妙な引っかかりを覚える。 とはいえ私には関係ないことだろうと流れに身を任せるように歩き出そうとしたら、さも当然のようにドスンと降ってきた巨大な手のひらに進路を遮られてしまった。 「あの、ちょっと。帰れないんだけど…?」 『あー、ねーちゃんが帰したくないって。ね?』 「私のせいにしないでよ!…でも、もっと話したかったなって思ったのは本当。」 「それは嬉しいし私も同じ気持ちだよ?でも、連絡先も交換したんだし話ならいつでも…」 『んー、んー………ま、理由なんていいや。まだ帰してあげなーい♪』 「ええっ!?」 開き直った彼女によるまさかの実力行使とまさかの拉致宣言だった。 巨人に真正面から物理的に対抗できるはずもなく、捕まってしまった私を置いていくように他のみんなは次々と配膳用トレーの上に載せられていく。 「全員載ったかしら?」 「ママぁ!貴女の娘がまだここに残ってるよ!?」 「あらあら。すっかり仲良くなったわね。全員揃ったみたいなのでお願いします。」 「えええええっ!?っていうか、ママだって載ってないし!」 そんな私の必死さが面白かったのかクスクスと抑えきれない笑みをこぼした店員さんがバス帰宅組を丁寧に持ち運びながら立ち去っていく。 残された私たち2組の家族はどうやら母組と娘組に分かれて帰宅するしかないようだった。 『ふふっ、ママたちはこれから大人の打ち上げなの。』 「あぁ…このお店にはお酒なかったですもんね。」 『私たちもJKらしく寄り道して遊んでくるー!』 『そう。人間だけだと危ないからちゃんと責任もって送り帰してあげなさいね。』 『はぁい。』 「遅くなるなら連絡するのよ~。」 「ママこそあんまり飲み過ぎないようにね~!」 青春を取り戻したかのように楽しそうなママたちを見送って、これからどうしようかとノープランな私たちは話し合いを始める。 さすがに申し訳ないと注文したドリンクバーをお供に中身のない会話を続けること約2時間、いかにも女子高生っぽい時間を過ごせたことに2人は満足そうだった。 『ふぅー、楽しかったー!来て良かったね、ねーちゃん。』 「そうね…あんたが私とお母さん以外に興味持ったのも久しぶりに見た気がする。』 「え、そうなんだ。なんか照れるなぁ。」 『人間の友達なんて久しぶりだもん。巨人になってからはねーちゃん以外の人間とは…接し方が変わっちゃったから。』 「まぁ、こんなに違うと大変だもんね。私ももし巨人になってたら人生変わっちゃってたんだろうなぁ。」 「あれ?もう人間で確定?一つ下じゃなかったっけ。」 「来週には16歳だから。もうほとんど確定みたいなもんだよ。」 『あれぇ?いいのかなぁ?そんなフラグ立てちゃって。』 「いやいやさすがに…あ、でももし私も巨人になったら同じ学校通えるね。」 『それ良いね!学年は違うけど一緒にねーちゃんで遊ぼう!』 「私”と”でしょ!!…まったく。それを言うならもう一つの可能性だって残ってることを忘れないようにね。」 「…そうだね。」 もう一つの可能性…人間は巨人にも小人にもなり得るということ。 確率は同じく10万分の1という極めて稀なレベルではあるけれど、この世界には巨人と同じ数だけの小人が居て、当然ながら人間としての社会生活は送れなくなる。 『…ちょっと、ねーちゃん。要らないこと言うから湿気ちゃったじゃん。』 「ご、ごめん…そうだ!来週には16歳の誕生日パーティをしましょ!」 「ありがと。学校の友達ともやる予定だけど、2人ともしたいな。」 だから私たちには16歳という特別な誕生日を盛大に祝う習慣がある。 巨人になりたかった子には残念記念日だったりもするけれど、普通に人間として過ごせることを喜び合うのが一般的な感覚ではあった。 『それじゃ私がケーキ作ったげる!全身でダイブできるようなやつをね!』 「わぁ…!それ確かにやってみたいかも!」 「…今度は私をトッピングにしたりしないわよね?」 『えー。あったほうが美味しそうじゃん。そう思わない?』 見上げるほど大きくてシンプルなホールケーキの頂点に据え付けられているのは、衣服の代わりに生クリームを身に纏った美少女。 恥じらいで真っ赤に染まった肌はまるでイチゴのようで、そっと舌を這わせて一舐めすると…うん、とっても美味しそう。 「…思う、かも。」 『ふふっ、決ーまりっ♪』 「裏切り者ぉー!?」 ☆ ☆ ☆ そうしてそろそろ門限が迫ってきた私が話を切り上げようとした所で、話題はママたちへと移っていった。 お酒はまだ飲んだことないからわからないけど、あんなに楽しい食事会の後に行きたくなるくらいなのだからよっぽど良いものなんだろう。 『そういえばママ、今日の同窓会すっごい楽しみにしてたんだよ。昔の恋人に会える、って。ね?』 「あんたは忘れてたでしょうが。」 「え?もしかしてそれって…」 『たぶん、ね。今ごろお楽しみなんじゃないかなー。何年経っても好き同士なんて羨ましいよね。』 だけど、実際にはお酒が目的なんじゃなかったらしい。 言われてみれば私の問いかけに肯定してなかったし、他の人も混じらず2人っきりだったのは二次会としてはおかしいのかも。 「私には衝撃の事実だよぉ…っていうか、うちではパパが帰りを待ってるはずだし、2人にだってお父さんが居るんじゃ…」 『んー、少なくとも私たちのパパはもう居ないからね。こっちは浮気にならないよっ♪』 「そ、そうなんだ…なんか、ごめん。」 『別に謝らなくても。ね、ねーちゃん。』 「うん。だって私たちは生まれてからずっとお母さんしか居なかったから。それが普通っていうか。」 「え?」 『私たちのパパはねー…私たちを作るとき、ママの中で死んじゃったらしいよ。』 「…!」 「こ、こら!その話はっ…」 『言って減るもんじゃないし。言う相手くらい選んでるよ?』 「そうだけど…まぁ…いっか。」 『子作りのため命懸けで奥まで入り込んでたパパは、気持ち良くなったママにきゅぅぅって締めあげられて全身の複雑骨折と内臓破裂で手遅れ状態。でも、引っ張り出されたときは凄く幸せそうな顔してたんだって。』 「そう…なんだ…」 人間と巨人が愛を交わす際にそういう事例があることはニュース知識として知ってはいた。 そりゃそうだよねと他人事にしか感じていなかったその話も、この2人にとっては無縁ではない、けれども大切な過去の一部なのかもしれないと思えば言葉が出てこない。 『実際、加減がけっこー難しいんだよねぇ。私もねーちゃん入れる前に何回も練習したし。』 「…え?そうだったの?」 『あれ、言ってなかったっけ?でもパパの話聞いてたのにいきなりねーちゃん入れるわけないでしょ。』 「そ、そっか…抵抗したのに無理矢理だったけど…意外と考えてくれてたんだね。」 『む、失礼だなぁ。こっちだって大変なんだよ?男はそこそこ持つけど、女の子って柔らかいからすぐ折れちゃうし。ねーちゃんは替えのきかない唯一無二の大切な存在なんだからね。』 「…ありがと。でも、もう私以外入れちゃダメ…だよ?」 『…くぅ~!見た?今の可愛いねーちゃん。ズルいよね?』 「はい。なんでも言うこと聞いちゃいそうになります。」 私から見れば、2人とも同じ顔で同じくらいズルい美少女なんだけど。 それなのに性格は全然違って、だからこそ相性が良いというのは他の誰も入る余地がないほどでやっぱり羨ましい関係だった。 『ま、私は言うこと聞いてあげないんだけどね。ねーちゃんが嫌がるなら他の子と一緒に入れちゃおっかな~♪』 「あんたねぇ…でも、それなら…」 「…え、私?」 『あはっ。これも何かの縁かな。さて、私がお家まで送って行ってあげるのと、このまま私たちの家について来て一緒に一晩過ごすのと、どっちがいい?』 「えええええ!?」 私が暮らしている住宅街はいわゆる旧市街にあるので、かろうじて巨人用道路が整備されているとはいえお世辞にも余裕があるとは言えない。 近所には幼稚園や公園なんかもありそれなりに人通りがあることを考えれば、彼女が来ることによって起こり得る万が一は避けたかった…というのも本音ではあるけれど。 「…明日は日曜日だし、友達の家に泊まるくらい普通、だよね…」 『決まりかな。良かったね、ねーちゃん。』 「…うん。」 「あ、可愛い。」 『ねーちゃんはあげないからねー?でも、ぎゅっとするくらいは許してあげる。ほら、帰るまではここに入っててね。』 「わ、わわわっ!」 美少女の胸の谷間へと運ばれて、そこに居たもう一人の美少女に優しく抱きとめられる。 こうして今日何度目かわからない幸福な状況に頭を茹らせながら、出来たばかりの友達の家へと帰途につくのだった。 完
Comments
コメントありがとうございます。 直接の続編については、構想はありますが書くかどうかは未定です。 好きなシリーズなので色々と書きたい気持ちはあります(/・ω・)/
もんてすきゅー
2021-07-26 12:20:28 +0000 UTCIsn't there a next episode?
spring
2021-07-26 02:14:16 +0000 UTCこちらも誰かのインスピレーションになるものを描けて嬉しいです!ありがとうございます!
あき Aki28
2020-11-09 20:40:44 +0000 UTCありがとうございます。 今回は色々と匂わせるだけ匂わせて想像に任せるような感じに作りました~。 もうお察しかもしれませんが、あきさんが描かれたとあるイラストにビビッと来たのが構想のきっかけですので、このような場所ですがお礼を申し上げます(o*。_。)oペコッ
もんてすきゅー
2020-11-08 09:30:33 +0000 UTC最高でした! 主人公が巨人になって、ママを胸に挟む展開とか、色々考えちゃいました!
あき Aki28
2020-11-08 06:59:52 +0000 UTC