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【3,902字】引きこもり少女が美人死神とコタツでくつろぎながら黒いノートに名前を書き込んでいくお話(タイトル詐欺)

※このお話には不謹慎かもしれない表現が含まれています。  なお、このフィクションの舞台設定は現実とは一切関係なく、  何がしかの国家レベルで大変な事態が起こってしまっている架空の二ホンです。 [newpage] 『さて、本日もこのコーナー、引き続きこの方に来ていただいております。○○大学特任教授、××さんです。』 『よろしくお願いします。』ニコッ 「またこのおばさん出てるじゃん。今や売れっ子タレントさんだねー。」  平日水曜日の朝9時を少し回った頃。下半身をコタツに溶け込ませ分厚い部屋着を着込んだ一人の少女が天板の上にぐでーんと身を投げ出しながらそう呟いた。年の瀬も迫り誰しもが忙しなくなるこの時期も、学校に通わず友達や家族も居ない少女にとっては普段と変わらない1日に過ぎない。 『さて、政府が打ち出したこの目玉政策には世論も反対派が多数を占めるようですが…』 『はい。専門家の立場から言わせて頂ければ、この「そうだ、旅に出よう」政策はすぐさま停止して頂きたいですね。』 「ふぅん。難しいことはよくわかんないけど、今は旅行行っちゃダメなんだ。ま、私には関係ないか。」  平日朝の時間帯にとあるチャンネルにて放送している報道番組風バラエティ番組にほとんどレギュラーのような頻度で出演しているこの女性教授は、政府に対して極めて批判的なスタンスと大変魅力的な外見によって一部の層から非常に高い人気を博していた。最近ではテレビ出演時の服装やメイクの雰囲気も当初と比べて傾向が変わってきており、極一部の層からは可愛くなったと大好評である。 『最近では「自粛警察」なんて言葉も出てきましたが、東京を代表する観光地である浅草寺のこの様子をご覧になっていかがですか。』 『もう…見るからに密ですよね。本来であれば、この辺りも誰一人居ないくらいが良いんですけど。』 「ふむふむ。そういうことなら、ヒキニートのこの私、いっちょ世間のために働いてあげるとしますかー。んんー…」  そう言ってコタツからは出ることなく右手を限界一杯まで伸ばし、パソコンの上に乗っかっていた真っ黒なノートを引っ張って来る。表紙にカラフルポップな丸文字で『ですのーと☆』と印字されたその冊子を天板の上に乗せておもむろに中身を開いた途端、ぽんっ♪と小気味よい効果音とともに長身の美女が部屋の中に突然現れた。 「あ、おひさー。元気にしてたー?」 「貴女ねぇ…私がどういう存在かってこと、理解してないでしょ?」 「んー?綺麗なお姉さんだなぁって思ってるよ?それよりそんなカッコじゃ寒いでしょ。ほら、隣入っておいで。」 「……ん。お邪魔するわね。」  彼女の纏う漆黒のドレスは肌表面の3分の1程度しか覆えておらず、室内とはいえ12月の日本の寒さは到底防げないものだった。ミニスカートから伸びる1m近い生足を小さく折りたたんでコタツの隣に入り込んだ彼女は、人類が発明した史上最悪の家具の魔力にたった一瞬のうちに陥落し、その綺麗な小顔をだらしなくへにゃらせている。 「それでぇ~…今日は誰が狙いなのぉ~…」 「んー。特定の誰かっていうか、言うことを聞いてないたくさんの悪い人、かな?」 「ふぅん~?」 「名前なんてわかんないし、とりあえず…『浅草寺らへんに居る人全員』っと。』  お気に入りのペンで白紙のノートにそう記載した途端、現実の浅草寺付近に居た観光客や地元民など合わせて数千人が一瞬で姿を消してしまう。つい先ほどまで浅草寺の様子を放送していたテレビ番組も今は中継からスタジオに戻っていて、毎日新しく超巨大パネルを作り直しながらも昨日とほとんど変わらない内容について熱心に議論していたためにその出来事に気付かれることはなかった。 「ねぇ、縮小転移してくれたー?」 「んぅ…それはもちろ…え、3,400人も居るんだけど?」 「わぁ、そんなに居たんだー。」 「相変わらず他人事なんだから…で、どこに飛ばすのかしら?数も数だしこのまま虚空へ消し去ってもいいけれど。」 「そうだなぁ…あ、良いこと思いついたっ♪」  ☆ ☆ ☆ 『…で、こちらのグラフがここ1週間の推移、ですかね?はい。これをご覧になっていかがでしょうか。』 『そうですね。やはりターニングポイントとしてこの日付の…』  テレビの中、意見を求められた女性教授はパネルの前まで移動しながらも、普段より少しヒールが高めなパンプスを履いた両足を少しモジモジと擦るように動かしている。それらはあまりに些細な仕草であったために、たくさんの視聴者のうちでも気付いたのは極度の足フェチの変態さんと、原因を作り出した少女くらいのものだろう。 「あはは!見てみて!あのおばさん、すっごく足痒そう!」 「貴女…可愛い顔してホントやることエグいわよね…」  たまたま浅草寺付近に居たというだけの理由でおよそ2mm弱、1000分の1という極小サイズに縮められてしまった大勢の人たちは、今もテレビ内で解説を続けている女性教授が履くストッキングの中へと飛ばされていた。暖房が効いたスタジオで一時間以上強い照明を浴びながら立ちっぱなしだったこともありパンプスの中は足汗でムレムレ状態となっており、総数が多すぎるがために数十人単位で足指の間に詰め込まれる形で突然現れた彼らにとってそこは五感のほとんどを支配された地獄のような場所となる。 (一体何が起こったんだ!?) (ケホッゲホッ!どこ、なのよ、ここはっ…!?) (息が…息ができねぇ…) (くそっ!!このドデカい壁は何だ!!)バンバン 『(んんっ…何か痒いわね…)』グニュブチュ  小人たちのささやかな抵抗を痒みとして感じた彼女が無意識に足指同士を擦り合わせたことで、そこに居た数十人の老若男女は何が何やらわからないうちに圧倒的な力で厚さ数nmのペースト状に挽き潰されてしまう。彼女が足指を動かしたのは僅か1cmにも満たない程度だったが微生物レベルの憐れな小人たちにとっては逃げ場のない処刑場であり、執行の証として白紙のノートへ膨大な数の名前が転記されるのと同時に次の犠牲者が供給され続けていく。 『(掻いても、掻いても、痒い…まさか、水虫かしら…)』  足指の間にある数mm程度の僅かな隙間は、足の表面から剥がれかけた角質による特有の臭いと濃厚な汗の臭いが充満する高温多湿な密閉空間になっている。そんな場所に2mm程度という極小サイズで数十人ずつ転移されてきた人たちは、自分たちを取り囲む巨大な物体の正体を知ることもなく、彼女が無意識に行った”痒みの原因を取り除く”行為によってビルより巨大足指同士に擦り潰されて肉片へと変わり果ててしまう。 (ママぁ!!ママぁぁぁ!!) (わぁぁぁぁああああん!!)  自らの行いが無慈悲な大量殺戮となっているとは想像もしていない彼女の本能的快楽を求める行為の対象は、浅草寺の近くにあったがために巻き込まれてしまった幼稚園や小学校の幼い子供たちでさえ例外ではなかった。 (大丈夫よ!先生が付いてるからね!みんな手を繋いでっ…) 『(んっ…んんっ…)』グチュグチュリ  子供たちから見れば祖母ほど歳の離れている彼女の年季の入った所々硬くなっている足指がカサカサと擦れ合うことで、強く手を繋ぎ合った友達が端から順に小さな悲鳴と共に飲み込まれてブチュリと弾けていく光景は子供たちのか弱い心までもを簡単に破壊してしまう。それでもショックを受けているのもほんのコンマ数秒の出来事に過ぎず、次の瞬間には”足指の痒みの原因”として全身をグチャグチャにされ取り除かれてしまうのだった。 「あとは渋谷にー、羽田空港でしょー。あ、それから京都とか沖縄なんて丸ごと観光地みたいなものだよね。」 「あらあら。このままじゃこの国から人が居なくなってしまいそうね。」  そうして少女がノートに大雑把な地名を書き込んでいくたび、テレビの中の女性教授は痒そうに足をムズムズさせたりパンプスの爪先をトントンと床に叩きつけていた。そしてついには供給が追いつかなくなり更に極小サイズになって数万単位で転移され始めた人々は彼女の土踏まずの下で暗闇に包まれる。しかし、それも一瞬のことで、慣れないハイヒールに足を馴染ませようと重心を入れ替える動作に巻き込まれ、足裏に刻まれた深いシワよりも微小な彼らはその溝の間に踏み固められたゴミとして詰まっていく。 『どうしました?先ほどから足を気にされてるようですが。』 『いえ、少し立ちっぱなしで疲れてしまったようで。お気遣いありがとうございます。』 「ふわぁ~…眠くなってきたし、この辺でいっかなぁ。けっこう頑張ったし、私は満足ですっ!」 「そうね。えらいえらい。」 「でへへー。これで今年は十分良いことしたから、来年は良いことあるといいなー。」 「ふふっ。来年もワタシが一緒に居てあげる。それだけで十分デショ?」 「うん、そうかもっ♪」  ☆ ☆ ☆  次の日。 『なんと、各観光地の人出が昨日比で90%以上減ったとのことです!第三者委員会からの緊急提言が功を奏したのかもしれませんね。』 『それはわかりませんが、いずれにせよ、これで終息に向かうことを期待しましょう。経済よりもまずは命。1も2も3も、何よりもまず命が大切ですからね。』 完


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