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もんてすきゅー
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【2,879字】巨大化していない女性が電話で雑談するだけのお話

※このお話には残酷な表現が含まれています。 [newpage] 「あら、電話。誰からかしら。」  とある平日の真昼間。大きなリビングで優雅でのんびりとした時間を過ごしていた一人の女性のスマホが鳴る。見覚えのない番号でありながらも要件が気になった彼女は画面を軽くスワイプした。 「はい。」 『…”正義の味方”様のお電話ですか?』  そこから聞こえたのは若い少女の声。名前ではなく正義の味方と言う呼びかけに一瞬ピクっとした彼女だったが、次の瞬間には元の表情に戻りさも当然のように言葉を返す。 「ええ。そうよ。」 『…ッ!…隠す気もないってことね…』  突然異世界から訪れ始めた侵略者と、それを撃退すべくどこからともなく現れる正義の味方。そんな不条理がこの世界を襲ってから約半年、正義の味方として活躍する彼女は自分の正体を隠さないことでも有名だった。 「で、私に何か?」 『…一言言いたくて。』 「はぁ…それで?私が何をしたって言うのかしら?」 『私の姉は…たった一人の大切な存在は……昨日、あなたの足の下で短い生涯を閉じました。』  彼女は人類を守るために戦う正義の味方とされている。しかし、身長およそ160mという巨体を誇る彼女は市街地で戦うことを厭わず、足元の市民に気を配ったりすることもない。異世界からの侵略者である50m級の少女たちとの戦闘では、避難民を踏み潰しながら道路上を駆け巡り未だ大勢が取り残されているビルごと長い脚で薙ぎ払う。毎回数万人という夥しい犠牲者・行方不明者を出しながらも彼女を止められるものは存在しなかった。 「そんなの足の踏み場がないんだから仕方ないでしょ。貴女も巨人の視点で街を見下ろしたらわかるわ。」 『なっ…少しは悪びれたらどうなんですか!?』 「あはは。そんなこと考えてたら心がもたないわよ。」 『…ッ!!』  侵略者がこの星を襲ったあの日まで、彼女はどこにでも居る至って平凡なシングルマザーに過ぎなかった。そんな彼女の人生はとある超常の存在によって巨大化能力を与えられて文字通り一変する。特別な武器もなく特別戦闘の素養があるわけでもない彼女に使えるものはその巨体以外になく、狙いすましたかのように市街地に現れる侵略者との戦いによって街が廃墟と化してしまうのは避けられないことだった。 「貴女は私にどうして欲しいの?”人間を踏み潰さないでください”って?」 『…そう思うのが、真っ当な人間の考えだと思います。』 「それは無理ね。私は空を飛べたりしないもの。」 『だ、だったら!せめて避難する時間を稼ぐとか!色々出来ることはあるはずじゃないですかっ!!』 「嫌よ、そんな面倒なの。私にだってさっさと終わらせて帰りたいって気持ちがあるのよ?」 『なっ…そ、それは!!大勢の人の命よりも優先させるものなんですかっ!?』 「私には、そうね。」 『…やっぱりあなたは…あんたなんか、正義の味方じゃないっ!!』  非公式な統計発表では、彼女による被害は犠牲者数において侵略者の10倍、非人的被害にいたっては100倍にものぼると試算されている。彼女への刺激を配慮した政府の言論統制により表向きは好意的な方針を示してはいるものの、市民感情レベルでは当然ながら彼女への反発と恐れが日増しに高まっていた。 「当然よ。そう名乗った覚えもないもの。」 『…姉は…あなたを信じ、尊敬していました。私がどれほど悪口を言っても、そんなことないって、目をキラキラさせながら…』 「…」 『昨日、あなたが現れたときだって…お姉ちゃんだけは、あなたを信じていました…』  昨日、彼女たち姉妹が買い物に訪れていたとある大きな街に侵略者たちが現れた。身長50m級とはいえほのぼのと歓談しながら小人と戯れる彼女たちによる被害がそれほど出ていない状況で、”本当の災厄”がやってくる。驚いた様子で手を取り合いながらも必死に逃げる侵略者の少女たちを、3倍以上も巨大な彼女は悠然と追いかけ回してその巨大な足を踏み下ろす。靴底で胸骨の半分を踏み折られピンヒールによって腹部を貫かれた彼女たちは一人また一人と”撃退”されていく。 『そんなお姉ちゃんを…あんたは…あんたは何の躊躇いもなく踏み潰した!骨も残らないくらいグチャグチャに!!』 「…だから、戦いの最中に小人…人間を気にしてる余裕はないって言ってるでしょ。」 『戦ってる間なら私だって飲み込みます!!でも、でも…お姉ちゃんは…』  50m級の少女たちという侵略者を一方的に踏み躙った彼女は、SNS用の写真を撮影するために最適なスポットを探して歩き回る。戦いのためという大義名分などなくとも未だ無傷な市街地に巨大なハイヒールを踏み下ろすことに抵抗はなく、視線が左手のスマホにしか向いていない彼女の足元では無数の高層ビルが砂の城のように踏み壊されていく。当然ながら、そこで尊い命が失われていくのは彼女の利己的な動機以外の何ものでもない。 『SNS用の写真を撮るためだけに…足をちょっと開いてお色気ポーズを撮るためだけに…あんたのそのでっかい靴が私たちのほうに滑ってきて…』 「それで虫のように潰れちゃったのね。」 『なっ…!そんな言い方!!』 「良いコト教えてあげる。貴女にとってはかけがえのない大切なお姉ちゃんでも、私にとってはお気に入りのパンプスを汚したシミにしか過ぎないのよ。」 『ッッ…!!!』  最初こそある程度は非難を受け止めていたものの、ついには我慢の限界を超えて思ったことをそのまま発してしまう。大切な存在を不条理に奪われたばかりの少女にとってその言葉はあまりにも惨く、心の傷に塩を塗り込まれるようだった。 「私がどんな気分で戦ってると思う?私の思い付きだけで人間社会を滅ぼせてしまう圧倒的な力の気持ち良さがわかる?」 『やめてっ!!聞きたくない!!』 「あははっ!!良い声で鳴くじゃない。お姉ちゃんを踏み潰してあげてよかった♪」 『…鬼!悪魔!!バケモノ!!』 「うふ♪私が写真撮らなければお姉ちゃん死なずに済んだのにねー?私の気まぐれで死んじゃった可哀そうなお姉ちゃん♪」  顔は見えなくともいたいけな少女の涙を啜る声だけがスマホから響き、それを聞いた彼女はどうしようもないくらいに興奮していく。自分の意思一つで大勢の人生を左右する、圧倒的な生殺与奪の権はこれまでも彼女に街を破壊する動機を与えるには十分だった。それでも、たった一人の少女から突きつけられて生々しい感情は、それをすべて凌駕してしまえるほどに強烈に作用する。 「貴女のおかげで興奮してきちゃったわ。お散歩にでも行こうかしら。」 『…は?』 「電話すると相手の位置情報も簡単にわかるって知ってた?」 『えっ、そんな、うそ…』 「うふふ。待っててね。お姉ちゃんに会わせてあげるから♪」 完

Comments

ありがとうございます。 会話ベースで表現するの難しくて自分としては珍しいタイプのお話でしたが良い感じになってれば嬉しいです(๑˃̵ᴗ˂̵)

もんてすきゅー

巨大娘とコビトが会話する中で圧倒的な立場の差が露わになるの、大好きです。

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