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【5,943字】巨大ヒロインたちがオンライン女子会をするお話

※このお話には残酷な表現はそんなに含まれていないと思われます。  ただの女子会だよ? [newpage] 『ん、揃ったね。それじゃあ、始めますかー。』 『ほーい。』 『ではでは。これより、第3回ウルトラヒロインズオンライン女子会を開始しまーす!乾杯っ!』 『『かんぱーい♪』』  梅雨明けと夏の足音が近づいて来ている7月の某日。金曜日の夜19時。  蒸し暑さとは無縁のクーラーが冷やす空間で、1週間を乗り切った解放感と明日から始まる連休への期待感から高まるテンション。そんな熱気を画面越しに共有している数人の女性たちが居た。 『…ん、ん…ぷはぁ…♪やっぱり仕事終わりのビールは美味しいわねっ!』 『あはは!ヨリコさんオバサンくさーい!』 『まだ23よ!!』 『ねー。私はJKらしく可愛くジュース飲んでまーす。』 『ユイちゃん、さっきそれチューハイだって言ってなかったっけ?』 『3%なんて実質ジュースだもんっ♪』 『いーけないんだー。あ、ハジメさんは何飲んでるんです?』 『私は…地元の日本酒を…』 『わぁ!オトナっぽい!!カッコいいー!』  下は16歳の学生から上は23歳の社会人まで、住む場所も年齢も異なる彼女たちには一見して共通点は見当たらない。強いて言えばそのいずれもが性別を問わず惹き付けてしまえるほどの美貌を持つ美少女と美女といった点くらいだろう。  しかし、彼女たちにはただ1つ明確な共通点が存在していた。 『あ、そういえばさ。みんな見た?今週の人気ランキング。』 『見たよー。アキハちゃんまた2位だったね。』 『あら、そうなの?おめでとう!』 『…ありがとうございます。』 『ぷふっ。ヨリコさん、アキハは2位でいじけてるので褒めても意味ないですよ。』 『え?』 『47人中2位ですから…凄いと思いますが…』 『そうよ。ここに居る私たちより上なのにむしろ嫌味になるわよ?』 『ち、違います!嬉しいのは嬉しいんですけど、悔しいっていうか…』 『ずーっとシキちゃんに負けっぱなしだもんねー♪』 『ネット探したらキャプチャあったので貼りますね。』  彼女たちの顔が並ぶ一角に映し出された画面には、”ウルトラヒロイン人気ランキング”と題された表が載せられていた。担当する都道府県とともに彼女たちの顔と名前が載るそのリストは、全国ネットの人気テレビ番組によって彼女たちの知らないうちに作成されたもの。  それに対する彼女たちの感情も各々で喜怒哀楽から無関心まで様々であり、良くも悪くも大衆の娯楽の一つでしかない。 『ほー、5回連続。岩手担当シキちゃんの牙城は揺らがないのかー。さすJK。』 『私だってJKだよ!!』 『何で負けてるのかしらねぇ。』 『シキちゃんはよくCM出てるよねー。』 『それあるかも。ウチらも一応出させてもらったりはするけど関西ローカルが多いし。岩手から全国は凄い。』 『あっれー?じゃあ、東京担当のアキハちゃんはどうして負けちゃうのですかあ?』 『う、うるさいっ!!…理由ならそこに書いてあるでしょ。』 『どれどれ……あっ…』  ランキングに併記されている良い理由と悪い理由の抜粋。  良い理由として多くあげられているのは、ルックスや人柄に関するものであったり、街を守るヒロインであることだったり。そして悪い理由として記載されているものこそ、1位と2位を分け隔てている大きな要因だった。 『”犠牲を多く出し過ぎているから”、ねぇ…』 『CM決まろうとしても、ちょっとでも話が漏れると遺族の人たちからクレームが来て結局ダメになっちゃったりするらしいです。』 『え、そんなことあるの?』 『ん-、他でもあるのかもしれないけど、やっぱり数が多いから影響も、ってことなんじゃない?』 『うわ、かわいそー。』  彼女たちは普段の生活とは別に、週に一度程度の頻度で街を守るために戦う巨大ヒロインとしての使命を帯びていた。人間の100倍、身長160mほどにまで巨大化して戦う彼女たちの巨体は、ただそれだけで強大な武器であるとともに、人間社会にとっては凶悪な災害にもなり得てしまう。  事実として、彼女たちの足元で消えていく命は、日本全国あわせて週に数千から1万を超えるときすらある。その多くは、国内最大都市でもあり人口過密地帯である東京、その担当アキハによるものだった。 『あとはやっぱりアレがまだ響いてるんじゃない?あの交流会のさ。』 『うぅ…それは言わないでよぅ…』 『ごめんごめん。でもやっぱり…思い出すと、笑っちゃいけないのに笑っちゃうよね。』 『ひどーい!』  人気獲得と恐怖心和らげを目的として企画された、巨大ヒロインと地域の子供たちとの交流イベント。既に各地で幾度となく行われ根付いてきた矢先に事件は起こってしまった。交流会のクライマックス、手のひらの上に乗せられて巨人の視点から街を見下ろすという大人気イベントの最中、アキハはあろうことか盛大なくしゃみをしてしまう。 『だって…花粉症なんだもん…』 『うんうん。くしゃみくらい出ちゃうよねーよしよし。』 『ま、企画も悪いよね。結局あれ以来交流会はなくなっちゃったけど、それで正解だよ。』 『実際、誰が最初にやらかすかの話でしょ。人間の脆さ舐めすぎなんだって。』 『ねー。』  アキハの凄まじい勢いの飛沫を全身に浴びたことであっけなく空中へと放り出された50名近くの子供たち。その半数は高度百数十mから地面へと叩きつけられ、残りの半数は慌てて拾い上げようとしたアキハによって力加減もされないまま手のひらの中で握り潰されてしまう。  保護者や関係者が集まっていた足元も彼女が動いたことで凄惨な状況となり、それらの光景の一部始終、僅か数秒の出来事は全国へと届けられ、彼女の人気は一瞬にして転落してしまったのだった。 『でも、未だにけっこう来るんだよね…「人殺し!!」みたいなの。』 『あー、あるある。私も、「お前があそこで転んでなかったら子どもたちは死なずに済んだんだ!」って、言われてもさ。転ぶときは転ぶよねって。』 『そうそう!!大体、片足も入んないようなせっまーい道路を必死に走る身になって欲しいって思わない?何度マンション蹴り倒しながら歩いてやろうと思ったことか。』 『私はけっこう開き直っちゃってるかなぁ。「急いでるからごめんねー。」なんて言いながら普通に踏んじゃう。』 『んだね。足の踏み場がないほうが悪い。』  そう言って巨大ヒロインあるあるとも言える愚痴で盛り上がっているのは都市部を担当する子たちばかり。比較的閑散とした地方を担当する別の子たちは話に参加するでもなく、2本目の缶を開けたり新しいおつまみをレンジでチンしたりと自由気ままだった。 『ちょっと、マリナたち話聞いてた?』 『あ、ごめん。アタシたちそーゆーのあんまないからさ。』 『戦うときも大体街より山とかだもんねぇ。まぁ木とか思いっきりバキバキと踏み潰してるし、もしかしたら知らないうちに動物とかも踏んじゃってるのかもしれないけど。』 『かわいそー!動物虐待はんたーい!』 『ええっ!?』 『あはは!人間より動物なんかーいっ!!』 『でも…共感できちゃうのが不思議…ですね…』 『私たちは人の道を踏み外しちゃってるからねー♪』 『踏み外した先にこそ人が居るんだけどねー。こう、グチャっと。』 『音が生々しいぞー。』  ここに居る彼女たちはいずれも、この1週間の間に一度は巨大化して戦う機会があった。20mを超える靴跡がいくつも刻み込まれたった数分で”被災地”と化したいくつもの市街地では、今この瞬間も行方不明者の捜索活動が懸命に行われている。  彼女たちによって家族や住む場所を失い避難所で身を寄せ合う人々が聞けば発狂してしまいかねないような歓談は、膨大な犠牲を生み出しながらも国や街を守っている彼女たちにとっては大切な日常の一部でもあった。 『あれ?なんかユキミの画面揺れてない?』 『バレた?うん、なんか近くに出たっぽいんだよねー。さっきから暴れてるのが窓から見えてる。』 『いや、冷静だな。出動しろし?』  呑気に受け答えしているその後方、未だ日が落ち切ってない市街地に長い影を落としている巨大な存在。それは、彼女たちが戦うべき相手、異世界からの侵略者。見た目は人間の少女となんら変わらないそれらは、人間の50倍という巨体でもって人間社会を蹂躙する恐るべき存在で、あらゆる武器や兵器が通用しない彼女たちを撃退できるのは巨大ヒロインだけだった。 『えー、だって担当外だもーん。』 『いや担当外ってあんた…』 『あ、出現速報きた。大阪市に5体を確認だって。』 『確かに京都じゃないならユキミは担当外だねー。ミズキちゃん待ちかな?』 『ユキミ、今日は大阪に居たのね。』 『そーゆーこと。』  初動においては、警察や消防といった市民の安全を守るための組織が緊急出動し、逃げ惑う大勢の市民に対して避難誘導を行っている。それでも大抵の場合は、異世界より”遊び”のために現れる巨大美少女たちを前にして大した成果をもたらすことはできない。今この瞬間も彼女たちのローファーが勢いよく踏み下ろされるたびに、周囲は大地震のように揺れ、いくつもの建物が倒壊し、足元の人間は虫けらのように踏み潰されていく。  そんな状況をわかっていながらも、担当制である彼女たちは自身の都道府県外においてはただの一般市民となんら変わることはなく、3杯目ともなる赤ワインに頬を赤らめている。 『はぁ…巨大な美少女を眺めながらの酒うめー。』 『あはは。悪趣味すぎでしょー。』 『ま、でも彼女たちにもある程度暴れてもらわないと、ねぇ?』 『まーね。ウチらばっかり犠牲者がーって言われても困るし。』 『こうして罪もない人々が死んでいくのでしたーなむなむ。』  彼女たちに悪意はないが、根っからの聖人というわけでもない。自分たちの時間を大切にしたいという普通の感覚を持っているだけであり、彼女たちが居なければより多くの犠牲が生まれてしまうこともまた事実だった。多くの無力な人々は、強大な力を持つ女神たちの気まぐれに縋るように助けを乞うことしかできない。 『でもさー。さっきはアキハたち愚痴ってたけど、アタシらも都会で戦ってみたい気持ちあるよね?』 『うんうん!ズシンズシーンってビルの間を走ってこそ巨大ヒロインって感じだし!!』 『いや、話聞いてた?極一部の高層ビル以外は膝くらいまでしかないし、大通りって言っても片足くらいしかないからビルの間なんて走れないんだって。大体の場合は全部踏み潰しておしまいなの。』 『それはそれで…良いっ!』 『良いんかいっ!!』 『朝学校行くときに満員電車だと「巨大化して歩いていけば楽なのになー。」って思っちゃうじゃん?あれと一緒だよ!』 『まぁそれなら…わかる。のか?』 『アタシそれやったなー。実際めっちゃ気分良かったよ。』 『え、ズルい!!私も今度からやろ!!』 『いやいや、たまたま出動と被ったから仕方なくだって。制服中に人間の残骸がベチョってくっ付いても良いのか?』 『それはやだ…から、電車の中では巨大化しないどこー。』 『そういう問題じゃないんだけどなぁ。』  酔いも回ってきた彼女たちがバカ話に耽っている今この時も、現在進行形で引き起こされている惨劇は助けを求める通知という形で彼女たちの元へと届いている。それでも未だに大阪を担当している巨大ヒロインが現れていないことを不審に思った一人が、彼女のスマホへと直接電話をかけるのだった。 『ミズキちゃーん。早く出ないと大阪民国が滅んじゃうぞー。』 『…ん?ユキミ、スマホ鳴ってない?』 『あ、ヤバ。』 『…ん~、あ、でんわだ。もしもぉし…』 『あ、ミズキちゃん?出動の…って、あれ?』  みなの注目がそれぞれのモニターへと注がれるなか、ユキミの顔が映し出された画面からは寝起きと思しき甘くゆるふわっとした声が漂ってくる。電話先の相手の名前を連呼するだけのその声がミズキのものであることは、ここに居る全員には当然筒抜けで、ユキミが居る場所が大阪であることと合わせれば状況の大半が理解できた。 『…ひとまず、ユキミちゃんは説明することがあるんじゃないかしら?』 『えーっと…ミズキちゃん!出動要請出てるよー!』 『え、うそ!!ヤバ!!』  返答に窮したユキミは答えるでもなく背後の存在へと慌てた様子で声をかける。状況を上手く理解できていないミズキはドタバタと慌ただしく動いた後、カメラの前に横顔だけが映り込んだかと思えば、ユキミの顔へと吸い寄せられていく。 『行ってくるね、ユキミちゃん!ちゅ♪』 『い、行ってらっしゃい…』 『『おおう…』』  オンライン女子会をしていることに気付いていないのか、大勢が見ている前で見せた2人のお熱い口づけは、彼女たちに大きな嘆息を付かせることとなる。普段は飄々としているユキミが顔を真っ赤にしていることからその意味合いは真剣なものであることがバレバレで、大きな話題を提供されることとなった女子会は一段と盛り上がりを見せた。 『ねぇねぇ!!ユキミとミズキちゃんって付き合ってるの!?』 『は、はい…そうです…』 『きゃー!!いつからいつから!?どっちから告白したのー!?』 『やっぱりデートとかしてるの!?大阪と京都…近くて良いねぇ!!』 『ちょ、ちょっと待って…』 『良いな良いなー!!私も恋人作って巨大化デートしてみたい!!』 『それって相手はウルトラヒロイン限定なのは…?』 『良いじゃん良いじゃん!今さら普通の人間となんて釣り合わないって!』 『仕方ないわね…今から女子会改め、女子同士合コンに変更よ!!』 『『はーい♪』』  こののち、巨大ヒロインたちの間で流行し始めた巨大化デートは、多数の人気スポットを擁する都心部を中心として行われ、当然ながら受け入れ能力を持たない街々は一方的に踏み躙られることで瓦礫の山へと変えられていく。  誰も止められない彼女たちの幸せは、膨大な犠牲の上へと確かに築かれていくのだった。 完


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