SamSuka
もんてすきゅー
もんてすきゅー

fanbox


【5,313字】女の子が巨人兵となって敵国の都市で破壊活動を行うお話

※このお話には残酷な表現が含まれています。 [newpage]  10年前のあの日、あたしにはお姉ちゃんを見送ることしかできなかった。 『お姉ちゃん…行っちゃやだ!』 『わがまま言わないの。お姉ちゃんも立派な防衛隊員になってみんなを守るんだから』 『…でも、ずっと会えなくなるんだよね…?』 『そんなことないわ。お休みがあれば必ず帰ってくるから。それまで良い子にしてるのよ?』 『うん…約束!』 『…ん、約束する。それじゃ、行ってきます』 『いってらっしゃい!お姉ちゃん!!』  それから10年間、お姉ちゃんに休みはなかったらしい。それでも今では、会いに来てくれなかったことに対する幼い不満ではなく、10年以上も続く戦いのなかで、未だ無事であることの喜びのほうが大きかった。 「そっちが来てくれないなら、こっちから行くよ」  今年であたしも18歳になる。当然、進む道はお姉ちゃんと同じ防衛隊員だ。容姿端麗で文武両道なあたしは難なく採用試験に合格し、今日、その大切な一歩を踏み出す。そうして宿舎へと入寮したあたしの元へ一人の女性がやってきた。 「ねぇ、貴女。入隊早々で悪いのだけれど、特別任務を言い渡します」 「…?りょ、了解です…」  メガネで白衣な美人さんに誘われ、あたしの記念すべき初任務が始まる。これが、あたしたちとあたし自身の運命を決定付けることになるとは、この時は思ってもみなかった。  ☆ ☆ ☆  3ヶ月後。初任務を成功させたあたしは、希望通り、お姉ちゃんが隊長を務めるエリート部隊への配属を許される。10年越しの願いが叶った瞬間だった。 「お姉ちゃん。会いに来たよ」 「……新人。ようこそ、特化隊へ」  かつて見上げていたお姉ちゃん。いつの間にか追い抜いていたのか、今ではあたしより頭一つ半ほど背が低い。むしろ身長が高めなあたしより高身長な人はおらず、先輩たちから見上げられているのはなんだか心地良い。それでも、勤務中とはいえ他人行儀なお姉ちゃんに少しばかり不満が募った。 「返事は?」 「…はい、隊長」 「ん、よろしい」 「あっれー?新人ちゃん、隊長の妹ちゃんなんですかー?」 「こんな可愛い妹居たんだ〜!」 「期待の新人だよね?噂は聞いてるよ〜!」 「あはは。ありがとうございます」  どうやらお堅いのはお姉ちゃんだけらしく、特化隊の面々である先輩方はあたしにフランクに接してくれる。元々が妹気質なあたしはチヤホヤされることに満更でもなく、ミーティングが終わるまでデレデレとしっぱなしだった。 「…以上、解散」 「お姉ちゃん!」 「…なに?」 「会いたかったよ!」 「……うん。わたしも」 「良かった…同じ気持ちで…」 「当たり前でしょ。でも、勤務中は上官と部下だから。いいわね?」 「はぁい。ふふ、あたしお姉ちゃんのために頑張っちゃうからね!」 「…ん、期待してるから」 「えへへー」  ☆ ☆ ☆  そんなこんなで新人として部隊での連携訓練に1ヶ月を費やした頃、ようやくあたしにも実戦の機会がやってくる。実戦初任務は敵地での市街戦。それなりに大きな都市らしく、特化隊には重要な役割が与えられていた。 「『敵兵士および民間人の殺戮により敵の戦闘継続意思を挫くこと』…ふむふむ、なるほど〜」 「ほんとにわかってるの〜?新人ちゃん♪」 「だいじょーぶですよ、先輩!あたし、こういうの得意なんで!」 「あはは!確かに〜!」 「特化隊で一番かもねー」 「…」  輸送車の中、浮かない顔をしているのは隊長のお姉ちゃんだけで、あたし含め先輩方はピクニックにでも行くかのような様子だった。特化隊、正式名称は殺戮特化隊。ただひたすらに相手を殺しまくることに特化した、敵はおろか味方からすら恐れられる血塗られた部隊。圧倒的な戦闘力を有しているからこそできることだけど、昔から優しいお姉ちゃんはあまり気乗りではないらしい。 「…お姉ちゃん。お姉ちゃんの分まであたしががんばるから、ね?」 「新人が上官を気にしなくていいの。わたしたちは命令に従ってやるべきことをやる、それだけ」 「うん、わかってるよ!じゃなくて、了解です!」 「…よろしい。そろそろ目的地に着くわ。みんな、交戦準備を」  敵と味方が撃ち合う銃声がここまで聞こえてくる。血で血を洗う終わらない争い。あたしは、お姉ちゃんとの時間を取り戻すため、こんなことさっさと終わらせて家に帰りたかった。そのためならなんだってする。 『橋頭堡を築いた先遣隊が壊滅寸前とのこと!お急ぎを!』 「…行くわよ!特化隊、任務開始!」 「「「了解!!」」」  お姉ちゃんを筆頭に、覚醒者である特化隊の隊員たちが弾丸の雨の中を突き進んでいく。無数の鉛玉をまるで豆鉄砲のように跳ね返しながら、一斉掃射で敵兵を撃ち抜くその中にあたしは居ない。あたしには、あたしにだけ許された別の戦い方があるから。 [newpage] 「この辺りで。貴方も早く逃げたほうがいいですよ」 『ご、ご武運を!』  建物の影にあたしを下ろした輸送車が大慌てで引き返していく。あたしは身体の中心部に意識を集中させる。全身の熱が集まり、弾けるような感覚とともに、あたしの身体はみるみるうちに大きくなり始めた。 「んっ、んんんあああっっ…」  視点の高さが上がっていき、世界のスケールがどんどん小さく、まるでミニチュアのように変化する。足元では、さっき身を隠していたはずの建物が、いつの間にかブーツの靴底へと消えていた。人間の200倍もの大巨人になる。それがあたしにだけ与えられた特別なチカラ。 「あはっ。みんな、ちっちゃ♡」  あえて大きな声で喋ることにより、周囲の注目を集めると同時に意思を持つ人間であることを示しておく。戦場を舐めているかのような胸元パツパツのTシャツには、デカデカと特化隊のロゴが描かれている。意味を理解し、存分に恐怖してもらわなきゃいけない。 『こちら北部戦線!敵が多すぎる!至急援護を要請する!』 「あ、早速大義名分…じゃなくて救援要請。さて、それじゃ任務開始といきますか」 『…やりすぎないようにね』 「りょーかいですっ、たいちょ♡」  都市部の入り口付近で交戦中だったお姉ちゃんたちを跨ぎ超えて、右足の第一歩を敵国の都市上空へと運んでいく。200分の1スケールしかない大都市に、あたしの50m級の足の踏み場などあるはずがない。踏み下ろす場所にはたくさんの小さな箱が並んでいた。 「初めのいーっぽっ♡」  ドガシャアアアンンと凄い音を立てて、あたしのブーツが市街地の真ん中に降臨する。そこにあったいくつかの建物はほとんど何の感触もないまま踏み潰され、靴底の下で瓦礫へと変わり果てた。人間が居たとすれば生存は絶望的だろう。 「あはっ♡砂のお城よりサクサクだね♡こんな邪魔な箱はあたしがぜーんぶぺしゃんこにしてあげる♡えいっ♡えいっ♡」  立て続けに建物の密集地帯に両足を踏み下ろして足元の模様を満遍なく更地に変えていく。鉄筋コンクリートはブーツどころか素足ですら問題なさそうなほど脆く、あたしの意思一つで栄えた大都市がただの瓦礫の山になる。危機を察したのか、周辺の箱からはワラワラと砂粒のようなものが溢れ出してきた。 「中に居ても無駄だって気付いたのは偉いけどぉ…今さら逃げられると思ってるの〜?」  味方の進軍ルートを潰さないように道路は出来るだけ残しつつ、ぺたぺたと建物の上を踏み壊して歩きながら隙間を蠢く群衆を追い立てる。この一粒一粒が本当は同じ人間で尊い命のはず。そんな存在を散歩感覚で殺戮出来てしまうことに、あたしは下半身が疼いて仕方なかった。 「こういう時に言うのかな?人がゴミのようだ〜♪」  性的快楽と直結した破壊欲求の赴くままに、建物を蹴り壊し人間を踏み躙る。敵の兵士たちが守っていたはずの前線地帯なんてとっくに突破していて、今あたしの足元を逃げ惑っているのは無力な一般市民だけ。特化隊に”戦争のルール”なんてものは適用されない。 「あはっ。これ病院かな?白旗なんて振っちゃって。『ここに居ますので踏み潰してくださーい』って言ってるようなものだよ♡」  安全地帯だとでも考えていたのか、それなりに大きな総合病院には駐車場を含めかなりの数の避難民が集まっていた。屋上には大きく攻撃禁止を意味する十字マークが描かれ、その横では懸命に白旗を振る職員たち。ゾクゾクする気持ちを抑えられないまま、その上にゆっくりと右足を持ち上げていく。 「見ての通りあたしは武器なんて持ってないよー?ただ歩くだけだから踏まれたくない人は避けてね♡」  集まっていた群衆が散り散りに逃げ出し始める。怪我人やお年寄り、子供なんかも多く居るからか、その足取りはあまりにも遅すぎた。待ち切れなくなったあたしは、方針を変えてブーツのつま先部分だけをそっと敷地の外へと置く。 「地面にお絵描きしたりするのも楽しいよね♡ずざざざざーっ♡♡」  幅20mの靴底が地面の上を滑っていき、そこに居た人間は建物ごと一瞬で見えなくなる。あたしにとっては何の感触もないまま、靴底と地面の間で擦り潰されて肉塊となり、そのまま引き伸ばされたペーストは土砂や瓦礫と混ざり合っていく。遺体はおろか存在していた証すら残らないだろう。人としての尊厳なんて欠片もなかった。 「ああんっ♡大量虐殺楽しっ♡同じ人間なのに不条理すぎるっ♡命は平等なのにっ♡ねぇねぇ、死にたくないよねっ?酷いこと止めて欲しいよねっ?でもあたしの一存でみんなゴミカスにされちゃうのっ♡♡みんなは無力でどうしようもできないんだよっ♡♡」  殺戮を愉しむ姿を見せつけることで、相手の心を抉り戦う意欲を無くさせる。その任務そのものはキチンと全うしつつも、あたし自身がこの一方的な大虐殺を愉しまずにはいられない。証言者として役割がある最低限の生存者を残し、足元の哀れな命を刈り取っていく。罪のない一般市民でありながら、小さく無力なことそのものが彼らの罪なのだった。 「あっ、良いものみっけ♪ん…ふふ、たくさんのスクールバスにたくさんの子供たち…あはっ♡こわぁいお姉さんに捕まっちゃった良い子たちはどうなっちゃうのかな♡♡」  学校の校庭から数台のバスが逃げようとしていたのを目ざとく発見したあたしは、手のひらサイズの細長い箱みたいなそれを潰さないよう丁寧に摘み上げる。中を覗いてみると運転席の先生以外はぎゅうぎゅうに子供たちが詰まっていて、子供らしくけたたましい悲鳴とともに泣き顔で見上げられるとより一層の高揚感を得られた。 「んー何か良い使い道は…あ、ちょうど良さそうなビルが。ねぇ、ビルごと踏み潰されたくなかったらそのまま撮影しててね?生配信でもいーよ♡」  気付かれないとでも思っていたのかはたまた諦めていたのか、腰ほどの高さしかないとある高層ビル内からは、ガラスの壁越しにたくさんのスマホが向けられている。軽く脅しをかけたからかあたしが近寄ってもその数は減るどころか増えていて、矮小で愚かな彼らに笑いが堪え切れない。 「絶対バズるスクープ映像だよ♡いくねー?子供たちがたくさん乗ってるこのバスを〜…シェイクシェイクっ♪」  一台のバスを人差し指と親指で丁寧に挟み込んでから、縦向きに持ち替え出来るだけゆっくりと縦に揺さぶってみる。あたしの感覚で数cm、彼らにとって10m近くを高速で往復したことにより、シートベルトを付けていなかった子供たちが車内をポンポンと跳ね回っていた。 「ふふっ♡罪のない子供たちがジュースにされちゃうっ♡♡かわいそっ♡♡」  ベキバキと手足どころか頭までもがあらぬ方向に折れ曲がった子供たちが絶命しているのは言うまでもなく、今度はその子たちの身体が凶器となって他の子供たちへと襲いかかる。幼く脆い身体同士が何度も何度も激しくぶつかり合い、損壊した肉塊は徐々に液状化していく。あたしはたかだか軽く手首をスナップさせているだけ。それだけで子供たちが惨たらしく命を奪われるその様は、彼らにとっては耐え難いほどの屈辱と、見るに耐えない凄惨な光景に違いなかった。 「あーあ、ちょっとシェイクしただけで真っ赤になっちゃったね♡はい、撮影してくれたお礼にあげる♡」  もはや用済みとなった半壊状態のスクールバスを彼らが居るビルの内部へと差し込む。勇気ある一人が駆け寄ってドアを開くと、中からはドロリとした赤黒い粘性の物体が垂れ落ちてくる。流石のあたしでもその様子は吐き気を催す悍ましさだった。手元に残ったスクールバスの他の使い道を考えながら立ち上がる。 「…さて、気を取り直して殺戮活動を再開するとしますか。この街はみーんなぐっちゃぐちゃにしてあげるからね♡」 完


More Creators