市川「今日も山田に手コキされる妄想でシコるか……」《14,000文字》
Added 2023-07-02 13:39:31 +0000 UTC枕元に放り投げていた雑誌を手に取る。つい衝動的に買ってしまった女子向けのファッション誌だ。殆ど新品同然だがパラパラと捲っていくと、唯一クセのついたページが見開きになった。写っているのは知らない顔。知らない女ではなく、知らない顔をしている女。白いワンピース姿でひまわり畑の前に立ち、大きな麦わら帽子を片手で抑えながら楚々とした笑みを浮かべている。いかにも正統派な美少女然とした出で立ちだ。客観的な意見として……まぁ、可愛い、と思う。が、僕にはやっぱりどうにもここに載っている女と、この雑誌を薦めてきたクラスメイトがやっぱり同一人物であるとは思えない。 山田杏奈。男女ともに認めるその学校一の美人を、僕はつい数ヶ月前まで殺意の対象にしていた。殺意だと認識して憚らなかったその黒い感情がひょっとしたら何か別のものを誤認していたのかもしれないと気づいたのは最近になってのことだ。少し距離を置いて、冷静に見つめ返してみてわかる。僕は本当に山田をこの世から消してしまいたかったんじゃない。世界から格別に愛されている存在を前に、特別な取り柄もない自分自身の惨めさが耐えられなかったんだ。その劣等感の矛先を、猟奇趣味にかこつけて山田に向けていただけ。 だから実際に言葉を交わして同じ時間を共有して、本当の意味で山田杏奈という存在の輪郭を深めていくうちに、心にかかった靄の正体が鮮明になったという話。しかし殆ど偏見めいた敵視が解消されてなお、山田の存在は僕の中で小さくなるどころか、知れば知るほど大きくなって、挙げ句の果てには身の丈知らずの恋心にまで昇華されてしまった。そのせいでむしろ今までより、知らない姿を見ると心がざわつく。山田は僕にとっては友人と言われて真っ先に思い浮かぶ、もっとも親しい人間だ。でも山田にとっての僕はきっとそうじゃない。その他大勢のエキストラのひとり。そう考えると、心臓が鉛のように重い。愚かだ。傷つかないように張った予防線で自分の首を絞めている。そんなこと考えたって、どうしようもないのに。だから僕は心苦しさをやわらげる為に、いつも決まって妄想の中に逃げ込む。 『市川のココ、硬くなってる……すごいね、男の子って』 言わない、山田はそんなこと。僕になんて。でもアイツはスキンシップの間合いが近すぎるから、彼氏にだったらこれぐらいの積極性は見せるだろ。なんて思いつつ、やたら解像度の高い山田を瞼の裏に投影する。中二女子にして身長が170cmを超える長躯が、僕の生殖器なんかを撫でるために寄りかかってくる。図書館の本棚を背にした僕の肩のすぐ隣に手を突き、耳に吐息がふきかかるぐらいの近すぎる距離感。心臓が口から飛び出しそうなくらいに高ぶり、幾度も思い描いた絶好の殺害チャンスだというのに、僕からは山田の身体に手を伸ばすことはできない。かといって好きな相手との急接近を拒絶するはずもなく、情けないことにされるがままだ。 全然手を出してこない、甲斐性のない僕もとい、彼氏への過度なアプローチ。手前勝手な妄想が際限なく膨張してゆく。 『声出しちゃダメだよ』 白くて長い指が、ズボンの上から形を確かめてゆく。おっかなびっくり触れられるものだから、気持ちいいよりもむしろ、くすぐられているかのようなもどかしさに苛まれる。あのとことん大雑把で不器用な女が、だ。僕のちんこを“大切なもの”だと明確に認識して、細心の注意を払っている。その事実がいっそう興奮を煽ってくる。ズボンの中で怒張して身動きが取れないちんこの裏筋を、つつ〜っ♡と撫であげられた僕は、口の中で悲鳴を噛み殺すのに精一杯になる。 『わ、わ。……きもちいい? きもちいいの?』 同級生女子に感じさせられる男子の心情を察せられない山田は、ただ僕を気持ちよくすることが良いことだと思い込むにちがいない。息遣いの乱れであるとか肩を跳ねさせただとか僕が感じる反応だけをたよりに、その指遣いをどんどん洗練させてゆく。手元を見られないから擦ったり、なぞったり、つついたりととにかく色々試す。そのうちやがて男がいちばんヤバくなる箇所を見つけてしまうだろう。 (っ、ぁッ……♡) 「ここ?」 人差し指と中指を交互に往復させる形で、鈴口のところをいったりきたり。勃起によって包皮が甘剥きになった半皮かぶりの亀頭の裏っかわを、小刻みにかりかり引っ掻かれる。 (う、ぁっ…♡ くぅ、ぐっ♡ それっ、やめっ……♡) 露茎したばかりの中学生男子の敏感な剥きたてちんぽ。まだおしっことオナニーにしか使ったことのない男性器に、好きな子からの裏筋カリカリは身体の自由をいともたやすく奪う。 『痛かったら、言ってね? ダメだったらちゃんと教えてね』 痛がったり、嫌がったりしない。けれど感じている旨だって素直に打ち明けられない。そんな僕の姿を見て、山田ならその理由に薄々勘づくはずだ。今二人しかいないこの状況で、僕がなんのために見栄を張っているのか、誰によく見られたくてなけなしの虚勢を張っているのか。その理由に何かを感じながらも、しかし、山田は僕が自分で告白できるようになるまでは言葉に起こさないでいてくれるにちがいない。ただし、宥め諭すような優しい口調で、しきりにこの快楽を受け入れていいと囁くのだろう。 『大丈夫、大丈夫だよ。市川。私も嬉しいよ。市川のこと、気持ちよくできてるなら嬉しい……♡ こう? これ好き?』 ずるい、この時の山田は世界一ずるい。片想い相手に意地を張りたい男心に気づいているくせ、ちんちんカリカリで投降を甘く唆す。しかも僕が山田の顔を直視できないでいるのをいいことに、こっちの羞恥と快楽に悶える表情を一方的に覗き込んでくるのだ。自分だってとびきり頬を赤らめているくせに。きっと口元だって綻んでいるくせに。 生物の分類上、僕たち中学生は二次性徴期を経て生殖機能が備わったとはいっても、特に僕みたいな教室の隅に生息する男子にそんな機会は夢のまた夢。当分先どころか、ともすれば一生やってこないかもしれないと諦めかけているもんだ。そんな中、思いがけず同級生女子からペニスを刺激されたことで、僕の金玉は急ピッチで生殖の準備を始めてしまう。 下着と制服のズボンを貫通して、だくだくと我慢汁が滲み出してくる。この絶好の機会にがっつきたがっている僕の本心の浅ましさを体現するかのような量と粘度で、山田の指にねとねと絡みつく。山田の指。お菓子をつまんだり、シャーペンを走らせたりするところは見慣れていても、家ではその手を使って髪を手入れしたり、仕事場では雑誌撮影用の洋服に着替えたり、当然、見えないところでブラジャーのホックを留めたりしている。そんな山田の手に自分の生殖液が染み込んでいることが、山田の隅々にまで僕自身を行き渡らせているかのように思えてしまう。我ながらキモすぎる、変態的な発想だ。だけどその凄まじい背徳感が、背筋をゾクゾクとふるわせる。 『わ、なんか出てきたよ……で、でちゃった?』 首を振って否定する。そうか、保健体育の教科書にはカウパーなんか載ってなかった。男子にとっては当たり前だけど、女子は知らないんだな。広い世界に生きているように見えて山田だってなんの変哲もないひとりの女の子なんだと、そんなことで身近にいる嬉しさを感じてしまう。その熱にあてられて、僕はぽつぽつと言葉をひねり出す。 (っ、これは、カウパーっていう、性行為っ……せ、精液のっ、前に出る、液体でっ……♡) 『ふふっ♡ まだセックスしてないよ? 早とちりしちゃった?』 持って回った言い方を選んだ僕の気遣いを台無しにして、『セックス』と言い換える山田。いや、流石に『セックス』は言わないか……いや、言う、かもしれない。脳内の半分がエロいことで埋め尽くされている中学生男子の実態を、女子たちはなんとなく掴んでいるきらいがあるからだ。山田が誰かと付き合うってなったら、関根や吉田はやんわり吹き込んでるだろ、避妊しろとかそういうこと。山田だって興味本位だけで彼氏のちんぽ弄らないよな、流石に。弄ってくるとしたら、もう覚悟はそうなることまで視野に入れて仕掛けてきてるはずだ。だから『まだセックスしてないよ?』なんて言葉を使う。まだってなんだよ、まだって。自制に自制を重ねて思い上がらないように気をつけていた鍍金が、いともたやすく剥げてゆく。 ――そんなの、期待しちゃうに決まってるだろっ……♡ ちんこっ…早とちりしちゃうに決まってるだろぉっ……♡♡ 僕はとうとう自らの意志で山田の手にちんぽを擦りつけ始めてしまう。やんわり擦ったり、裏筋をくすぐったりばかりの手のひらに向かって腰を振る。それも一般的な前後運動ではない。彼我の身長差を埋め、少しでも山田に近づくためにつま先立ちを繰り返す上下運動だ。愛情なのか性欲なのかが分からなくなってしまった精通したての子どもが、初恋を拗らせた大人相手に交尾をねだっているかのよう。 実際のところ、山田は高校生や大学生のモデルたちの中に違和感なく混ざるぐらいだし、この前なんか新作ブーツのイメージモデルもこなしていた。170cm超の身長のうち、スカートのウェストは明らかに身体の半分よりも上にある。こうして並ぶと余計はっきり分かる。少し屈んでいるはずなのに、僕のへそより高い位置だ。つまり、どうあがいても絶対このちんぽは山田の腰に届かない。それが筆舌に尽くしがたい大きな隔たりのように思えてしまって、受け入れがたさのあまり、僕は山田の手のひら相手に交尾の真似事を加速させてゆく。 『あ……♡ ふふっ♡ かっこいい♡ かっこいいよ、市川……♡』 やめろ、何がかっこいいもんか。だが悔しいかな、好きな女子からの『かっこいい♡』にちんぽが騙される。記憶が正しければ、山田からは一度だって男らしさを褒めそやす言葉をかけられた試しがない。本当にそうだとしたら、これが、初めてなのか。こんな無様な求愛腰振りが? 高嶺の花に向かって交尾をねだる、負け犬の弱いオスの姿が『かっこいい』? やめろ、やめてくれ、山田。男はちんぽを勃たされた時がいちばん御しやすくなるんだ。思考力が低下しきった頭ではその言葉を鵜呑みにしてしまいかねない。へこへこと腰を振って山田に褒められた記憶が、脳の皺の奥深くにこびりつく危険性がある。 『がんばれ♡ がんばれ〜……♡ かっこいいぞ〜……♡』 腰を動かしてちんぽを振るこれは、女を犯す動きだ。女のナカに挿入したペニスでお腹の内側をかきまぜて征服し、やがては精を解き放ち意中の相手を妊娠させる、凶暴な獣の衝動そのものなんだ。お前の目の前にいる男はお前と交尾がしたくって、お前と交尾ができることを証明するために腰振りを繰り出しているに過ぎないんだぞ? それをどうしてそんなに明るく優しく応援できる? 分かっているのか、山田。お前の言葉を補足するなら、『私とセックスできるようにがんばれ〜♡』か、あるいは『交尾のアピールもいいけど、手のひら相手にお射精しちゃわないようにがんばれ〜♡』になる。どちらで取っても僕が山田を犯そうという意志を持つこと自体は肯定する意味に捉えてしまうだろ。 ――僕をっ、僕を、勘違いさせるんじゃないっ……♡ 『ね、いいの? 直接触らなくって』 (っっ……♡♡) 耳打ちに肩が跳ねる。今は我慢汁を吸ったぐぢゅぐぢゅの薄布を隔てている状態だ。全面的に本能に耳を傾けるならば、こんな邪魔なもの取り払いたいに決まっている。僕の身体でいちばん大切な部分で好きな女子に触れたいし、いちばん敏感な部分を触ってもらいたい。けれどその最後の砦は、残された最後の理性と同義。この感情に身を任せてしまったら最後、本当にどうなってしまうか想像がつかない。怖いんだ、歯止めが効かなくなるかもしれないのが。こんなに誰かとの繋がりを失いたくないと思ったことはないから、この期に及んで尻込みしてしまう。なんて、なんてダメなやつなんだ、僕は。 『大丈夫だよ、“きょう”』 (う、ぁ…♡ やま、だっ……♡) 『私が“きょう”のこと、びゅ〜〜っ♡♡ってさせてあげたいの……♡』 呼ばない、山田はそんなふうに、僕のことを。使わない、“びゅ〜〜っ♡♡”なんて卑猥な言い回し。ぜんぶ都合のいい妄想だ。その妄想の中でまで好きな女子ひとり滅茶苦茶にできない、下卑た内容に徹しきれない僕はきっと、男として何かおかしいのだろう。そんなふうに葛藤をかかえる僕の腕を引くようにして、頭の中の山田が囁く。これが妄想であることを忘れさせるような説得力を伴って。 『ね、“きょう”も下の名前で呼んで♡』 (っ、ぁ……あっ、ん……な……) 『え〜、聞こえないってば〜♡』 (あん、なっ……♡ あんなっ……杏奈っ……♡) 『にひひっ♡ うん、杏奈だよ……♡』 誰かを思い通りにしたい、なんてエゴだ。その汚らしさは山田への殺意から目覚めた僕自身が何より知っている。中でもとりわけ、独占欲なんて目も当てられない。馬鹿馬鹿しい頭の病気だ。でも僕は頭がおかしいから。身の程知らずにも、学校いちのアイドルである山田杏奈に独占欲を抱いてしまっていたらしい。自分でも気づかないうちに歪んでいた心の隙間を、山田の甘い囁きが埋めてゆく。本棚についていた手で僕の頭を抱き寄せて、慈しむ手つきでそっとそっと撫でてくれる。 (あ、あ、あっ……♡) 『我儘言って? 嬉しいから。私だって“きょう”の気持ち、受け止めたいんだもん。……ね、教えて。どうしてほしい?』 (っ、ぅっ……うっ……さわって、ほしい……♡) 『んー? こう?』 (ひ、ぁっ……♡♡) 言葉足らずなおねだりの返答は意地悪なチン先かりかり。溢れ出したカウパーで汚れるのも気に留めず、山田は僕のちんぽを小刻みに擦って言外に『ちがうでしょ?』と伝えてくる。 (っ、ぁ、やまっ、やまだっ……♡) 『むぅ〜〜……♡』 (ぐ、ぁっ♡ カリカリやめっ♡ やめぇっ……♡) 『あ、ん、な♡』 (ぁ、杏奈っ♡ ちょくせつ、触ってっ……♡ 触って、ほしいっ♡) 『ん、勇気出せてえらいね♡』 何がえらいもんかと思うが早いか、山田は瞬く間にズボンのジッパーを下げてしまった。そして中からスボン以上にカウパーの湿り気と熱を吸った下着を引っ張り出し、手元でゴソゴソと漁り始める。が、やっぱりこういうところはがさつで、中々上手くペニスが取り出せずに四苦八苦している。 『ん? んー……?』 (そ、んなに引っ張るなっ……♡) 裏地に引っかかったまま揉みくちゃにされるちんぽ。裏地が亀頭に擦れるせいで、ビリビリと熱い電流が走る。不本意だ。不本意に気持ちが良すぎるから、むしろ危険だ。このまま射精してしまうような真似は絶対に回避しなければならない。そう思った僕は熱心に擦りつけていた山田の手のひらから離れるように腰を引く。 『あ、こら♡ 逃げないの♡』 (に、げてなっ……♡ はぅっ♡♡) 『逃げた。ぜったい逃げようとした』 語感に不機嫌さを滲ませながら、山田は距離を詰めてくる。ただでさえ本棚との間に挟み込まれるような位置関係だ。僕が少し腰を引いた何倍も山田の身体が寄ってきたせいで、僕たちはほとんど抱擁を交わしているも同然に密着する。 (ん、むぅっ……!?) 目の前に迫ってきた山田の胸元を避けるに避けられなかった。ブラウスをくっきりと押し上げてなお揺れる、中学生らしからぬ豊満な膨らみ。内面がいやに子供っぽい山田の中で、最も強く女を意識させられるその部位が否応なしに僕の下顎を包みこむ。 ――やっ、わらかっ……♡♡ やばっ、い、やばいやばい、やばいっ……♡ 胸でっっっっ……かっ……♡♡ ここだ。僕は全ての脳細胞を駆使して、記憶の中にある山田の乳の情報をかき集めて鮮明に描写する。例えば体育の持久走。発育のいい同級生はそれなりにいるけれど、運動用のスポーツブラをつけているであろう状態でなお、おっぱいが互い違いに弾むほどの女子なんて山田しかいない。もし走っている姿をコマ送りで見たなら、ドッジボールくらいの大きさが着衣の中で暴れていると思うに違いない。足をあげて地面を蹴った時は体操服を前面に押し引っ張るように飛び出るだろうし、着地して踏み込んでいる最中には重力の影響を受けて、胴を弾み衣服の中では下乳の汗をほとばしらせてしまうに違いない。だからゆさゆさとかではなくって、もっと湿気の帯びた肉同士が打ち合う、ぱっちゅん♡ぱちゅん♡みたいな重さが音に起こされる。 左手で雑誌を捲るとまた、ひまわり畑の向こうの水平線を見つめる知らない顔の女。物憂げな視線から、強い風に吹かれて飛ばされそうになる麦わら帽を抑えるまでがコマ送りのように載っている。そのうちの一枚、目をつぶりながら下を向く山田は、身体を縮めたせいで胸元のシルエットがはっきりと白いワンピースに浮かび上がってしまっている。たった一瞬、身を縮めただけだ。なのにその後数秒間を切り取った写真では全て、背筋を伸ばしただけで胸元がたゆんと弾み揺れ動いた残滓が見て取れる。そうとも、静止画で静止させられないほど、山田の乳はでかいのだ。 誓って顔や身体が理由で好きになったわけではない。だがそうは言っても僕もまた、いち思春期の健全な男子。クラスの男子や読者ファンの山田を舐め回すように見る視線の理由だって分かってしまう。視覚だけでオスの生殖本能をガツンと揺さぶってくる山田の巨乳の感触なんか、気になりまくるに決まってる。山田のおっぱいで壁に押し付けられて身動きが取れないだなんて、想像しただけで脳の芯がびりびり痺れる。 今の季節だったら、ブラウスの下に直接スクール水着を着用しているか。だとしたら、キャミソールやブラジャーを着用している時よりももっともっと無抵抗に僕の顔に合わせてその形が変わる。さながら真正面からネックピローのように、僕は山田の乳によって幸せな首絞めを施されることになる。ずっしりと柔らかな乳に圧殺されて呼吸もままならず、もがもがと呻くしかない。なんということだ。殺したがっていた対象に殺されるなんてみっともないことこの上ないじゃないか。 市川京太郎、初恋相手の同級生の巨乳に組みふせられ、賢明にあがくも体格差を覆すことができず窒息死。 ――いやだっ、いやだ、いやだっ……♡ そんなの、ぜったいにイヤだぁっ……♡ 僕が過去の黒歴史の墓穴を掘って自爆し、変態的な倒錯感を拗らせていることなどつゆ知らぬまま、ややあって山田はちんぽを取り出すことに成功する。 『わ、わ、硬くって熱い……♡ じゃあ、触るけど、ダメだったらちゃんと教えてね。言う通りにするから、“きょう”が好きな動き教えて? ……あれ、だいじょぶ?』 (ん、むぐ、ぅ……♡ あ、んなっ……♡ あんなぁ♡) まるで沈みかけていた底なし沼から奇跡的に引っ張り上げてもらえたかのような気持ち。僕は山田の優しさに触れてほっとするあまり、弱い自分を取り繕うことを忘れてしまう。僕を害そうとする気が欠片もない、隣に寄り添ってくれるようなぬくもりに、ほろほろと心の形が喪われてゆく。こうなったら最後、山田への“好き”が加速するのを留めることはできない。 『ん、しょ……んしょ……♡ いち、に、いち、に……♡』 ゆっくり上下し始めた手のひらに悶えながら、山田の乳にしがみつくようにしてつま先立ちするクソかっこわるい僕。自分が不器用な方であることを十二分に理解している山田は、きっと男の最も大切な場所――彼氏のちんぽは殊更慎重に取り扱うに違いない。壊れ物でも扱うかのように初めは指を添えるように握って少しずつ力加減を調整してゆくはず。それが意図せず焦らしになっていることも気づかないだろうから、僕だけもどかしくさせられて一方的に追い込まれてゆく。でもせめて手元が見えない不安を抱かせないようにと、山田が扱くリズムを口ずさんでくれるおかげで不安は感じない。あやされているみたいだ。 『もうちょっと早めにする?』 (……コクコク♡) 『ん、このくらい?』 山田は非凡な人間だ。そして非凡な人間の生きる時間の重みは、凡人とは比べ物にならないくらいということを――それを奪ってしまいたいと考えていたからこそ――僕は知っている。僕たちが惰性で浪費する授業も、ただの10分休みでさえも、山田にとっては限られた青春の貴重な1ページ。そしてきっと想像もつかないほど多くの大人が限られた山田の時間を大切に扱っている。雑誌の撮影やテレビ出演などのスケジュールを調整する為に汗水流して走り回っていることだろう。そんな山田のかけがえのない青春が僕の射精に費やされている。 下の名前を呼んだ男子も、わざと胸を押し付けた男子も、ちんぽを触った男子も、全部僕。彼女を知るオスならばあわよくば狙っている、山田の人生における男性経験の一等賞の座を、僕が、僕なんかがたくさん奪っている。無駄遣いさせている。えもいわれぬ倒錯感で、今にも頭とちんぽがおかしくなりそうだ。 (あんなっ♡ あんなぁっ……♡) 『ひゃっ!? ……も〜♡ ふふっ、甘えたさんだ〜♡』 胸を揉むとかお尻を触るとか、そんな大胆なことはまだできない。意気地なしの僕は腰の後ろに腕を回すので精一杯。数多のオスを魅了してやまない体つきをしているが、抱き寄せてみてわかる、細くて華奢な腰まわり。少し力を込めたら折れてしまうかもと不安になるくびれをがっちり掴んで離さない。今日は山田から迫られての手コキだとしても、いつか絶対に山田とセックスをする。その決意表明のつもりで手の筒めがけてがんばって腰を動かし始めた僕を、山田はくすくす笑って愛でるような扱いをする。 ――ちがう、ちがうだろ、山田っ♡ これは、甘えてるわけじゃないっ……♡ 交尾だっ♡ 男子がセックスできるところを、やられっぱなしじゃないってところを見せているんだぞっ……♡ 今だろ、今こそ『かっこいい』って褒めるところだろ♡ ふーっ♡ ふーっ♡ くそ、くそっ……♡ 山田の手やわらかっ……♡ 抱きしめながらだとっ、やばいっ……♡ 脳がっ、か、勘違いするっ……♡ 山田を腰振りで見返してやらねばならないとチンポを憤らせる僕は、少しでも射精を引き伸ばすために知恵を絞った腰振りを繰り出す。つま先立ちまでして、目一杯手の筒の奥の方にチンポを突き入れることにしたのだ。竿よりもむしろ敏感な亀頭を、よく動く人差し指のほうから遠ざける作戦。さっきから山田は僕の反応を観察して、僕を弱らせる性技を積極的に取り入れる、悪魔のような成長の仕方をしている。まかり間違っても亀頭の段差なんか狙われるわけにはいかない。だから勢いよく突き入れて、慎重に引き抜く動きを繰り返せば、ピストンの見栄えも良い。そう思っていたのだが――。 『ひとりで精液作れなくなっちゃったの? ふぅぅ〜〜……♡ がんばれ、がんばれ〜……♡』 山田はつま先立ちをしてまで股間の位置を高く持ち上げているこの姿勢を、金玉への愛撫をねだっているように誤解したらしい。ほっそい腹をしっかり抱きしめているせいで、すっかり目の前の勝ち組モデル同級生を孕ませられると勘違いして、絶賛稼働中の精子工場にその指が触れる。瞬間、僕の身体は急所を他人に触られた反射で跳ねてしまった。それがいっそう、山田の誤解を大きくする。 『そっか、ここもきもちいいんだ〜……♡ もみもみ、もみもみぃ♡ たぷたぷたぷぅ〜……♡ にひっ♡ めっちゃ反応いいね♡』 白く長いあの指が、ずっしり肥えた玉袋をお手玉して遊ぶ。正直に言えば、普段の自慰行為ですら触らない全く意識外にある場所だ。でもこうして触れられてみてわかる。体外に露出している唯一の内臓を他人に委ねるなんて格別な信頼がなければできないことだ。目の前の女がこの子種の存在を肯定し慈しんでくれると強く信じているから、金玉を触らせられる。 山田が僕の金玉を手の中で揺らすたび、僕の尻の穴は強く窄まり太ももの裏から背筋を通って脳天まで一気に寒気にも似た何かが駆け上がってゆく。ちんこで感じたことのない類の、不思議な快楽だ。本能的な恐ろしさがあるのに、なぜだか甘やかで切ない気持ちが溢れてくる。男の汚らしいエゴがたっぷり煮詰まった孕ませ液を愛でられることの、なんと夢見心地な気分だろうか。これが女性経験豊富なオスならば、『ちゃんと奉仕しろよ〜♡今からここに詰まった精液、お前に流し込んでやるんだからな〜♡』などと益荒男ぶるはずだ。でも僕は弱いオス。山田の心遣いのこもった焦れったいフェザータッチが、僕の心の厳重なロックを解いてしまって『これ、全部山田の為を想ってつくったんだ……♡ 僕はずっとずっと山田のことが好きで……っ♡』なんて精液に込めた気持ちを打ち明けてしまう、最低に情けない告白をしている気分になってくる。 ともあれ、そろそろ限界が近い。ちんぽが勃ったらたくさん刺激して即射精。オナニーを覚えたての男子なんてそんなもんだ。長時間の焦らしを経て、触られている下半身がだんだん溶けていくみたいに錯覚する。チョコレートが手の熱で形を失ってゆくように、指の間からポタポタと滴り落ちているのはきっと僕の理性とか体裁とか、そういう射精には不要なもの。ちんこへの快楽を希求する気持ちが頭の中を埋め尽くしてゆく。 (あんなっ……♡) 『なぁに?』 (金玉っ、もういいからっ。っ、さ、竿のほうっ……♡) 『ん、りょーかい♡ ……優しく、でいい?』 (あ、いや、そのっ……♡) 『?』 (いっぱい擦って、すぐイかせてほしいっ……♡) 『……いいの?』 (うんっ……♡) 『じゃあ、ちゃんとこっち見て、言ってほしい』 (うぅっ♡) おずおずと胸元から顔をあげ、僕は山田に上目遣いを向ける。長い睫毛、整った目鼻立ち、小さいのに肉厚な唇。外見を理由に恋に落ちたのではないと断っておきながら、各々のパーツが完璧に僕の惹かれる女を形作っていて、視線が絡み合うだけで激しい動悸がする。雑誌のモデルやテレビにだって出ているのだから、見た目だけで好感を保たれる要素が詰まっているのは当然だけれど、それでもこうして顔を見ると我慢汁が溢れてくる。他の女子は主に首から下で興奮を催してしまうけれど、顔立ちで生殖本能が刺激されるのは山田だけだ。 そんな僕はカースト上位の女からしてみれば、女の武器たる色香を醸さないで魅了できるやつなんて、取るに足らないザコオスに違いない。それでも僕は自分が山田に特別魅了されてしまうことがどうしても悪いことだと思えない。 (あんなっ……射精、させてくれっ♡ 僕はあんながいいっ、あんながいいんだっ……♡) 妄想の中ですら、好きと伝えられない臆病者のおねだり。山田の手首の上でちんぽをビクビクとふるわせながら、求愛未満の射精を求める己が醜態に悶絶しそうだ。いくら山田が好きでも、心根ではセックスがしたいと想っていても、生物としてのスペック差を目の当たりにすると怖気づいて尻込みしてしまう。一生懸命つま先立ちをしても、男性器は山田の膣に触れられない。唇だって奪えない。どうあがいたって高嶺の花に届かない、そんなとびきり弱いオスなのに。 『ぎゅってしてていいから、背伸びするのやめちゃ、やだ……♡』 自惚れてしまいそうだ。身の丈を超えた求愛を、山田は好ましく思ってくれているのかもしれない、なんて。だって背伸びしてぎりぎり届くちんぽの高さに手の筒が据えられている。都合のいい妄想だ、妄想なのだけど、“がんばって手を伸ばせば届く”ことをそれとなく教えられている気がしてくる。 ――僕が摘める高さにまで、高嶺の花のほうが花弁を傾けて下りてきてくれた。 (う、ぁっ、、あんなっ♡あんなっあんなっ♡♡) 『かっこいいね、がんばったね…♡ えらいぞ、“きょう”♡ すごいぞ、男の子〜♡ くすっ♡ 感じてるとこ、もっと見せて……♡』 まだちんぽと触れ合ってものの十数分で、その指遣いは僕の何十回としたオナニーの快楽を凌駕した。水溶き片栗粉で作った中華餡を思わせるほどのねっとりカウパーを滴らせ、おそろしい速さで上下する手の筒。自分では加減してしまって強く擦れないけど敏感な部分――カリ首の段差や裏筋を念入りに擦られ、変な声が止まらない。きっと最初からココが弱そうだとアタリを付けていたのだと思う。僕がねだるまでしてこなかった、ということは山田の気遣いでもあるのかもしれないが、どう言い繕ってもやっぱり手加減だ。さりげなく手を抜かれたぬるめの手コキで僕はまんまと本心を吐露する羽目になり、そしてまさに今男が最も弱くなる瞬間をも引き出されようとしている。 僕はなけなしの対抗心から、抱擁をきつくした。すると腕の中で山田の巨乳が苦しそうに潰れながら僕の胸板や顔面を圧迫してきて、むしろ自分で自分の首を締める格好になってしまった。おっぱいの形が変わってしまうぐらい押し付けられている感触が、金玉の中の精液たちに射精はもうすぐだぞ♡なんて吹き込んでくる。 『にひっ……♡ やっと正直になってくれた♡ ほら、甘えながらイキたいんでしょ♡』 ちんぽの裏筋はそれそのものが膨らんでいるのであって、決してバタークリームのような精液がぱんぱんに詰まっているわけではない。だが山田の指遣いはそう勘違いしてるとしか思えないえげつなさだった。さながら尿道を詰まらせているぷりっぷりの特濃粘液を外へと追い立てる動き。根本から先端に向かって中身を搾り上げるべく、指輪っかが往復して激しく吐精を急かしてくる。しかも変に律儀なことに山田の指は竿を扱くにとどまらず、最後の亀頭の段差までにゅっぽり♡と引っこ抜く。僕はその都度、くすぐったいのか気持ちいいのか分からない落雷に打たれて足先がよたよたとふらついてしまう。 『よしよし〜……♡ よしよしよし〜……♡ いい子いい子〜♡』 甘やかさで包み込んでくれるような声色と、有無を言わせず男を絶頂へ追い込む手コキとのミスマッチが、思考回路をぐちゃぐちゃにかきまぜる。優しくされているのか、厳しくされているのか分からない。ただ生まれて初めて女子の目の前でする射精がこんな形になるなんて、これを機に僕の性癖が歪んでしまう確信めいた予感がある。 これから一生消えることのない傷痕。歪められた性癖を一生背負って生きていく。きっと一時でも好きな人に殺意を向けた罰だ。僕の心の真ん中には山田杏奈が居座って、他の女子なんか見向きもできなくなってしまうだろう。でもどうしてかな、そんな未来に視界が霞むほどの興奮を覚えている。 手コキのスピードが極まり、びちゃびちゃとカウパーが飛び散る。スカートにかかって汚れてしまうにも関わらず、山田はその手を緩めない。そして僕が奥歯を強く噛み締めながら、小さな声で(イクっ……♡イクっ……♡♡)と漏らしているのを聞くと、最後に顔をあげるよう耳打ちした。本当はこんなぐしゃぐしゃなところ、見られたくない。でもやっぱり最後の瞬間は山田の顔を見めながら射精したい気持ちが強かった。 立ちながらの足ピン背伸びでも、これ以上精液を押し留めておくのは無理。決壊を迎えるまさにその刹那、僕の好きな人が僕のためだけに微笑むのを見た。いや微笑むどころか、 『いつか、ちゃんと告白してね♡ ……ちゅっ♡』 汗で張り付いた前髪の間から、僕のおでこにエールを込めて口づけを落としてくれたのだ。 (っ、ぁッ♡♡♡) 『はぁい、びゅ〜〜♡♡ びゅぅぅ〜〜っっ♡♡』 ちんぽが強烈な震えを起こしながら、金玉の中の精液をポンプのように汲み上げる。そのリズムに合わせて囁かれる射精幇助の耳打ちは、とびきり弱った僕の脳みそにじんわりと広がってゆく。『市川京太郎を初めて射精させた女の子は、山田杏奈だぞ〜……♡』なんて、言い聞かされているみたいだ。熟れた林檎のように真っ赤な顔のくせになぜだか得意げで、ニマニマ笑っている。 ――くそっ♡くそっ、山田っ♡ずるいだろ、その顔はっ……♡僕が、お前の顔をオカズに射精してるのにっ、なに僕の顔をそんなふうに観察しているんだっ♡あー、やばいっ♡射精してる間抜けヅラ、好きな子に見られてるっ♡背伸びしながら抱きついてイク、気持ちよくなるのは全部女の子任せなんて、この世でいちばん弱い射精だろっ……♡なのにどうしてそんなに愛おしそうな顔してくれるんだっ……♡あー、くそ、無理だっ……♡好きだっ、好きだ好きだっ山田っ……♡ 「好きだっ……♡ 好きだっ、山田ぁっ……♡」 ちんぽに被せたティッシュがボロボロになるのも構わず、僕はちんぽを思いっきり扱き上げて射精する。誰にも届かない虚しい告白を口ずさみながら。山田の手のひらにちんぽを押し付ける妄想で思いっきり精を放ち、腰どころか二、三度背中が浮いた。最後の一回はブリッジの体勢を取りながら、金玉の中身を空っぽにする勢いで。そうして精を打ちきると、全身から一気に脱力してベッドに落ちた。 「はーっ……はーっ……♡ はーーっ……♡ う、う、ぅ……♡ 山田っ、山田ぁっ……♡」 自分を慰めるというだけあって、自慰行為のあとはいつも猛烈な寂寥感に襲われる。なのにこんな妄想オナニーをやめられない僕は、やっぱり頭がおかしいのだろう。雑誌の中の山田はやっぱり知らない顔をしている。僕の知らない顔だ。それが無性にやるせない。凄まじい疲労と相まって、何をするにも億劫に感じてしまう。 部屋の証明をぼんやりと眺めていると、不意にスマホが軽快にふるえた。最近はよく聞き慣れたアプリの通知音で反射的に手に取る。家族以外で連絡を取り合う相手なんかひとりしかいない。 『新しい服〜〜!!』 通知の名前を目にするだけで、胸が高鳴る。そのままスマホを開いて一緒に送られてきた画像を確認すると、猫に見える服を着せられたわん太郎が映っていた。腕の中で珍しく暴れているせいで、山田の顔なんか半分見切れてしまっている。 「もう……なんなんだよ。山田のだと思うだろ、普通」 なんてタイミングだよ、危うく変なことを打ち込みそうになっただろ。それはまぁなんというか僕のせいなのだけれど、こんなことで機嫌を取られてしまうのがなんだかちょっと悔しかった。結局、既読をつけてから数分間返信を放置してしまったのだが、その理由を弁明するのにも骨が折れた。 《おしまい》