そこは性の欲望と汚濁に満ちた特異点であった
善なるもの、気高きもの、美しきものは貶められ、弱き大衆の食い物にされる世界
力なき人々の中に潜む悪性が性の側面で発されるこの小さな領域では多くの英霊が弱体化を余儀なくされた
事前の分析では、この特殊過ぎる特異点についてほとんどの事がわからず、男女の両方の集合無意識の中の男性的側面──心理学でいう所のアニム・アニムス──に異常な反応が見られる、という程度の情報しかカルデア側は得る事が出来なかった。
しかし、これまで人理修復の旅路のいかなる危険、未知をも踏破してきた自信と経験を持つカルデアの人々は、今回の特異点の異常性についてもまた日常であり、それを特別危険なものとは見なかった。
蛮勇とは言えまい。彼らはそれだけの力を持ち、実績があり、そして正しい勇気と絆があった。
大抵の事は道理を捻じ曲げ・・・・いや、不条理を捻じ曲げ道理を押し通す、何かが彼らにはあったのだ。
だが悲しい事に今回に限ってはそれが仇となってしまった。起こり得ることは何時か起こり得る。無謀な挑戦に慣れ過ぎた彼らは、その警句を忘れてしまっていたに違いない。
絶え間なき未知の連続に飛び込み続ければ、いつかは土壇場では対処できない程の”未知”にぶつかってしまう事もあるだろう・・・。
そしてカルデアは、「アニム・アニムス」に対し強力な対処能力を持つ英霊を主軸に突入人員を選択すると言う最悪の選択を行ってしまったのである。
そして特異点に突入した直後、よくある事ではあるが彼らはカルデアと通信が取れなくなり、そしてこの特異点に置いては人類最後のマスター藤丸立香の”気高い魂”は完全にマイナスに働く要素であった。
マスター礼装でも緩和しきれない弱体化は英霊を指揮する能力を曇らせ、まともに戦いを知らない弱き人々にも劣る程に体力を蝕んだ。
ましてサーヴァント達でさえも、特異点の法則に従いその持てる力を削られ、抵抗は難しかった。
かくして、英霊エウリュアレは敵にあっさりと捕らえられ、マスターを人質に取られた上に屈辱的要求を飲まざるを得ない状況に追い込まれたのである。
エウリュアレはまずストリップ劇場に送り込まれた。特異点の中に点在する性の悪徳に満ちた見世物の中では比較的にマシな場所ではあったが、その劇場の中でエウリュアレは最下層の扱いを受けた。
美しいほど、善良である程、気高い程に貶められる法が敷かれた世界の人々は、当然のようにエウリュアレを最下層の端女として扱い、雑用を与え、性の処理に用い、そして来る日も来る日も厳しすぎる程に折檻したのである。
尻を腫らせてすすり泣きながらも、気高く睨む眼光を曇らせない女神に、怒張を滾らせた男は靴のまま肢体を踏み躙り、髪を掴んで引きずり、そして穴という穴に不浄を捻じ込んで行った。
あらゆる下賎な仕事を押し付けられ、それでも健気に働き美しく躍動する肢体に股間を熱く濡らした女は、理不尽に命じて頭を下げさせ、地についたそれを踏みつけ、しとどに溢れた”ほと”を美しい顔におしつけては厳しく叱りつけながら奉仕させた。
女神エウリュアレは、この世界の人々にとって”美し過ぎた”のである。右に比較するものすら事欠く美しさは弱き人々の悪徳と欲望、そして嫉妬と劣等感を強力に刺激し、そしてこの世界の法はそんな尊い存在を貶め、そして辱め尽くす事を許すどころか推奨するのだ。
人々の心に辛うじて残った良心が僅かなブレーキになりはしたが、それは坂道をアクセル全開で暴走する車の速度を殺すには少々か細すぎる。
むしろそれはエウリュアレや、カルデアの面々にとっては残酷な事だったかもしれない。人々が僅かな良心にふと正気を垣間見せる時、自分を責め抜く彼らはただ欲望を阻む枷を壊されただけで、本来ならば欲望をなんとか御しながら普通に生きれる筈の、極悪人でもなんでもない普通の人間なのだと再確認させられる事になってしまうからだ。
そしてエウリュアレにとって、頭は地に這う事が当たり前になり、尻は軽やかに振られ折檻を受けるのが当然となった時、そこには小さな尻と胸、細く美しい肢体を振り上げて、大衆に媚びながら踊り狂う一人のショーダンサーが居た。
「さあ、もっと打ちなさい!女神の肉を打てる栄誉を受け取りなさいな人間ども!」
声高に挑発し、しかし目線は媚びなが可憐な尻肉を振るダンサーの顔には明らかな喜悦が浮かんでいた。
悪徳の欲望の中にも潜む愛のカタチを受け取った彼女の股からは雫が溢れ、上気した頬は紅く染まり、軽やかに、そして下品に踏まれるステップは発情と求愛を媚びに媚びていた。
「あんっ!ひぃんっ!ああぁっ!」──パァン!、バチィン!、ズバァン!──
振り上げられる鞭や、手や、靴、ベルト、その辺にある棒や布──生意気を抜かす最下層の端女に相応しい雑多な道具で、一段高い舞台にも立たせてもらえずに観客と同じ床で踊らされるエウリュアレに折檻が飛ぶ。
不躾で遠慮のない欲望の視線と暴力に、心をギュッと押しつぶされるように震えたエウリュアレは軽く絶頂してしまった。
辱めと仕置きとが今のエウリュアレにとっての愛撫であり交合だった。
「あぁぁっ!許して!いや、もっと、もっと!」
支離滅裂になる言葉の羅列を発する事しかできなくなり、歪んでいく思考の端で思う
(ああ───どうして、こんなのも悪くない、なんて。)
女神であった時にも、零落した時にも体験した事のなかったネットリと纏わりつくようで、そして火のように苛烈な責めを受ける日々に、女神は確かに歪み切った愛を見出しつつあった。
「はやく───たすけて」
でないと、もう堕ちてしまいそう。
END
なつしお
2019-05-29 09:42:09 +0000 UTC