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こーじ
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トレジャーハンターの末路①

 私の名前はエヴァ。世界中のダンジョンを攻略しお宝を集めるトレジャーハンターだ。自慢じゃないけど、私が今までに攻略出来なかったダンジョンなんて一つもない。そのため世間では「どんなダンジョンも攻略する凄腕トレジャーハンター」と称され有名人扱いされている。勿論私はそれを誇りに思ってるし、事実私に攻略できないダンジョンなんて無いと思ってる。そんな偉業を成し遂げられているのは、私が持つ特殊能力のお陰だ。  この世界には、普通の人間と、生まれつき特殊能力を持った人間が存在する。私みたいに特殊能力を持って生まれた人間、“能力者”の主な活動の場は、王国の騎士団だったり、人々に災厄をもたらす魔物と戦うハンター、他の能力者による犯罪を取り締まる公安部隊、そして私の様にダンジョン攻略を目的とするトレジャーハンターだ。勿論他にも能力者は様々な場所で活躍しているけど、トレジャーハンターとして活動する人間の名前が世間で有名になるのは私はぐらいだろう。それぐらい私の能力値は高いと言う事だ。  そんな私が次に選んだのは、“深淵の森”、別名“笑失(しょうしつ)の森”と呼ばれるダンジョンだ。元の名前の深淵の名の通り、かなり奥深くまで木々で覆われた大きな森で、女性にしか宝まで続く道が開かれないと呼ばれた特殊なダンジョンなんだけど、問題はこの別名だ。この森に入った人間は今まで“誰一人生きて帰えれない”という理由で消失(しょうしつ)と呼ばれる様になったらしいけど、ある時、森に入った人間らしき者による不気味な“笑い声”が聞こえてくる様になり、その声が徐々に消え失せ最終的に何も聞こえなくなり、笑い声と共にその姿を消したという噂から、笑失という文字を当てられる様になったらしい。  この“笑い声”というのがかなり謎で怪しさはあるけど、何より“誰も攻略した事の無い難攻不落のダンジョン”である事が、凄腕トレジャーハンターとしての私の意欲を掻き立てた。だからこそ私はここへやって来たのだ。 エヴァ 「笑失の森、いざ攻略開始よ!」  私は早速森の中へ進んでいった。意外と森の中は舗装された道が続いていて、ダンジョンという感じはしなかった。更に進んで行くと、草木が道を塞ぐほど生い茂った場所に辿り着いた。 エヴァ 「行き止まり…?他に道なんて無かったけどなぁ…?」  でも進めないんじゃ仕方がない。とりあえず一度戻ろうとしたその時だった。 エヴァ 「……あれ?草木が…。」  私の存在を認知したのか、道を塞いでいた草木が勝手に枯れていき、新たな道を作ったのだ。 エヴァ 「もしかして、女性しか入れないダンジョン…ってこういう事?」  そこへ来た人間が女性である私だと認知して草木が枯れたのなら、確かに男性は進みようがないし、その噂も頷ける。とにかく、ダンジョン側が私を招いてくれたなら、行くしかないよね…! エヴァ 「絶対にお宝を手に入れて帰還してやるわ!私を通した事を後悔するのね!」  強気な発言と共に、私はその道を進み始めた。これが、間違った選択とも知らずに…。 エヴァ 「全く、魔物がちょこちょこ出るだけで、全然ダンジョンっぽくないんだけど?」  枯れた草木から現れた道を進んでいても、“魔物が出現するだけの森”、という印象のどこにでもありそうな森。確かにこの森に住む魔物のレベルは高そうだけど、私の敵じゃない。  私の能力は、“強化魔法”と呼ばれるもの。大した事無い能力だとか思った?確かに強化魔法とだけ聞くと、そんなに強い能力とは思えないかも知れない。じゃあ一体この能力の何が強いのか── エヴァ 「また出たわね。」  森に多く住む魔物、ビッグベアが現れた。文字通り大きな熊の様な姿の魔物で、その凶暴さとパワーが取り柄の魔物だ。特にその力強い手から生えた鋭い爪と何でも噛み千切る牙と顎。これがビッグベアの武器だ。でもそんなの私には通用しない。 エヴァ 「はぁっ…!!」  私は脚力と右腕に強化魔法を掛け、その拳を振るう。私の能力によって強化された脚力によって一瞬にしてビッグベアの懐に入ると、次はその強化された拳がビッグベアに強烈な一撃を放ち吹き飛ばす。たったこれだけでビッグベアは消滅したのだ。  これこそが私の強化魔法の力。ただ強化するだけだけど、相手がその強化された私を凌ぐ力がなければ、対処しようもない。それだけの話だ。能力を使うには体内に宿る“魔力”を消費する必要があるのだけど、能力を発動する際に消費する魔力量によって、強化するレベルを変える事が出来るため、敵の強さに応じて能力をコントロールする事も出来る。だからもっと強い敵に対しては、もっと強い強化魔法を使えば良いだけの話なのだ。  しかも私の強い所は、この能力を私以外、人以外にも掛けれる事、そして、2種類の強化パターンを同時に複数箇所に掛けれる事だ。例えば、ただのサバイバルナイフを強化し、どんなに硬い金属でもスパッと斬れる様に出来るし、ただの布をどんな攻撃も通さない盾にする事も出来る。そしてその違うパターンの強化を同時に掛けれるって訳だ。これが私が強いと自信を持って言える所以なのだ。 エヴァ 「全く、ホントにここって難攻不落のダンジョンな訳…?期待し過ぎたかな。」  頻繁に出てくる魔物をテキトーに倒しながら進んでいると、ついに行き止まりになってしまった。正確に言うと、崖になっていて道が途切れてしまっていたのだ。かなりの高さがあるのか、崖の下は全く見えない暗闇。それこそこの森の名前の由来かと思える深淵。ここから落ちたら助からないだろう。 エヴァ 「嘘でしょ?難攻不落の理由って、そもそも最奥まで進めないって意味?でも生きて帰れないってどういう…。」  あれこれ考えながら辺りを見回していると、地面に突き刺された杭に繋がれた一本のロープが目に入った。どうやらそのロープは、崖の先にあるであろう先の道まで繫がっているかの様に張られていた。もしかしたら、ここには元々吊り橋が架かっていて、老朽化か何かで橋が落ちた後なのかも知れない。  生い茂る草木で遮られていて先は見えないけど、張られたロープより下には草木が無い為、このロープにぶら下がる様にすれば先に進めそうだ。 エヴァ 「なるほどね~。きっとこのロープを伝って進んでった人が道中の妨害トラップか魔物に襲われて命を落としたのかも知れないわね。やっぱり深淵の森ってそういう事なのねきっと。でもそれがこの森の名前の由来なら、お宝はこの先で間違いないわね!」  ここからが本当の難攻不落のダンジョンという訳ね。凄腕トレジャーハンターとしての腕がなるというものだ。 エヴァ 「さて、まずはロープが切れない様に強化魔法で頑丈にしておくべきね。後は私自身の防御力を上げたい所だけど…。」  ロープにぶら下がりながら、手で進んで行くとなると、単純に握力強化やスタミナ強化を腕から指先まで掛けないと、先が不安ではある。とはいえこのロープを進んでいる最中に、もし罠や魔物が待ち受けていたら、それを防ぐ術も無い。どうやって進むべきか。 エヴァ 「仕方ないわね。久々に本気出そうかしら!」  私の最大の強化魔法を使う時がきた様だ。魔力を限界まで使用した、全身強化。攻撃力増強、防御力増強、治癒能力向上、スタミナ強化、その他状態異常耐性を全て一気に付与出来る最強の強化魔法だ。魔物が襲って来ようが蹴りで仕留められるし、どんな罠が発動し私に攻撃してこようが傷はすぐに回復する。痛みも軽減出来るし、命の危険に関わる様なダメージも無力化出来る。ロープをずっと握ってる手だってそう簡単には疲れないし、毒や麻痺といった状態変化も効かない。私の全力であるが故に、魔力消費は大きく、持続時間には少し不安だけど、これだけ万全な強化魔法なら確実に攻略出来るだろう。 エヴァ 「よしっ…!どこまで続いてるか分かんないし、サクッと行っちゃいますか!」  私はロープと自身に強化魔法を掛け、すぐさまロープを握り崖を降りた。そこでようやく気が付いたゴールまでの長さ。かなり遠くまでロープが張られていて、間違いなく㎞単位の長さだ。でもここからロープにぶら下がり進んで行くしかない。遊具のある公園などで見かける、雲梯(うんてい)の要領で進んでいく。まずは片手を離し、その勢いのままもう片方の手を、ロープを握っている方の手より前に持っていきロープを握る。ただこれを繰り返すだけだ。  幸い、見たところ大きな魔物が住めるような環境でもないし、空中を飛べる様な魔物も草木が邪魔で来れなさそうだ。後はどんな罠が仕掛けられてるかだけど。 エヴァ 「んっ、何…?」  少し進んだ所で仕掛けられた罠?が発動した。だけどそれは罠かどうかも分からない些細なものだった。それは蜘蛛の巣、つまり糸だ。張られたロープの下、私の脚が通る高さに蜘蛛の糸が張られていて、それが私のブーツに引っ掛かってしまったのだ。  当然普通の蜘蛛の巣がブーツに触れたぐらいじゃ気が付かない。触れた瞬間、明らかに少し引っ張られる様な粘性を感じたから気付く事が出来た。当然ただの蜘蛛の糸ならそんな事あり得ない。だからこれが魔物の類か、仕掛けられた罠なんだとは思ったけど、まさかこれでロープから手を離すとでも思ったのだろうか…?まあ、私みたいに握力が強化されていない普通の女性なら落ちるのかも知れない。 エヴァ 「なっ…!?ちょっと、何コレ…!?」  この糸がただ私を落とす為だけに用意された些細な罠だと思っていたら、糸が触れたブーツに変化が起きた。糸が触れた部分のブーツが溶け始めてしまったのだ。 エヴァ 「溶解効果…!?まさかこの罠の本当の目的はこっち?」  まあ溶解効果のある攻撃をしてくる魔物は確かにいるから、この効果自体は別に珍しくもないけど。でもその効果が珍しくないお陰で、私の防御力増強にその手のダメージも無力化する能力があるからまだ安心だ。  触れた部分から徐々に溶かしていく粘性の糸。いつの間にかその範囲を少しずつ拡大していき、ついには私のブーツが全て溶け無くなってしまった。ただここで更に不思議な事柄に気が付いた。 エヴァ 「何……?この糸、ブーツしか溶かさない…?っていうか、もしかして人肌にはダメージを与えられないの?」  そう、この糸、私に直接ダメージを与えるものではなかったのだ。勿論、強化魔法でどっちにしろダメージは入らないけど、本来なら魔法がダメージを無力化しようとその攻撃に自動的に反応するのだが、私の強化魔法がこの溶解効果に反応しないという事は、最初から私にダメージを与える効果が無かったという事になる。なら一体この罠にはどんな意味があったのだろうか…?やっぱり、ただ私を落としたかっただけ…? エヴァ 「それならそれで先を急ぐだけよ…!」  蜘蛛の糸が対した効果を持っていない事に安心した私は、無心で先を急いでいた。 エヴァ 「私に掛かれば、どんなダンジョンだって余裕──んぃっ!?ちょっ、今度は何…!?」  油断し足元の注意を疎かにしていたら、今度は足首の辺りに何かが触れ、少しむずむずする様な感覚に襲われた。その正体を確認するため、私は一度進むのを止め足元を確認した。 エヴァ 「ん…?蜘蛛…、の魔物…?」  ブーツが溶けて無くなり素足の状態となった私の左足首に、蜘蛛の魔物が張り付いていたのだ。魔物といっても、脚を広げた状態でも私の手のひらぐらいの比較的小さいものだ。見たことない種類の魔物だけど、こいつがさっきの糸を使った魔物で間違いなさそうだ。おそらく、私の左脚にまだ糸が残っていて、それを伝って来たのだろう。 エヴァ 「張り付いてると攻撃出来ないわね…。あっ、もしかして、女性だから虫は苦手だとか思ってる?」  残念だけど私は虫ぐらいじゃ狼狽えない。このダンジョンを誰がどういう目的で作って、どんなお宝を隠したか知らないけど、正直この程度のレベルとは思わなくてちょっと拍子抜けした。  と、またしても油断していたら、私の足首に張り付いていたその蜘蛛が、突然動き出したのだ。 エヴァ 「んちょっ…!そんな動かないでっ!!んっく…、むずむずする…!」  足首を回るようにゆっくりと這いずる蜘蛛。そいつの脚が私の皮膚をトコトコ動く度にむず痒い刺激に襲われ、……何か嫌だ。ちなみに、この手の刺激は命の危険もないし、痛みもない為、私の強化魔法では防げない。 エヴァ 「くぅ…!まあこの程度なら我慢すれば良いか…。さっさと進んじゃお…!」  考え方を変えよう。強化魔法で防げない攻撃って事は、所詮大した妨害でも無いという事。防ぐ必要もない些細な罠なら無視すれば良いだけの話だ。だから私はこの蜘蛛の事なんか気にせず先を急ごうとしたが── エヴァ 「うひぃ…!ちょっ、そんなトコ…!」  足首周りを徘徊していた蜘蛛が、私の足の甲に移動してきたのだ。想定外の場所に移動してきた事に加え、足首よりむず痒い刺激が強くなり、私は思わず小さな悲鳴の様な声を上げてしまった。 エヴァ 「こいつっ…!好き勝手移動して──ひあっ…!?」  蜘蛛の動きが気になり、少しずつ進みながらも警戒していたのに、また変な声を上げてしまった。というのも、足の甲まで移動してきた蜘蛛が、今度は足の裏まで回り込んできたのだ。正直言って、ここはむず痒いとかのレベルを超えて、“くすぐったい”と明確に感じてしまう場所だ。 エヴァ 「うっくく、ちょっと、……早くどきなさいって…!」  足の裏の居心地を品定めるかの様に、ゆっくりと移動する。それがまたくすぐったく、それに気を取られてしまい私は移動を止めてしまう。 エヴァ 「いちいち動かないで!っくくく…!」  しばらく私の足の裏を堪能し満足したのか、土踏まずの辺りでようやく動きを止めてくれた。足の裏なんて場所、留まられてるだけでも正直むずむずするけど、動き回られるよりはマシだ。……よりによって土踏まずっていう足の裏の中で一番くすぐったい所に留まらなくてもとは思ったけど。 エヴァ 「何が目的なのか分かんないけど、これなら何とか進めそうだわ。よし、今の内に──」  足の裏から伝わる嫌な感覚を受けながらも、私は先を目指そうと再び動きだそうとした瞬間、蜘蛛が新たなの攻撃を始めたのだ。 エヴァ 「んぃいい!?っくふふふふふ、ちょっ、何して、っひひひひひ…!!」  私の土踏まずで留まっていた蜘蛛が、その脚の一部を器用に動かして、その土踏まずを“くすぐり”始めたのだ。いや、蜘蛛からしたらそれは“くすぐり”という目的では無いのかも知れないけど、私からしたらこんなのくすぐったいに決まってる。でもコレはチャンスでもある筈だ。蜘蛛が脚を使ってくすぐる様な攻撃を仕掛けているという事は、それ以外の僅かな脚で私の足の裏に張り付いているという事だ。なら、私が強化された足を思いっきり振れば、落とせる可能性も高くなる訳だ。 エヴァ 「うっひひ!このっ…、離れろってば!!」  物凄い勢いで足をブンブン振っても、土踏まずに張り付いた蜘蛛は一切離れない。片方の足で、もう片方の足の裏に張り付いた蜘蛛を引き剥がそうとしても、ガッチリと張り付き取れる気がしない。勿論その間も蜘蛛は私の足の裏をくすぐり続けており、くすぐったさで集中力も保てず余計に引き剥がす行動に集中出来ない。結局、この攻撃を止める事も、振り払う事も出来なかった。この蜘蛛一体何の目的でこんな事をしているのだろうか…? エヴァ 「くふふふふ…!ダメだっ…!っひひひ、こいつ全然離れない。くっくっくっくっ…、もう無視して、っくくく…!先に進むしかないか…!」  この蜘蛛を引き剥がしたいのだが、足ではもう太刀打ち出来ない。とは言え、いくら強化魔法を使っていても、片手を離すのは危険だ。スタミナを増強していようが、片手で支える手の握力は疲労が溜まるし、バランスを崩して落ちたらそれこそ終わりだ。それに、いつかは強化魔法の効力も切れてしまうし、先を急ぐべきだと判断し動き出した時だった。 エヴァ 「ひっ…!?……右足にも!?」  私の右足に付いて残っていたらしい糸から二匹目の蜘蛛が登ってきて、右の足の甲に張り付いたのだ。 エヴァ 「んぃいい!ちょっ!!早い、早いっば!」  足の甲に乗った二匹目の蜘蛛は迷いなく足の裏まで移動する。まるで意思が統率されてるかの様に目的地に移動する蜘蛛。そしてやはり土踏まずに辿り着くと、一匹目同様、脚を使ってコソコソと引っ掻き始めたのだ。 エヴァ 「んぁ…!?うっ…くくくくく、んっふっふっふっふっ…!両方は…、っひひ、キツいってばぁ…!」  二匹目とも同じ場所で同じ行動をする事で、ようやくこの蜘蛛の目的を理解した。この謎めいた行動こそ、この蜘蛛の目的なんだろう。私が今現在受けている感覚を与える行動、つまり“くすぐり”攻撃による妨害だ。  粘性のある糸には装備だけを溶かす効果があり、それで私の足を守るブーツだけを溶かし裸足にさせた。そこへ蜘蛛が登り身体に張り付き素肌をくすぐる、と考えれば、今までの謎が全て解決し辻褄が合う。  ちなみに、ブーツが溶けて無くなった後の私の下半身は、太ももから下を晒す丈の短いタイトスカート、その下に穿いている下着のみだ…。 エヴァ 「くぅ…!やっぱり蜘蛛を退かそう…!このままずっとくすぐられるのは流石に嫌…!」  多少のリスクを負ってでもこれは解決するべきだ。くすぐるのが目的ならくすぐられなきゃ良い訳で、そうなるとくすぐってくる奴を無理矢理退かしてしまえば、これは解決する。何より、この“くすぐったい”という感覚は、私の強化魔法では防げない厄介なものだし…。  と、片手を離して蜘蛛を投げ捨ててやろうとか思い、足の裏をくすぐる蜘蛛を左手で掴む。ところが、私がいくらそいつを引っ張っても全く離れてくれない。強化魔法によって強い力を得た状態でもだ。この蜘蛛、人の肌に自分の脚を完全に固定出来るらしい。 エヴァ 「ふふふふ、なんなのよ…、こいつっ…!っくっくっくっ!じゃあどっちにしろ、我慢するしか、っひひひひひ、ないんじゃない…!」  この蜘蛛の攻撃を防ぐ術が無い以上、私は大人しくくすぐられながら先を目指すしかない。諦めて少しずつ先を進むも、その間にも新たな蜘蛛が複数匹、私の足に付いた糸から登って来ていた。 エヴァ 「や、やばい…!んっふふふふふ、こんなにいたの…!?」  この蜘蛛に同時にくすぐられると思うと、流石に恐怖で背筋がゾッとする。でもとにかく今は進むしか私に道はない。 エヴァ 「いつひひひひひ、いっぱい来た…!くぅっふふふふふふふ…!!」  新たに登ってきた蜘蛛達もまた、私の足の裏に集まり、今度は指やその付け根、かかとなど足の裏全体に群がっていた。 エヴァ 「きひっ…!?んんっくくくくくく…!足の裏…、んぐぅぅうっ…!くすぐったいぃ…!」  くすぐられながら進む事しか私には残されてないし、仕方ないと諦めてるけど、だからと言ってくすぐったいのが平気な訳じゃないし、くすぐってくる蜘蛛の数が増えればくすぐったさも増す。しかも、蜘蛛の進行はまだ終わらない。ゆっくりではあるが、次から次へと蜘蛛が私の足に登ってくる。  やがて足の裏には蜘蛛が居座れるスペースも無くなると、今度は足の甲にも集まってくる。そこから指の間や、足の甲、足首までくすぐって妨害してくる。 エヴァ 「くっ…!んっくくく、しつこいのよ…!!んふふふふふ、これ以上…、っひひひ、集まっても…、無駄よ…!」  またしても新たに集まってくる蜘蛛達。もう足先は蜘蛛に覆い尽くされくすぐる場所もない。だからこれ以上集まった所でそいつらは暇を持て余す筈。だからそこは安心していた。案の定、新たに私の足に登ってきた蜘蛛達は目的地を見失い、足首の上辺りをただただうろちょろしていた。勿論その動きも少しくすぐったいけど、これ以上くすぐったくならないならまだ大丈夫。足の裏のくすぐったさも少しだけ慣れてきたのか、何とか進めそうだ。  そう思ったのも束の間、くすぐる場所を模索していた蜘蛛達が、今度は私の足を伝って上へ登ってきたのだ。しかも、足首や足の甲に集まってた蜘蛛の一部も、それに着いていく様に登ってきたのだ。 エヴァ 「ちょっ…!んくくく、こっち来ないでよ…!!」  正直、この蜘蛛がここまで考えて行動できるとは思ってなかった。本能のままに動く魔物は状況に応じて次の手など考えて行動しないからだ。まさか足先が駄目だと判断して次の場所を探すなんて…。しかも、足首や足の甲をくすぐってた蜘蛛達は、そこがあまり効果的ではないと認知しての行動なのだろう。 エヴァ 「うふふふふ…!膝、っくくく、ゾワゾワする…!!」  先頭が膝に辿り着くと、そこで留まり膝をくすぐり始める。後続も可能な限り膝や膝裏に留まりくすぐりを開始する。 エヴァ 「まさか、んっふっふっふっふっ…!全身、くすぐる気…?」  自分で考えた行動なのか、本能に基づいた行動だろうが、どちらにしろこの蜘蛛は「効果的な場所を模索しくすぐる」行動をする。それが意味するのは、最終的に蜘蛛がくすぐろうとしている部位を全部くすぐるという事に他ならない。つまり蜘蛛がくすぐろうとしている部位次第では、下半身だけに留まらない可能性も充分あるという事だ。  そして、すぐに膝周辺も蜘蛛達で占領されてしまい、後続がまたしても路頭に迷う。だからその蜘蛛達は、膝に群がる蜘蛛達を乗り越え太もものまで登ってきたのだ。 エヴァ 「くっくっくっくっ…!くすぐったいってばぁ…!!」  足の裏、膝、太もも、くすぐったさに差はあるけど、少なくともどこも“くすぐったい”と感じてしまう部位で、そこを同時に責められればその分辛くなる。そのせいで、とんどん私の進む速度も遅くなるし、スタミナの消費も激しくなってしまう。 エヴァ 「んふふふふふふ…!何匹、いるのよ…!きっひひひひひひ…!」  またしても新たな蜘蛛が3匹私の足へ辿り着き、私の足を登っていく。そして膝、太ももを経由し、今度は私のスカートの上を通りながらから更に上、ついに上半身へとやってきた。  厄介な事に私の装備は、防御力を強化魔法に頼っていた為、ノースリーブのジャケットに、胸元だけを隠す程度のチューブトップという、動きやすさをとにかく重視した装備であり、下半身に劣らない程上半身も肌の露出が多かった。結果、強化魔法でも防げないくすぐり攻撃に対し、私の格好はあまりにも無防備となっていた。 エヴァ 「くふぅ…!?えっ、ちょっ!いひひひひひひ…!!」  私のお腹へと辿り着いた蜘蛛達は、鳩尾(みぞおち)付近と脇腹、腰に移動していくのだが、お腹の上を蜘蛛が移動するだけの行動ですら、下半身の時より遥かにくすぐったい。 エヴァ 「待って、そこは……っきひひひひひ!!んっふふふふふふ、くふぅぅうう………!!」  そんな腹部をくすぐられたら絶対にやばい…!と瞬時に思ったが、やっぱりだ。蜘蛛達がその脚でくすぐってきた瞬間、今までとは明らかに違う、大きなくすぐったさに襲われた。正直、笑い声を抑えるのもかなり辛い。もしこのくすぐってさに負けて笑ってしまったら、先に進む余裕も無くなるし、手に力が入らなくて最悪の場合下に落ちてしまう可能性もある。何とか耐えないと…! エヴァ 「くひひひひひひひ、んんっ…!っふふふふふふふふふ…!!」  必死に我慢しながら進もうとしても、中々上手くいかない。ロープを握る手に力が上手く入らず、片手を離した瞬間に落ちてしまうかも知れないという恐怖が過ぎってしまうからだ。こうなると進み方を変えざるを得ない。  ロープを握っている両手。その内、進む方向側の手を一瞬だけ離しつつ進行方向にずらし、スタート地点側でロープを握っている手を、また一瞬だけ離して進行方向にずらす。時間は掛かるけど、このやり方じゃないともう進めない。それぐらい、このお腹へのくすぐりは見事な妨害力を発揮していた。 エヴァ 「くっくっくっくっ…!んぐぅぅ、…ふふふふ、んひぃぃいい!?」  そんな時、突如くすぐったさが増大し、私の身体が思わずビクッと反応してしまった。その原因はまた新たにお腹に登ってきた蜘蛛の内の一匹が、私のおへそをその脚で引っ掻いたからだ。おへそに脚を入れてくすぐってくるなんて考えもせず、単純に驚いたというのもあるが、それ以上にお腹や脇腹、腰よりくすぐったかったのだ。 エヴァ 「んひひひひひひひ、こいつ…!んふふふふふふふふふいつの間に…!?」  そもそも、また新たな蜘蛛達が登って来ていた事にも気付かなかった。それだけ腹部へのくすぐりが私にとっては辛かったのだ。 エヴァ 「このままじゃ…、きっひっひっひっひっひっひっひっ、先に進めない…!くっふふふふふふ!」  お腹周りがとにかくくすぐったい。勿論、下半身を責める蜘蛛も相変わらずくすぐったい。徐々にこのくすぐったさに支配され、無意識に身体を暴れさせ抵抗しようとしてしまう。それが原因で進む余裕が無くなってしまった。 エヴァ 「いや、ダメだ…!きっひひひひひひひひ、こんな攻撃に、いひひひひひ…!私は…、屈しないわよ…!」  この状況につい弱気になってしまっていたが、このままでは私は助からない。凄腕トレジャーハンターとしてのプライドを守るため自らを鼓舞し、私は再び進み始めた。  するとまたしても蜘蛛が数匹、列を作って私の上半身まで登ってくる。おへそ付近から脇腹へ、そこからまたお腹の方へ……と、私の敏感な所を吟味するかの様に動き回り自分達が次にくすぐる場所を模索する。 エヴァ 「んひぃぃいっ、ひひひひひひ…!んくっ!つ…、次はどこをっふふふ、くすぐるつもり…?」  私の恐怖心を煽るかの様に、わざと同じ場所を移動しながら僅かなくすぐったさを与えてくる。その動きをしっかり見ていないと不意を突かれそうで怖いのだ。そして先頭が鳩尾を通過しながら横へ移動する。 エヴァ 「くぅ…!!あ、肋…!?んっ、ふふふふふふ、いひひひひひひ…!」  脇腹よりも更に上、初めて侵略された場所はやっぱり新鮮?なくすぐったさに襲われ身体が反応してしまう。幸い、おへそよりはくすぐったくなかったし、ちゃんと蜘蛛の動きに集中出来ていたから、ゆっくりではあるが先に進み続ける事が出来た。  列を作っていた蜘蛛達は、鳩尾をくすぐる蜘蛛を跨ぐ様に移動し、そこから左右に別れ肋を狙ってくる。腹部を時間を掛けながらウロウロしていた事が原因なのか、いつの間にか数匹とは呼ぶには足りないぐらいの数が列を作っていた。それはつまり、すぐに肋をくすぐる蜘蛛がいっぱいになり、後続がまたしてもくすぐる場所を模索する様になるという事だ。 エヴァ 「ひひっ…!そっち、っくくくくく、嫌…!」  肋にある程度集まった後にまだ残っていた後続は肋を通り過ぎ背中にまで回り込む。私の視界に入らない背中はくすぐったいのは勿論、背筋を文字通り直接ゾクゾクさせる動きが気色悪い。 エヴァ 「いっひっひっひっひっ!もう、これ以上…、ふふふふふ…!動き回らないで…!」  背中を徘徊する数匹は、どこか一箇所には留まらず、背中をただひたすらに動き回る。私もそっちの方が正直辛く、蜘蛛達もそっちの方が効果的だと判断したのかも知れない。  それでも私はくすぐったさに耐えながら先を進むが、相変わらず蜘蛛達は遠慮という言葉を知らないのか、また数匹が私の身体を登り列を作りながらやってきた。 エヴァ 「しつこいのよぉ…!うっくくくく、ひひひひひひひ…!!」  脇腹、鳩尾、へそ、肋、もうここに新たな蜘蛛がくすぐる場所は無い。背中もうろちょろするならこれ以上は数が多いらしく、この団体はまて私のお腹の上を徘徊し、新たな場所を見つけようとする。 エヴァ 「上半身は…、っいひひひ、もういっぱいよ…!いい加減、っくふふふふふふ、んんっくく、諦めなさいよ…!」  もうくすぐる場所は無い。そう蜘蛛達に訴えるが、蜘蛛達も諦めずにお腹周りを移動し続ける。だから私も蜘蛛達に諦めさせようと必死になる。 エヴァ 「もう無理だってば…!あっ、くくくく、きひひひひひひ…!これ以上、うふふふふふふ…、くすぐる場所なんて、っひひ!!…ないわよ…!」  必死にならなきゃいけない。何故なら…、私にはどうしてもくすぐられたくない場所があるからだ。上半身にもうくすぐる場所がないと言ったのは嘘。自分でもその場所は意識せざるを得なくて、そこを蜘蛛達に悟られたくないから必死になっているのだ。  ただでさえくすぐりに対し無力な服装なのに、ロープにぶら下がる様にしているこの状態で、その場所はあまりにも無防備過ぎる…。 エヴァ 「くひっ!?んっくくくくくくく、ちょっ…!そっちは、きひひひひひダメ…!」  お腹周りを徘徊していた蜘蛛達が、肋を経由し更に上をへと登ろうとしていた。その動きに、私は思わず静止を求め声を荒げる。  肋を過ぎ、チューブトップの上を通り登ったその先は──  その場所だけは、………絶対に耐えられない。

Comments

ありがとうございますm(_ _)m楽しんで頂けたら幸いです。

こーじ

蜘蛛による責めは新鮮ですね。 ご投稿ありがとうございました。

炙り蜻蛉

ありがとうございます! 能力が仇になる展開に上手く結び付けられて良かったです💦 こういう間接的な拘束による無防備な状態いいですよね✨

こーじ

せっかくの特殊能力がくすぐりにはなんの役にも立たないの良いですね!(さらにそのせいで服装が隙だらけに・・・) 普段なら払いのけるだけで済む蜘蛛にも、今はどうしようもできず、くすぐられるしかないっていうシチュエーションも好きです!

GreenWeedA


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