裏社会の技術者、茉姫の苦難①
Added 2023-09-12 12:14:15 +0000 UTC私の名は如月 茉姫(きさらぎ まき)。自分で言うのもなんだが、一部で名の知れた優秀な技術者である。私はたった一人で顧客の依頼に応え、様々な機械や薬品を作り上げてきた。スピーディーかつ丁寧に作り上げられた商品は、依頼主の無茶なオーダーにも完璧に応えられた自慢の作品である。どんなオーダーにも完璧に応えられる、というのが私の売りで、その金額がどれだけ高額になろうと私への依頼は殺到する。 なら何故そんな腕のある技術者である私が一部でしか名を知られていないのか。それは、私の商品が裏社会で使われているからだ。裏社会というのは、いわば犯罪が平気で行われる社会で、私はそんな闇の世界で仕事をしている悪人である。そういう裏社会で悪事を働く者達に依頼され、自分の作り上げた商品をを提供しているのだ。その商品とは所謂、スパイや裏切り者への“拷問用”の品物と言う奴である。だから当然、どれ程すごい腕を持っていようが、私の存在は世間一般には晒せないのである。それが私が一部でしか知られていない理由だ。 話しが急に逸れてしまうが、そんな実力派の技術者である私にも大きな悩みがある。実はこの裏社会で拷問を研究している、滝 音葉というマッドサイエンティストが多くの技術者を雇い、新しい拷問の研究に成功し、その拷問装置なるマシンを開発している様で、その拷問が高く評価された事で私の顧客が奪われる事となり、依頼が激減しているのである。勿論私なら、どんな仕組みの物だろうが依頼されればその通りに作る事は出来る。だが、その新たな拷問を取り入れたい企業は、それを開発した張本人、滝 音葉から専門の装置を買いたいし、彼女の企業はそれだけを大量生産している為、彼女から安く買えるし、私の様な多額の金銭を求めるオーダーメイド商品に頼らずに済む。だから私の需要が無くなってしまったのだ。 それだけを生業としていた私は、依頼が無ければ金も貰えないし、金が貰えなければまともに生活も出来なくなってしまうのである。 茉姫 「はぁ…、依頼が無くなってもう一週間。まだ財産は十分あるけど、流石にこのままだといつかは生活出来なくなるわよね。いっそこの裏の世界から足を洗うのもアリだけど、私の技術者としてのプライドが許さないのよねぇ…。」 当然私は技術力では誰にも負けない自信がある。だが、その新たな拷問がどんなもので、その拷問に使う機械がどんな物なのか、そして滝 音葉の企業より良い商品がどのレベルの物なのか、それが分からなければ戦いようも無いし、作りようが無い。秘密裏に動く裏社会の人間から、そういった拷問の話など聞ける筈も無い為、八方塞がりな状態だ。ただ、拷問の方法が有名になり過ぎたら、自然と私の耳に入る可能性もあるし、スパイ側もその拷問に対抗する訓練を積んで、いつかその拷問の需要も下がるのでは無いかとも思ってしまう。だからその時が来るのを待つという手もあるのだが…。 茉姫 「……やっぱり、その企業に潜入して、拷問の実態と技術を調べた方が早いわね。それに何より、ただ私の需要が戻るのを待つなんて負けを認めた様なものじゃない。そんなの冗談じゃないわ。」 拷問の実態とその技術、それさえ分かってしまえば、その技術を上回る物を作れば良い。そうすれば顧客がまた私を求め、再び依頼する事になるだろう。 茉姫 「滝 音葉って女がどんな科学者なのかは知らないけど、今需要が高まっているならもっと技術者を求める筈よね。行動に移すなら今しか無いか。」 そう思い立った私はすぐに行動を開始した。裏社会にだけ出回る求人票を調べると、堂々と滝 音葉と名前を出していた企業が見つかった。新たに開発した拷問に使用する機械の製造とそれを求める顧客を大々的に募集していたのだ。 これは確実にチャンスだ。私はすぐに瀧山 音葉に連絡を取った。すると、余程人材が不足しているのか、すぐに面接に来て欲しいと言われ、早速その企業に潜入するキッカケを作る事が出来た。 茉姫 「随分あっさり潜入出来そうね。これならすぐに情報も得られそうだわ。」 折角得られた千載一遇のチャンス。当然これを逃す理由も無い私はすぐに準備を整えた。スパイなら万が一に備えた通信機やピッキングアイテムなんかを隠し持つが、私はあくまで技術者として働きながら拷問の実態を探るのが目的である為、スパイの類と疑われない様、あえて肌の露出を増やし薄着で行く事にした。トップスは丈が少し短めのノースリーブのタートルネック、ボトムスはタイトなミニスカートにし、裸足にサンダルというこの暑い夏を少しでも快適に、そしてお洒落を嗜む少しラフな格好にした。首元を覆っている所だけは怪しまれるかも知れないが、全身無防備な服装の方が「あえて何も隠してない様に見せる服装」だと逆に警戒するのがこの世界の人間の発想だ。だからこれぐらいの方がお洒落を目的とした服装だと感じるものである。まあ一番の理由は、相手が女であろうと胸元を大胆には晒したくないだけなのだが。 音葉の研究所に着いた私は、面接をする為に事務所へ招かれた。どれだけ悪事を働く裏社会の組織だろうが、“表向き”は一般企業として振る舞うのが常識である。でなければ警察にあっさり捕まってしまうだろう。だから音葉のこの研究所も、清潔感のある綺麗な内装と来客を招く為の客室を完備するなど、とても拷問を研究しその装置を作る場所とは思えなかった。 茉姫 「青山 唯です。よろしくお願い致します。」 如月 茉姫という名前は裏の世界では当然有名であり、同姓同名の別人などまずいない珍しい名前だ。だから私は偽名を使い、自分の存在を隠して面接を受けていた。 音葉 「私がここの所長、滝 音葉です。こちらこそよろしくお願いしますね?」 彼女も名前こそ有名であり、私も何度か耳にはしていたが、実際にその姿を見たのは初めてだ。音葉は、一見拷問を研究する様なマッドサイエンティストには見えず、マイペースで少しおっとりした印象のある、とても若くて可愛らしい女性だった。25歳にして高い知名度と技術力を誇るこの私も裏社会にいる人間の中じゃかなり若い方だが、その私よりも若いのはまず間違いない。 音葉 「えっと~、仕事が欲しくてこの求人票を見て連絡してくれたんでしたっけ?」 唯(茉姫) 「はい。今話題の方の研究所で働きたいと思いまして。」 音葉 「私の事ご存知だったんですね。ありがとうございます~。……単刀直入に聞きますが──」 唯(茉姫) 「!?…は、はい。」 まさかこの段階で私の素性がバレてしまったのだろうかと、緊張感が走る。いくら私がこの世界で名の知れた技術者たろうが、その声や顔までは知られていない筈だが…。 音葉 「あなたも、“こちらの世界の人間”、という認識で大丈夫ですか〜?」 成程。そういう確認だったのね。まあこの求人を見た時点でそれは明らかだろうが、万が一にもこっちの人間じゃなかった場合色々と問題があるし、その確認は確かに必須だ。 唯(茉姫) 「はい。主に拘束具を作る仕事をしていたのですが、最近は需要が無いみたいで、私が働いていた小さい会社は顧客を失い倒産してしまいました。」 スパイ活動として相手を騙した上で、ここで働きたいと言う理由はしっかりと考えなければならない。だから私は実際の境遇を織り交ぜ、その話に信憑性や説得力を出す。スパイ活動をしている事と、自分が名の知れた技術者という事だけを伏せ、それ以外の事実を伝え信じさせようとしたのだ。 音葉 「確かに今は拘束具と拷問装置を一緒にした機械が求められる時代ですし、枷やその部品だけ作るのは需要無いかもですね〜。」 唯(茉姫) 「はい。仕事も無くなってしまい途方に暮れていた所に、この求人票を見つけ連絡をさせて頂いた次第です。」 音葉 「そうでしたか。でしたら、今日からすぐに、って言っても大丈夫そうですかね〜?」 唯(茉姫) 「はい、勿論です。それじゃあ、採用して頂けるんですか?」 音葉 「はい。今ここではパーツ別に機械を生産しているので、拘束パーツの製造なら即戦力でしょうから。早速よろしくお願い致しますね?唯さん。」 唯(茉姫) 「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します。」 無事にこの企業への潜入に成功した私は、すぐにその拷問の実態を知る事が出来ると思ったのだが、私に与えられた仕事は拘束パーツの製造のみ。ここで開発された拷問の根幹に関わる部分は一切聞かされなかった。 しかも作業員同士のコミュニケーションを取らせない様に、各々に設備の整った個室が用意されそこで与えられた仕事を行うという体制が取られていた。おそらくは情報漏洩対策なのだろうが、当然これではどんな拷問装置を作っているのか知りようがない。 まあ確かにこの研究所で働いている技術者全員がその拷問の実態を知っていたら、この世界の連中に情報が拡散するだろうし、それがキッカケでこの新たな拷問が大勢に認知されてしまえば、やがてその拷問は通用しなくなるかも知れない。そうなればその拷問の為に量産している機械が無駄になり、この企業も顧客を失い倒産必至だろう。つまりこれぐらい徹底しているからこそ、その拷問は“新しい上に実用性の高い拷問”として今需要が高まっているのだろう。つまり尚更私がその拷問の実態を知れる機会など無いという事だ。 だが、だからと言ってここで永遠に拘束具を作っていても状況は変わらない。多少のリスクを犯してでも、強引にその拷問の実態を知る行動に出るしかない。でなければ私がここへ来た意味が無い。そう思い立った私は、早々に与えられたノルマを終わらせ、この研究所の探索を試みた。 と言っても秘密裏に研究された新たな拷問の情報の在り処なんて、この研究所の地下室以外あり得ないだろう。問題はどうやってその地下室に行くかだ。ここで働く技術者にも教えないという徹底ぶりを考えると、そんな簡単に地下へ続く階段やエレベーターが見つかるとも思えないが…。 茉姫 「と思ってたけど、階段は普通にあったわね。」 個室を出て少しフロアを散策しただけで、地下へと続く階段を見つけてしまった。技術者にはそれぞれの作業場として個室を貰ってる時点で、私の様なスパイ活動でもしない限り地下へ行く者はいない。だからこそ普通に地下へ続く階段があっても誰も使う事は無い訳で、地下室で何をしていようが隠す気も別に無いという訳か。 とは言え、監視カメラ等に気を付けながら慎重に地下へと降りていく。降りた先にも特にセキュリティの施された扉なども無く、私がいたフロアと同じ様に、作業場であろう個室が並んでいた。そしてその廊下の最奥にあった扉に、ご丁寧に“拷問研究室”と書かれた部屋があった。 茉姫 「いくらなんでも露骨過ぎないかしら…?」 まさか罠…?でもこの拷問を隠したいのなら、探られるリスクを犯してまでわざわざこんな堂々とする必要も無い、か…。という事は、ここで研究している拷問の実態を隠す気なんて最初から無いのか?拘束パーツだけを作る私にとっては管轄外だったから言う必要が無いと判断されただけなのだろうか? あれこれ考えていても仕方がない。とにかくこの扉の先にある研究書類を盗み見て、拷問の実態を探らなくては。そう思い慎重にドアノブを下げて扉を開けた瞬間── 茉姫 「んくっ…!?ちょっ…!!」 突然部屋の中から枷の着いたアームが4本襲いかかった。慌てて部屋の反対方向へ逃げるも、物凄いスピードで伸びてきたアームによって、私は両手首と両足首を掴まれてしまった。そしてそのまま部屋の中へと連れて行かれてしまった。 茉姫 「何なのよこのマシン…!くっ…!離しなさいっ!」 やはり罠だった様だ。確かに今思えば、セキュリティが甘過ぎで、スパイを誘い込む様な無防備さだった。これは完全に私の不用心さ、油断が招いた失態だ。とは言え、スパイを本業とはしていないただの技術者だ。このピンチを受け入れたくはないが、スパイの素人の私ではこうなっても仕方がないとも言える。我ながらつくづく考えが甘かったと後悔するばかりだが、それはもう後の祭りである。 私を捕えたマシンは、私よりも背丈が大きな人形に近いロボットで、顔と思わしき場所には大きなモニターが付いている。そして大きな胴体から下に伸びる太い円柱状の下半身にその体を支える台と、移動する為のキャスターが付けられていた。そしてこのアームは、人間で言う胸部の横辺りと腰の横辺りからそれぞれ2本ずつ伸びており、先端が枷になっている事からも、私の様にこの部屋への侵入を試みた者を捕える為のマシンである事が分かる。 茉姫 「全然動けない…。逃げるのは無理そうね…。」 いくらもがいてもアームがしっかりと私の四肢を掴み身動きを封じている。このマシンに他のどんな機能があるか分からないが、おそらくこれが噂の拷問マシンなのだろう。つまり私は、このマシンによって 音葉 「お待たせしました〜。ご気分はいかがですか?」 このマシンが起動し私が捕われたのを知って、部屋の奥から音葉が現れた。マシンだけがただ暴力的に拷問するのでは無く、やはり私から情報を引き出す為に尋問しようと言うのだろう。 茉姫 「良い訳ないでしょ。早くこれを外してくれないかしら?」 音葉 「残念ですが拘束を解く訳にはいきませんね〜。お姉さんが身分を偽ってここへ潜入した目的を聞かなきゃいけませんからね〜。勿論その正体や所属組織、場合によってはお姉さんをここへ仕向けた組織も教えて頂かなければいけませんからね?」 まあこんなマシンで拘束しておいて、私の言葉に素直に従う訳は無いわよね。けどスパイとして潜入する事を決めた時点で、こうなる事も覚悟はしていた。どちらにしろ顧客を失った私は生きていく術が無いに等しい。大袈裟に言うが、だからこそこの決死の賭けに出たと言っていい。何もせず生活費を失い野垂れ死ぬのも、ここでこうして捕まるのも人生の終わりと言えば同じ結末だ。それに、まだ希望も無くはない。 茉姫 「拷問しようって訳ね。」 ここへ潜入した私から目的を聞き出す為の拷問。それこそ私が知りたかったものだ。自分が拷問を受けるの事への抵抗の方が正直大きいが、それを覚悟していなければこんな無茶など出来はしない。そして数少ない希望は、私の技術者としての腕だ。私が拷問に屈し正体を明かせば、その腕を買われて助かるかも知れない。勿論私の技術者としの腕をここで役立てたいと彼女が思えばの話だが。それで解放されれば、後はここの脱走を試みれば晴れて自由の身だ。 ちなみに、仕事が無くなったのならここで素直に働けば良いと思う者もいるかも知れないが、それはしたくない。これはただの私個人の問題だが、根本的に誰かの下で働くというは性に合わない。ただそれだけだ。 音葉 「そういう事になりますかね〜?あ、ちなみに〜、今素直にしゃべったとしても、拷問をやめる気も無ければ、解放する気も無いですよ?本当の事を全て正直に話してる保証も無いですし、拷問によって屈服させなきゃ信用出来ませんからね?」 私より年下と思われる女の癖に、中々良い性格をしている。悪い意味で。この若さで裏世界の企業のトップに立ってる事を考えると必然なのかも知れないが。どちらにしろ酷い目に会うのは間違い無さそうね。腹をくくるしかないか……。 茉姫 「あっそ。なら好きにすれば良いわ。」 音葉 「勿論そうさせて貰いますよ〜。だからこの拷問マシンを仕掛けていた訳ですからね?」 茉姫 「この機械が何?一体どんな拷問をしてくれるって言うのかしら?」 自分がその拷問を受けるのは不安と恐怖を感じざるを得ないのだが、技術者としての悪い癖が出てしまう。この拷問の実態を知る事で、その拷問マシンを想像し、私がまだ作った事の無い機械の構造を考え脳内で組み立てる喜びも味わえる。寧ろそれを考えたくて仕方がないのだ。だから不思議とこの身体の震えが恐怖で無いのも分かる。未知の拷問を行う機械を私の技術力で生み出したい。そんな思いが大き過ぎて興奮しているのだ。だから今は少し、早く拷問をされたいとまで思っている。自分が実際に受ける事で被験者となり、より相手を苦しめる術も理解でき開発が捗ると言う物だ。 音葉 「勿論、私がここで研究した拷問ですよ?さっきはお姉さんがここへ来た目的を聞くと言いましたが、その目的が私の開発した拷問の実態を探る事っていうのはだいたい分かってるんですよ〜。」 確かに自分で新たに拷問を開発した以上、それを探ろうとする者がいるのは当然の事。それに求人票にも新たに開発した拷問装置を作る技術者を募集すると大々的に記してる時点で、ここへ潜入するスパイの目的なんて拷問の実態調査以外あり得ないと言う訳か。 茉姫 「だとしたら?その情報を教えたくないから拷問はやっぱりしませんって言うのかしら?」 音葉 「まさか〜。目的が分かったとしても〜、やっぱりお姉さんの事を色々知る必要はありますし〜、他の拷問マシンなんてありませんから。こちらから拷問の情報を提供する事になろうとも、この拷問をやめるなんてあり得ません。ですから身を以てこの拷問の実態をお調べ下さ〜い。」 茉姫 「えぇ、じっくりとそのご自慢の拷問を味わってあげるわ。」 やっぱり、拷問なんて受けたくは無いし得体の知れない拷問は不安だ。しかし、やっぱりその拷問の実態を知りたくて堪らない。私がどんな苦痛を味わう事になるのかも計り知れないが、その拷問を行う機械を自らの手で作ってみたい。今まで作った事も無い機械を1から作り上げる喜びを感じ、それを妄想するだけで高揚感に満ち溢れる。 そんな不安による緊張感と、興奮による高揚感で胸が波打つ不思議な感覚を味わいながら、私は自らに与えられる拷問を今か今かと待ち焦がれるのだった。
Comments
ありがとうございますm(_ _)m こういう性格の女性こそくすぐり甲斐がありますね(笑)
こーじ
2023-09-12 20:53:07 +0000 UTCありがとうございますm(_ _)m いつも同じ様なシチュエーションになってしまうので、どう差別化しようか模索中です(^_^;)
こーじ
2023-09-12 20:52:09 +0000 UTCプライドの高い美女が露出の多い服装で拘束される… なんともそそられる内容ですね! 続きを期待してます!
炙り蜻蛉
2023-09-12 18:25:04 +0000 UTC今回も素晴らしい序章ですね。 これからどのようにくすぐり拷問されるのか楽しみです。
オッカ
2023-09-12 13:04:13 +0000 UTC