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ティックリー・アドベンチャー 5-3

 ミツキ達が旅支度をしていた夜の事。古城ではティックラー達も次の作戦を考えていた。 ティックラー「アイナさんが能力者だったのは驚きましたね。」 キュバス「あの覚醒がなければもっとエネルギーを集められたんですが……。」 ティックラー「構いません。彼女の正義感を試す実験で、かなりエネルギーを集める事が出来ましたから。この実験結果は今後も役に立つでしょう。」 ジエル「それってつまり、今後もミツキちゃんの正義感を利用してより強いエネルギーを集めるって事?」 ティックラー「はい。彼女の魔力はやはり格別で、私に一番良いエネルギーをもたらします。それに、あえて我慢させた後のエネルギーは、量も質も相当なものです。」 キュバス「問題は、その状況をどう作るか、ですね。」 ティックラー「それなら問題無いでしょう。覚醒したアイナさんは、おそらくレディナイツの旅に同行します。ですが、彼女は能力者として目覚めたばかり。その上、補助系の能力ならば攻撃手段など無いでしょう。つまり、彼女は我々にとっても格好の的であり、ミツキさんは必ず彼女を庇うという事です。」 キュバス「なるほど、それなら確かに上手く彼女の正義感を利用出来そうですね。」 ジエル「よし!そうと分かれば、早速くすぐる方法を考えよ!」 ティックラー「彼女達はおそらく海上を一直線に進み、クスグの森まで来るでしょう。おそらくジェットボードと呼ばれる海上を移動できるボードを使って来ると思われます。今度はその海上で彼女達からエネルギーを集めて下さい。」 キュバス「海上なら私のチャームによる魔物の出番ですね。ジエル、あなたはマジックハンドでのサポートをお願いするわ。」 ジエル「オッケー!次は海か〜!今回は空を飛べる私達が断然有利だね!」 ティックラー「その通りです。そのボードの上では彼女達は満足に戦えないでしょう。上手く操縦しなければ海へと落下しますし、そうなればもっと彼女達は危険な目に会う事になりますからね。ここで彼女達全員から膨大なエネルギーを得られれば、私の完全復活も目前となるでしょう。」 キュバス「そうなれば、ティックラーが望む世界になる日も近いですね。」 ティックラー「はい。具体的な戦い方はあなた方に任せます。頼みましたよ。」  そう言い残したティックラーは自室へと戻っていった。いよいよ十分な魔力を得たティックラーは、本格的に活動するための準備期間に入ろうとしているのだ。 ジエル「海の魔物か〜。どんなのを操るの?」 キュバス「候補はいくつか考えているわ。さっそくこれから海へ行って、候補の魔物を探して手駒にしておくわよ。海は広いから、目的の魔物を探すのも一苦労だし。」 ジエル「確かに、まずは見つけないとチャームも出来ないしね!」 キュバス「えぇ、彼女達の行動を把握した上で、確実にエネルギーを集められるよう備えをするのよ。あ、でも戦いの最中、やり過ぎて彼女達を海へ落としちゃダメよ?」 ジエル「わかってるよ〜!ティックラーが完全復活するまでは、レディナイツ達からエネルギーを集めなきゃいけないんだもん。海に落ちて死んじゃったりなんかされても困るって事でしょ?」 キュバス「そういう事。あくまで海上で拘束して、私達の魔力の限界までくすぐり続けるのよ。」 ジエル「うん!」 キュバス「それじゃあ海へ行きましょう。候補の魔物を教えておくから、ジエルも探してくれる?」 ジエル「任せてよ!」  いち早く行動を開始した使い魔達は、夜明けとともに海へ赴き、レディナイツを待ち構えるのだった。 ミツキ「何とかボードは借りる事が出来たな。」 アイナ「でも本当にお金無くなっちゃったね…。」 ライカ「仕方ないです。とにかく今の私達の目標は、ティックラーを倒し生きて帰ってくる事ですから。生きて帰れれば、これを借りたお金も返ってきますし。」 アカネ「それに、一応これはコチヨ王女からの依頼だからね!達成すれば当然報酬も入るし!」 アイナ「そうなの?」 ミツキ「まあな。金が目的という訳ではないが、様々な依頼を受けてその報酬を貰うのが、私達の生活の全てだからな。それなりに報酬の事も考えている。」 アイナ「まあそっか……。言ってみれば私の薬を売る仕事も、その薬をあげた報酬って事だもんね。」 ライカ「そうですね!」 ミツキ 「……じゃあ、そろそろ出発するぞ。準備は良いな?」 アカネ「オッケー!」 ライカ「問題ありません!」 アイナ「……うんっ!大丈夫!」 ミツキ「うん、良い返事だ。よし、行こう!」  ミツキとアイナ、ライカとアカネがそれぞれのボードに乗り、いよいよ海へと出たレディナイツ。船による遠回りの移動を避け、直接クスグの森を目指すが、それでも数時間は掛かる距離だ。 ライカ「この状態では、思った以上に戦いが不便そうですね。」 アカネ「だね〜。ライカは運転に集中して貰うとして、私だけでどこまで戦えるか…。」 ライカ「相手の攻撃回避は私のボード操作に任せて下さい。アカネは私の合図で迎撃するように心がけて下さい。」 アカネ「わかった!」  海上での戦いは明らかに使い魔が有利。それは彼女達レディナイツも重々承知であり、これは極力戦闘を避けつつクスグの森まで移動する作戦だった。 ミツキ「こちらはアイナのサポートがメインになる。頼んだぞ。」 アイナ「う、うん…!」 ミツキ「よし、飛ばすぞ。ライカー!そっちも飛ばしてくれ!」 ライカ「了解しました!」  一方、ミツキとアイナの方は、ミツキがボード操作をするため基本的に戦えないが、その秘策も考えていた。だがまずは敵が現れない内に少しでも移動する為に、魔力を更に使いスピードを上げた。 ミツキ「このまま森まで辿り着ければ良いが……。」  海上での戦いは困難であり、あわよくばその戦闘を避け森へ辿り着ければと考えていた矢先、やはり使い魔によって操られた魔物が現れたのだ。 ライカ「来ましたね…!」 ミツキ「まあ、そう簡単にはいかないか。」  レディナイツの前に現れたのは、巨大なタコとイカの魔物だった。  タコの方は太くて力強そうな8本の脚があり、イカの方は細くてウネウネと素早く動く脚が10本あり、一見ただ巨大なだけの魔物にも見えるがその脚の意味をミツキは瞬時に理解した。 ミツキ「タコは拘束に特化し、イカがくすぐる事に特化した魔物、という感じだな。」 アイナ「確かに、あんな太い脚に捕まったら逃げれそうにない…。」 アカネ「それに、あの細い脚はいかにも触手みたいにくすぐってきそうだね…!」 ライカ「ミツキ、どうしますか?」 ミツキ「可能なら戦闘は避けたい。最低限の迎撃だけ行い、まずは奴らの背後まで出よう。」  その合図でミツキとアイナは左側、タコの方へ。そしてライカとアカネは右側のイカの方へと向かい二手に分かれ進み始めた。 ジエル「させないよー!」  タコとイカの魔物を掻い潜ろうとするレディナイツに対し、不意に現れたジエルが応戦する。ジエルの作り上げたバインドリングが大量発生し、魔物の外側を覆う。これにより外側からの移動が困難になってしまったのだ。 ミツキ「くっ……!面倒な事を!」 アカネ「リングの量、めちゃくちゃ多くない!?」 ライカ「使い魔の魔力が相当上がってますね……!」  港町クッスでミツキを使った実験によるエネルギー吸収が、ティックラーにとって相当な力になっており、使い魔もその魔力をかなり高めていたのだ。 ライカ「この量を掻い潜って外側に逃げるのは無理ですね。中央突破しかありません…!」 ミツキ「ライカ!ダメだ!!」  バインドリングを避け、進路を戻すライカ。だがそれもジエルの作戦だったのだ。いち早くそれに気付いたミツキはライカに声をかけるが、それも手遅れだった。  バインドリングは空中を自在に浮遊し移動する。この大量のバインドリングから逃げる事が何よりも困難であり、それらを破壊しながら外側に回り込むのが正解だったのだが、そのバインドリングを背にして魔物の方へと移動すれば、当然挟み撃ちにされてしまうのだ。 アカネ「うわぁ……!?」  ジェットボードのスピードを上げるも、大量のバインドリングからは逃げ切れず、ライカの後ろにいたアカネの右手首に、バインドリングが嵌められてしまったのだ。 ライカ「アカネ…!」  右手をその場で固定されてしまい、アカネはライカの操縦するジェットボードから引き離され、右手だけを上に持ち上げられるような状態で、空中で拘束されてしまった。一度バインドリングに捕まれば、大量の魔力を一気に解放しなければ破壊出来ない。 ミツキ「仕方ない…!アイナ、頼むぞ…!」 アイナ「はい!」  アカネのピンチに、ミツキはジェットボードで助けに向かう。しかしこれでは、ミツキ側のバインドリングもミツキ達を追いかける事となり、これではジエルの思う壺である。  たがそれはミツキも分かりきっており、その対策も万全だったのだ。そのミツキの合図で魔力を込めるアイナ。 アイナ「いくよ…!パワーフォース!」  ミツキとのトレーニングで習得した補助系の基礎技、パワーフォース。これは能力者の魔力や、その技のパワーを一定時間上昇させるもので、それをミツキを対象に発動したアイナ。それにより、ミツキの魔力によって動いていたジェットボードの出力上昇に繋がる。つまり、猛スピードで移動できるようになったのだ。 ジエル「うえぇっ…!?何そのスピード!?」  ジェットボードは大きな水しぶきを上げながら進み、バインドリングからどんどん距離を取っていく。そして瞬く間にアカネを捕らえるバインドリングの元へ辿り着く。 ミツキ「こっちのバインドリングは一掃する。ライカはアカネを頼んだ…!」 ライカ「はい!アカネ、魔力解放して下さい!」  ジェットボードを加速させたままライカ達側のバインドリングへ突っ込むミツキ。 ミツキ「フリーズウェイブ!」  ミツキが片手でジェットボードを操縦しながら槍を振り払うと、冷気が勢いよくバインドリングに向かって放たれる。アイナのパワーフォースの効力も相まって、その冷気の威力、速度、範囲がパワーアップしており、辺りのバインドリングは全て凍りつきそのまま消滅してしまう程だった。 ジエル「そんなっ!?」 ミツキ「これは想像以上だな…!凄いぞアイナ…!」 アイナ「ありがとう!」  アイナによる補助は、ミツキの予想を遥かに超える程の威力だった。元々能力者としての才能に秀でていたアイナがその力を使えるようになった事で、レディナイツの戦力は格段に上がっていたのだ。 アカネ「助かったよミツキ!……はぁあああああ!!」  迫りくるバインドリングも無くなり、アカネは自身を拘束するバインドリングの破壊に専念し、魔力を解放した。そしてバインドリングを破壊した事でそのままアカネは落下するが、ライカがジェットボードを操縦してアカネを受け止める。  そこへミツキを追っていたバインドリングの群れがようやくその場に辿り着く。 アイナ「じゃあ2人にも!パワーフォース!」 ライカ「助かります!」 アカネ「よぉーっし!フレイムウェイブ!」  拳を握り、下から上へと右腕を振り上げると、その動きに合わせ炎が巻き上がり、それが次第に大きくなりバインドリングの群れを包み込む。そしてその炎が駆け抜けると、包まれたバインドリングが一瞬にして消し炭のようになり消滅する。 アカネ「おぉ…!ホントだ!これスゴイよ!」 ライカ「では、こちらも一気に進みましょう!」  アイナのパワーフォースでライカが操縦するジェットボードもスピードが上り、ミツキとライカはまた二手に分かれて移動する。 ジエル「くぅ……!こうなったら……!!」  バインドリングの群れを簡単に破られたジエルは、今度は大量のマジックハンドを召喚して応戦する。 ミツキ「何度やっても同じだ!フリーズウェイブ!」 アカネ「フレイムウェイブ!」  道を塞ぐように召喚されたマジックハンド。だがそれはバインドリングの時と手法は変わっておらず、ミツキとアカネは同じように一掃する。 ジエル「今だよ!」  ただジエルも同じ事を繰り返す程のバカでもなく、ミツキはとアカネが技を繰り出した直後にタコとイカの魔物に指示を出す。  すると、まずタコはその太い脚でミツキとライカを狙う。それぞれが操縦するために握っていたハンドルごと、その掴んでいた手に絡みついたのだ。 ライカ「は、早い…!」 ミツキ「くっ…!」  ライカはマジックハンドの迎撃をアカネに任せていた為、両手をハンドルごと絡め取られてしまったが、ミツキはマジックハンドを迎撃するのに槍を振るった右手がまだ自由に動かせる状態だ。そんなミツキはすぐにタコの脚を切断しようとするが── ミツキ「なっ…!?」  海中からもう1本の脚が迫っており、死角から突如現れたその脚によって右手も捕らえられてしまったのだ。 アカネ「このっ!ファイアボール!」  ライカを拘束するタコの脚を焼き払おうと火の玉を繰り出すアカネだったが、脚は殆ど海中に潜っており、その水面が盾となりファイアボールが消されてしまう。それを避ける為に海上に出ている部分を攻撃しようとすると、ジェットボードのハンドル部分も攻撃する事となる。ジェットボードが壊れる事が何よりの問題である為、中々思うように攻撃が出来ないのだ。  そんな中、今度はイカの魔物がその細い脚を伸ばし、ミツキのガラ空きになった腋と、ライカの無防備な腹部をくすぐり始めたのだ。 ミツキ「んあっ!?っははははははははははははやめ、ひはははははははやめろぉ!」 ライカ「あはははははははははははははははははははははそこはっ…、っはははははははははははは!!」  イカの魔物も海中に潜ませていた脚を伸ばしミツキとライカを襲う。不意を突かれた2人は、抵抗も出来ずに笑わされてしまった。 ミツキ「いゃぁああっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ、腋はダメっ、あはははははははははははははははははそこくすぐったいぃいいひひひひひひひひひひ!!」  イカの魔物の細い脚は、ミツキの腋の窪みを的確に捕らえ、激しく引っ掻くようにくすぐる。 ミツキ「ひゃはははははははははははははははははははははそれやめっ……、はははははははははははははははははははははははは!!」  ミツキが最も苦手としている、人差し指による引っ掻くようなくすぐり。それを見事に再現しており、ミツキは冷静さを失いひたすら笑い悶える事しか出来なかった。 ライカ「きゃはははははははははははははははははははははははははへそ、んあははははははははははははははははへそ止めて…!あははははははははははははははははは!!」  同じく、弱点をくすぐられているライカ。イカの魔物のその細い脚が人の指のように器用に動き、ライカが最も苦手なへそをカリカリとくすぐっている。 ライカ「そこダメですぅ…!っやはははははははははははははははははあはははははははははははは!!お腹も、ひはははははははやめて下さぁあっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」  もう1本の脚がライカの服に潜り込み、ライカのお腹に巻き付きながら擦るようにくすぐる。巻き付いた脚がスルスルと動いているだけなのだが、腹部全体が苦手なライカにとっては、ヌルヌルした脚が脇腹からお腹を動き回るだけでも堪らなくくすぐったいのだ。 ライカ「あっははははははははははははははははアカネっ!きゃははははははははははははははははははははははははは助けてぇえへへへへへへへ!!」 アカネ「うん、分かってる!!」  周囲のマジックハンドを全て消滅させ、抵抗出来ないままくすぐられるライカを助けようとするアカネだが、タコの魔物の脚はまだ残っていた。更に2本の脚を伸ばしたタコの魔物が、アカネの両手首に絡みつき拘束してしまったのだ。 アカネ「くそぉっ!離せっ…!っあははははははははははははやめ、んあははははははははははははははははくすぐったいぃ!!」  拘束を解こうとしたアカネに対し、イカの魔物がすぐにくすぐり攻撃を仕掛け、脇腹をくすぐられたアカネは、なす術もなく笑わされてしまう。 アカネ「嫌ぁあぁぁああっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっくすぐったい、くすぐったいってばぁあ!!」  くすぐられている場所は弱点ではないものの、元々くすぐりに対し強い苦手意識のあるアカネにとっては、そこも十分くすぐったく、笑い声を抑える事も、ましてやその拘束を解く事も出来る筈がなかった。 アイナ「そんなっ!?皆が捕まっちゃった……!」 ジエル「このままアイナちゃんも捕まえてエネルギーを貰うよー!」  ただ1人残されたアイナ。そして攻撃手段のないアイナに襲い掛かるタコとイカの魔物。アイナにその魔物の攻撃を防ぐ手段など当然なかった。だが、ミツキはこんな状況も想定し、予めそれに対する作戦を立てていた。 アイナ「パワーフォース!!」  更に強い魔力を込めパワーフォースを発動したアイナ。その魔力をミツキに注ぎ込むと、ミツキから大きな魔力が溢れ出す。 ミツキ「はぁぁぁああああ!!」  その膨れ上がる魔力によりミツキをくすぐる脚と、両手を拘束する脚を一気に吹き飛ばしたのだ。 ミツキ「助かったよアイナ。」 アイナ「うん!ミツキさんの作戦通りだね!」  攻撃手段が無いアイナはすぐには狙われない。そう考えていたミツキは、拘束され戦える者がいなくなった場合は、アイナのパワーフォースで、対象の魔力を強引に解放させ拘束を解くという作戦をアイナに伝えていたのだ。 ミツキ「これだけ強い補助があれば、いける…!」  アイナのパワーフォースによって更に強化されたミツキは、その魔力を解放し技を繰り出した。 ミツキ「スプラッシュ!」  槍を振り上げると同時に勢いよくしぶきを上げながら水を発生させる技。その範囲は敵一体を攻撃出来る範囲の物だが、今放たれたそれは巨大なタコとイカの魔物を同時に攻撃し、一瞬にしてその大量の脚を切断し吹き飛ばす程の威力を見せた。 ジエル「んえぇぇ!?何そのパワー!」  脚が切断された事により、拘束されくすぐられていたライカとアカネもくすぐりから解放された。 アカネ「っはぁ、はぁ、はぁ、す、スゴいねぇ……。」 ライカ「はあ、はあ、でも……、っはあ、おかげで、助かりましたね。」 アイナ「私のパワーフォース、こんなに技を強くできたの……?」 ミツキ「勿論アイナの力あっての威力だが、この地の利を私も利用させて貰った結果だな。」 アイナ「地の利?」 ミツキ「私の技の属性は、水と氷。それらを魔力により発生させ攻撃するが、ここにこれだけ水があれば、魔力でその水を発生させる必要がなくなる。その分魔力を技の威力増強や範囲の拡大に使えるという訳だ。」  つまりミツキは、海に魔力を注ぎその水を利用して技を放った事で、普段より強く鋭い技を繰り出せたのだ。 ジエル「そ、そんなぁ!」 ミツキ「ふん、海上で有利に戦えるのは飛べるお前らだけだと思うなよ?」  水があればそれを利用し技を強くできる。簡単に言ってしまえばそれまでだが、海に魔力を注ぎそれを操るなど普通の能力者では到底出来る事ではない。言わばこれもミツキ達レディナイツの強さ故の技術でもあったのだ。  海上では空を飛べる方が有利、ジェットボードの上でしか人間は戦えない。そんな油断が原因で、ジエルは想像もしない力に唖然としてしまっていた。 ミツキ「あまり戦いたくはなかったが、チャンスだな。…………アイスニードル!」  基本的には逃げる事に専念するつもりだったが、ジエルの隙を見てミツキはすぐに行動に移す。槍を海面に突き刺すと、そこからミツキの魔力が一気に噴き出し、海面から大きく鋭利な氷の槍が現れ、2体の魔物と宙に浮くジエルを同時に攻撃する。 ジエル「……!?っぐぁああぁぁあ!!」  自分に目掛けて迫りくる氷の槍に気付き慌てて回避しようとするが、その槍のスピードに間に合わず、左腕と左の羽に直撃する。羽は完全に槍に貫かれ飛ぶ事もままならなくなったジエル。負傷した左腕を庇うように右手抑えながら海へと落下していく。 ライカ「ミツキ!転移魔法です!」  負傷し力尽きたジエルは、魔法陣に包まれ古城へと転送されようとしていた。使い魔を倒すこの上ないチャンスに、ミツキは果敢に攻めたてる。 ミツキ「ウォーターアロー!」 アカネ「サンドランス!」  槍先で海面を擦りながら、その槍を振り上げ放たれた水しぶきが、矢のように一直線に猛スピードで放たれる。そしてアカネも右手に魔力で作り上げた砂を槍の様に纏わせ、そのままジエルに向かって放つ。  だがジエルを完全に包み込んだ魔法陣がバリアとなり、2人の技を弾いてしまう。そして魔法陣が光り輝くと同時に、ジエルはその場から消え、古城へと転送されるのだった。 ミツキ「くそっ……!」 ライカ「やはりあの転移魔法の強度も上がってますね。アイナさんの技で強化された2人の技でも貫通出来ないとなると、使い魔を完全に消滅させるのは難しいかも知れませんね……。」 ミツキ「そうかもな……。まあそれでも、奴はかなり負傷した筈だ。今の内に先を急ごう。」 ライカ「そうですね。」 アイナ「悪魔の方の、キュバスさんはどこにいるんだろう……。」 アカネ「そうなんだよなぁ…。」 ミツキ「私もずっと気になっていた。ジエルがやられても出てこないという事は、どこか別の場所で待ち構えているのか、今は戦えない理由でもあるのか……。どちらにしろ、魔物をジエルに従わせて身を潜めているという事は、それなりの理由があるのだろう。」 ライカ「それこそ、ジエルがやられそうになれば普通は助けに入る筈ですからね。」 ミツキ「だな。とりあえず、気を引き締めながら先を急ぐとしよう。」  魔力は使わされたものの、ジエルを退けたミツキ達は、ジェットボードで再びクスグの森を目指した。


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