SamSuka
こーじ
こーじ

fanbox


因果応報3 〜熾月編①〜

 私の名前は日下部 熾月。株式会社、宝月(ほうづき)の社長だ。私が立ち上げたこの会社は、簡潔に言えば様々な業界に手を出し、その全ての業界でトップ企業を目指す会社である。  勿論それは簡単な事ではない。寧ろ不可能と言っても良いだろう。だけど私はそれを“とある方法”で可能にしてきた。  それは、天ヶ瀬 翼というスパイの存在である。翼がライバル企業へ侵入。そこから企業の情報を盗み出して貰う事で、データの抹消、新作の企画、情報漏洩による世間の不信感など様々な被害、損害を与えつつ、その新作をアレンジした企画を先に私がメディアで公開する。それにより盗まれた側の企業が、逆に盗作と思われる可能性が出る為、計画破綻にも追い込めるという寸法だ。  勿論、データが抹消された直後に盗んだ企画、商品の新作発表などすれば、真っ先に私が疑われる。だが、すでに信用を失った会社が、今更私を疑い盗んだ犯人だと言って誰が信じるだろうか?何の証拠があって私を犯人にできると言うのか。その企業が作ってきた新たな企画のデータなど、もうその企業には残っていない。だから自分達の企画だと訴えようもない、という訳だ。  そういった悪事は勿論、たまには正々堂々と企画し様々な業界のトップに立ってきた。IT技術、飲食業界、不動産業界など、多ジャンルに渡り日本一の業績を上げてきた。そんな中、私が次に目を付けたのはアパレル業界だ。今や世界一とも言われるアパレル業界から情報を盗み、その業界でトップになれば事実上の世界一となれる。だから私が本命として狙いを定め、翼に潜入して貰ったのだが── 熾月 「んんっ……。」  私はいつ眠ってしまったのだろう。そんな思いで目を覚ますと、見覚えのない殺風景な部屋にいる事に不信感を抱いた。 熾月 「ここは……?……っ!!?」  ここが一体どこなのか、それを確かめようと歩き出そうとした時に初めて気が付いた。私は、両腕を高く頭上に上げたまま手枷を装着させられ、天井から吊るされた鎖にその手枷を繋げられ拘束されていたのだ。  アルファベットのIの字のように、腕を大きく広げたバンザイの姿勢。身動きできないようにこんな拘束をされる事になった理由など、たった1つしかない。 ??? 「目が覚めましたか。」 熾月 「……あなたは確か、宮舘 泉美さんだったかしら?」  そう。私が翼に潜入させたアパレル企業の若手社長、宮舘 泉美だ。この女に捕まった翼が、何らかの理由で私の命令で潜入したと喋ったのだろう。  だが、警察に通報するのではなく私を眠らせ拉致した挙げ句、こんな拘束をしたと言う事は、この女の企業も普通ではない裏の顔があると言う事だ。私は表の事業にしか興味が無かったが、知られてはマズい裏の顔を隠す為のスパイ対策により翼は捕まってしまい、尋問を受けたのだろう。そして私の事を知ったこの女は、翼と同じように私を拘束し尋問しようと言う訳だ。 泉美 「私もあなたの事は存じ上げておりますよ。日下部 熾月さん。」 熾月 「まあ、メディアの露出も増えて有名人になってしまったからね?でもあなたに知られているなんて光栄だわ。」 泉美 「とんでも御座いません。」 熾月 「ところで……、これは一体何かしら?」  この女の目的は大体わかってはいるが、私はあくまでしらを切り、何故何の罪もない美しい女性がこんな目に遭わなければならないのだと主張する。 泉美 「とぼけるつもりですか?あなた、スパイの女性を雇って私の会社から情報を盗み出そうとしましたよね?」  やっぱり翼が私の事を喋ったのね。まあ私達の関係なんて、所詮そんなものだろう。とはいえ、こんな事になるとは流石に思っていなかった。それは健全な企業からしか情報を取らなかったからだ。  健全な企業なら、そもそも翼の侵入に気付ける程強固で特殊なセキュリティなど使う訳がない。だが、まさか私のように裏で非人道的な事を平気で行っている奴がいるとは思わなかった。そこが私にとって想定外の事態であり、そうなった場合のリスクを考えなかったのが最大の失態だ。  その結果、大した信頼関係も築いていないスパイにあっさりと裏切られ、自分の首を絞める事となってしまったのだ。だが、今更そんな事を悔いても仕方がない。 熾月 「さあ?何の事かしら?」  翼がどういう言い方で私を売ったのかわからない以上、まだ私に勝機はある。この女も私の事を知っている程、それなりに私は有名人なのだ。それなら、女スパイからすれば、自分の身を守る為に、知名度のある私の名前を出しただけ、という可能性もゼロではない。つまり、私は単にどこの誰かもわからない女スパイに、名前を使われただけだと言い張れるのだ。 泉美 「素直に認める気は無いみたいですね。」 熾月 「認めるも何も、本当に私には身に覚えが無いのよねぇ。」 泉美 「そうですか。」 熾月 「えぇ。スパイだなんて、何の事だかさっぱりだし、私があなたの会社にスパイを送って、一体何をするって言うの?」 泉美 「おそらく私の会社から盗んだ情報を利用してあなたの事業に取り入れようとしたのではないですか?まあ、そもそもそれを聞き出す為にあなたをこうして拘束したんですがね。」 熾月 「こんな事して良いのかしら?拉致監禁なんて犯罪よ?」 泉美 「わかっています。だからあなたを簡単に帰すつもりなどありません。」 熾月 「一体私に何をする気?」 泉美 「拷問です。」  拷問。軽々しくそんな言葉を使ってきたが、勿論それも犯罪だ。やはりこの女、裏では私以上にとんでもない悪行をしているのかも知れない。まあ、そっちの事は私には関係ないのだけど。 熾月 「拷問だなんて、随分恐ろしい事を言うのね。」 泉美 「その割に冷静なのは、やはりこうなる事も覚悟していたからでしょうか?普通の人間なら、こうして拘束された時点で恐怖し慌てふためくものですよ?」 熾月 「私は元々こういう性格なの。冷静たがらってすぐ犯人呼ばわりは酷いんじゃない?」 泉美 「でしたら何故あの女スパイさんはあなたの名前を言ったんでしょうかね?」 熾月 「知らないわよ。そもそもスパイなんて雇ってもいないし、それがどこのスパイさんかも知らないのよ?私の名前だって、そのスパイさんがテキトーに有名人である私の名前を出しただけかも知れないじゃない?」 泉美 「確かにその可能性もゼロではありませんね。ですが、それはあなたに聞けばわかる事です。まあ、教えて下さる気は無いようなので、その身体に聞く事になりますが。」  まるで本当に私が無実でも関係無いといった態度だ。人体実験でも行っているような悪女ね。人格を疑うわ。 熾月 「物騒ね。」 泉美 「痛い事はしませんので、安心して下さい。まあ、人にとって何が辛いかは異なると思いますがね。」 熾月 「拷問なのに痛めつける訳じゃないのね。確かにそれなら安心だわ。」  痛くない拷問。そう聞くと確かに不安な気持ちは無くなるが、おそらく翼が受けた拷問も同じだろう。いや、拷問を受ける前にあっさりと私を売った可能性も無くはないか。 泉美 「そうでしょう?きっと楽しんで頂けると思います。」 熾月 「楽しかったら、それは拷問ではないんじゃないかしら?」  楽しい拷問だなんて言っているが、受け手が楽しい訳がない。結局は責める側であるこのドS女が楽しみたいだけである。 泉美 「だから辛いかどうかは人によって異なるとお伝えした筈です。ただ1つ言える事は、あなたも傍から見れば“楽しそう”なのは間違いありません。」 熾月 「楽しそうって何?それって、拷問されてる人間が辛いと感じているのに楽しそうに見えるって言いたいの?」  このドS女、丁寧な口調で誤魔化してるけど、相当狂ってるわね。人格破綻者どころじゃないわ。 泉美 「その通りです。何故なら、“笑う”事になるからです。」 熾月 「はぁ?笑う?……私が?」  この女は突然何を言っているのだろうか?私の聞き間違えかと思う程、この女の言っている意味が理解出来なかった。 泉美 「はい。これから行うのは、あなたがとても笑顔になれる拷問です。」  やはり聞き間違えではなかったようたが、私が笑顔になる拷問とはどういう事なのだろうか? 熾月 「意味がわからないわね。私は拷問されるのよね?なのに笑わせてくれるのかしら?拷問だなんて物騒な言葉使ってるけど、もしかしてただ私とごっこ遊びでもしたかったのかしら?」 泉美 「いえ、れっきとした拷問です。先程、何が辛いと感じるかは人によって異なる、という話をしましたが、少なくともこの拷問に耐えられた人はいません。だから私はこの拷問を採用し、日々研究しているのです。」  研究か。どうやら私の予想は少なからず的を射ていたようだ。具体的な内容にも別に興味はないが、この女は裏で拷問の研究をしていて、それが表沙汰にならないよう強固なセキュリティをかけているのだろう。 熾月 「どんな研究か知らないけど、笑える拷問が辛い事なんてあるのかしら?」  まあ、笑い過ぎて呼吸がしづらくなるとか、お腹が痛くなる、という事はあり得るかも知れないが、それが果たして拷問なのかと言われるとそうは思えない。 泉美 「笑える拷問、と言うと少し認識が違いますね。」 熾月 「認識が違う?あなたが言ったのよ?私が楽しそうに笑う拷問だって。」 泉美 「笑えるのではなく、私が無理矢理あなたを笑わせる、が正解ですね。」 熾月 「無理矢理、笑わせる?」  まあ、私が自らの意思で笑う拷問なんて確かにある筈もないか。だが、無理矢理笑わせるって意味も全く理解出来なかった。 泉美 「それから、傍から見れば拷問を受けている人間が楽しそうだとは言いましたが、実際に楽しい訳ではありません。」 熾月 「まあ……、そうでしょうねぇ。拷問なんだし。でも、笑ってる人間が拷問としての苦痛を受ける程辛いとは、正直思えないけど?そもそも、無理矢理笑わせるっていうのも意味がわ」 泉美 「確かに笑うだけならそこまで苦痛は伴わないでしょうね。この拷問の辛さは、笑うからではなく、無理矢理笑わされる事になる刺激ですね。」 熾月 「刺激?つまり私はその拷問による刺激で苦痛を味わう事になり、その結果笑わされるって事かしら?」 泉美 「はい。その認識が正しいです。」  この女に何かをされる事によって私は無理矢理笑わされる。そしてこの拷問の恐ろしさは、その刺激によって伴う苦痛。  正直、そう言われても拷問の実態などわかる訳がない。だいたい、苦痛を伴う刺激が何故笑い変換されるのだろうか?どう考えても矛盾している。 熾月 「何なのよその拷問。さっきら何言ってるのか理解出来ないわ。」 泉美 「まだご自分が何をされるのか理解できていないんですね。」 熾月 「えぇ、さっぱりわからないわね。それより、この拘束もう少しどうにかならないかしら?」 泉美 「どうにか、とは?」 熾月 「この体勢、腕が疲れるのよねぇ。拷問するにしたって、もうちょっと拘束の仕方を考えて欲しいわ。」 泉美 「残念ながらその要望にはお応えできません。この拷問を行う為にその拘束を施していますので。」 熾月 「この体勢じゃなきゃ駄目って事?」 泉美 「はい。そうやって腕を上げていて貰わないと、責められないじゃないですか。」 熾月 「責められない?何の事?」 泉美 「はぁ……、本当にわからないのですね。」 熾月 「悪かったわね。」  寧ろ今までの会話でわかる人間などいるのだろうか?笑いが伴う拷問など聞いた事もないし、苦痛なのに笑うという矛盾点があまりにも理解出来なかった。 泉美 「その服、良いですね。」 熾月 「は?何よ急に。」 泉美 「良いデザインですね、と称賛したんですよ。」 熾月 「私のブランドの商品よ。素敵でしょ?」  私の服装は、首元を少し隠すハイネックデザインの黒いノースリーブ、足首を見せる九分丈の白いパンツ。  上下共にオフィスでも着用出来るシンプルなデザインで、トップスは今トレンドの肌見せを自然に演出出来るショート丈であり、大人のお洒落アイテムとして売り出した商品だ。 泉美 「最近はお腹をチラ見せできるアイテムが流行りですからね。私のブランドでもそう言った商品は扱っていますよ。」 熾月 「それで?私の服装が何だって言うのかしら?」 泉美 「勿論さっきの話の続きですよ。あなたのその服装は、とても責めやすくて助かります。」 熾月 「この体勢だけじゃなくて、服装も都合が良いって事?」 泉美 「はい。最近の所謂“腹チラ”と呼ばれる肌見せが出来るショート丈のトップスは、腕を上げたり身体を反らせば、それだけで腹部が露わになりますよね?」 熾月 「まあ、そうなるわね。」  今の私は両腕を頭上に上げた状態で拘束されている為、服がそれに引っ張られる形となりへそがしっかり見える程の露出をしている。でも最近のトレンドを取り入れたこのトップスは、ちょっとした仕草で大胆な肌見せも出来、それも狙い通りのデザインである。  問題は、このタイミングで指摘してきた事。この女は私のこの体勢と服装が“責めやすい”と言った。つまりこの女の狙いは、私の露出したお腹……? 泉美 「それからもう1つ、その服装で腕を上げていなければ露出しない場所がありますよね?」 熾月 「えっ?」  狙っていたのはお腹だけじゃないという訳か。なら他にどこを狙っていると言うのだろうか? 泉美 「ずっと誘うように晒しているじゃないですか。ノースリーブの服から露わになった、“ワキ”が。」 熾月 「わ、ワキ……?」  なるほど。確かにそこは、ノースリーブを着た上で更に腕を上げていなければ露出しない場所だ。この女の狙いは、肌を露出したお腹とワキのようだ。 泉美 「お綺麗なワキですね。」 熾月 「そうでしょ?完璧な大人の女性ならこれぐらいキレイじゃなきゃ見せられないでしょ?」  ノースリーブから不意に見えるワキ。世の男性はこういう普段は拝めない女性の身体に興奮するものだ。今のトレンドの肌見せにも言える事で、薄着になる夏はこういうセクシーさも求められている。だから不意に見えた女性の肌が汚かったら、男性はドン引きし一気に萎えるもの。つまり、世の男性を魅了する私のような完璧な人間なら、ワキがキレイなんて事は当たり前なのだ。 熾月 「それで?私のこのキレイなワキがなんだって言うのかしら?」  この拘束によってワキとお腹を晒す事となり、そこがこの女の狙いなのは分かった。だが、それがどう笑いに繋がると言うのだろうか? 泉美 「まだご理解頂けませんか。それなら教えて差し上げます。これからあなたに行うのは、くすぐりです。」 熾月 「え…?く、くすぐり…?」 泉美 「はい、くすぐりです。拘束され抵抗できなくなったあなたに、くすぐり拷問を行うのですよ。」 熾月 「ま、待って…?……くすぐり、拷問?」  その言葉に、私は動揺を隠せなかった。だがそれも仕方がないではないか。一体どんな拷問を受けるのかと思っていたら、くすぐりなどと言うあまりにも子供じみたお遊びだったのだから。 熾月 「無理矢理笑わせるって、そういう事?」 泉美 「ご理解頂けましたか。」  いや、まあ……。くすぐられたら笑うかも知れないけど……。 熾月 「いや、全然理解できないわ。」 泉美 「ん…?何故ですか?くすぐられたら、笑いますよね?」 熾月 「そりゃあそうかも知れないけど…。」 泉美 「では何がご理解頂けないのでしょうか?笑うという事は、くすぐったいと感じるという事ですよね?」 熾月 「そりゃあ、くすぐられるんだから、くすぐったいでしょうけど……。」 泉美 「でしたら、これ程恐ろしい拷問など無いと思いますが?」 熾月 「いやいや、たかがくすぐりでしょ?何が恐ろしいのよ、そんな子供のお遊びが。」  くすぐられたら、くすぐったくて笑う。ただそれだけのお遊びの何が拷問なのか。そのくすぐったいだけの拷問の何が恐ろしいのか。さっぱり理解できない。 泉美 「あなたは、今身動きできないように拘束されているのですよ?」 熾月 「ん?そうだけど?」 泉美 「その状態でくすぐられる事になるのに、平気なんですか?」 熾月 「だって、別にくすぐったいだけでしょ?」 泉美 「くすぐったくても、抵抗できずくすぐられ続けるのですよ?」 熾月 「だから?くすぐったいだけの刺激の何が辛いって言うのよ。」  回りくどい言い回しで私に恐怖心を与えようとしてくるが、全く恐怖を感じない。たかがくすぐりという子供のお遊びが拷問になるなど、やはり私には到底理解できない。  だが、くすぐられるだけで済むのなら寧ろこちらとしてはありがたい限りである。ただくすぐったいだけの拷問など、もはや拷問ではないのだから。 泉美 「そこまで仰るのなら、覚悟しておいて下さいね。このくすぐり拷問の恐ろしさを…。」

Comments

ありがとうございますm(_ _)m 熾月編はシチュエーションの都合上、③まで続くかもです。

こーじ

次回からのくすぐり本番が楽しみです! 体調に気を付けて創作活動されてくださいね。

オッカ


More Creators