私の名前はカレン、スパイだ。敵対している組織の内部事情を探ろうと潜入したのだが、敵の異常な数の罠に嵌ってしまい身体を痺れさせる毒ガスを吸わされてしまったのだ。身動き出来ない中、ガスマスクを着けた数人の女にその身体を担がれ、私は拷問部屋へと運び込まれてしまった。 敵対組織の女 「直にお前の拷問を始める。そこで大人しくしていろ。」 身体が痺れて動けない私は、拷問部屋の壁に立たされると、壁に取り付けられたフックに繋がれた金属製の枷によって、両腕を頭上にピンと伸ばした状態で拘束されてしまった。また両足も揃えた状態で拘束されてしまい、身体の痺れに関わらず身動きを封じられてしまったのだ。 この拷問部屋はギリギリ〜4人程度しか入れない程 狭く、三角柱型になっている。私の立たされた壁の右隣の壁にも、私を拘束する枷やフックと同じ物が設置され、残る一つの壁はこの部屋の入り口である扉となっている。つまりこの部屋は、入り口の壁を除き2人を拘束するようにデザインされている。 一体こんな狭く独特な部屋で、どんな拷問を始めようと言うのだろうか?そんな不安な思いのまましばらく過ごしていると、三角柱の拷問部屋の扉がゆっくりと開かれた。 ??? 「……あなたがここに潜入したスパイね。はぁ……、全く、あなたのせいで……。」 ノースリーブのジャケットの下に、同じくノースリーブの白いシャツを着用し、ジャケットとセットアップのパンツスーツを履いたその女は、部屋に入るなり何やら愚痴をこぼしていた。 カレン 「な、何なのあんた……?」 ロゼ 「……私はロゼ。あなたの拷問を担当する羽目になったわ。」 カレン 「拷問を担当する……“羽目”?まあ、目の前で無防備に拘束された人間を痛めつけるってのは、確かに気が引けるのも分かるわ。でも、だったら拷問なんてしなくても良いのよ?」 ロゼ 「私がこの拷問に対して気が進まない理由はそんな事じゃないわ。あなたがどうなろうが私の知った事ではないし。寧ろ私が辛い思いをしたくないだけだから。それに、私は立場上 上には逆らえないから仕方なくこの仕事をしているだけ。」 カレン 「私が拷問を受けるのに、あんたが辛い思いをするっての?」 ロゼ 「正確に言うとあなたと同じ辛い思いをする、って意味ね。……はぁ。…………それじゃあ、準備して。」 気の進まぬままため息を吐いたロゼは、後ろにいた女性にそう指示を出すと、ロゼは私の左側の壁の前に立ち、両腕を上げた。するとその女性は、両腕を上げたロゼの手首と、揃えられた足首に、私と同じ枷を取り付けていく。これによりロゼは、これから拷問を受ける私と全く同じ状態で拘束されたのだ。 それは私と同時に拷問を与える人間の為の枷と思っていたが、何故か私の拷問を担当するロゼの為の物だったようだ。拷問を担当する人間が何故拘束される必要があるのだろうか?……おそらく、ロゼが言っていた「あなたと同じ辛い思いをする」という原因がコレなのだろうが、そうする意味が全く分からない。 そしてロゼの拘束を終えた女性は「失礼します」と、淡々と自分の役目を果たし拷問部屋を後にした。 カレン 「どういうつもり……?あんた、これから私の拷問をするんじゃなかったの?」 ロゼ 「私はあなたの拷問を“担当する”と言っただけよ。“執行人”とは言ってないわ。」 それは同じ事ではないのか?と思ったが、わざわざそういう言い方をしたのなら違うのだろう。だが、この部屋には拘束され身動きのできない私達しかいない。これで私にどんな拷問を行おうとしているのだろうか……? ロゼ 「……あなたの身体はまだ毒ガスの効力で麻痺しているわ。」 カレン 「突然 何……?まあ、それは自覚してるけど。」 ロゼ 「その状態ではあなたの感覚も鈍っていて、まだ拷問を行えないわ。だからまずは、私が実演役としてそれを受ける姿をあなたに見せる事になっているのよ。」 カレン 「実演……?」 そんな事をする意味は分からないが、彼女が自身が同じ苦しみを味わうとはそういう事だろう。だがらずっとあんな愚痴を言っていたのか。 ロゼ 「えぇ。あなたと同じ状態で拘束されている私が苦しむ姿を客観的に見て、それを自分に重ねる事で強い恐怖心を生ませる。それが私の役目よ。」 なるほど。確かに目の前で同じように拘束されたこの女が苦しむ姿を間近で見させられれば、嫌でもその姿を自分に投影し今後自分が同じ目に遭うと想像し恐怖する事になるだろう。 カレン 「……確かにそうかも知れないけど、随分回りくどいというか、あんたの上司はその為に自分の部下にまで拷問をするって事よね?随分と悪趣味で質が悪いのね。」 別にこの女に同情した訳ではないが、そこまでするのか?という強い疑問と、そんな仕打ちをせれても従い続けるこの女にも違和感を覚え、何となくそう尋ねていた。 ここに潜入した目的はここのあらゆる情報を知ることだ。ここの上層部がどんな人間かも知っておいて損はないため、ある意味この疑問はスパイ活動の一環とも言える。 もっとも、ここから脱出できる保証は正直ないし、今更それを知る意味も無いかも知れない。だからスパイ活動としてそれを聞いた訳でもない。あくまで個人的に気になって聞いてしまっただけの事である。 ロゼ 「こんなもの、ただの上の趣味よ。そいつは、私達 拷問担当者は勿論、スパイや盗賊、気に入ったあらゆる女性を自分の性癖で苦しめたいだけの女なのよ。」 こんな実演役なんて人間を用意する悪趣味な上層部は女だったようだ。男が女の苦しむ姿を見たいと思う方がある意味 正しい気がするが、女が女の苦しむ姿を見たくてこんな事をしていると考えると、よりそいつが歪んだ性癖を持っているのではないかと思わされる。 カレン 「自分の上司なのに随分ボロクソに言うのね?」 ロゼ 「確かにその女はこの組織のトップだけど、別に私の“上司”なんかじゃないわ。私はただ生活の全てをその女に握られた奴隷のような存在。だから逆らえないだけで、別にその女に敬意なんてものは無いわ。」 この女、ロゼが、自分が辛い目に遭うのにここで拷問担当なんてやっている理由がようやく理解できた。おそらく、組織のトップであるその悪趣味な女に何かしらの弱みを握られ、逆らえない中で生きていく為にこんな風に実演役などやらされているのだ。 そして、その弱みにつけ込み自分のねじ曲がった趣味の為に女性を平気で利用する、悪趣味女がやはりイカれているという事も同時に理解した。それ程の悪趣味女ならば、私が対応しきれない程の大量の罠を仕掛けたのも頷ける。 カレン 「だからってそんな事言って良いの?そんな悪趣味な女なら、この状況も録画してるか、リアルタイムで見てるんじゃないのかしら?」 ロゼ 「そのどっちもやっているでしょうね。でも普段から私はあの女にこういう接し方をしているし、今更そんな事は問題ないわ。」 確かにこの女に、上からの強い圧力による恐怖心は感じない。ただこれから自分も拷問を受ける事に対する気怠さしか感じない。指示された事さえ全うしていればそれなりに良い生活が送れているという事か。 カレン 「あっそ。……それで、ここには拘束され身動きが出来ない私達2人しかいないのに、一体どんな拷問をしようって?」 ロゼ 「……とっても笑える拷問よ。」 カレン 「は……?笑える、拷問……?」 拷問とは、精神的・肉体的に苦痛を与える事でその人間が持つ情報を引き出す事。つまりは相手が情報を吐きたくなるような強い苦痛を与える必要があるのだが、その拷問の内容があまりにもくだらないという事で思わず苦笑してしまうという事なのだろうか?だが責め方がくだらないのだとしたら、それを目の前で見せられたからといって恐怖を感じるのだろうか? ロゼ 「そうよ。私は勿論、あなたでさえこの拷問を受ければ必ず笑ってしまう。これはそういう拷問なのよ。」 カレン 「えっ……?ちょっと待って……、拷問の内容が馬鹿らしいんじゃなくて、その責めを受ける事で笑うって言うの……?」 ロゼ 「そう言ってるじゃない。少なくとも、私がこの拷問を担当する事になった時点で、あなたも間違いなく笑わされる事になるわ。」 カレン 「言ってる意味が全く分からないんだけど……。」 拷問を受ける事で笑わされると言うのも意味が分からないが、この女が担当するから私も笑わされるとは、どういう事なのだろうか……? ロゼ 「直に分かるわ。」 カレン 「何もったいぶってるのよ、さっさと教えなさいよ。」 ロゼ 「分かってないわね。今この瞬間もあの女は見ているって言ったでしょ。あなたがこの笑える拷問の正体に気付くまでの過程すらあの女は楽しんでいるのよ。だから私はその指示に従い、少しずつヒントだけを与える事になっているの。」 私がそれに気付くまでの過程を楽しむ?その女は一体どれだけねじ曲がった性癖をしているのだろうか。それこそ意味が分からない。この瞬間の何がそんなに楽しいのだろうか……? いや、もう考えても仕方ないだろう。もう私にはこの悪趣味女の嗜好など絶対に理解出来ないのだから。 カレン 「だったらそのヒントってのをさっさと出しなさいよ。」 ロゼ 「せっかちね。……まあ良いわ。私の格好、よく見てみなさい。これも拷問のヒントなのよ。」 カレン 「あんたの格好……?って、拘束されてる体勢の事?それとも、服装の事?」 ロゼ 「どちらも含め私の格好全てがヒントよ。」 ロゼの格好の全てがヒントという事は、つまりロゼの拘束体勢と服装それぞれが、この拷問を行うのに適した格好だという事だ。 まずはこの体勢だが、両腕を真上に伸ばし、両脚も揃えた状態、まるでアルファベットのIの字のようなポーズで拘束されている。だがこれは拘束状態としては比較的ありきたりであり、特別な事は何も感じない。 そして服装だが、上着は着丈の短いスーツジャケットをノースリーブのデザインにしたもの。その下には白いシャツを着ているが、そのシャツのボタンがかなり開いております、胸元が見えている。そしてこのシャツもノースリーブな上に着丈に関してはジャケットより更に短いデザインだ。その結果、ジャケットの裾からはロゼの腹部がずっと露わになっている。しかも腕を上げた状態のためジャケットが肩や身体によって少し上に引っ張られる事となり、その腹部の露出もより増えている。 私には特にそんな趣味はないのだが、改めてその姿をまじまじと見ると、その姿は拘束されている事も相まって思わずエロティシズムを感じてしまった。しかも、見られていると意識しているからか、ロゼは一見 平静を装っているが恥ずかしそうに顔を赤らめ目線を逸らしている。その姿もまた官能的に感じてしまう。 一方、下半身の服装は普通のスーツパンツとハイヒール姿で、こちらは上半身に比べ特別な要素は何も無い。つまり上半身にヒントがあるのは明白なのだが、その服と拷問の繋がりが分からない。だが、ロゼの服装はどことなく私の服装に似ている事には気が付いた。 特に上半身の、肌が露出している部分。胸元の露出、ノースリーブ、腹部を覗かせる着丈。拷問を受ける人間は衣服を全て取られる事も割と多いが、痺れて動けない私をあえてそのままの服装で拘束したのは、もしかしたら、全裸にせずとも今肌を露出している部分だけで充分だったから、と考えるとロゼの服装の意味も分からなくはない。 とは言え、結局のところその肌に何をするのかも分からなければ、そもそも本当にこの露出した肌が目的なのかも分からないままである。 ロゼ 「まだ分かってはいないみたいね。」 カレン 「肌の露出が関係していそうとは思ったわ。」 ロゼ 「その通りよ。今回、あなたの服装がたまたまあなたを拷問するのに丁度良かったからそのまま拘束しているけど、そうじゃない相手の場合はそれに適した服装をこちらで用意していたわ。」 カレン 「は……?わざわざ違う服を用意して着せるっての?全裸にしないなんて随分良心的なのね。」 ロゼ 「確かに最初から全裸にした方が拷問は行いやすいとは思うわ。でもそうしないのは、単純にあの女の趣味みたいね。まあ、私としても服を着せて貰えるならそれに越した事はないし。」 という事は、ロゼが着ている服は、悪趣味女がわざわざ選んでそれを着せているという訳か。笑えるなどと変な拷問を行ったり、実演役なんてものを用意したり、その実演役に自分好みの服まで着せたり、益々その女が変態であるという事しか理解出来ない。 ロゼ 「その様子だと、この拘束のヒントには特に気が付いていないのかしらね。」 カレン 「そうね、残念ながら。服装の方は、あんたが“普通じゃない特殊な”服を着てたからピンときたけど、この拘束方法って割と“普通”でしょ?これも普通じゃなければその違和感からヒントを感じ取れたかも知れないけど、普通じゃ無理。」 ロゼ 「……まあ確かに、よくある拘束と言えばそうかも知れないわね。でもこの拘束は私とあなただからこその拘束なのよ。」 カレン 「え……?それじゃあ、捕まったのが私じゃなければ拘束方法も違ったって事?」 ロゼ 「まあ、場合によってはそうなるわね。それは人によって責める場所も変わるから。服装も同じ理由よ?あなたが拷問の対象だから、私が実演役に選ばれて、私だからこの服を着ている。」 カレン 「実演役を誰がやるのかも、この拘束方法なのも、全ては拷問を受けるのが私だからって事?」 ロゼ 「そうね。まあ、拘束方法に関しては私は常にこれになるんだけど。それは私とあなたがほぼ同じだからよ。あなたじゃなかったとしても、別の人間があなたに似ていれば私が実演役として選ばれる事になるし、私が選ばれたと言う事はその人間が私と似ているからこの拘束がベスト、という訳ね。」 カレン 「似ている……?私とあんたの服装が、って事?」 ロゼ 「私が似ていると言ったのは、私とあなたの感度よ。」 カレン 「か、感度……?」 ロゼ 「私の服はその感度に合わせてデザインされたもの。そしてあなたの服装がたまたまあなたの感度と都合が良かったからこちらで服は用意しなかった。服が似ているのは、感度が似ているからよ。」 一体何の感度が似ているのだろうか。そもそも、私の感度などどうやって知ったのだろうか。更に分からない事が増えるばかりだが、この拷問は露出した肌に何かしらの刺激を与えるもの、だという事は何となく分かった。 ロゼ 「……まだ分かっていないようだから、この拷問に使う道具を見せるわ。」 未だ険しい顔をしていた私の心情を読み取ったロゼは、ついにその拷問を実演するべく口を開いた。 「実演役ティックルハンド、ステージ1、起動。」 その言葉に合わせ、ロゼが立たされている壁から機械の駆動音が聞こえ始めた。しばらくすると、ロゼが立つ壁に2つの穴が空き、それぞれの穴から“手”が現れたのだ。その“手”は5本の指をワシャワシャと素早く動かしながらその存在感をアピールしていた。 カレン 「なっ……、何よそれ……!?」 その不気味な見た目に、私は思わず背筋を震わせた。ケーブルに繋がれながら穴から現れたその“手”は、人の手を模して作られた機械なのだろうが、その“手”は人の手より指が長くデザインされており、またその指の動きは明らかに人の手では出来ないような独自の動きで動きそのものも素早く、その指の長さがまた不気味さを際立たせていたのだ。 そんな不気味な“手”は、ロゼからティックルハンドと呼ばれていた。その名称や言葉の意味も私には分からなかったが、ティックルというその言葉が、これから行う拷問の正体なのだろうか。ステージ1というのも気になるが、それはその言葉から察するに、この拷問にいくつかの段階がある事を意味しているのだろう。 2本のティックルハンドは、ロゼの腹部、腰の両サイド付近の壁からの現れ、今なおそこで指を動かし責める準備をしていた。ロゼは自分がこれからどんな責めを受けるのか知っている。だからこそ、その手の動きに恐怖心を抱き現実から目を背けようと瞼を閉じていた。 カレン 「そんな不気味な手で、どんな拷問をしようっての……?」 ロゼ 「はぁ……、まだ分からないのね。……だったら見せてあげるわよ。実演役ティックルハンド、ステージ1、開始。」 私が未だに拷問の正体に気付けていない事に呆れた様子を見せる。だがそれはおそらく、私に呆れたのではなく、自分がついにこの拷問を実演する事になり、憂鬱な感情が露わになったのだろう。 それでもロゼは自分の仕事を全うするため、覚悟を決め実演を始めるのだった。
こーじ
2025-07-19 14:33:22 +0000 UTC炙り蜻蛉
2025-07-19 10:19:17 +0000 UTC