1噂のVRエロゲ 『Male Fantasy World』へ、ようこそ。 ここはあなたのセクシャルドリームをリアルに体感する世界です。 この世界であなた自身となるキャラクターを作り、現実では体験できない至福の快感を思うまま味わいましょう。 『Male Fantasy World』は、あなたを歓迎します。 ここはあなたが主人公となる性の楽園。 夢と現実が一つになるヴァーチャルセックスパラダイス―― ◇ 最近、秘かに流行り始めているエロいVRゲームソフトがある。 ただし普通に探そうとしても見つける事は困難だ。普通に市販されているモノではないからだ。 それらしい単語をいくつ入力して検索しても扱っているサイトに辿り着けない。 運良くサイトを見つけたとしてもサイトの中に入るためには、既に購入した事のある人だけが取ることのできる「ワンタイムパスワード」をログイン画面に入力しないと中に進めないシステムになっている。 紹介者がいないと絶対に遊べないアダルトゲーム、それが……。 「ほら、陽一が欲しがってたパスワード、取ってやったぞ? 今夜の21時から一時間以内だけログイン可能に設定してある」 放課後の教室に居残っているのは俺と大輔の男子生徒が二人だけだった。 窓際の席に座ってそよぐ風を浴びていた大輔が横に立っている俺にスマホの画面を向けた。 俺はその表示画面を素早くスクショし自分の画像フォルダに保存。 「おお! 大輔! サンキューな! 恩に着る! これで俺も噂の『MFW』に入れるのか~。うししっ! 超楽しみだぜ!」 「しかし、どっから聞いたんだ? 俺が『MFW』やってるって」 「昨日、奈義先輩が打ち明けてくれたんだよ。大輔がこのところ素っ気ないから、何でかな? って聞いてみたらさ」 「そんなに素っ気なかったか? 何も変わりないつもりなんだけどな」 「何も変わりない? どこが? この前だって帰りにいつものラーメン屋寄っていこうって言ったら『いや、いい』ってあっさり拒否ってとっとと帰っちまうし。 その前だってお前んちに遊びに行っても良いか? って聞いたら『ちょっと、用事が』つって、断りやがるし。 俺、大輔から避けられてんのかなって、すっげぇ不安だったんだぜ?」 「むむ。そんなつもりは全くないんだが、不安にさせてたんなら謝る」 「いや、いいぜ。確かにちょっと不安だったけど、うししっ! お前も年頃の男子なんだな! エロいゲームに ハマっていたなんてさぁ~」 「い、いいだろ? つか、あんまり大声でエロいとか口に出すなって」 「おっと、悪ぃ。このゲームって18禁だもんな。先生にバレたらヤバイもんな」 「そう言うコト。ついでに言っておくけど他の奴らにゃ内緒にしとくんだぞ?」 「ああ。もちろん」先生とかにバレたらウザイ事になるのは必定だからな。 ◇ ヴァーチャルリアリティを採用した家庭用ゲーム機が普及し始めてすでに20年。 それまでは専用ゴーグルで耳と目を塞いで感覚を外界から遮断し、音と映像から臨場感を味わうタイプが主流だったのだが、 脳科学の発展に伴い新たに開発された『マイクロニューロンチップ』を使用することによって、ダイレクトに仮想空間へダイブすることが可能となっていた。 『マイクロニューロンチップ』 それは1cm四方の小さいマイクロチップであり、脳にある神経細胞の機能を模した『第二の脳』である。 小さいながらも情報処理能力はヒトの脳の5%分に相当する能力があり、何よりその手軽さがゲームプレイヤーを中心に広く普及する一因ともなっている。 使用方法は「額に貼るだけ」 シールのように額に貼るだけで皮下から脳へ電気的に繋がり、現実と変わりのない仮想世界の扉を開いてくれる。 使い様によっては危険が伴うため年齢制限及び使用時間に制限が課されており、『マイクロニューロンチップ』を購入できるのは18歳以上。 連続使用は一日最大4時間以内、と決められている。 ただし、これらはあくまで正規品を求める場合の条件であり非正規の「裏チップ」であれば誰でも手に入れられる。 俺も、大輔も、18歳未満の高校生である。 よって俺らが持っている『マイクロニューロンチップ』は「裏チップ」だ。 価格は数百円のものから万単位のものまで様々出回っているのだが、高い方が良い、と一概に言い切れない。 ハズレが少なく口コミ評価が高いところから「そこそこ」の値段のモノを買う。 それが安全な「裏チップ」を手に入れるための常識、であった。 そして今回、俺が大輔に頼んでいたゲームソフトのパスワードとは、いわゆるエロゲのソフトである。 ヌき盛りなお年頃の俺たちにとって、オナニーに使う素材(オカズ)探しはある意味、高校生活を普通に送るための不可欠な行為と言える。 授業中、または部活中にいきなりムラムラして勃起などせぬようあらかじめしっかりと自己処理を済ませていないと、只でさえ反応の良い若いカラダはちょっとした刺激でも正直にその興奮を周囲へ示してしまう。 そんな恥ずかしい思いをしないためにも自衛の意味も込めてエロゲを入手する事は致し方ない面もあるのだ、と、俺は思う。 最近の大輔が俺に対し素っ気無かった原因は『Male Fantasy World』、通称『MFW』と言うVRエロゲに夢中だからだろう、と大輔が所属する陸上部の一年先輩である奈義先輩から聞いた。 その場で「俺もそのエロゲ、やってみたいっす」と奈義先輩に願ったものの、「悪いなぁ。ゲットするために必要なパスワードは1アカウントにつき最大2人までしか教えられないのさ。んで、俺は大輔と別の一人に教えちゃってて、もう残ってないんだよ」と拒否られてしまった。 それならば、と俺はまだ他にヤツパスワードを送っていないであろう大輔に『MFW』入手パスワードを提供してくれるよう頼んでいたのだ。 下ネタとは無縁で陸上一筋な友達まで夢中にさせるエロゲとはどんなに凄いゲームなのか。 未知のゲームに対する好奇心はエロへの欲求と相まって俺の中でどんどん期待が膨らんでいた。 額に貼るVR用「裏チップ」は、昨年のお年玉を注ぎ込み入手済みだった。 お試しで価格の手頃なエロゲをダウンロードしてプレイしてみたものの、攻略対象の女の子の動作が固く、感触もそれほどリアリティが無かったため、すぐにお蔵入りになっていた。 「これじゃ画像だけのほうがまだマシだな」、と。 だが、『Male Fantasy World』は違う。かわいい女の子のリアルな感触を感じつつ思いっきり気持ちよくヌける筈だ。 「さぁて! 夕飯をささっと食った後は部屋に引きこもり確定だな! 21時が待ち遠しいぜ~」 家に戻った俺はスマホに保存した画像を眺めてログインできる時刻を今か今かと待ち構えていた。 ◇ 教室から陸上部の部室に入った大輔はすぐに先輩の奈義を見つけて呼び止めた。 「奈義先輩~。どうしてアイツにあっさり教えちゃったんすかぁ? アイツがノンケなのは知っているくせに」 「ログインする人間が増えた方が盛り上がるだろ? それに、だ、俺もお前も元々はノンケだったけど、男同士の良さをコイツで知れたじゃん? だったら陽一だけ仲間外れにしてやるなんて可哀相じゃないか」 「そう言いますけど、俺はアイツまで巻き込むつもりは無かったんですよ? 先輩の理屈は俺には詭弁に聞こえます」 「まぁ、良いじゃん。それよかパスワードを教えた以上、陽一のフォローはお前がしっかり『導いて』やれよ? そうするためにログインパスワードは2人までしか紹介できないシステムになってんだろうし」 「分かっています。今夜は俺も『MFW』にダイブします」 「なんなら俺も混ざってやろうか?」 「いえ。結構っす。先輩が入ると混乱しそうですし」 「信用されてないなぁ」 「当然ですよ。俺に断りもなく陽一に教えちゃうんだから」 「しかし、だ。それはそれとして今日のメニューが終わったら――」 「もちろん先輩ともヤりますよ? 先輩もそのつもりなんでしょ?」 「ま、な? しっかしここまでお前が男にハマるなんてなぁ~。お堅い大輔君が、だよ?」 「奈義先輩のお陰ですが何か?」 「おいおい、もう怒んなよな」 「怒ってなんかいません。先輩の勝手な行動に呆れているだけっす」 ◇ 家に帰った俺は21時になるのを待ち遠しく思いながら夕飯を食べ、すぐに自分の部屋へ引きこもった。 「集中したいからしばらく俺の部屋に来ないでね。ノドが乾いたら自分で冷蔵庫まで取りにいくから」 家族に釘を刺しておくことも忘れていない。 下宿先のアパートから帰っていた兄貴が隣に座ってとんかつを口に運ぼうとしていたが、ピタッと箸が止まっていた。 ちょっと怪しまれたかも知れない。だが、いきなり部屋の中に踏み込んで来るような無神経な人じゃないから安心していいだろう。 21時きっかりに俺は『MFW』の販売サイトに飛び、ログイン画面にワンタイムパスワードを入力。 「無料お試し版」と有料の「パッケージ版」の二種類から端末にダウンロードできると出て来たのだが俺は迷わず有料の「パッケージ版」を選択。 値段が他のエロゲよりもずっと安いし何より、無料版から有料版へのアップグレードなんて面倒だからだ。 「一番イイトコで『無料お試し版はここまでよぉ~』って寸止めされちゃ堪んねぇし」 スマホにダウンロード完了の文字が表示されたらすぐに起動。 長々と書かれた規約はざっくり飛ばして最後に「はい」のボタンを押す。 すると 『これよりゲームをスタートします。操作説明やチュートリアルはゲーム内で行いますのでワイヤレスニューロンチップを 額に貼付し、ゲーム内にダイブして下さい』 「い、いよいよだぁ~! これで俺も大輔や奈義先輩がこっそり楽しんでるエロゲをプレイできるんだ~!」 胸が高鳴る。ワクワクして顔がニヤける。股間はすでに勃起しちまっていた。 非正規品のマイクロニューロンチップを額に貼り付け目を閉じる。 速やかに意識がゲーム世界に取り込まれ、真っ暗闇の視界の中にまばゆい光がパーッと灯る。 【――『Male Fantasy World』――へ、ようこそ。 ここはあなたのセクシャルドリームをリアルに体感する世界です。 この世界でのあなた自身となるキャラクターを作り、ここでしか体験できない至福の快感を思うまま味わいましょう。 『Male Fantasy World』 ここはあなたが主人公となる性の楽園。 夢と現実が交差するヴァーチャルセックスパラダイス。 まずはアカウント登録とマイルームの設定を行って下さい。続いて、もう一人のあなたとなるキャラクターをメイクしましょう】 男性とも女性とも区別しがたいボイスが耳に届く。 視界の一角にボイスと同じ文字が表示されている。 その文字に触れると光のドアが開き、次のステージへと進んだ。
鷹取リュウゴ
2021-01-27 13:08:56 +0000 UTCハッスィー
2021-01-27 12:52:31 +0000 UTC