9罪なき欲望の代償に 兄貴のマイルームで『MFW』の誕生や『闇チップ』の秘密についての話を聞いた。 「――つまり、この『MFW』は淫魔・クライムに乗っ取られている、と言えるのかな?」 「それは……」 『乗っ取るだなんて人聞きが悪いぜ』 ロックを掛けてあった兄貴のマイルームの扉が開き、ズカズカと淫魔・クライムが入って来た。 「よーしよし。オーファルも『闇チップ』を着けてくれたようで俺は実に嬉しいぜ~」 「クライム!?」 「よぉ! 兄弟そろって『闇チップ』で淫魔になっちまった感想はどうだ?」 「おま! 外せないチップだなんて、よくも騙したな!」 へらへら笑うクライムに俺は詰め寄った。 「ん~? だがな、それで何が問題なんだ? ログインもログアウトも『自由』にできるし、困ることは無いだろう?」 「でも、これじゃぁ、本物の淫魔に、インキュバスになったみたいじゃねぇか!」 「より強い快楽を得られるんだ。それも嘘は言ってねぇだろ?」 「だ、だけど、兄貴は、聞いた通りならクライムが無理矢理『闇チップ』を埋めこんだのだろう?」 「そいつも誤解だ。いや、一つ欠けている情報がある」 「もう止めてくれ! 倉井! お、俺は――」 兄貴がクライムの言葉を遮ろうとした。 「俺は無理矢理お前の兄貴にプレゼントした訳じゃねぇ。『闇チップ』がどんなモノかちゃんと説明したさ。 それに、『闇チップ』を着けてくれたらセックスもしてやるよ、と」 「倉井! もういいだろう!」 「お前の兄貴、すぐに俺のチンポにしゃぶりついて『闇チップ』下さい~、って恥ずかし気も無く俺に言ったもんだ。 なぁ? チンポ狂いの兄貴よぉ? いや、淫魔・ヴィクトさぁん?」 「くっ……」 「あ、兄貴……」 「一方のハナシだけ聞いて判断するのは危険だぜ、オーファル。ヴィクトが『闇チップ』を着けてからどんだけ性奴隷を 作っていたか言っていたか?」 クライムがヴィクトの尻をぐっと掴みぐいぐいと揉みしだく。それだけでヴィクトの顔は淫らに歪んで行く。 「なぁ? もう黙ってねぇで言ってやれよ? お前の性奴隷は何人だ?」 「じ、15人……」 「はっはぁ! な? ヴァーチャルな話じゃねぇ。リアルの、現実世界で15人だ。中々のもんだろう? 15人の性奴隷を代わる代わる毎晩結界の中に引き込んでセックス三昧。もちろん『MFW』の中でも俺や他の淫魔とやりまくりの日々だ」 痛いほど勃起しているヴィクトのチンポ。クライムの指がケツの穴の奥をヌプヌプ抜き挿ししている。 目を見ればわかる。 もう「その先」まで欲しくなって発情し切った「性獣」の目だ。 「俺が邪魔なら管理者権限でこの『MFW』を完全終了する事もできた。なのにお前の兄貴はしなかった。むしろ布教してたよな?」 「だ、だって、ここなら、俺も、皆もぉ、すんげぇ、キモチ良くなれちゃうしぃ……」 「と、言う訳で俺が悪い点はなんも無ぇ。欲望に従って動いたのはお前の兄貴。それとお前も、オーファルも、だろ?」 ニィィと笑むクライムの瞳に見据えられながら俺は自分が二人の男を性奴隷にした時の事を思い出した。 リアルでも淫魔の力が使える。 やりたいと思った相手を即座に淫乱な性奴隷に堕とせ支配する。その快感と充足感。 クライムに対する敵対心は粉々に砕け、むしろ俺の望みを叶えてくれたのではないか、俺も兄貴と変わりはないんじゃないか、と。 「最後に一つ。不要だと言うならその『闇チップ』。今すぐ俺が引き剥がしてやる。俺の魔力で加工したチップだからな。 それぐらいは雑作もない」 俺はハッと顔を上げた。作った本人だから嘘では無くきっと剥がせるのだろう。 「だが――」 クライムはチンポをねだる兄貴を軽く抑えながらこう言った。 「俺の仲間にならないか? 淫魔になるのは嫌か?」 ヴァーチャルではなく、リアルの淫魔に。インキュバスにならないか? とクライムは誘っている。 「お、俺は――」 この選択。きっと最後の分岐点だ。 兄貴はもう、とっくに向こう側に行ってしまったんだ。 「俺は……」 ◇ 俺は大輔に『闇チップ』を渡し仲間に加えた。 翌日―― 「木更津先生を性奴隷にしたのか?」 『MFW』のマイルームにやってきたシグレスが自慢気に一体のオークを紹介した。 「へっへ~現役体育教師、淫乱魔族化! ってな」 マッチョで緑色の肌をしたオークが直立不動で自己紹介をした。 「オレは、シグレス様の肉奴隷! オークのソルムです! リアルでは『木更津 壮馬』と名乗っております! 豪精高校、体育科教員であります!」 「催眠状態にしてんの?」 「違うよ。この変態教師、もとからドM野郎でさ、わざと自分が恥ずかしい思いをするようにしてんだよ。 ほら? あの股間の勃起ぶり、見てみろよオーファル」 「うわ、マジか~」 ヒクヒク揺れるオークのウマ並みチンポからボトリと先走りが溢れ出ている。自虐もまた快感だと言わんばかりに。 「俺の性奴隷も紹介させてくれよ」 ナギーも一体の獣人を呼び寄せた。 ワニのような爬虫類的な顔を持つ逞しい獣人だ。ペニスは股間のスリットの中に格納されている。 「ナギーの性奴隷も『MFW』のアカウントを持たせたんだ」 奈義先輩にとってこれで3人目となる『MFW』への招待。一昨日までは「2人まで」の制限があったため無理だったが今は違う。 ヴィクトとクライムが相談して人数制限を撤廃したためだ。 「じゃーん! 俺の元コーチだった竜人のティガくんでーす!」 「奈義先輩! もしかして豪精をクビになった千葉コーチっすか?」 シグレスが竜人を指した。 「そうそう。俺との情事が原因で学校を辞めらせられた『千葉 竜平』コーチだ。辞めてから荒れて腐ってたから俺の性奴隷にしてあげたの。 せめて性欲だけでも満たしてあげたいじゃん?」 とは言うものの、千葉コーチとセックスの相性が良かったから手放したくないってのが本音だろう。 「けど、なんで竜人? 本人の希望?」 「いや、これは俺の希望。俺、スリット姦もやってみたかったから」 「ナギー様のお望みの姿になれて、俺は幸せです」 そう言って微かに笑顔を見せる竜人・ティガに俺も心がざわついた。 「か、かっこいい~!」 人間の時も相当カッコ良かったけど竜人のキリッとした立ち姿は武人のように勇ましい。 「オーファルの性奴隷は?」 シグレスがルーム内を見渡して聞いた。 「いや、まだアカウントは取って無いんだ。リアルでできるからイイヤって」 「そうかよ~。楽しみにしてたんだけどな。オーファルのイチオシ性奴隷に会うのをさ~」 俺とシグレスとナギーは、今度『MFW』にログインする時、手持ちの性奴隷の中の一番の「お気に入り」を自慢し合おうと約束してたのだ。 だが、俺は「一番」を決めかね、そうこうしてる間に約束の日になったのだった。 「選べないほど粒ぞろいって訳だ。いいね、いいねぇ~! むしろ俺はどんな奴がオーファルの性奴隷か、ますます楽しみになってきたぜ!」 ◇ あの台風が過ぎ去った日の朝、先にログアウトした俺の元に兄貴がやってきた。 「結局、お前も俺と同じく淫魔になっちまうのか……」 「兄貴はさ、本当は俺にもそうなって欲しい、って思ってたんだろ?」 俺は額の中に埋没させていた『闇チップ』を浮かび上がらせ兄貴に示した。 「…………」 返事が無い。でも、これは肯定の意味の無言だ。 「兄貴って、ああ言うワルな感じがタイプなんだろ? 俺ん時よりもクライムとヤってる時の方が激しかったもん」 「……、……そう、だな」 ここは返事するのか。ま、いいけど。 「陽一、お前はこれからどうするんだ?」 オーファルではなく人間の名で尋ねる。 「どうする、って……。これからも普通に高校へ通うし、大学受験もする。俺は淫魔だけど人間でもあるし」 『MFW』にはいつでもダイブできるし結界を張ったらリアルでもセックスはすぐにできる。 ヴァーチャルとリアルの境界はもはや無くなったと言ってもいいくらいシームレスな状態だった。 「そうか……。応援している」 「俺は……。俺はこうなった事、後悔していない。兄貴とのセックスも気持ち良かった。これからだってもっとシたい。 兄貴はどうなの?」 「俺もオーファルとはもっとヤりたい。オーファルのチンポでケツん中ぐちゃぐちゃにされてぇ」 言いながら兄貴は自分の股間を撫で回している。俺を誘っているんだ。さっきまでクライムのチンポでよがり狂ってたくせに。 俺の兄貴は本当に淫乱ビッチ野郎になってたんだ。 「だったらシようぜ兄貴。その前に淫魔・ヴィクトの姿に変身してもらわないと。人間の兄貴じゃ俺、無理だから」 「俺は陽一が人間のままでも勃つけどな」 「兄貴の変態! 実の弟に欲情するなんて!」 「ははは! こっちはこっちで良いもんだぞ? 何なら兄ちゃんがじっくり教えてやるよ」 真面目で堅物だと思ってた兄貴。けど、一皮剥けばなんてことはない。ド淫乱なスケベ野郎でした。 「ちょ、そんな事言うから俺まで勃ってきたじゃん。どうしてくれんのさ」 「だったら俺が責任を取らないとな。人間状態でセックスした後は淫魔になってトコトンだ」 「兄貴の性奴隷の分も、精液残しておかないとダメなんじゃないの?」 クライムにもさっきまで散々搾り取られてたんだし。 「バカにするな。こう見えても中身は淫魔だぞ? クライムとヤッてた時だって俺が放出する3倍はアイツから頂いてやったさ」 「3倍!?」 「クライムより俺の方が上手いからな。淫魔としての経歴は浅いが努力と研究熱心さなら負けないのさ」 そうやって性奴隷も増やしまくった訳ね? 兄貴のそう言う真面目なトコ、マジで感心するぜ。 「兄貴こそ、これからどうすんの?」 「俺か? 俺は、まぁ、そうだなぁ……」 しばらく黙考した兄貴は清々しい顔で俺に告げた。 「クライムを本気にさせる。すぐには無理だろうが、じっくり時間をかけて俺に夢中にさせてやる」 すでに兄貴の方がクライムに本気になってんじゃん。 「そっか。じゃぁ、俺も兄貴を応援する。けど、あの淫魔、一筋縄じゃいかなそう」 「だよなぁ~」 笑いながら服を脱いでパンイチになった。 尖った股間の先がドロドロに濡れまくっていて触れたら粘る糸を引く。 兄貴がそんなパンツごと口に含んでベロリと舐め上げた。 「これが陽一の味、なんだな」 淫魔・オーファルではなく俺の味、と兄貴も笑顔を俺に向けた。 「いいよ、兄貴……。そのまま、続き、シて欲しい……」 兄貴の手が俺のパンツを下げ、剥き身のチンポが露わになった。 俺は人間としても兄貴と交尾しちまった。 後悔は少しも感じないが今までとは違う関係性になった事については少し寂しく思う部分はある。 それでも―― ようこそ『Male Fantasy World』へ。 ここはあなたが主人公となる性の楽園。 夢と現実が交差するヴァーチャルセックスパラダイス―― 俺にとってはゲームの外の現実もセックスパラダイスになってくれたのだ。 これからはヴァーチャルも現実も淫らに楽しんで行こう。 淫魔の力を使い、もっともっと快楽に満ちた性の世界を体感しに行こう。 本物の淫魔、実在するインキュバスとして、仮想も現実もデュアル(二重)に存在できる「俺」として。 「うわ、日差し暑っつ!」 目を細めて見上げた空はどこまでも青く、ようやく迎えた梅雨明けとこれから始まる夏の到来を俺に教えていた。 終 登場人物 雄々原 陽一(おおはら よういち)16歳 豪性高校1年 ごく平凡な男子高校生 淫魔・オーファルに変身する 時雨 大輔(しぐれ だいすけ)16歳 豪性高校1年 陽一の友人 陸上部所属 淫魔・シグレスに変身する 奈義 怜太(なぎ れいた)17歳 豪性高校2年 陸上部員 陽一や大輔の一年先輩 淫魔・ナギーに変身する 朝霞 清介(あさか せいすけ)25歳 金魔羅鉄工所作業員 オーファルによって性奴隷と化した 清瀬 岳(きよせ がく) 23歳 劇団EXEO所属俳優 オーファルによって性奴隷に堕ちる 木更津 壮馬(きづ そうま)34歳 豪精高校 体育科教員 シグレスの性奴隷 ゲーム内ではオーク・ソルム 千葉 竜平(ちば りゅうへい)27歳 元豪精高校・陸上部コーチ ナギーの性奴隷 ゲーム内では竜人・ティガ 倉井 睦美(くらい むつみ)22歳 闇チップの創造主 淫魔・クライム 倉井のカラダを乗っ取った。 雄々原 勝(おおはら まさる)20歳 先端情報大学2年 2年になる前の春休み中に一人暮らしを始めた。 淫魔・ヴィクトとなった。 『Male Fantasy World』 略して『MFW』 ヴァーチャルリアリティ・フルダイブ・アダルトゲーム。 「マイクロニューロンチップ」を使用してゲームワールドにログインし、作製した自身のアバターを通じて五感すべてでセックスを感じて楽しめる18禁エロゲ。 作製できるアバターの種族は「人間(ヒューマン)、獣人、オーク、エルフ、淫魔」の5種類から一つを選択。 髪の長さや色、眉のカタチなど細部に至るまで一つ一つプレイヤー自身が設定していく事も可能だが、 ベースとなるプリセットキャラクターにパーソナルデータを読み込ませて作成する「オリジナルキャラメイクおまかせ機能」も搭載。 ちなみに種族別だと淫魔が1番人気が高い。 姉妹ゲームに『Men’s Freedum Sanctuary』(『MFS』)がある。 支払いはクレジットカード払いのみの有料かつノンケ向けヴァーチャルアダルトゲームである。 プレイ人口は『MFW』の10倍以上。 作製できるアバターは男→女・女→男の設定が可能なので女体化や男体化、男(女)ふたなりのアバターも作れる。