生皮鬼 1
Added 2021-03-26 01:16:21 +0000 UTC1旧校舎の図書室で 「旧校舎のこんな奥まで入るのなんて初めてだな」 「俺なんか入った事すら無かったぜ」 「俺は一回だけある。職員室から古い資料を運ばされた時に」 放課後、同じクラスの俺たち3人が旧校舎に来た理由。 それは2週間後に迫った学園祭に使う道具を取りに行くためだった。 「しかし、何でこんなトコにしまっちゃうのかなぁ~?」 「手っ取り早く片付けたかったんだろ? 全部まとめて持って来るだけだしな」 「そんで修哉、今日運ぶのはなんだったっけ?」 先生からもらったメモを持つ俺に壮平と龍騎が聞いた。 「調理機材はまだ早いから、今日は机にかけるテーブルクロスやメニューを貼るボート、それから廊下に立てる看板用の板とか を持って来てくれ、だって」 「重たいモノは前の日に男子全員で取りに来るんだっけ?」 壮平の言葉に龍騎がげんなりとした表情を浮かべている。 「終わったらまた旧校舎まで持って来なきゃいけないんだろ?」 「面倒臭え~」 旧校舎の中を行く。 埃と、錆びた鉄と、コンクリートの干乾びた匂いが漂う。 目的の場所は図書室だ。 図書室の中に去年、カフェの模擬店をやったクラスが使ってた物品や機材が残されている筈だ。 俺たちのクラスは今年の学園祭に「コスプレ喫茶」をやる事となった。 一時間毎に裏方である調理担当と接客担当、そして休憩メンバーを5人ずつ交替する事になったためクラスの全員が何らかのコスプレをすることになっている。 とは言え、だ……。 「そういやさ、龍騎も壮平も何のコスプレするか決めた?」 二人とも首を左右に振り「まだ」と、力なく答えた。 「俺もまだなんだよね~。何にするかさえ思いついてないし」 「だよなぁ。あみだくじで負けたから女装もできねぇし」 壮平が悔しがっているのは、コスプレをする男子生徒が全員女装だと面白みに欠けるとの女子の意見を入れて、「女装は5人まで」「あみだくじで当たった男子のみ」と決まったからだ。 「あまり金はかけられないしな。山田と渡辺は赤ちゃんコスをするらしい」 龍騎のプチ情報に壮平がポンと手を叩いた。 山田や渡辺は水泳部だけど、龍騎の属する男子シンクロ部と同じプール用の更衣室を使って水着に着替えるから色々と情報交換をする機会があったのだろう。 「おっと、その手があったか。じゃぁ俺も、って言いたい所だけど赤ちゃんってことはアレだろ? オムツとか着けるんだよな?」 「オムツとおしゃぶり、それとよだれかけ、だけらしい。面白いとは思うが色々と覚悟が必要になる大胆なコスプレだと思う」 「ほぼ裸じゃないのか? それって」 俺の率直な感想に龍騎も壮平も「まったくだ」と同意した。 水泳部の連中は慣れっこなのかも知れないけど。 「赤ちゃん、良い案だと思ったがそうでもないな。つう訳で赤ちゃん枠はこのまま山田と渡辺の二人に譲ろう」 「俺もどうだと誘われたが断った。自分にはまだ早すぎるコスプレだろう」 龍騎的にも競泳パンツ一丁になるのとは別モノなのだろう。 そんな話をしながら誰もいない西日の差し込む廊下を進み、軋むドアを開けて「図書室」の中に入る。 置かれていた本のほとんどが新校舎の図書室に移しているから並んでいる空っぽの本棚に残っているのはほとんどゴミ。 そして閲覧スペースだった場所には、去年の学園祭で模擬店をやったクラスが残した調理機材や看板などの飾りがごちゃごちゃと乱雑に置かれている。 カーテンが閉じていて随分と暗くなっていたから部屋の電気を点けた。 ただ、スイッチをオンにしても点灯した蛍光灯は広い図書室に一つだけだったので蛍光灯から離れた辺りはやっぱり暗いままだった。 「あったあった。これが看板に使ってた板だな。上の紙だけ貼りかえれば問題無さそうだ」 「メニュー用のボードも見つかった。あとは――」 俺はテーブルクロスの布を探しているのだが見当たらない。 鍋やフライパン、丸イスに漆器のお盆なんかはすぐに見つかったのに。 「う~ん? どこにあるんだろう? 全然分からないぞ?」 弱い光を頼りにテーブルクロスが入っているらしい箱を探していると、雑多な道具類の塊の奥の棚、元々は本が置かれていた筈の書棚に薄汚れた箱がある事に気が付いた。 「もしかしてこれかな?」 手に取った薄い箱はよく見ると桐の箱だった。汚れ具合からすると相当に古そうだ。 しかも墨書のお札みたいな紙でしっかりと封がされている。骨董品なのかな? 「修哉? それにテーブルクロスが入ってんのか?」 「そうかな、と思ってさ。中を開けて見てみないと分からないけど……」 中々開かないからこの3人の中で一番力が強い龍騎に桐箱を渡して蓋を引っぺがしてもらおうとした。 けれど蓋がやっぱり開けられない。 「先に紙を剥がしてからじゃないとダメなんじゃないか?」 壮平のアドバイスを受けた俺は胸ポケットにしまっていたシャーペンの先を箱の蓋の継ぎ目部分にプスッと刺し、ギギギと横に滑らせ貼り紙を引き裂いた。 すると、今度は簡単に蓋が持ち上がった。 中に入っていたのは……。 「――これ、テーブルクロス、じゃぁないよな?」 中身に触れるとしっとりと湿り気を帯びていて、見た目からは布と言うかゴムと言うか。 ……ああ、「皮」だ。「皮」に一番近い感触がしたんだ。 生乾き感のある不透明な薄い「皮」を箱から取り出し拡げてみた。 「なんだ。全身タイツだったんだな。腕とか足とか、頭までしっかりあるし」 壮平の言う通りだ。形状からすぐに全身タイツだと分かった。 そんなタイツが箱から3枚。色がそれぞれ異なっていて赤、青、緑。地の肌色に三つの原色を混ぜた色味を見せている。 「なぁなぁ? 都合の良い事に3枚あるし、俺らのコスプレはコイツを使わせてもらおうか?」 俺に異論はない。湿り気は箱から出して乾かしておけば大丈夫だろう。 全身タイツにしては質感が本物の皮膚っぽいけど肌触りは悪くないし、オムツを穿いた赤ちゃんコスよりかは遥かにマシだと思う。 「俺も賛成。今から作るとか到底無理だよな」龍騎は特に裁縫とか細かい作業は不得手なのだ。 「俺も使おっと。3人分入っててマジありがたいぜ」 赤いタイツを手に取った。 「問題はサイズが合うかどうか、だよな?」 タイツを引っ張って伸び具合を見た。かなり伸縮が良くそして強く引っ張っても破れそうにない。とても丈夫なようだ。 壮平と龍騎もそれぞれのタイツを引っ張ったり戻したりしては具合をチェックしている。 「何とか着られるんじゃね? にしても、何でコレ湿っているんだろ? もしかして乾かさずにしまいこんでたのか?」 青いタイツに鼻を近づけクンクンと嗅ぐ壮平。 「……匂いは、あんましねぇな。かすかに何だろ? 海のような潮の匂いがするけど」 俺も嗅いでみた。 「海? って言うか、こっちの赤いタイツは焚き火をした時の煙みたいなニオイが少しだけしてる」 龍騎もつられて緑のタイツの匂いを確かめていた。 「草の匂いだぞ? 草むしりとかした時に感じるあのニオイだ」 それぞれタイツごとにニオイが異なるってのも不思議だったけどニオイはそんなに気にならない。むしろどこか懐かしくって良いニオイだとさえ思う。 「とりま、タイツは一枚ずつゲットするとして……? んん?」 持っていた青いタイツを棚に置こうとした壮平がまたタイツを「掴み直して」手に取ったのだ。 「何やってんの?」 「いや、違うって。手にくっついて来たんだ。つか、なんでくっついてんだ?」 「ふざけてないでテーブルクロスを早く探してくれよ~」 「おい! 修哉! こいつマジで手から離れないぞ!」 手から緑のタイツを剥がそうとしてブンブン振り回したのに全然離れない、べたりとくっついて剥がれないと騒ぐ龍騎。 壮平にノリを合わせて龍騎までふざけてるんだと思ったけど、そうじゃないのだと俺もこの後すぐに知れた。 マジで赤いタイツが右手から離れない! 「うええ!? ナニこれ? 気持ち悪ぃ!」 タイツは手から離れないどころか生き物のようにウネウネ動いているではないか! 「うわ!? ちょ! ヤバイって!」 何がヤバイのか、って? それは、生きているかのように不気味に動くタイツがくっついた手の先からシュルシュルと制服の下に滑り込で入って来たからだ。 慌てて引っ張りだそうとしたけど全然ビクともしない。 もう破れても構わない、と力づく、思い切りタイツを掴んで逆方向へ引いてもまるで歯が立たない。 あっという間に手から肩までタイツにピッタリと包まれ残りのほとんども制服の下側に潜り込んでしまった。 「な、なんでタイツが勝手に!? くっそ!」 急いで制服を脱いでタイツの動きを阻止しようとしたけれど、上半身はもとよりベルトを外してパンツごとスラックスを下げてみたら脚も股間も赤いタイツで覆われていた。 「うわ! んぶふっ!」 叫ぶ声が聞こえてそっちを見れば壮平が頭まで青いタイツに包まれた瞬間だった。 「そ、壮平っ!」 「おわ! お、れも! くそうっ! ダメだ! もうっ!」 「龍騎ぃっ!」 龍騎も緑のタイツが頭の先まで覆った。 二人の様子に焦って驚いていると俺にも遂に「その時」が来た! 赤いタイツが最後まで残していた「頭」の部分がゆらりと顔の正面に拡がったかと思うと、タイツの「口」に当たる部分の皺がニヤリと微笑んだ(ように見えた)かと思うと、俺の顔をバクンと飲み込んだ! 「や、止め! ――っむぐ、ぐぅぅーーーっ!」 視界は一瞬にして暗くなって何も見えなくなる。 タイツは俺の頭を隙間なくぴったりと包んで覆い尽くし、ジュルジュル舐め回すような感触を俺に与えながらタイツと俺そのものとを馴染ませ一体化していく。 すると、性的な気持ち良さをじわじわ感じ始め、パニクっていた俺の気持ちをイヤラシいエロエロモードへ塗り替えて行く。 やべぇ、このまんまじゃ絶対やべぇ、と思いながらも俺はその卑猥な気持ち良さをもっと味わいたくなってしまう。 ダチの目の前でチンポを勃起させて淫らに善がるなんて恥ずかしすぎる! と、俺の中に残っていた「常識」が頑張って抵抗してはいたんだが、 それもすぐにギブアップしちまって、このまま思いっきりザーメンをぶっ放すまでイキたくなってしまう。 「はぁ、はぁ、んっ! すげぇ、はぁ、はぁ、き、キモチ、イイッ!」 声が出せた。出ちまった、と言うべきか。赤いタイツが口も覆っているはずなのに息苦しさなど全く無い。 そんな事よりも、俺ってばとうとう声に出して「キモチ良い」とダチの前で喘いでしまった。 直後、俺の視界がパッと開け周囲と俺の状況が見えるようになった。