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鷹取リュウゴ
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生皮鬼 序

序章『昔々ある所に』    三匹の「求性鬼(ぐせいき)」と言う鬼が都のほど近くに住んでいました。   名の通り求性鬼は己が性欲を満たすため、都の見目麗しき男子から逞しき偉丈夫まで、気に入った相手であれば見境なく攫っては鬼の住処で心ゆくまで交尾を貪っておりました。 都人はそんな求性鬼どもに恐れおののいて……。 ではなく、人同士では味わえぬ至福のまぐわいに、ある者は酔い痴れ、ある者は我もと願い、またある者は切なる思い寄せた文をしたため鬼と次なる逢瀬を待ち望むようになっておりました。 人を攫いはするものの誰一人殺める事も無く、財貨や食べ物を略奪するでもなく、巨大な魔羅によって極楽のごとき快楽を人に与え、底無しの精を吐き、人とのまぐわいによって己の欲を満たしていく鬼。 いつしか求性鬼は鬼でありながら都人たちから大いに受け入れられ、都に現れるたびに引く手あまたの人気者になっておりました。  さて、その様を見て面白くないのが天邪鬼でした。 生来のひねくれ者ゆえか、或いは御仏を守護する四天王の足に踏みつけられる程度の小物扱いが不服なのか、同じく鬼と呼ばれる者でありながら天と地ほども扱いが違う事に大層腹を立てておりました。 「オイラと同じ鬼なのに人と馴れ馴れしくするなんて! 鬼の風上にもおけねぇや!」 小柄な矮躯を赤く染めて憤懣を表し、どうにかして求性鬼の評判を引きずり降ろそうと思案していたのです。 そんな折、はるか化外の地へ遠征に出ていた征西将軍が軍勢を率いて数年ぶりに都に戻って来ました。 これは好機と見た天邪鬼は清げな童子に姿を変え、遠征の疲れをものともしない征西将軍の閨に潜り込んでは有りもしない噂を将軍の耳に吹きこんだのです。 「将軍様! このごろ都には人を攫い玩ぶ恐ろしい三匹の鬼がおりまする! 都の者たちは恐ろしさのあまり、鬼を謗ることすら憚り、心ならずも皆一様に鬼を褒めたたえている有り様! どうか将軍様には速やかに鬼どもを討ちとられ、都に再び安寧を御取り戻しくださいませ!」 「わしの留守中にそのような鬼が出ておったとは。しかも、お上の目を欺かんと民たちに偽りの褒詞まで言わせるなどなんと狡猾なる鬼よ。 あい分かった。よくぞわしに伝えてくれた。その鬼、必ずや討ち取り懲らしめてやろうぞ」 まだ求性鬼の噂を耳にしていなかった将軍はすっかり天邪鬼に騙され、涙する童子の正体に気付かないまま具合良き尻穴を自慢の魔羅で突いては快く天邪鬼の願いを引き受けてしまいました。 さて、さすがに戦上手な征西将軍は相手が人ではなく鬼と知って、常の武器や戦いでは勝ち目どころか相手にもされぬと考え、 怨霊や物の怪をよく相手にすると言う僧や陰陽師に鬼退治ついて知恵を借りる事にしました。 「さすが将軍様、人より遥かに豪の者たる鬼に常の弓や刃などは効かぬと気付かれるとは。あの者たちは些少の傷などたちどころに治りますし、首を切り落としたとて必ず甦り、けして滅びはしないのです」 「ではいかに討伐すれば良い?」 「鬼を封じるのです。封じて誰の手にも届かぬところにかくしてしまわれるのが最良の策」 「封じるにはなんとする?」 「鬼の弱点を突く武器が必要でしょう」 どのような武器であれば鬼の弱点に効くのかについては誰も答えられません。 そこで再び天邪鬼が童子に姿を変え、将軍の臥所に忍び込んだのです。 「三匹の鬼にはこちらの武器がお役に立てるかと思いまする」 見れば、武器ではなく棒のような「なまくら」。切っ先はまるで亀の頭のように膨らんでいます。 「巨大な魔羅のようだな。これでは鬼を斬れぬ」 「この魔羅剣(まらのつるぎ)は斬るのではなく突くのです。あの鬼どもの泣き所は尻の穴。尻の穴にこの魔羅剣を突き入れ、 気を込めればたちまち鬼どもの肉も骨も、五臓六腑までも魔羅剣に吸いこまれ、無力な皮一枚のみと成り封じる事が叶いましょう」 「なるほど。不思議な剣じゃ。ありがたく使わせてもらおう」 征西将軍は軍勢の中で最も武勇に長けた勇士三人を選び、男のイチモツに似た剣と正しき使い方を授けてから討伐に送り出しました。 七日七晩ののち、三人の勇士は将軍の元へ戻りました。 「この通り、三匹の求性鬼は皮だけになり封じて参りました」 薄い三枚の皮だけになった「鬼」を将軍の前に差し出しました。 「天晴である。これで都も静まり民たちも穏やかに暮らせるようになったのだな」 勇士たちを懇ろにねぎらう将軍の晴れやかな顔とは裏腹に、跪く勇士は何故か少し悲しい顔をしていたそうな。 褒美について心配しているのだろうと考えた将軍は、金銀財宝の他に領地の一部、さらには討ち封じた証でもある「鬼の皮」まで三勇士に与えました。 しばらくの後、帝のお召しにより参内した征西将軍は遠征の戦果を得意げに申し述べておりましたが、「戦とは異なりますが新たにここ都にても手柄を立てました」と、三匹の求性鬼を退治した一件についても奏上したのです。 ところがこの時、求性鬼は恐ろしい鬼などではなく都人に好かれ、大変に心を寄せられている鬼であることを大臣だけではなく帝の口からも聞かされ、天邪鬼に騙されていたと知った将軍は顔を真っ赤にするほど恥を晒してしまいました。 「万夫不当の征西将軍も、閨(ねや)での頼みごとにはかくも弱いとは」 「求性鬼の人気を妬んだ天邪鬼にまんまと担がれたのでしょうな」 「蛇足とはまさにこのこと。余計な働きをしてしまいましたなぁ」 「長年の戦果がこれで帳消し、とは言わぬが、あれほど帝の不興を買ってしもうてはのう」 這う這うの体で帝の御前から邸へ戻った将軍は、ただちに童子に化けていた天邪鬼を探して厳しく罰しようとしたのですが、結局見つける事はできませんでした。 また、三勇士に命じて「皮」に封じた求性鬼を元通りにさせ詫びようとしたものの、三人とも将軍から与えられた財宝も領地も捨て、 「鬼の皮」だけを持っていずこかに身を隠し、再び呼び戻す事はかないませんでした。 征西将軍はその後出家し、都を去ってしまいました。 そして、封じた鬼たちへ懺悔しながら厳しい仏道修行に臨み、見事、悟りを開いて立派な上人になったとか。    『鬼皮山(きひざん) 良性寺(りょうしょうじ)縁起より』

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ありがとうございます! 是非最終話まで読んで下さい~!

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新作楽しみにしてました!

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