マイクロマジックミラクルビキニ 3
Added 2022-03-23 15:10:22 +0000 UTC3目覚めの朝 頭の横に脱ぎ捨てたビキニが転がっている。 見上げれば窓から差し込む光。少しひやりとする空気。 朝になっていた。 「ふぁ、あ~ぁ」 欠伸をしながらカラダを起こして軽く背を伸ばす。クシュンと一つくしゃみが出た。 ずっと素っ裸のままだったからカラダが冷えたんだろう。 「……昨日のアレは、やっぱ夢、だったか?」 立ち上がって顔でも洗いに行こうと床に手をつく。すると「べちゃぁ」と粘つく感触がした。 見れば床一面が精液の水溜りみたいになっていた。 「……夢じゃなかったのか」 だんだんと他の感覚も戻ってくる。鼻に精液の濃厚な臭いが届く。股間の奥には快感の残滓が感じられる。 ザーメンが乾いて腹や胸がガビガビになっているのだと分かる。 そして、 「そうだ! チンポは!? …………あ、あるじゃんか。はは、ちゃんとチンポ、生えてんじゃん」 あんなにも筋肉隆々マッチョだったカラダも緩みの見え始めただらしない三十路ボディに戻っていて、肌の色も褐色から日焼けの無い生白い肌色へと返っている。 「一体……何だったんだ? 訳が、分かんねぇ……」 夢ではなく実際に起きた事だと状況は告げている。記憶もそうだと訴えている。 ただ、気持ちが、俺の感情が信じられないあまり記憶と状況を拒否している。 拒否していないと、俺が女になってマンコに指を突っ込んでよがり狂っていた事や、指じゃ飽き足らず野郎の チンポに犯されたいと強く求めていた事まで受け入れなければならない。 整理の付かない頭のまま風呂場で熱めのシャワーを浴び、いつも愛用しているトランクスを穿く。 部屋の床に広がっている大量の精液を片付ける。床が畳ではなく簡易フローリングで助かった。 もしも染み込んでいたらもっと後始末に手間取っているのだろう。 けれど、 「くっそ……、なんでこんなに射精してんだよ俺は。つうか、精液ってこんなにもぶっ放せるもんなのか?」 ティッシュでは追いつかないのでタオルを何枚も敷き詰め吸収させ洗面台で搾り、そしてまた床に並べて吸わせる。 そうして何往復もして床があらかた乾いてから改めて水拭きしてファ○リーズで徹底消臭。 ああ、なんて情けない。賢者タイムでもないのに虚無感で一杯になる。 やっとの事でザーメン臭さが感じられなくなってから朝飯を食う。 朝飯と言っても珈琲とトーストだけのショボい朝食だが。 次に、平日であれば朝食の後は身支度を整えスーツに着替え、いざ会社に出勤、となる訳だが、今日は土曜日。 なのでもう一度ゆっくり寝直して二度寝を貪る、……訳にはいかない。 昨夜の珍事について色々と確かめなければ。 部屋の隅に除けていた極小ビキニを拾い上げる。 細い腰紐、股下も紐のようないわゆるTバックタイプでチンポを隠す部分であるフロントも最低限の布しかない黒いビキニ。 引っ張ればとてもよく伸びる。限界まで伸ばそうとしてみたが、両腕を精一杯広げてもビキニは平然と伸び、そして再び元の小ささに戻る。 皺どころかタルミすら残さず。 フロント部の布も全く同じでいくらでも引っ張れるし、いくらでも引き伸ばせる。 「いったいどんな素材でできてるんだ?」 ビキニが入っていた箱を調べる。 説明書は無い。箱には「マイクロマジックミラクルビキニ」の商品名と小さい文字で『MMMM』のロゴがあるだけ。 「ん? 四つのMは商品名から取っているのかと思ったが、だったら最後はビキニのB、じゃないとおかしくは無いか?」 Mは三つで足りている。「マイクロ・マジック・ミラクル」の三つだ。 四つ目のMとは何の「M」なんだ? 「……あ~、考えてもさっぱり分かんねぇ! つうか、俺のカラダがマッチョになったりチンポがマンコになったりしてたのは、マジでこのビキニのせいだったのか?」 穿いただけで人のカラダを作り変えるようなビキニパンツなんてある筈がない。 コイツをくれた『馬留次庵』のマスターは「新作です」と言っていたような気はするが、だからと言ってこれほどの変化をもたらす下着など作れる訳がない。 だったらもう一度穿いてみて、ビキニがそこまでの効果を持っているのかどうか確かめてみればいい。 両手で持ち上げじっとビキニと向き合う。 穿けばまたマッチョボディになってチンポがマンコに置き換わり、エロい欲望爆発、自慰しまくって精液を飛ばしまくる、なんて痴態を演じてしまうのだろうか? ズクン、と一部が反応していた。 「待て待て。早まるなよ俺。もう一度穿いちまって他のヤツのチンポが欲しいなんて言いだしたら、それこそホモじゃねぇか」 俺の性質、本質まで変わってしまいそうな危険を感じる。引き返せなくなるような気がする。 一度味わった気持ち良さをもう一度体感してしまえば、さらに深いトコロにまで堕ちるのは目に見えている。 だから、 ……だから試してみたい……。 気持ち良さを味わってみたい……。 アノ快感を思いっきり味わって、堕ちるとこまで堕ちてみたい……。 「チンポに挿し貫かれる快感に狂ってみてぇ」 呟いた声が耳に入って俺はハッとした。 「ばっ! バッカじゃねぇの俺! なぁに考えてんだよ! ったく! 寝ぼけた事言ってる場合かよ!」 謎のビキニなんてもう捨ててしまおう、そうしたほうが絶対に身の為だ。 ゴミ箱に箱と中身を一緒に放り込もうとしたら、俺のスマホが着信を告げた。 発信者は三沢……からだ。 『おはようございます十和田さん。朝からすみません』 「おう。おはよう。朝っつってももう10時だし別に大丈夫だ」 『ありがとうございます。妙な事を聞きますけど、昨日、自宅に帰られてからおかしな事は起きませんでしたか?』 三沢の言いたいことは読めた。 アイツもビキニを穿いてみたのだろう。 だが、直球で返して万が一違ってたら俺はただの妄想変態野郎になっちまう。 「おかしな事? 三沢、どうかしたのか?」 『あ、あの、僕だけなのかも知れないんですが、十和田さん、昨日、あの店でプレゼントされたビキニ、穿いてみました?』 「ビキニ? ああ、あのカレーを食べた店でもらったヤツか」 『そう、それです。そのビキニを穿いたら、えっと……』 ここまで聞ければ間違いは無さそうだ。俺の方から核心を突いてやる。 「ビキニを穿いたらカラダに異変が起きたのか?」 『っ! そ、そうなんですよ! 僕のカラダが! って事は十和田さんにも?』 「いまだに信じられんが起きてたぞ? チンポが消えてマンコになっちまいやがるし――」 『ええっ!? ま、マンコに?! マジでチンポがマンコになってたんですか!』 いやに驚き方が大きい。もしかして俺の言う異変と三沢の言う異変は別物だったのだろうか? じわりと冷や汗が額に浮かんだ。 『あのビキニで、ですか? 本当にチンポがマンコになっちゃったんですか?』 早まったかも知れないものの、ここで誤魔化すとかえって詮索されるだけだ。 「ああ。そうだ。ビキニ以外に原因は思い付かない。で? 三沢。お前のカラダにはどんな異変が起きていたんだよ?」 『僕はその、チンポが……』 声が小さく聞こえない。 「何って言ったんだ? 聞こえないぞ?」 『あ! あの、チンポが、えっと……』 「チンポが? どうしたんだ? そろそろハッキリ言ってくれ」 『す、すみません……、ええと、じゃぁ、実際に見てもらっていいですか?』 「うん?」 『十和田さんのお宅にお邪魔して、確かめてもらっていいですか? その方が早そうなので』 あまりにも切羽詰まった話ぶりだったのでOKしてしまった。 『ありがとうございます! 十和田さんのお部屋の住所は把握しているんで、今からすぐに伺います! 多分、一時間くらいで到着できると思いますので!』 「お? おう……そう、なんだ」 いつ俺の住所を知ったんだ? 俺なんて三沢の前の住所も知らないし、引っ越し後の最寄り駅でさえ昨日知ったばかりだと言うのに。 ともかく、三沢がこれから俺の部屋にやってくる事になったので、捨てるつもりで握り締めていたビキニをもう一度テーブルの上に広げ、ビキニが収まっていた小箱を横に並べて置いた。