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鷹取リュウゴ
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パラドキシカル・パラサイト 13

13足跡  「白鳥、お前が金庫から書類を盗んだ証拠の映像がある。しかし、警察に突き出すのはさすがに忍びない。なので特別に解雇処分だけで済ませてやろうじゃないか」 ヤニで歯が茶色いバーコード禿が「白鳥 百木(しらとり ももき)」に宣告した。 会社の警備員として真面目に働き続けて20年。 実直と正直が服を着ているような白鳥に掛けられた「嫌疑」はこの少し前に海外支社から帰ってきた上司によって日を置かず「事実」となり白鳥の退路を断った。 すなわち、「でっち上げられた証拠映像を元に白鳥が会社の金を着服した」のだ、と。 言い訳も事情も斟酌されなかった。 何故なら、上司は会長の甥として次期社長に最も近い位置に居り、社内の権力を社長以上に掌握している人物でもあったからだ。 白鳥には思い当たる記憶があった。 解雇通告が為される2か月前だ。 上司は警備員の制服に身を包んだ白鳥の尻や腿をねっとりと撫でながらこう言った。 「良いカラダ、しとるよねぇ、君。警備員のままにして置くのはもったいない。どうだね? 私直属の秘書になって働いてみる気はないか? まぁ、ちょっとだけ私のシモの世話係も含んでいるのだが」 白鳥は即座に拒否した。 警備員の仕事に不満は無く、その上司の態度や物言い、人格については反吐が出る程嫌悪を感じていたからだ。 そんな上司からの卑猥な誘いなど聞いてしまった耳ごと外して清浄な水ですすぎたくなるほどだった。 つまり、有りもしない証拠をでっち上げられ解雇に追い込まれた背景には、会長の甥による報復、の意味が込められていた。 まさにパワハラそのものではあるのだが証拠として取り上げられた映像は実に巧妙で、白鳥の反論を挟めないようになっていた。 白鳥は負けた。四面楚歌なのだと理解した。 会長の甥の威光にひれ伏して自身を味方する者が一人もいないと知って、闘う事を諦めた。 解雇を受け入れた白鳥はすぐに新たな仕事を見つけようと積極的に動いた。 亡くなった両親から相続した家もあり、真面目にコツコツ蓄えてきた預金もあるのですぐに干上がる心配はない。 相変わらず世の中は不景気で学歴にも資格にも「売り」が無い人間にとって再就職は狭き門のままだったが。 そんな頃だ。白鳥の前に故郷の田舎から幼馴染が会いに来た。 幼い頃、一緒に野山を駆けトンボを掴まえたりセミを取ったり、そして小学校、中学校と一緒に歩んできた親友とも呼べる存在だった。 互いに社会人になってから連絡を取り合ってはいなかったものの、ひと目見て20年の空白は失せて昨日の出来事となり、少年時代の思い出が白鳥の心を熱く震わせた。 「どうしていたんだ! 元気だったか?」 「ああ! お陰様でな。新しい事業をスタートさせたんでますます元気に頑張っているとも!」 思い出話に花を咲かせ、当時のいたずらを自慢気に語り、そして社会に出てからの苦労を分かちあう。 体型や顔立ちは年相応になっても幼馴染は昔とちっとも変わっていない。昔と変わらず夢を追いかけているようだがコイツには成功して欲しい。 白鳥はそんな思いを抱きながら幼馴染と酒を酌み交わし、再びやって来たかに見えた青春の甘酸っぱさに酔い痴れた。  ――『白鳥 百木殿 債権者からの申し立てにより連帯保証人として以下の通り全額を速やかに返済しなければならない。 返済期限は令和◯◯年×月△日まで』――  裁判所からの通知を受け取った時、白鳥にとってまさしく晴天の霹靂であった。 気付いたら白鳥は幼馴染の保証人になっていた。 それも、桁数を数えるのが恐ろしくなる負債金額だ。 通知に添付された書類にはすでに幼馴染には返済能力が無い事と、連帯保証人となっている白鳥には異議を申し立てる権利が無い事の両方を突き付けた。 幼馴染と再会してからたったの三か月で白鳥は受け継いだ家も、真面目に働いて蓄えてきた預金も、めぼしい家財道具も全て債権者によって押さえられ無一文になった。 幼馴染の電話番号やメルアドに連絡を入れてみても応答は一切無かった。 住み慣れた家から着の身着のままで追い出された白鳥は、その日からホームレスになった――なってしまった。 あまりにも急な転落ぶりに我が身、我が人生なのにどこか「他人事」のように感じていた。 ニュースでしか見た事の無い労働者の街へ行き、支援センターに紹介されたその日限りの仕事で日当を稼ぐ。 もちろん仕事が無い日も多く、食えない時はコンビニの廃棄弁当を探し歩いたり一般家庭のゴミ箱を漁ったりもした。 臭い泥水を啜るような生活を一年近く続けていた白鳥だったが、この日はたまたま雇い主に働きぶりが評価され割増しの賃金を得られたため前日の日当がそれなりに残っていた。 そのため自分自身でさえ鼻をつまむような体臭を放ち始めていた事もあって、シャワーを浴びられるネットカフェで寝泊りする事にした。 鍵付きの小さい個室が平日深夜0時から朝8時までの8時間パックで2000円。 会員なら1600円になるが白鳥は会員では無いため2000円を支払う。 何故他の安宿ではなくネットカフェの個室にしたのか? それは久しぶりに性欲を発散したくなったからだ。 「エロい動画を見てオナニーしよう」 45歳の白鳥。この年齢が「中年」なのは言うまでもないが、警備員時代から真面目に体力作りに勤しんでいたため肉体年齢は平均よりとても若い状態を維持している。 それはホームレス生活と過剰なストレスによって幾分減少したとは言え、それでも計測したならば平均より10歳は若いカラダだった。 言い換えれば性欲も精力も10歳若い肉体年齢に見合う大きさのまま保たれていた。 久しぶりに髪とカラダを洗い、久しぶりに丁寧に髭を剃り、シャワーの湯とボディソープで久しぶりに衣服を洗い、久しぶりに歯を磨いてシャワーブースを後にする。 サービスで置かれている浴衣を羽織り、ドライヤーで髪を乾かしてから店内のオープンスペースを通り抜ける。 白鳥本人は気付いていなかったが、巡回していたネットカフェの店員や、読み終えた漫画を戻そうとしていた他の客からは静かに注目を集めていた。 「え? 誰? あの渋いイケメンは。まさか、さっき店に入って来た小汚いホームレスのオッサン??」 個室に戻った白鳥は、二畳ほどの狭いスペースながらも人目を気にせずチンポを弄れる事に歓喜した。 風俗を含めてセックスをしたのはかれこれ5年以上も前になる。 特定の交際相手が居たのも10年前まで。つまりそれ以降はもっぱら一人だけで処理していた。 フリードリンクコーナーから運んできたお茶のカップをキーボードの横に置き、パソコンを起動させる。 ブゥンと低い音を立てて液晶モニターが明るくなり、ネットカフェ用のホーム画面が表示される。 白鳥はすぐさまエロサイトを検索し、無料で見られるエッチな動画を吟味し見繕おうとした。 朝までまだ時間はあるとは言え、オナニーした後ゆっくり寝る時間も欲しい。人目を気にせず眠れる場所に居るのも久しぶりだった。 検索用のテキストボックスを賑やかなホーム画面の中から探し、指一本にてキーを入力。 極上の「オカズ」を求めてすでに勃起しているチンポに「すまねぇがもう少し待ってくれ」と詫びる。 ようやくここならば、と見つけたのはサムネイルにマンコを見せつける見目麗しい女性ばかりの18禁ポルノサイト。 ずらりと並んだサムネイルの中からさらに好みのタイプに最も近く満足をもたらしてくれそうな動画をチョイス、――女の胸とマンコを交互に見ながら扱き始めて間もなくの事だった。 ―グビュ! ビチャァッ! 「うわわ! やっちまった!」 溜まりに溜まっていただけあってチンポが勢いよく暴発し、精液が思いっきりキーボードやモニターに掛かってしまったのだ。 すぐに備え付けのティッシュで拭き取ったものの壊れてしまっていないだろうか、と白鳥は恐れた。 弁償できるようなお金は到底持ち合わせていない。 後になって請求されてもそれは同じ事だ。せめて退店してしまうまで「使える状態」ていてくれ、と祈った。 ここで、モニター画面が真っ黒になっていた事に気が付いた。 恐らくキーボードのザーメンをティッシュでぬぐう時にやみくもにキーボードを押しまくったせいで、こんな黒い画面になったのだろうと白鳥は思った。 ただ、よく見ると黒い画面の端にアイコンが一つあるではないか。 このアイコンをクリックすれば画面は元に戻るのだろうか? カーソルを移動させアイコンの上に置く。カブトムシのマークが入っているものの何のアイコンかは分からない。 だが、こんな黒一色のままではまさしく「自分が壊しました」と言っているようなもの。早く、ホーム画面に戻して、 あわよくばさっき見つけたエロ動画の続きを見に行きたい。 半分萎えたチンポは一発イった程度では収まらない、たっぷり溜まっている精液と性欲をちゃんと放出させてくれよ、と熱を保ったままなのだ。 アイコンをクリックした。 ダウンロードを示すバーが右から左に動いて100%になった。 すると、アイコンすら見えなくなって本当に黒一色の画面になってしまった。 もしかして触ってはいけないアイコンに触れてしまったのかとビクビクする白鳥の前で黒いモニター画面がゼリーのようにプルンと揺れた。 「今のは?」 見るからに質感が変わった液晶の「板」にそうっと指を当ててみた。 ―ズプ、ズムプニュ 「う、嘘だろ? 指が食い込むなんて……」 差し込んだ指を引き抜く。するとプルンと揺れた画面の中央がグニュゥと前に突き出して来た。 「な、何!? こっちに伸びて来やがった!」 腕のように突き出て来た黒い先端部分が「ブツン」と千切れ、千切れて黒い球体になると宙に浮かび、白鳥の前にふわりと流れて来た。 「ど、どうなってやがる?」 黒い球体の皮膜が「パンッ!」と弾けると中からやはり黒い球体、いや、やや楕円で扁平な黒い物体が現われた。 よく見ればその物体は白鳥が幼少期に野山で採った昆虫、カブトムシやカナブンに似た特徴を帯びていた。 「む、虫、なのか?」 黒い昆虫に似た球体は驚く白鳥の前で「ズム! ズグム!」と膨張し、見る間に1mもある巨大なモノへと変貌した。 狭い個室内に逃げ場など無い。 白鳥はたちまち背後を取られ、細い骨のようなモノに拘束され、悲鳴を上げる暇も与えられず黒い楕円球から移り張り付く外骨格に全身を覆われ、 そうして、宿主となる白鳥の肉体と混ざり合いながら肉体だけでなく意識をも咀嚼して白鳥に受容させ、巨大なモノ、つまり「グロセクト」の寄生は速やかに完了した。 「ぐぁ゛! や、やめっ! んぐ! ぐぐぅぅ----っ!」 その間、白鳥が抵抗らしい抵抗を声にできたのは、唯一、寄生開始直後のこれだけであった。 ◇  「――とまぁ、これが寄生体になっちまった経緯だ。面白くはなかっただろう? こんな負け組のオッサンの身の上なんてな」 「……苦労されてきたんですね」 「マジで! 何なんすかその上司! 自分が相手にされなかったからって白鳥さんにやってもいない罪を着せてクビにしちゃうなんて酷すぎる!」 円がしんみりと呟き、七五三鬼は悲憤慷慨して目じりに涙を浮かべている。 晃は何かに気付いたかのように顔を上げた。 「白鳥さんが寄生体になったのはいつなんですか?」 「ちょうど10日前だな。ネットカフェに入ったら受付の前にでっかく日付が表示されてたから、そいつはハッキリしている」 「じゃぁ、10日前から今日までどうされてたんです? 家もなく職も無い状態でどうやってここに? それに、ここいらに置いてあるキャンプグッズや後ろのワゴン車はどうやって手に入れたんですか?」 最終確認だと言わんばかりに晃はまくし立てた。 「ああ。そいつはな。馬券で買ったんだ」 「馬券?」 「そうだ。寄生体になった俺は、随分と生き物のニオイに敏感になっている事に気が付いた。お前らが俺のフェロモンを感知するのと同じだな。 でもって寄生体の本能としてむちゃくちゃ精液が欲しくなった俺は、取り分け美味そうな精液のニオイに惹かれて見ず知らずの男を襲ってそいつの精液を貪った」 「分かります。俺も寄生体になった初めての夜はそんな感じでした」 晃が自身を思い出しながら肯いた。 「んでな、その男の記憶をちょいと弄って『人間』同士でサカリ合ってた、って事に挿げ替えたんだ。するとな、その男が俺にまた会ってくれ、連絡先を渡すからまた連絡して欲しい、つってメモを寄越したのさ。 そのメモってのが馬券の裏面を利用した物だったのさ」 「となると、そのメモ代わりの馬券が大当たりして、大金を得た、と?」 円が先回りして言った。 「まぁ、結果としてはそうなんだが――。俺がもらった馬券はハズレ馬券でな、しかもレース自体が3か月も前のものだったから当たっていたとしても払い戻しの期限はとっくに過ぎてやがる代物、まぁ、ケツすら拭けねぇ紙屑だ」 「じゃぁ、馬券は結局関係ない、って事っすか?」 七五三鬼が小難しそうな顔で白鳥の様子を窺う。 「いや、もらったハズレ馬券で俺はハッとした。今の俺の嗅覚をもってすればどの馬が勝利するのか分かるんじゃないか? と。 なので俺はすぐにレースがある競馬場を探してその競馬場に飛び、馬の状態をニオイで確認してから馬券を買った」 「もらった馬券がヒントになった、って訳だったんすね! んで、自分で買った馬券が当たった、と」 七五三鬼がワクワク顔で白鳥に聞いた。 白鳥はプッと吹き出した。 「はは、その通りだ。俺は大当たりも大当たり、とてつもない万馬券をもぎとっちまったのさ」 晃たち三人の咽喉がゴクリと鳴った。 白鳥は固唾を飲んで見つめる晃たちを前にして股間がモゾリと膨らみ始めていくのを覚えた。 「万馬券の払い戻しの金はな、なんと、1億だ」 「「「1億!?」」」 白鳥はゆっくりと肯いた。驚く晃たちの素直な反応に白鳥も興奮してしまう。 「てな訳で、今のがお前の質問の答えになったんじゃないか? 俺は1億の金を元に車とキャンプ用の道具を買い集めた。 どっかに定住しちまうと、また俺を裏切った幼馴染や胡散臭ぇ連中が金の臭いを嗅ぎつけて近寄って来るんじゃないか、って思ってよ。 それに俺は、人間を襲って精液を求める寄生体になっちまっただろう? だもんで、人間だらけの所にゃ居づらくなってよ、 そこそこ精液を確保できそれでいて安らげる場所を求めた結果、この山の中でキャンプ生活を始めたって訳だ」 聞いていた晃はふぅぅと長い息を吐いた。 円と七五三鬼も肩の力を抜いた。 「色々とお話を聞かせて下さってありがとうございました。俺の想像をはるかに超えて荒波を乗り越えてこられたんですね」 「そうだなぁ。人間のままじゃきっと腐ってダメになっちまってたろうが、寄生体に生まれ変われてつくづく良かったと俺は思ってるよ。 いずれ、もっと気持ちが落ち着いてきたら街に下りてやってもいいかな、って程度にも、な」 「分かりました。それで、このお話を他の寄生体に伝えても構わないですか?」 晃は賢哉の事をイメージしていた。 「お!? お前ら以外にも寄生体がいるってのか!? そいつはまた驚いたぜ……。つか、お前たちに会うまでこんな生き物は俺以外いねぇ、一人ぼっちに決まってる、って思ってたんだが……。そうか、まだ居たのか……」 「マジで居るんです。すぐにでも紹介もしたい所なんですが、……その前に」 ニヤッと笑った晃が人間形態から寄生体に戻った。 盛り上がっていく筋肉を覆う皮膚が硬化して外骨格になると股間のハッチを開け巨大な三段カリチンポを白鳥に向けた。 すでに濡れていた先端部から「ツツー」と透明な粘液が草の上に垂れ落ちた。 「お! いいね、いいねぇ。いよいよ俺とサカる気になってくれたのか。このところ山に入って来た男から精液を頂戴してたがよぉ、その都度記憶を消したり改竄してくのがすっげぇ面倒になって。 後始末とか考えずにガッツリやり合える相手が欲しいと思ってたところだったのさ」 白鳥も寄生体に戻って股間から巨大なペニスを引きずり出すと、晃たちを誘うように鎌首をブルンと上下させた。

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