11逆転 「あれ? あんたらもお仲間さん?」 ドアを開け入った途端、室内に一人だけ居た男は二人を見て目を丸くした。 「お仲間さん、かどうかはお前の返答次第、になるかもな」 「『七五三鬼 蓮太郎(しめき れんたろう)』ってのはお前だろ?」 円に誰何(すいか)された七五三鬼がムッとした表情になった。 「フルネームで俺を呼ばないで欲しいな。俺の事はレンと呼んでくれ」 ここで晃が眉間にしわを寄せた。 「なるほどな。だから『グロセクター・レン』なのか。ストレートに名付けたもんだな」 少し無言の時が流れた。 が、それを先に破ったのは七五三鬼(しめき)からだった。 「あらためて聞くまでも無いでしょうけど、あんたら二人とも俺と同じグロセクターだろ? ニオイ的にもさ」 ぶっきらぼうな物言いに円もイラついた。 「お前こそどうなんだ? 人に聞くならまずは自分が自己紹介するもんだろう?」 「自己紹介ってどっちの? って、あ、そうか。人間バージョンと寄生体バージョンのどっちも、って事か」 パイプいすから立ち上がった七五三鬼はようやくカラダ全体を晃と円の方へ向けた。 「ごっほん。……初めまして。俺はレン、18歳、社会学部1年、特撮同好会に所属、あとは……、人間としてはこんなもんかな? じゃぁ、次、俺は寄生体、グロセクター・レン、昆虫型怪人のヴィランだ。年齢としては生後一か月弱。動画も投稿してるからチャンネル登録と高評価よろしく!」 また少し無言空間が生じた。 「あれ? 俺にだけ自己紹介させといて二人は?」 晃が渋々口を開けた。 「まぁ、こんだけフェロモン放出してりゃグロセクターに間違いないしな。 そんなに聞きたけりゃ言ってやるよ。俺は『明神 晃(みょうじん あきら)』2年の二十歳。グロセクターに生まれ変わったのはお前と大差ない」 「俺は『観音寺 円(かんおんじ まどか)』晃と同じ2年で二十歳だ。俺は晃のお陰でグロセクターに新生した」 「へぇ~、二人とも先輩だったんすね。そんでもって観音寺先輩は明神先輩の卵から寄生体に、っすか。へぇ~」 晃と円が先輩だと知り、態度を改めた七五三鬼。 「生意気な口聞いてすんませんでした」と頭を下げた。 「前置きは省いて単刀直入に聞くけど、あの動画は何だ? どういうつもりであんな身バレ上等な動画を投稿してんだ?」 晃がまっすぐ七五三鬼の目を見て言った。 「俺の動画を見て、わざわざ探してまで会いに来てくれたんすね? いやぁ、反応があるとやっぱ嬉しいっすわ」 「いや、嬉しがってないでちゃんと説明してくれ。どうしてあんな無防備な動画を投稿したのか、を」 円が横道に逸れそうな七五三鬼を引き戻した。 「動画を投稿した理由? そりゃぁ俺の姿を見て欲しいからっす。だってカッコいいと思いません? あんなにムッキムキで黒い外骨格に覆われてて、俺の大好きな特撮に出てくる怪人、ヴィランそのまんまじゃないっすか! いやもう、俺、グロセクトに寄生されてから初めて自分の姿を鏡で見た時、嬉しすぎて思わずそのまま何度もイっちゃいましたもん」 ニコニコ話す七五三鬼に晃も円もますます渋い表情になっていった。 「グロセクターになれて喜ぶ気持ちは分からなくもないが……」 「でしょう?」 晃が話の腰を折るなとばかりに睨む。 「……さすがに、不特定多数相手に正体を晒すのはどうかと思うぜ? 俺らはそりゃ人間よりかは強い。それに精神干渉能力のお陰で数人程度なら同時に記憶を消す事も可能だ。 だけどなぁ、ネット上に流しちまったら何千何万の人の目に繰り返し触れるんだぞ? しかも、記憶を消そうにも拡散され続けたら俺たちの能力をフルで使っても到底追いつかない。つうか、対象を特定できない時点でアウトだ。 そうやってバレまくって人間たちから敵視され排除されたらどうすんだよ? 俺らのこのカラダは、エネルギー源となる精液を持つ人間が近くにいないと困るだろう?」 「俺も晃も心配しているんだ。それこそ動画投稿サイトでたびたび目にするが、お前の動画が炎上したらどうする? 炎上だけで済めばいいが、リアルにアンチ勢に囲まれ袋叩きにされたらどうする? 俺たち寄生体はグロセクトに寄生され超人的、いや、怪人的能力を得たが、人間とこの社会に寄生している存在でもあるんだぞ?」 また少し間が空いた。 だが、こんどは晃からその「間」を晃から破った。 「あのなぁ、人が真面目に話しているって時に、どうして俺らに精神干渉しようとするんだ?」 「あ~、やっぱ同族じゃぁ効かないんですね。薄々そうだろうな、と思ってましたけど。それでもまぁ、お二人が本気で心配してるってのは分かりました。嘘とかじゃなくて本気だって」 「俺らを操るためじゃなく嘘かどうかを探っていやがったのか」 円が呆れた、と言わんばかりに七五三鬼を見返した。 「そうすよ? それに俺だって何の考えも無いまま動画を作って投稿した訳じゃぁないです。ならなんでリスクを冒してまで動画を投稿したのか? って事っすけど、ぶっちゃけ俺、自分を売りたいんす。有名になって人気を得たいんす。 ヴィランとしてヒーローと対決する動画も撮ってみたいんすよ」 「なら、止めろと言っても……」 「ははは! 止める気は無いッスね。俺を止めたければ力づくで来ぉいっ!」 ここで七五三鬼が寄生体の姿に戻った。 敵意を露わにした七五三鬼に対して晃と円は―― 「ん~、円ぁ、俺どうしよう? なんかシラケてきちまったぜ」 「だな。俺もここまで『付き合う』義理は無い」 「へっ!? ええっ!? ここは二人とも変身して俺に立ち向かうトコっすよ! なんで変身しないんすか!?」 オロオロする七五三鬼の胸を晃は指差した。 「あのさぁ、さっきから俺らとのやりとり、スマホでムービー撮影してただろ? 無許可撮影と投稿は禁止だ! ったく、隙もへったくれもねぇな!」 「分からんとでも思ったか? お前、胸ポケットにスマホを入れたまま衣服を外骨格に変異させただろ? それでも、外骨格の上にカメラのレンズがちゃんと見えちまってるぞ」 七五三鬼が頭を下げ自身の黒い胸を見た。 「うーん、この作戦、上手く行くと思ったんだけどなぁ。音声は後で切り張りして適当に繋いで、ヴィランVSヴィランで一本、行けると思ったんだけどなぁ~。くっそ~」 「悔しがってる場合か! 音声編集の前に、自分の股間を見てみろ! ソッチこそモザイクかけまくらないとダメだろうが!」 「いや、晃。そのツッコミも微妙だぞ?」 七五三鬼がさらに視線を下げ股間を見た。 すでに涎をダラダラ垂らす巨大チンポが股間のハッチをこじ開けズルンと放出されていた。 「……あ、ほんとだ……」 「円、俺、やっぱ限界……。こいつ、どこまでもふざけてやがるんだもん……」 「その気持ち、俺も否定しないぜ。きちっとお灸を据えてやったほうが良さそうだ」 出入り口のドアに鍵を掛けると晃も円も寄生体に戻った。 衣服は皮膚に融けて同化し、筋肉がメリメリと肥大。そして表皮が黒化して外骨格になると黒き鎧をまとった昆虫型寄生体、グロセクターとなった。 「かっけー! いやぁ~、やっぱグロセクターってかっけーっすね! 俺、超興奮しちまう~!」 「喜んでるトコ悪いが、あんまりお前が調子に乗ってるからすんげぇムカついてきた。――だから犯す」 晃が素早く背後を取って拘束すると七五三鬼、いやグロセクター・レンの尻穴に指をズブゥと飲み込ませた。 「ヒグゥゥッ!?」 「お前さ、俺たちだけじゃなくて世間を舐めてるだろ? 寄生体にならなくても周りの奴ら全員からそのうち見放されるぞ?」 円はレンの前に立ち股間から突き出ている巨大なイチモツをグッと握る。 「はう゛う゛っ!」 握るとますますレンのチンポは硬くなり、竿に浮き出た血管に沿ってベコベコ吸盤が浮かび上がって来た。 「へぇ、面白い特徴持ってんだな。よし、そんじゃぁ早速頂くとするか――んっ! ぐううっ!」 くるりとレンに背を向けた円は吸盤が吸い付くレンの巨大チンポを自身のアナルへとあてがい、ズブブと飲み込んでいく。 「くふ、うぉおおお! すっげぇ! あ゛ーーーっ! 超いいっ! チンポ融ける! 溶けるぅぅぅーーーっ!」 のけ反って喘ぐレンの背後から晃が指を引き抜き、指よりも遥かに太い三段カリチンポをレンのアナルにグググと挿しこんでいく。 「ぐひぃぃぃーーーっ! か、感じるぅぅーっ! 俺のケツがぁ! ケツの奥がぁっ! ああ! あああ゛っ! 何だこれぇっ! やっべぇ! すげぇーーーっ! きもぢぃぃっ! 気持ぢぃぃっ! 超たまんねぇっ! も、もっとぉ! もっと! もっと奥にぃ! 奥にチンポ欲しいいぃぃーーーーーっ!」 レンが腰を前に出せば円のアナルでチンポがグジュゥと扱かれ、腰を引けば晃のチンポがアナルの奥までジュブブと侵入する。 寄生体になって性感の感度が劇的に上がったとは言え、これほどの快感がいきなり怒涛の如く押し寄せるのは、相手が人間ではなく寄生体だから、なのだろう。 レンが堪らず射精するとケツが強くしまって晃もぶっ放す。 円が絶頂を迎えると円のケツの動きに引きずられてレンがまたザーメンを噴き上げる。 射精(で)てくる精液を手で受けた円が外殻で吸収せずレンの口許に持って行く。 レンは口周りの外殻をバグン! と開いて剥き身の唇を露出させると円が差し出す手のひらの精液をジュルルと吸い取り飲み込んだ。 「ああ! んめぇ! 人間の精液とは違うけど美味いよぉ! なんで? 俺、自分のは美味いと感じなかったのに!」 「寄生体でも個人差ってのがあるんだろう? そら、口ばっかじゃなくてケツにも意識を向けろ。ケツでも俺の精液の味くらい分かるだろう?」 言いながら晃が2発目の精液をグビュルルルと大量に発射。 「どひぃぃ! ほ、本当だぁ! ま、マジでケツの中でも味が分かる! こ、こんなの初めて! ケツん中でも超美味ぇ! クッソ美味ぇよぉぉぉーーーっ!」 「うん? ……初めて?」 ◇ 「ちょ、ちょっともう、無理っす、無理ですって先輩ぃぃ~! 俺、もうキンタマ空ですって! もう精液の在庫は ゼロだってばぁ~!」 晃にフェラチオされているレンが情けない声を出した。 円は、と言うと今度は円がレンの背後に回り、レンのカラダを両手で愛撫しながらケツ穴の出入り口の「挿入するかしないか」ギリギリの位置で亀頭をただくっつけている。 「ま、円先輩も~! 挿入するならズブッとヤってくださいよぉ~! 焦れったくてもう、ケツがグジュグジュって疼きまくって、あああ! む、無理ぃ! も、我慢できないぃぃっ!」 円のチンポを是が非でもケツ穴に迎え入れようとして腰をグッと後ろに引くレン。 しかし、その動きに合わせて円はわざとチンポをずらし、また微妙に触れるか触れないかのギリギリの辺りで亀頭を止める。 「あ゛あ゛あ゛! あぎら先゛輩゛~! まどが先゛輩゛~! ごめんなさいぃぃ! 俺、ちゃんとします! ちゃんとするからぁ! もっと、ううっ! もっと気持ち良くシてくれぇぇぇぇーーっ!」 しゃぶっていた晃がレンのチンポをバッと口から外した。 「それが先輩にお願いする言葉遣いかぁ? ちゃんとするっつってるけど、ちゃんとしてねぇだろうが!」 「ひゃぃぃぃっ! す、すみませ、ン゛ぅん゛っ! もっと、俺を、気持ち良く、んんんっ! させて、くだ、さいぃぃーーっ!」 「……凄ぇ~、凄すぎる~、まさか、こんな短時間で30発も射精させられるとは思ってもみなかった……うう……」 「まだまだ射精できるだろ? 俺や円の精液と唾液も取り込んでいるんだから」 「まったくだ。晃からも俺からもそれ以上の精液を奪いやがったクセにな」 肉体的な疲労ではなく精力や精神的な疲労感によって三体のグロセクターが机を押し退け床で仰向けに伸びていた。 「けど……、こんなに気持ちいいセックスは初めてっす。マジで最高だったっすよぉ~」 「は? ヤり始めてからちょっと気になってたんだが、お前、寄生体になってもうひと月なんだろう? だったらそれなりにしっかりセックスしてる筈じゃねぇの?」 寄生体同士では初めてだとしても、人間と寄生体の組み合わせでも同じくらい気持ち良くなれていただろう? と言う意味で晃が疑問を呈した。 「じ、実は俺、ほとんど一人でオナってばっかで、人間とは精液を飲むくらい、しゃぶってフェラくらいしかしてこなかったんで……、ケツを犯されたのは先輩たちが初めて、でした。 それでも一応、精液を奪った相手には記憶処理とか奴隷化処理はして周囲にバレないよう徹底してたんで……」 「リスク承知で動画を投稿してる割に、その辺だけは奥手っつうか慎重なんだな。随分と矛盾したもんだ」 円が素直に意見を述べた。 「……迫害されるのは困る、っすけど、動画が炎上したって所詮、すぐに飽きられて忘れられるだけっす。アンチだって騒ぎたいから騒ぐだけですし。 だから、俺の動画がもしバズっても、きっとすぐに別の面白いコンテンツに取って代わられるっす。 実際、動画の説明欄に、本物のヴィランになった、って書いてみたところで、誰が信じるんです? 信じたのは、同じグロセクターの先輩たち、だけですよ?」 「……割と寂しい考え方してんだなお前、いや、レン、てさ」 晃がムクリと上半身を起こした。 側で仰向けになっているレンはまだ肩で息をしていた。 円も横になってはいるが、取りあえず二人に合わせて寝転がっているだけのようだ。 「なぁ、円――」 「なんだ?」 「俺、レンの動画撮影に協力する事にしたぜ」 「……分かった」 「反対しないのな?」 「そうだな。反対してほしいのか?」 「いや、反対しないでいい。俺、思ったんだけどさ……やり方さえ工夫すれば、動画を投稿したって何も問題は無いんじゃないか? って」 「……まぁ、それは、そうかもな」 晃は仰向けになって二人のやり取りを聞いていたレンの股間に手を伸ばした。 外殻に覆われた股間を指先でトントンとノックすると、「V字」の溝に沿ってハッチがギュバ! と開放し体内に格納されているチンポがジュビュッ! と突き出てくる。 「ふっ! ううっ!」 チンポを握られたレンが呻いた。 「さて、先輩がひと肌脱いでもいいぜ、てな話を聞いててレンは何か言う事はないのか?」 「あ、あ、…あ……」 「あ?」 「ありがとう! 違う! そうじゃなくて! ありがとうございます! 俺一人じゃ無理な動画もこれで撮れるって訳っすね! いやぁ! 嬉しくってチンポもタマも大復活っす! 先輩! どうすか? もう一回! もう一回30発射精しますんで俺の気持ち、がっつり受け止めてくれませんか?」 レンの巨大陰茎には興奮が高まった証拠とばかりに再びベコベコと吸盤が浮かんでいたのだった。 ◇ 「――なるほどねぇ……。動画の投稿を止めに行くつもりが、逆に投稿する側に回るなんてねぇ」 「晃の行動は時折俺の予測を裏切って、びっくりさせられることも多いんですが……」 コーヒーを口に含んでからカップを置いた賢哉がふふ、と笑った。 「円くんの表情を見れば分かるよ。びっくりさせてくれる晃くんがとっても好きなんだな、って」 座席のそばに置かれたシュロチクの葉が揺れて円の頬にそっと触れた。 触れられた部分をくすぐったそうに撫でた円が向かい側に座る賢哉に頭を下げた。 「お願いします。アイツらの動画を『それっぽく』加工してやってくれませんか?」 「正体や身元がばれないように、だったね?」 「はい。結局アイツは、晃は、レンのやりたい事を、望みを否定したくはなかったんでしょう。晃自身が軽音を諦め、大学生活まで諦めなくちゃダメかも知れない状況になってしまったから……」 「寄生体になっても経済的な問題は解決しないし。せいぜい疲労が残らないから労働時間を上積みできる、って程度でしょう?」 「そうなんですよね。だからバイトのシフトもぎりぎりまで増やして稼いでいますけど、それでも雀の涙程度しか増えないんで……」 実家からの仕送りが途切れずに受け取れる円はバイトもしなくていい上に部活も自由にできる。 しかし、晃はバイトのせいで部にも入れず学費そのものを自前で用意しなくてはならなくなった。 円が伊吹にキレた時の言葉が頭にこびりついている。 『仕送りが切れて金が無いんだったら大学なんか辞めりゃぁいいのさ! 大学は貧乏人風情の来るとこじゃぁ無ぇ!』 言葉は汚いが真理ではある、と円自身も納得し、認めているのだ。 だから余計に腹が立った。伊吹にキレた時、確実に自分自身にもキレていたのだ、と。 「ともあれ、円くんの依頼はもちろんOKだよ! えっと、七五三鬼くんと晃くんが作成した動画をすごくできの良いCGや合成風に作り変るだけなら簡単な事さ!」 「よろしくお願いします、賢哉さん。 それで、この後は?」 「この後?」 賢哉はカフェを見渡してから声を小さくした。 「桐吾が店を閉める前に『食事』をしておくつもり。それから閉店作業の間に売り上げデータをまとめたり、出資してくれた人への返礼品の発送準備とかしちゃおうと思ってる」 桐吾が営むカフェ『モーニングウッド』は銀行からの借り入れだけではなく半分はクラウドファンディングで一般の人々から資金を募って開業に漕ぎつけていた。 「忙しいんですね」 「僕自身、今は無職だしこれぐらいは協力しないと。それに、月に一回は働いてる桐吾を見たいじゃない? ほら見て! ああ、いい! すごくカッコいいよ桐吾~」 カウンターの中に居た桐吾が賢哉の視線を感じてウィンクを返す。 その後はすぐに凛とした顔つきになって慎重にコーヒー豆へ細くお湯を注ぎ入れているのだった。