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鷹取リュウゴ
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パラドキシカル・パラサイト 14

14恋慕  晃たちが精臨山でソロキャンプをしていた白鳥と会った翌朝。 ワゴン車から出てきて大きく伸びをし、明け行く日の光と樹々の香りを胸いっぱいに吸い込む白鳥の前に人間体の七五三鬼が立っていた。 「うをっ!? び、びっくりしたじゃねぇか! ニオイすら立てねぇで朝っぱらから何事だ?」 他の生き物や寄生体と同様に七五三鬼も普段は自然にフェロモンを放ちながら動いているのだが、七五三鬼はこの時、気配と同時にフェロモンの放出を意識的に止めていた。 「お、おはよう、ございます、驚かせてしまって、すみません……」 「おう、おはよう。で? どうした? 忘れ物でもしてたか?」 昨夜、白鳥が紆余曲折を経てグロセクトに寄生され寄生体になるまでの経緯を聞き、その後は白鳥の歓迎会とばかりに4体でケツを犯し合い巨大チンポをしゃぶり合ってセックスを愉しんだ。 そうして日付が変わる時刻を跨いでたっぷりと精液とエロい快感を堪能してからお開きになったのだ。 そんな「出会い」から4時間ほどしか経過していなかった。 小鳥のさえずりとひんやりとした早朝の空気。寄生体になれば睡眠時間は劇的に少なくても大丈夫だとは言え、人間の時の名残からか頭の半分はまだ覚醒し切れていないようなまどろみの時刻。 「白鳥さん、こ、これ、良かったら、どうすか? コーヒーは、嫌い、っすか?」 七五三鬼がおずおずと缶コーヒーを差し出した。 「モーニングコーヒーってやつか? 嫌いじゃないぞ。むしろコーヒーは好物だ」 「ああ、良かった。ここから一番近くの自販機が大学の中だったんで持って来る間にぬるくなっちゃってますが、ど、どうぞ、飲んで、下さい……」 缶コーヒーを渡そうとする七五三鬼の手が震えていた。 「ん? おいおい、寒くて震えてんのか? ――、とりあえず、こっちへ来い」 七五三鬼の手を缶コーヒーごとグッと掴んで引き寄せた白鳥。そのまま七五三鬼を抱きしめた。 「あっ……」 「……お前がなんで俺のトコへ、こんな時間に一人で来たのかなんて、口に出さなくたってさすがに分かっちまうぜ? これだけ近づいたらさすがにフェロモンは隠し切れねぇしな」 「ご、ごめんなさい、白鳥、さん、俺、白鳥さんと、離れたら、凄く不安になって、もっとずっと白鳥さんと一緒にいたくって、 何でこんな気持ちになんのか自分でも良く分からない、初めて一人が怖いって思ってしまって、そんで、気付いたらまた精臨山の、白鳥さんのキャンプ地の手前まで来てて、 でも、さっき別れたばっかで、用も無いのにまた来たら変に思われるんじゃないかって、それも嫌だなって、だから、気配を消して、ニオイで白鳥さんにバレないよう隠して……」 晃や円に向けているいつもの調子の良い顔ではなく、目に涙をためた真剣な表情を七五三鬼は白鳥に向けていた。 「そうやって時間潰して日の出まで待ってた、ってか? ……バカだな。もしも俺が人間のままで結婚でもしてりゃぁ、七五三鬼、お前ぐらいの年の息子がいてもおかしくない、俺はそんなオッサンもいいとこだぜ? なのによぉ……」 七五三鬼も腕を白鳥に回した。抱き合う二人の股間がギチギチに固くなっている。 二人の目が合った。 「……昨夜は俺の話ばかりだったな。次はお前の話を聞きたいんだが、なぁ? 良いだろ? 蓮太郎」 七五三鬼はビクンとカラダを弾ませた。 「お、俺の話なんて、特撮の事とか、アニメや漫画とかばっかで、世間知らずのつまらない話しか出てこない、けど……」 「つまらなくはない。蓮太郎はあの大学の学生でもあるんだろう? 俺なんかと違って凄く頭が良い。勉強ができるって証拠だ。 俺なんかは勉強がてんでダメだから高卒で就職のため田舎から出て来たが、もしも大学へ入っていたらもっとマシな人生を歩んでいたのかもな、と考えちまう時だってある」 「白鳥、さん……」 「最初はいくつか会社を転々として、やっと腰を据えて頑張れていた警備員の仕事に就いて、そうしてあっと言う間に20年経った。 なのにクビを切られ、昔馴染みのダチにも裏切られ、身ぐるみ剥がされ無一文に落ちて……。ロクでも無ぇ人生になっちまって、こんな山ん中で世捨て人みてぇな生活をし始めている。 俺の方こそよっぽどつまんねぇよ。晃や円には言ってなかったが、警備員時代、俺に言い寄って来たのはあの上司だけじゃねぇ。 同僚も、後輩も、他のお偉いさんも、俺のどこが良いのか知らんが何人もの野郎が俺に肉体関係を求めて来やがった。 だが、寄生体になるまで俺はノンケだったし女にしか勃たねぇから男とサカるなんて想像すらできなかった」 「そ、それじゃあ……」 「ずっと、ずっと、俺は拒否し続けていた。すると、次第に俺の周りには深い溝が出来て、俺の居場所はだんだんと狭くなる一方、 あの上司が俺を陥れなくたって俺は限界が来て辞めちまっていただろうな」 「そう、だったんだ……」 「まあ、とは言え、辞めた後にホームレスの経験までさせられるとは思っても見なかったが」 白鳥が七五三鬼の腰に回していた腕を外して前に持って来ると、七五三鬼の顎をクッと引き上げた。 「俺な? こんなイイ年してるがちゃんとした恋愛って経験した事ねぇんだわ。……あ、セックスはあるんだけどな。 まぁ、いわゆる風俗みてぇなもんだった。体だけの関係ってやつで好きとか嫌いとか関係ない相手だった。 今じゃ顔も思い出せねぇほど印象が薄くなっちまっている。 で、だな、その、俺が言いたいのは……、ええと、俺は、蓮太郎のフェロモンの意味を理解して、ちょっと焦ってるのさ」 「焦ってるって?」 七五三鬼が不思議そうな顔をした。そして、聞いてもいないのに饒舌な白鳥に七五三鬼は不安を覚えた。 「焦ってるってのも変な言い方だが、まぁ、なんだ、その……。俺もな、蓮太郎にだけは性欲以外のモノが心の中に生まれて疼くことに気付いちまった。 カラダももちろん疼きまくってんだが、俺の胸の奥の方でザワザワっつうか、妙にドキドキしているのは、もしかして、蓮太郎、お前も一緒、……なのか?」 「マジで!? 一緒! 一緒だよぉ! 俺! 嬉しい! 超嬉しいよぉ~!」 七五三鬼の目から涙が溢れ出した。 「お、おいおい! 泣くなよぉ! こんな時ゃどうすりゃいいんだぁ?」 「ヒック、グスッ、ん、こう言う時は、ヒック、俺を、ヒック、抱きしめてれば、ヒック、良いと思うよ、っへへ」 「そうか? だったらもっといっぱい抱きしめてやろう」 白鳥が両腕に力を込めるよりも先に七五三鬼がガバ! と白鳥の胸に顔をうずめて抱きしめた。 「俺、白鳥さんが好き! すげぇ好き! 昨夜のセックスだけじゃ足りない! ちっとも足りない! もっと俺を犯して!  もっと白鳥さんのチンポで狂わせて! もっともっと、白鳥さんの全部を俺に注ぎ込んで!」 「――泣いたり笑ったり、かと思ったらおねだり三昧……。俺の初めての恋人は随分と賑やかで騒がしいな」 「白鳥さん、俺を、恋人、って……」 「ああ、蓮太郎はもう俺の恋人だろ? え? もしかして俺だけがそう思ってる?」 七五三鬼は返事をする代わりに白鳥の唇と自分の唇とを重ねて舌を絡ませ唾液を交わした。 唾液を交わせばどうなるか? 他の寄生体からの催淫発情成分を受け入れてしまうと、本人の意志とは無関係に興奮状態が惹起され強烈な性欲が湧き起こる。 が、すでに二人は意識的に性欲を昂らせていた。 「白鳥さん、俺、もう、我慢できない……」 七五三鬼の姿が人間から寄生体・グロセクターへ戻っていく。グプ、ズヌグヌと筋肉が肥大し全身がサイズアップしていく。 「そいつはこっちのセリフだ。どんだけ俺を煽れば気が済むんだ?」 白鳥もまた黒くマッチョな昆虫型怪人の姿へと戻っていく。 二体の寄生体の触角がこすれ合った瞬間、互いに甘い電流が走り抜けゾクゾクと全身が震えた。 七五三鬼の巨大吸盤付きチンポに白鳥の血管ボコボコジャイアントコックを揃えて一緒に扱く。 「ああ、すげぇ~、チンポくっつけて扱いてるだけなのに、ケツの奥がジンジンするよぉ!」 「蓮太郎は本当にエロい寄生体だな。ああ、ますますチンポがイラついて来ちまう。先走りでグチュグチュすんのが堪んねぇ~」 扱く手を止め七五三鬼を持ち上げた白鳥は、そのままワゴン車のボンネットに七五三鬼をそっと乗せた。 「なぁ、もう俺だって我慢できねぇ。良いだろ? 蓮太郎の中に俺を挿入れても」 「うん! 白鳥さんのチンポが欲しい! 俺のケツん中を白鳥さんの形にして欲しい!」 左右の脚を拡げて持ち上げた七五三鬼。 その七五三鬼の両脚を腕で支えた白鳥が、網目状の血管をグロテスクに這わせた巨大なチンポを七五三鬼のヒクつくアナルにゆっくりと少しずつ挿入し始めた。 晃や円とサカリ合った時のような荒々しさは微塵も無い思いやりを感じさせる動きだった。 「ん゛ん゛ぅ! 来゛だぁ゛! 白鳥さんのチンポぉ! 俺ん中に! 入って来゛だぁ゛~!」 寄生体のアナルは伸縮自在、ローション不要のつゆだく濡れ濡れオナホールだ。 事前の準備や「慣らし」が無くとも即ハメOKの淫乱ケツマンコながら、白鳥はじっくり確かめるように亀頭を飲み込ませ、七五三鬼の腸壁をかき分けた。 「うぉ、お゛、さ、っきも感じたが、蓮太郎の、アナルだけ、なんか、他の奴らとは、違うんだよな……、んぐ、あ゛ぁ」 「ど、どう違うの……?」 心地よさではなく不安な気持ちを言葉にする七五三鬼。頭部の複眼も少しばかり怯んで見える。 「うぅ、そ、それはな、気持ちイイ、だけじゃなくって、ぐぅ、幸せな、ん゛っ、気分に、はぁ、はぁ、くっ、入れただけなのに、持ってイかれちまいそうなほど、俺のチンポが、喜びやがる……、んだ、……よ゛っ!」 ズブグチュ! グブブジュッ! 白鳥のチンポがグッと押し込まれ根元まで全てが七五三鬼のアナルに収まった。 「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーっ! も゛う゛っ! で、デちゃっ! や゛ら゛ぁ! イグゥッ!」 ――ゴビュ! ブビュルルルッ! 七五三鬼のチンポが絶頂を示す白い体液を噴き上げ胸や顔に一列の筋を作った。 「はは、まだ挿入れただけだってのに、もうイっちまったのかぁ?」 「だ、だって! 嬉しくって! 俺、俺、もう! 白鳥さんの恋人になれて! こうやって白鳥さんのチンポをケツで感じられて! それだけで、もう、感じちゃって、……キまっちゃって! 止められなかったんだ……」 「エッロ……。俺のパートナー、超絶エッロぃぜ。だが、そんなエロい蓮太郎が見られて俺は嬉しい。 俺のチンポにそこまで感じちまうほど淫乱な恋人って、マジ最高だ」 白鳥は挿入したチンポで七五三鬼を支えつつ両手で七五三鬼をまさぐり飛びついた精液を下から舐め取って味わった。 「はぁ、美味ぇ。エサの精液とは違う味だが蓮太郎の精液の味は格別だ。まだまだ射精るだろう?  あるだけ全部、俺に……寄越せ。蓮太郎の全てを俺に、味わわせてくれ」 胸から舐め上がって来た白鳥の舌が首を越え七五三鬼の顎に達した。 七五三鬼は一旦閉じていた顎の外殻をバクンと開放した。現われた七五三鬼の唇に白鳥の唇が再び重なった。 「んむ、ぁむ、んんっ、俺、も、白鳥さ、んの、全部、欲しい、ぅく、よぉ」 「いいぜ、むぐ、んふ、ぁぅ、俺も、んぅ、お前に、全部、くふ、ぅ、もらって、欲しい」 白鳥の腰がゆるやかに前後し始めた。 その動きが七五三鬼だけでなく車にも伝わりユサユサと車体を揺らした。 「っ゛あ! イイッ! ギボヂィィッ! 白゛鳥゛ざん゛! すっげぇ゛! 感゛じる゛ぅ゛ぅ゛!」 「俺も、だっ! んんっ! でも、もう、白鳥さん、じゃぁなくって! 百木(ももき)って、呼んでくれない、か!」 「百木! 百木のチンポが! あひぃ! 俺の! 中で、ま、また大きく、なってる! すっげぇ! すっげぇよぉ! 溶ける! アナルが融けるぅ! 気持ち良過ぎて! アナルが、頭が! ドロドロになっちゃぅよぉぉーーーっ!」  かくして二体の寄生体は精液の生産が追いつかなくなるまでカラダを交わらせていた。 白鳥が、七五三鬼が、寄生体や人間と言う枠を超え、二体の雄同士として何度も心を重ね合った。 ◇  「目の覚めるような色男だな、ありゃぁ」 賢哉のプライベートルームからコーヒーを淹れる為にキッチンへ行く桐吾の背を見ながら白鳥が感心した。 桐吾と賢哉の住むマンションに白鳥を連れて来た七五三鬼は、すでに待っていた晃や円と一緒にリビングからPCのある賢哉のプライベートルームに移動。 大柄の寄生体が5体も集まると無駄な家具が無いとは言え随分手狭になるものの、寄生体・グロセクトについての情報を確認し合うには賢哉の私室が最適なのだ。 「でもでも、白鳥さんもカッコいいじゃないですか~。同じ年頃の人間と比べても随分と若く見えますよ~」 「お世辞じゃないのはニオイで分かるから余計にくすぐったいぜ。グロセクターとしてはどうだ? あんまりお前らと 変わりないだろう?」 賢哉の褒め言葉に照れながら白鳥は自分の黒い外骨格を指さした。 「寄生体の百木だってかっけーっす! 俺、ひと目惚れしたっす!」 「はいはい。七五三鬼はすっかり白鳥さんにゾッコン、でした、と。しかし意外だったな。こんな年上の人が好みだったとはな」 晃の複眼が七五三鬼に向くと七五三鬼は首を傾げた。 「ん~、好みなんかなぁ? 他のオッサンにはちっとも目が行かないっすけど、白鳥さんだけはなんでだか、ずっと見ていたくなるんす。寄生体の時も人間になってる時も」 「白鳥さんはどうなんですか? 七五三鬼の事」 円が肘で白鳥を小突いた。 「んなもん、言わせんなよ。俺のハートはもう蓮太郎のモノだ、なんてよぉ」 恥じらった白鳥が皆に背を向け体育座り(三角座り)になった。 照れる白鳥を見て他の寄生体がプッと噴き出した時、賢哉の部屋に桐吾がコーヒーを淹れたサーバーごと持って戻って来た。 「お待たせ! さすがに6人分のコーヒーをカップに注いでから持って来るのは危ないからね。ミルクや砂糖は……、って、あれ? なんで一人だけ後ろを向いちゃってるんだい?」 「それはね――」 言おうとした賢哉の口を七五三鬼が塞いだ。 「うわ! 賢哉さん! 待って待って! 百木がますます恥ずかしがっちゃう!」 「むぐ! もご、もごご……」 桐吾はその様子を見てニンマリと微笑んだ。 「はっは~ん、何となく察しちゃったぞ? 七五三鬼くんと白鳥さんは、もう深い仲になってたんだ? いやぁ、おめでとう! 精臨山で白鳥さんを発見、いえ、探し当ててからまだ3日しか経ってないけど、心を通じ合える相手ができたなんて素晴らしいね!」 5体の寄生体は戻って来た桐吾のスペースを作るために人間形態になった。 そうして、あらためて白鳥が寄生体になった経緯や互いの自己紹介を行った。 「――しかし、不思議だな。元はあのウェブサイトから始まっているのに、どうしてこんなにもお互いが近いんだろう?」 桐吾が言いたいのは、晃や円のような「誰かの卵」由来では無くダウンロードサイトから実体化したグロセクト由来の 賢哉・七五三鬼・白鳥の三体が同じ街、同じエリアに集中して現われた事を指している。 「不思議だよね。一応僕もサイトの構造を調べてみたけどごくありふれた、見ようと思えば世界中のどこからでも見られる普通のウェブサイトだった。 だから、誰でもどこでもダウンロード可能、スマホでもタブレットでも落とせるんだ。なのに、ダウンロードしたのはたったの三人だけ」 ちなみに白鳥以降、あのグロセクトのデータを落とした人数を示す数に変化は無い、と賢哉は付け足した。 「増やそうと思えば増やせるじゃん。俺らが卵を産卵して蛹にさえしてしまえばそう簡単には融けて死んだりはしないだろうし」 「繁殖欲は確かにあるもんな。精液の確保やセックスの快楽の前に若干うすくなっているが。みんなもそうだろ?」 晃の発言に沿う形で円も述べると全員が肯いた。 ここで白鳥が賢哉に尋ねた。 「なんで愛染(賢哉)は聖(桐吾)を寄生体にしないんだ?」 賢哉は桐吾を、桐吾は賢哉の顔をじっと見つめた。 「う~ん、したくない、訳じゃないんだよ。でも、桐吾はこのままがいいかな、って」 「俺は別に賢哉が望むならなってやっても良いと思っている。見た目はまぁ、怪人そのものっぽいが意識まで完全に 怪人になったりはしないって理解してるしね」 「じゃぁ、この際だから桐吾さんもグロセクターになってもらったら? 賢哉さんがダメなら俺が産卵してあげるっすよ?」 七五三鬼の申し出を賢哉は断った。 「ううん、桐吾はやっぱりこのまま。人間のままにしておいて。必死に隠そうとしてた僕の行動を怪しんでいた時も、 僕がグロセクターと知った時も桐吾は僕を切り捨てるんじゃなくて、逆に僕がどこかへ去ってしまう事を恐れてたんだ。 そこまで僕の事を愛してくれていた桐吾を根本から変えてしまうなんて僕にはできない。いつまでも変わって欲しくないから。 ある意味、これって僕の我がままなんだろうけど、ね」 賢哉のこの言葉で桐吾は寄生体にしない、と他の寄生体たちにもある種の不文律(ルール)が出来上がった。 「話は逸れたけど寄生体・グロセクターになった者がこのエリアに集まっている理由は分からない。偶然なのかどうかさえ僕の手には余るよ」 「変な質問してしまって悪かった。余計な時間を使わせてしまったようだ」 桐吾が頭を下げたので晃も円も、七五三鬼も白鳥までもが「自分も気にはなってたし謝らなくてもいい」と桐吾を押し止めた。 「……さて、白鳥さんとの初顔合わせも済んだことだし、これからどうする?」 セックスするでしょ? と晃の顔には書いてあった。 「待ってくれ晃。ここに来る前、伊吹先輩からのメッセージがお前にも届いてただろ? そろそろ伊吹先輩が溜め込んだ精液(エネルギー)を抜きとってやろうぜ? じゃないと伊吹先輩が破裂して壊れちまう」 晃と円の精液奴隷として日々ラグビー部員を中心に精液とそこに含まれる精エネルギーをせっせと収穫していた伊吹。 蓄えた精エネルギーを漏らさないよう伊吹自身が射精す精液はいわば擬似精液となっており、晃や円のような寄生体が 相手でない限りエネルギーだけはどんどん蓄積してしまうのだ。 「メッセージは一応読んだ。でも、この前ヤリ過ぎないよう調整したばかりなのに溜めるペースがちっとも下がってないじゃん」 「伊吹先輩は俺たちの命令通り搾精相手を減らして頻度を下げようとしてたんだ。だが、伊吹先輩のケツの締め付けにハマっちまった者が部活後列を成しちまってな、 コーチや監督まで伊吹先輩のケツの虜になったもんだから余計に拍車が掛かったんだ。だから、俺らの命令を無視している訳じゃない事だけは認めてやってくれ」 「え? なになに? ラグビー部の伊吹先輩って晃さんや円さんの精液奴隷になってたんすか? ん~、だったら俺も新しく作ってもいいよね? 百木さん」 七五三鬼がネコナデ声で白鳥に甘えた。 「蓮太郎が欲しいってんなら作るのは構わんが、最後までちゃんと面倒をみてやるんだぞ? 興味本位で作ったは良いが、飽きて捨てするような事にだけはならないようにな」 警備員だった白鳥が勤め先だった会社に捨てられ路頭に迷わされた経験が言葉の端々に滲み出ていた。 「こう言うのはどうだい? みんなでその伊吹先輩って人から精エネルギーを頂いてからセックス、ってのは。 破裂しそうなほどパンパンに溜まっているんなら僕にも分けて欲しいかな、って」 「だとすると賢哉。俺は留守番になるんだな?」 「ううん。桐吾には僕が寄生体っぽく見えるスーツを渡すからそれを着て一緒にやろ? ね?」 こんな事もあろうかと、とクローゼットを開いた賢哉はぺらぺらになっているグロセクターの「皮」を取り出し桐吾に渡した。 「晃くんから白鳥さんの頭部をカバーするバイザーの話を聞いて良いヒントになったよ。で、早速僕も作ってみたんだ。 バイザーじゃなくて全身タイツを素材にした『グロセクタースーツ』を」 身に付けても精神干渉の力は使え無いし翅も生えないから空だって飛べないけど、見た目だけはちゃんとグロセクターと瓜二つになれる優れものだよ」 桐吾が背中にスリットの開いた『グロセクタースーツ』を表側にしたり背中側にしたりして感心している。 「んじゃぁ伊吹先輩をこっちに連れて来ますんでちょっとだけ待っててください」 円が腰を浮かして人間から寄生体に戻った。 「俺も手伝う」と晃も寄生体に戻った。 背に翅を生やした二体がリビングの窓から飛び立ったのを三体と一人が見届けた。 「晃くんと円くんて、ホント仲が良いよね。まるで今の僕と桐吾みたいにさ」 賢哉が自慢気に七五三鬼に言う。 「俺と百木さんだって、日は浅いけど超ラブラブなんすから! ねぇ! 百木さんっ!」 矛先を向けられた白鳥が救いを求めるかのように桐吾を見た。 「こう言う時、俺たちにできる返事は一つしかないでしょ? ねぇ、白鳥お兄さん♪」 「ちょ!? 聖まで乗っかってんじゃねぇ! つか、ええい! こうなりゃ言ってやる! ――その通り! 俺と蓮太郎ラブラブの甘々で、チンポを突っ込んだだけで蓮太郎のアナルはトロットロになってトコロテンしちまう程仲が良いんだ!」 「ひぃぃ! 百木さんっ、セックス中でも無いのにそれはぶっちゃけ過ぎだよぉ~!」 今度は七五三鬼が後ろを向いて、真っ赤になっている顔を両手で隠すのだった。

パラドキシカル・パラサイト 14

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