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鷹取リュウゴ
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淫体海月は斑に倣う 10 最終話・登場人物紹介付き 《続・淫水海月は朧に浮かぶ》

第10幕・終幕  新田と石田が新しい住居に引越して、再び俺と千尋だけの生活空間に戻った。 二人を送り出してから数日後、「そいつ」を見つけたのは掃除をしていた時だった。 ベッドの下に掃除機のノズルを突っ込んで再び引き戻すと吸い込みきれず、ズルウと咥えて出て来たモノがあった。 「コイツは……千尋の……、クラゲ人間だった時の――」 掃除機をオフにしてノズルを詰まらせたモノを引き剥がす。 拡げるまでもない。ひと目でそれが何なのかは理解できる。 乳白色のゼラチン質のカラダ。クラゲ人間だった存在の、中身を失い空っぽになった抜け殻。 腋や股間から触手は出ていない。知らなければ白く半透明なゴムとしか思えない全身タイツ状の「皮」。 『ピグマリオンの精巣』を使って新しく創造したカラダに記憶と魂を移してしまうと、何故か元の肉体は骨も筋肉も霧散して外皮だけが残ったのだ。 新田や石田の時にも「クラゲの皮」は残った筈だったが、結局どこに行ったかは分からなくなっていた。 俺の「皮」も千尋の皮と一緒にベッドの下に紛れ込んでいるのかと探ってみたが見つからない。 処分した記憶はないから部屋の中のどこかにはあると思うが。 俺の「皮」はさておき、新田や石田の「皮」よりも厚みが有りラバースーツ状の千尋の「皮」を拡げてみれば、背中に大きな切れ込みがあるのが見えた。 「ああ、そうだった。この裂け目から千尋の新しいカラダがズブーって生えて出て来たんだよな」 裂け目の中に手を突っ込んでみた。 しっとりとした湿り気があり手肌に吸い付いて来るのが気持ちイイ。 引っ張れば柔軟に伸びて全く破れそうに無い。多少無茶な扱いをしても大丈夫そうだ。 「着れんのかな? 着たらまたクラゲ人間になれちまう、とか?」 クラゲ人間だった時の快感を思い出した。思い出したら無性に試してみたくなった。 部屋着を脱ぎTシャツとボクブリを外して全裸に。 「皮」の裂け目から両腕を差し込み「皮」の腕の部分をたぐって指先までしっかりと着こんでみた。 「おほ、すげぇ。ちゃんと着れるじゃん。んじゃぁ下半身も、っと」 裂け目へ片足ずつ入れて「皮」のチンポに俺のチンポを合わせて嵌めてやる。着てみれば「皮」はキツいことも余る事も無く、ジャストフィットサイズだ。 最後に、頭部を潜らせて「皮」の中に収めれば――「ん゛っ! ふおおおっ! んぐぅぅっ!」 俺の神経と「皮」とが繋がった。 瞬間、俺は理解した。 この「皮」はまだ生きている。ただの「皮」なんかじゃないのだ。 「皮」越しなのに目は見えるし、カラダに触れれば直に触った感覚がある。 チンポの包皮に浮かんでいる血管はドクドクと拍動して俺のチンポと一体になっている。 そして、チンポとタマの少し下にはクラゲの千尋にしか無かった「女性器」がピクピク震えて粘着く液を垂らしているではないか。 「くぁ、あ゛あ゛! ダメだ! 超、ムラムラする!」 昂る性欲。マグマのように熱くのたうつ衝動が俺の意識をエロく押し倒す。 「セックスしてぇ! 精液飲みてぇ! ケツが! マンコが! ジンジン疼いて堪んねぇ~!」 腋にグッと力を入れればビュルルとクラゲの触手が伸びる。 チンポを握って扱いてやれば、ぐんぐんデカくなっちまって俺の両手でも握りきれない超巨根に。 下腹部にある斑な青紫色の部分が異様に蠢いている。そういやコイツは何なんだ? 千尋のクラゲのこの部分は、ここにある器官は一体何なのだ? 「――俺の『皮』が見当たらないなって思ってたけど、そっか、兄貴が持ってたんだね」 振り返ると千尋だった。 「ち、千尋……」 「どう? 俺の『皮』は。兄貴の皮と違って俺のは身に付けたらマンコの気持ち良さも味わえるんだよ? 凄いでしょ?」 「お前……、もしかして俺の……」 「へへっ。その通り。兄貴の『皮』は俺が持ってる」 「千尋が?」 「うん。兄貴の『皮』を活用させてもらってるよ。透明って便利だね」 「便利? 活用?」 俺の問いが聞こえていなかったのか、それとも敢えて聞かなかったのか、千尋は引き続き自分の事を語る。 「……俺さ、兄貴にまだ言ってない事がもう一つあるんだ」 千尋が一瞬、八木の顔と重なった。 思わず目をこすって再び見れば千尋はやはり千尋だ。 「八木先生と取り引きした、って言ってたでしょ?」 「あ、ああ、でも八木は応じなかったんだろう?」 俺のカラダを人間に戻してくれと頼みに行った千尋に、八木は「できない。それに、出来たとしても再び癌が進行してたちまち死んでしまうから無理だ」と反論した。 そして千尋も俺が死ぬくらいならクラゲ人間のままでも仕方がない、と納得して八木の元から去ろうとしたが、無理矢理八木にクラゲを植え付けられたのだ、と。 「……それは、その通りなんだけど、取り引きはそれだけじゃないんだよ」 「それだけじゃない?」 「黙っていてごめんね兄貴。俺がクラゲ化の処置を受けた後、あの研究センターから離れる時に八木先生はさ、 もしも使いたくなったら俺に使ったのと同じクラゲ組織の入った注射液を使いなさい、って渡してくれたんだ」 「まさか、その注射液を誰かに使ったのか?」 千尋は首を左右に振った。 「ううん。そいつは兄貴が踏んでしまって壊れたから、誰にも使ってない」 「だったら――」 「だけど渡されたのは一つじゃないんだ。『一つ目』の注射液は兄貴が壊したから無くなっちゃったけど、『二つ目』の注射液を俺はもらっていたんだ」 「……そ、そっちの『二つ目』はどうしたんだ?」 俺は心臓が高鳴るのを抑えられなくなっていた。嫌な予感をひしひしと感じていたからだ。 「……使った」 「だ、誰にだ?」 千尋が不敵にニヤリと笑った。かと思うと急に寂し気な、切ない視線を俺に向けた。 「せっかく兄貴のお陰で新しいカラダを手に入れられて、それですっかり満足できれば良かったんだけど、……ダメだった。 俺は、クラゲ人間だった時の気持ち良さが忘れられない。だから……」 ふっと息を飲んでカラダに力を込めた千尋が瞬時に肥大し服が弾け飛んだ! かと思うと千尋の皮膚が乳白色に変化し全身が柔らかなゼラチン質になっていく! 「お、お前っ! どうして!?」   ギチギチ肥大するカラダは2mを超え、股間から聳えるチンポがヒトの脚レベルの巨大さになって亀頭たるや人間の頭サイズもあるモンスターコックに! 「ぅ゛う゛、ぅがぁ、ぐふぅ、っぎ、ぅお、おお、んぉ゛! お゛お゛ぉんんん゛っ!」 そんな超巨大チンポのすぐ後ろには縦に割れたヴァギナがベコベコと音を立てて穿たれ、太ももにまでダラダラと淫液を伝わせる。 「んっふぅぅ、ふぅぅぅ……、ふぅぅ、どう、かな? カラダのサイズがだいぶ大きくなっちゃうけど、今の俺は『皮』を着た兄貴と一緒だ」 下腹部には乳白色の表皮を通して青紫色の色素が斑に浮かび、微妙に拡大と収縮を繰り返している。 「あ、ここ? この部分はお腹の中の新たな睾丸。精液を製造する器官が作られているんだ。だから兄貴よりも大量に射精し続けられるんだ。 でも、兄貴も『皮』を着て俺と同じになってるからいっぱい射精出来ると思う」 「んな事よりもお前、その姿は……」 千尋はまた首を左右に振った。 「いいんだ。良いんだよ兄貴。俺が望んだ事なんだ。俺が――」 「気持ち良さを忘れられないからって! なんでまたクラゲに逆戻りなんか望んだんだよ!」 「兄貴とずっと、これからも、もっともっと生き続けたい、もっといっぱいセックスしたい、兄貴と一つになってキモチイイ事をシていたい。 八木先生はさ、そんな俺の希望を聞き入れてくれてさ、兄貴が獲って来た新種のクラゲを使えばその望みが叶うかも知れない、だから俺で試させてくれないか、って言ったんだ。 もし俺が成功したらもうこれ以上、人体実験はしないって約束してくれたし」 千尋の触手がビュル! と伸びて俺を拘束した。 「ぐあ! ち、千尋っ!?」 「迷っていたんだけど、兄貴が俺の『皮』を着てくれて打ち明ける決意が固まったよ。ねぇ兄貴? 兄貴にも今はマンコがあるでしょう? そのマンコに精液をいくら注いでも妊娠しないしクラゲの卵もできない。だけどさ、絶頂してメスイキすればするほど細胞が若返って寿命が延びる、つまり不老不死に近づけるんだ」 「な、なんだって!?」 「そう言う特徴のあるクラゲを素材にした、って八木先生は言ってたよ。ほんと、マジ凄いよね? 獲って来た兄貴はそんなクラゲだって知っていたの?」 「いや、知らない。未知の、新種のクラゲとしか依頼されて――、ぐぅっ! がっあぁ!」 「そうなんだ。まぁ、知らなくたって問題は無いんだけどね」 千尋の触手がギリギリと俺を締めつけた。 「本当にごめんね兄貴。俺、兄貴が末期の癌で、明日をも知れぬ命だなんてずっと何も知らなかった。後で知って凄く怖くなった。 今だってそう。俺の目の前から兄貴が居なくなったら俺、絶対に耐えられない。だって俺は、兄貴が大好きだから!」 ダラダラと涎のような先走りを吐く千尋の巨大チンポが俺のマンコに狙いを定めている! ダメだ!  そんな巨大なブツが入る訳ないだろう! 止めろ! 一旦冷静になるんだ! 千尋! 「ううん、冷静になんてなれない。それに、そのマンコの事は兄貴よりも詳しいんだ。これぐらい大きくたってちゃんと挿入出来るし気持ち良く感じられるからさ、まずは大人しく俺に犯されてよ兄貴。 大丈夫。必ずイかせてあげるから。何度も、何度もイってさ、ずっと俺と生きて行こうよ。ね? 兄貴ももう俺無しじゃ生きられないようにしてあげる。愛してる、愛してるよ、兄貴」 なんとか千尋の触手から逃れようともがくものの触手の力は凄まじく強力に俺を掴んで離してはくれない。 しかも、俺が出しかけた触手を悉く封じた上で強制「駅弁」スタイルにて俺のマンコを貫こうとする! 伸ばした触手で俺のカラダを持ち上げ、別の触手で両脚をぐっと拡げヴァギナを露わにする。 「ばっ! や、止めろ! 千尋ぉ! 待てって! んなの無理だっ! そこまでバカデカいのは入らねぇって!」 「俺さ、兄貴の『皮』を着てみて分かった事があってさ、それは、着ている間はちゃんとクラゲ人間と同じ状態になってるって事なんだ。 だから兄貴もさ、力を抜けばもっと柔らかくなるんだよ? クラゲのようにグニャグニャにさ」 ――ズッ! ヌブッ、グプ! 「んがぁぁぁああーーーーーーっ!」 千尋のどデカい亀頭が俺の股座に触れ、『皮』によって生じたヴァギナの割れ目へ強引に押し入ろうとする! 「はが! がぁ! や゛! だ、め゛だって! んひぎ! くあ、ああああああーーーーーっ!」 「ほら、息を吐いて、力を抜いてよ兄貴。じゃないと、痛い思いをするよ? もう、しょうがないなぁ」 千尋が新たな触手を伸ばし俺のチンポとアナルを刺激し始めた! 「んんんんんんぅぅぅぅぉぉおおおおおおおおおおおおおーーーーーっ!」 「っへへ、良い感じに力みが取れて来たね。んじゃぁ、そろそろ全部挿入していっちゃおうかなぁ」 ぐ、ぐぐ、っと亀頭が俺のヴァギナをこじ開ける。 ギチギチとカラダが悲鳴を上げる。『皮』を着てクラゲ人間状態だとしてもこの大質量を受けきれるのか?  強い危機感を感じて身構えてしまう。だけど、だけれども、俺のチンポとアナルが千尋の触手にグチュグチュと弄られれば甘く蕩ける快感によって意識を、恐怖を散らされる。 すると再び機を逃すまいと千尋の亀頭がズズズと潜り込んで来る。潜り込んで、も、ぐり、込んで―――― 「っ!  ――――!!」 「ん゛~! 入ったよ兄貴! ほら、ちゃんと全部! 亀頭だけだけど兄貴のマンコがしっかり俺のチンポを咥え込んでる! ああ~、兄貴の締め付けが、凄い、いいよぉぉ~!」 異様な光景だった。 俺の腹が亀頭のカタチをそのまんま浮かべて盛り上がっている。 激しい圧迫感。だけど切れて出血すらしないのはクラゲの『皮』を着ているお陰だ。 「さあ兄貴! 俺のチンポを堪能してよ! マンコの快感を感じてイって欲しい! マンコがダメになったらケツでイカせてあげるからさ!  ずっとずっと俺は兄貴と一緒だよ! 兄貴はずっと俺のモノだから! 毎日メスイキさせてあげる! 若返らせてあげる!  兄貴は永遠に俺の兄貴だよ! 永遠に俺と一緒だよぉ!」 ◇  それから3か月ほどたったある日。 海外からのニュースの中に八木の名を見つけた。 【パリの生物研究所に在籍していた邦人研究員による違法な人体実験が発覚。事態を重く見た当局は事情聴取の上、立件を視野に捜査を進めている】 そんなニュースを見た後、八木総合病院へ行ってみると同じ敷地にある先端医療技術研究センターは「諸事情により」閉鎖されていた。 八木の親である院長は火消しに躍起になっているらしいが、ヒトの口に戸は建てられない。悪事千里を走る、とはよく言ったもので、急激に来院する患者が減っていると伝わってきた。 この分ではもしも八木が予想よりも早く日本に戻って来られても研究は続けられないだろう。 患者を救うためと言いながら自身の好奇心を満たすためだけの歪なエゴイストになり果てていた八木が、心から罪を認めて償っていく事を切に、切に願う。 またいつか、友と呼べる日が来ることを願う。 ◇  「ココが本当の、店舗の所在地なんですか」 新たな勤め先となった地球科学研究所への入所祝いの飲み会で遅くなった帰り道。 それほど飲んだつもりは無かったが乗るべきバスを間違えてしまった。 うたた寝から目が覚めると終点の一つ手前で周囲は見知らぬ住宅地。 折り返すバスに乗り直そうと大慌てでバスを降りれば、道の向こう側に見覚えのある木のドアがあった。 「いらっしゃいませ。おや? こんな時間にいらっしゃるなんて珍しいですね」 雑貨屋のオーナーが銀色の仮面越しにやさしい笑みを俺に向ける。 と、そこへ上半身裸で髪がまだ乾ききっていない、いかにも風呂から上がったばかりな出で立ちの常連客が店の奥からぬっと現われた。 「おや? お客さん、来てたんだ。こいつは失礼」 すぐにまた店の奥へと引き返した。 「……オーナーと彼がそう言う関係なのは前に来た時にしっかり理解できてますけど、いや、なんかもう、濡れ場よりも生々しいモノを目にした気分ですよ」 「遼平さんてば、隣の自宅でシャワーを浴びてから来て下さったら良かったんですけど、今日は帰って来るなり私に会いたいって聞かないもんですから。 まぁ、海里さんにとっての千尋さんと同じで、そう言う所も愛らしく見えるんですけどね」 「何て言うか、千尋は少々、いえ、かなり俺が思ってたよりも、その……」 「大人しい人かと思いきや、情熱的な人だった、ですか?」 「そう、そんな感じです。オーナーは何でもお見通しですね」 「何でもは見通せませんよ。そうかなぁ、と思った事を口にしたまでです」 カウンターに座り出されたコーヒーを飲みながら俺の方から「ちょっと聞いて下さいよ」と近況を語った。 「――ほほぉ、なるほど。千尋さんは再びクラゲ人間になり、海里さんと永遠の時間を生きるべく激しい愛をぶつけて来る、と」 言い方が微妙に修飾されているもののまさにその通りだ。 「セックスもどちらかと言うと受け身だったのが今じゃすっかり俺を攻めるばっかりで。なんだかもうどっちが兄貴なんだか、って感じですよ」 「いいじゃありませんか。それだけ海里さんを慕っている証拠なんですから」 「それはそうかも知れませんがねぇ。あんまりヘヴィな言葉がポンポン出てくるもんだから千尋がどうかしちまったのかと、なんて言うか、闇落ちしたのかと不安になります」 「でも、そうじゃないんでしょう?」 「そりゃ、まぁ……」 銀仮面のオーナーが仮面を外した。 「私だって蜘蛛の怪人の正体を隠して人間を模倣しているんですが、どこまできちんと倣(なら)えているのかは自分では分からないものです。 千尋さんだって同じじゃないでしょうか? 弟としての千尋さん、男としての千尋さん、恋人としての千尋さん、どんな時でも千尋さんはより強く海里さんに『愛される存在』になろうとしているだけかも知れません。 もちろんそれらは無意識で行われているんでしょう。外野の私が言うのも何ですが、最後まで信じて良いと思いますよ?」 オーナーの言いたい事はよく分かる。 ただ、俺が千尋のカラダを思って悩み、奮闘していた事は何だったのか。 「俺がしたことは無駄だったんでしょうか?」 「そんな事はありません。たとえ人間ではなく再びクラゲ人間になられたとしても、その選択をするには海里さんの働きがあってこそ、ですから」 もう一度『ピグマリオンの精巣』を使って人間のカラダを創造するか? と聞いてみたが千尋はこれを拒否した。 「俺、このカラダが気に入っているんだ。それにさ、もうこれ以上クラゲ化が進行する事は無い気がする。『ピグマリオンの精巣』でカラダを新しく換えたお陰だよ。 ともかく、俺は兄貴を悦ばせるためにもこのカラダでいたいんだ」 千尋の言葉をオーナーに伝えた。 「千尋さんは健気ですねぇ」 「健気っていうのかな?」 「もちろんです。ピュアな愛情です。利他の精神って、とても美しい人間の情操の一つですよね」 「……一つ、お願いしていいですか?」 「何でしょう? 私にできる事でしたら」 「失礼に思われたなら先に謝らせて頂きますけど、怪人として先輩であるオーナーから千尋に色々と『教育』してやって欲しいんです」 「教育、ですか?」 「はい。俺以外の男を襲う時はもっと慎重にしろ、とか、いかなる時でもクラゲ人間だと悟られないようにしろ、とか」 「そのぶんですと海里さんからすでに色々と注文している感じですね?」 「ええ。でも、やっぱり関係が近いからこそどこか腰が引けていると言うか、強く言えず甘くなるみたいで、アイツの腹ん中のどこまで落とし込めているのか自信が無くて、心許無いんですよ」 「そこまで心配はいらないと思いますが――」 ここで俺のスマホに着信が入った。 誰からか、なんて画面を見なくたって分かる。 『兄貴! こんな時間までどこに行ってるんだよ! 遅くなるならなるって前もって言ってくれないと! 心配させたお仕置きとして20回はメスイキさせちゃうからね! 覚悟しておいてよ!』 メスイキと聞いただけで俺の股間がジワっと熱くなる。 「あんまり声が大きいから私、聞くつもりじゃ無かったですけど聞こえちゃいました」 「あはは、で・す・よ・ねぇ~」 「しかし、メスイキですか? 中々羨ましいお言葉」 「俺をメスイキさせたら寿命が延びるとか、若返るってんで最近はこんなセックスばかりですよ」 オーナーはニコリと笑みを浮かべ、そして――「申し訳ありませんが、今日はコーヒーのお代わりはございません。この後私も遼平さんとあれこれイイコトして愉しみたいものですから。 このところ私の依頼で色々と動いて下さった事に対してのお礼も兼ねておりますので二人きりでじっくり、心ゆくまで――」  自宅に戻ると千尋が抱き付きながら俺に『皮』を渡す。 巨大なチンポを挿入するには『皮』を着て俺もクラゲ人間にならないといけないからだ。 全身が乳白色の『皮』に包まれると、俺は千尋と同じく会陰にヴァギナを備えた異形のクラゲ人間へと変化する。 この頃の千尋は、いつか俺に見せた狂気的な愛情はなりを潜め、外国語の勉強や翻訳業の仕事探しに頑張っている。 ただ、夜になると性欲がカラダを支配し、肉体の形を淫らなクラゲへと変え、再び俺への「思い」が溢れ出す。 執拗に俺を満たし千尋自身も満たされたいとの肉欲が、千尋のカラダを大きく怒張させる。 千尋の下腹部にある青みを帯びた斑(まだら)な紫色、増築された新たな精巣が心臓のように脈打っている。 巨大なチンポがビクビク震え、千尋の欲望の生々しさを俺に示す。 そんな千尋を目にした俺も期待と興奮で唾液が溢れてしまう。今やすっかり千尋のチンポの虜になっているからだ。 慰昆堂のオーナーには千尋の変貌を嘆くような素振りを見せたが実際は異なっている。 もしかしたら乳白色のクラゲの『皮』を着てクラゲの淫体を再び模倣しようとする俺の方こそ、どこかおかしいのかも知れない。 「俺をメスイキさせたら、今度は千尋もイかせて欲しい、だろう?」 腰を前に突き出しチンポを右手で引き寄せ左手でヴァギナの裂け目をヌチュウと拡げて見せつける。 千尋の視線が俺の二つの性器に突き刺さる。 見てるだけなのに千尋の息は荒くなり、千尋のチンポとヴァギナから透明な粘液がどんどん溢れ出てくる。 チンポを求めているのは『皮』を着た俺だけじゃなく千尋も、なのだ。 与えた分だけ、20回、俺をメスイキさせたら同じ数、いや、それ以上、千尋のヴァギナも絶頂を味わいたいと俺のチンポを貪るつもりだろう。 揺らめくクラゲの触手が俺の触手と絡み合う。ぬるつく粘液を吐きながら伸びる、増える、俺と千尋が触手の「繭」の中にうずもれる。 聞こえるのは粘液と粘液が擦れ合う粘着質な音だけ。 潮の匂いがする卑猥な体液が俺と千尋の間でヌチャヌチャと響く。 やがて、丸い、月のように丸い触手の「繭」に包まれ俺たちは、俺たちだけの世界に――――   終 ○登場人物○ 長月 海里 34歳  海洋調査員  千尋の義兄。長月は実母の旧姓。 進行性の癌に冒され余命宣告を受けていたが、八木の処置を受けクラゲ人間になった代わりに死を免れる。              若宮 千尋 24歳  会社員 10年前、父親の再婚によって年の離れた兄・海里ができた。 兄がクラゲ人間と知った上で自身の気持ちを改めて確かめ、兄に恋心を打ち明けた。 八木 実 34歳   医師 海里の古い友人。高校時代の千尋の家庭教師。 先端医療技術研究センターでクラゲの再生力を活かした治療法を研究している。 石田・新田(17~18歳) 八木の手でくらげ男になっていた少年。研究室にて飼われている。 松原・後藤 八木が主宰する先端医療技術研究センターの警備員 須崎 遼平(すざき りょうへい) 32歳  総合電子機器メーカーに勤務するサラリーマン 「雲居 アラン」のパートナー。移転した慰昆堂の隣のマンションに住んでいる。 かつては慰昆堂の客の一人だったが、とある出来事によって巨大なペニスとマッチョなボディを手に入れた。 (詳しくはPIXIVに投稿済みの小説『糸』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8869045 をご参照ください) 雲居 アラン 年齢不詳 雑貨店・慰昆堂のオーナー。正体は蜘蛛怪人。人面マスクで普段は人間に擬態している。 怪人とは言え人畜無害だったが、須崎との出会いにより人間に対し更にフレンドリーになった。 売っている物はオーナーが買い集めた物だけでは無く、人づてに流れて来たモノも多い。趣味は人間観察。

Comments

感想コメントありがとうございます! 主人公を兄にして例の雑貨屋とも絡めた今作を気に入ってくださって嬉しいです。 書き始めはなかなか難しい気がしていましたので無事に最後まで書き切れて一安心しています。 尻尾の続編はさらに難所が多くて微妙に遅れてしまいそうです。 もしかしたら他の続編か、新規を先に上げるかも。 またよろしければ次回作も応援をよろしくお願いします!

鷹取リュウゴ

続編完結、おめでとうございます。 大ボリュームの全10話で、2ヶ月間本当に楽しく読ませていただきました! 慰昆堂とのクロス等の新要素が盛り盛りな以外にも、途中で「人間化で終わりではなく、もしやこれは、鷹取さんお得意の皮モノパターン…?」と思っていたら再クラゲ化とのハイブリッドで、しかも永遠の恋人ルートという豪華さで大興奮でした。 石田・新田ペアのその後など、更に続きが気になる部分も多々ありますが、そちらはひとまず自分で妄想して楽しませていただきますね(笑) 他にもまだまだ書きたい感想があるので、そちらはまた今度メッセージで送らせてください。 次は「尻尾」の番だと聞いておりますので、そちらも「どんな物語を書いてくださるかなぁ」「大ボリュームだと良いなぁ」等々と期待を膨らませつつ、楽しみにしております!!

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