3開き直りの朝 実験による検証と言う名の大量射精オナニーが終わった。 と言うか無理矢理ストップさせた。 汗だくになった肌が急激に冷えて凍えてきてしまったからだ。 4月とは言え日が落ちれば気温は急激に下がって冬同様の寒さになる。 このままオナニーを続けていたら風邪を引くに違いない。 盛大なくしゃみが3回連続で出た辺りで我に返り、名残の3発を今回のファイナル射精として締めくくる。 「昼の明るい時間にクローゼットで謎の段ボール箱を発見してからずっとオナってた? もうすっかり夜じゃん! 何時間シコってんだよ俺!」 ざっくり6時間だ、6時間。 ほぼ休みなく扱き、しゃぶり、舐め続け、そして精液を発射しまくった。 結局上の口じゃ無く手の「口」にばかり飲ませていたけど飲み込んだ精液はどこに流れて消えたのか? 腕にも肩にもむくみは無く何の違和感も無い。 「謎だ。不思議過ぎる……」 でも、そのお陰でティッシュを無駄に減らす事も無く後始末だってタオル一枚で済むレベルに収まっている。 荒い呼吸と脈拍が平静と変わりなくなった頃、俺は右手から手袋を外した。 ピタッと継ぎ目無く肌とフィットしているにもかかわらず外す時もスムーズで、摘まんで外し終えるとひとりでにペロンと皺が伸び元の形に戻る。 「マジでお手入れ不要っぽいな……」 あんなに激しくチンポを扱こうが、先走りまみれ、精液まみれになっていようが手袋は何も無かったかのように「元通り」だ。 匂いすら感じないとは恐れ入る。 「魔法か? 現実にこんなの見ちまったら魔法って言わないと理解が追いつかないな」 手袋を見つめて思案してる間にチンポは縮んで元の15cmへ。左手の「口」も消えて何も無くなっている。 「外したら効果は全部消えるんだ。なら安心だな。使用後も40cmマラのままじゃ外に出れねぇし」 大いに安堵した。同時に一抹の寂しさを感じた。 手袋があれば再び精液の味もチンポの気持ち良さも、フェラをした時の充足感も体感できるのは分かっているのに。 「賢者タイム? にしては……」 頭からチンポが離れない。 手袋を外して効果は全て消えた筈なのに、チロチロと炭火のように腹の奥底で欲望の火が消えずに求めている。 まだまだチンポを咥えたくて、もっと精液を飲みたくて、ひもじく餓えて咽喉が乾いている――みたいな。 「おまけに俺……」 ここから先を言葉にすれば「確定」してしまいそうな気がして口を閉じた。 待ってくれ。こんなのおかしい。 確かにチンポの事ばっか考えてはいるが俺が好きなのは女。セックスしたい相手も女。 なぁ、そうだろ? 手袋の奇妙な効果に混乱して惑わされてるだけだろう? いくら気持ち良かったから、美味かったからって、わずか一日で男に目覚めちまうなんて有り得ないだろう? 手袋の「魔法」に驚き過ぎて頭が変になっちまってるんだ。そうに違いない。 飯食って一晩寝ればすっかり落ち着いて「あれは結局何だったんだろ?」ってなるんだ。そうだろう? なぁ? そうだよな? 思考の着地点を見届けるのが怖くなった俺はひとまず考えるのやめにして、シャワーで汗を流し終えるとさっさと夕飯を済ませてベッドに潜り込んだ。 カラダは何ともなかったけれど精神的には相当疲れていたみたいで、目を閉じるとあっけなく眠りの世界へと落ちていった。 ◇ 「うわわわっ!?」 時計のアラームより早く目が覚めた。理由は一つ。夢の中で男たちに犯され俺もまた盛大に達していたからだ。 「くっそぉ~。チンポの事ばっか考えてたからあんな夢を見ちまったんだ、ちくしょう~」 ムカついて見せるものの内心は違う。むしろ全くの逆。顔のぼやけた誰とも知らぬ逞しい男に抱きしめられ、チンポを弄られアンアン喘ぐ俺に「俺」は興奮してたし、俺もまた男の股間に顔をうずめ、そいつのチンポを美味そうにトロ顔でしゃぶってアへっていた。 行為前後の流れや細かい部分は夢らしい意味不明な展開で辻褄の合わないものだけど、男同士でセックスしてたってのはかなり具体的に脳内再生可能。 相手は複数。その中にダチや先輩まで居たような気がしたが―― 「ダメだダメだ。そっから先は思い出さなくって良いぞ俺。所詮は夢なんだから気にしなけりゃ何にもないんだぞ――うん?」 頭を振って雑念を払う。と、同時に股間で異様なヌルヌル感が。もしかして……。 ――グチュニュ……、ヌリュゥ 「うーわ! 夢精って!? 昨日あんだけ抜いたってのに! ったく、何やってんだよ俺は……」 ハーパンの上まで滲んだ精液染みから独特なニオイが立ち昇る。 そのニオイを嗅いだらゴクリと咽喉が音を立てた。 ヌチャるボクブリごとハーパンを下ろせば股間には湯気を立てた我が愚息がピクピク揺れて屹立してやがる。 生臭い粘液で濡れたイチモツに雑念が払えないどころか鼻息が荒くなっちまって―― 「……あ~、くっそ~。やっぱそうか。そうなのか~。俺、すっかり――」 一晩しっかり寝て、起きて、それでも頭はチンポの事でいっぱい。嗅いだ精液の匂いも美味そうに感じられる。 見知らぬモザイク処理野郎とまぐわっていた夢は俺の願望がそのまんま現れていただけだったようで。 確かめるため俺はスマホで男の裸画像をググッて表示させた。 「っはう! いいっ! この筋肉にこのモッコリ……。超エロい……パンツの中、見てみてぇ……」 「ゲ」と「イ」を並べてさらに検索。引っかかった動画サイトで男同士のハードなホモセックスを視聴。 「うわ、スゲェ~。ケツにぶち込んでめっちゃ腰振ってんの気持ち良さそう~。掘られてる男も喘ぎまくってるし、 痛くないのかな? ケツってそんに感じるもんなのかな? だったら俺も――」 ぶち込んでみてぇ! 別の動画ではマッチョ兄貴がチンポを扱きながらケツ穴に極太ディルドを抜き挿ししてアナニーしている。 また別の動画では真ん中の男が左右に立つ男から口もケツもチンポで猛烈に犯され精液をぶっかけられていた。 俺のチンポは萎えるどころかますます堅く勃起し、我慢汁をタラタラ吐き出しては興奮の強さを素直に示している。 ――これはもう、そういう事だよな。認めるしかない。 「俺、女じゃなくて男に……」 スマホから届く野郎の喘ぎ声にもチンポはビクビク反応している。 俺は息を大きく吐いて、冷静さを残している脳の何割かで状況を整理する。 「そっかそっか、俺、男に興奮しちゃう男だったのか。う~ん、そうだったのか~」 念押しで、今までオカズに使ってたブクマ済みのアダルトサイトに飛び、お気に入りの女の子を表示させた。 チンポは急速に萎えて小さくなり、火照ったカラダの熱気も瞬時に冷めてしまう。 「なるほど。女もイケるんじゃなくて、女じゃイケなくなってんのか。男しかダメになってんだ、俺」 自分の事は自分が一番理解しているつもりだったけど、案外そうじゃないんだな。分かってなかったんだ。 「……よし! こっからまた仕切り直してスタートだ! 大学デビューと同時に男同士の世界の扉が開くってのは何らかの縁があったってこった!」 切り替えの早さは俺の長所。 くよくよ考えたって何にも生まれはしない。諸々踏まえた上でどうするかが大事だ。 手にしたカードを今までずっと逆さまに持っていただけ。「俺」そのものに変わりはない。 「実際に女の子と付き合い始めていざセックスするって時に『やっぱ俺、女は無理でした!』ってなるよりはマシ。 もしもそんな状況になったら地獄っすよ地獄~」 そうだ。 前向きに考えるんだ。 モテモテでハッピーな大学生活を送るんだろう? エッチもいっぱいしてエンジョイするんだろう? ホモだろうが何だろうが暗い陰キャになるよか明るく楽しく過ごせば良いだけ。 女じゃ無く男にモテるよう頑張るぞ! 「とは言え、具体的にどう頑張ったら楽しくやれんのかは分かってないけどな! あっはっは!」 生まれてこの方18年。精通して性に目覚めてからならおよそ7年。その7年のほとんどをノンケだと思って過ごして来た。 同じ男でイケると気付いたのは兆候が出始めた昨日を含めてもわずか二日。だから生まれたばかりの赤子同然で右も左も分からない、……って言う程の情弱ではない。 自分には関係の無い他人事だと思ってちゃんとは見てこなかっただけで、ネットを通して男同士の性についての知識はそれなりに入っていた。 だからガチガチに身構える必要なんか無い。朝日を浴びる桜だってこんなにも春を謳歌してるじゃないか。 「って、気楽に考えてみたけど不安も同じくらいあるんよなぁ~。夢で男とセックスしてたからって、リアルでも出来るのか?」 女に、じゃなくて男にモテる方法までは知らない。 知り合いの中に男が好きな奴の情報も無い。 そもそも出会い方も分からない。男だけの合コンなんてあるのか? 「取りあえず、ぐちょぐちょのハーパンとパンツを洗濯機に放り込んで、萎えないコイツを大人しくさせてやらないと……っ、ふぇ、へ、へ、……、へっくしょぉぉーーーいっ!」 また盛大にくしゃみをぶっ放す。 俺は観念してチンポを扱きながらシャワーを浴びる事にしたのだった。