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鷹取リュウゴ
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変新性活 インモラルグローブ 16

16人間か、人間じゃないとか 怜音さんまでやって来るなんて。 元鬼先輩とダグラスの正体を確かめづらくなってしまった。 二人がやって来る直前にはやっぱり聞かないでおくべきか、との考えに傾いていたとは言え、だ。 健一はやたらと怜音さんにハグされメロメロになっちまってるし。 「あ、あのっ! 睦月の親友の健一って言います! 俺も怜音さんの大ファンなんです! よろしくお願いします!」 なんて満面の笑みで握手求めちゃってさぁ。 俺の前でそんな風にされるとちょっと嫉妬してしまうじゃないか。 いつものように切り替えられず心がモヤっていると、怜音さんてば爆弾発言をぶちかましてくれた。 「あっ! 鬼クンと淫魔クンだ! 初めまして! 睦月クンと友達になった怜音って言います! 君たちよりちょーっとお兄さんだけど仲良くしてね!」 元鬼先輩とダグラスは互いをじっと見つめてから怜音さんをじっと睨んだ。言葉を発する事無く。 目からビームが放たれているみたいに怜音さんをめっちゃ警戒してる。 「ん? ……あ~、もしかして言っちゃたのマズかった?」 てへぺろ怜音さん、かっこかわいいなぁ、もう。ほんとに素敵な人だよ。今度こそあとでサインもらおっと。 「淫魔? 先輩が鬼ってのはともかくダグラスは悪魔じゃなくて淫魔なのか?」 俺のつぶやきに二人の視線が俺に向けられた。 その目には警戒ではなく疑問が浮かんでいる。 しまった。怜音さんに見惚れて俺までうっかり発言してんじゃんか。 「……ダグラスよ、お前、バラしたのか?」 「いんやぁ? 俺、なんも言ってないって」 「おおっと? まだ内緒だったんだ? ごめんねー! 余計なこと口走っちゃって!」 ぺこりと頭を下げる怜音さん。その仕草もナイスですよ! なーんて怜音さんを称賛している場合じゃない。 微妙な空気と沈黙を破ったのはダグラスだった。 「レオン? どして俺の正体知ったんだ?」 ダグラスって年上の人でも敬語じゃないのか。 「そりゃこの目で見たからね。そもそも君が淫魔だって断定したのは俺じゃなくて俺の超優秀なマネージャーちゃんだけど」 元鬼先輩が俺に聞いた。 「……睦月も、知っていたのか?」 「まぁ、そうですね……。ちょっと言いづらいんですがシコってる時に見えたっつうかなんつうか」 「あれ? 睦月って俺から聞いたから知ったんじゃないのか?」 やっちまった! 健一に聞いたからって設定だったの、すっかり忘れてた! 「横山から聞いた? どう言う事だ?」 先輩の視線が刺さる。ダグラスもいつもの軽薄な笑みを浮かべず真顔だ。 「あのねぇ、睦月クンも他のキミたちも、いくら友達でも隠し事を暴くなんてのはよくないんだよ?」 怜音さんの言葉に俺も含めて全員が「アンタのせいじゃねーか!」とツッコんだ。 「おおう、タイミングばっちり揃ったねー」 ◇  「ここまで来たら互いに秘密を明かさなくちゃダメじゃないんじゃない?」 そう言った怜音さんは俺の右手を見つめていた。 それが何を意味しているか。分からない訳がない。 ただ、どうして俺が『コピーグローブ』をパクッていると確信したのかが分からない。怜音さんはどうやって俺の秘密を知ったんだ? 「てな訳で、言い出しっぺの俺から話すね。元々俺は睦月クンに『コピーグローブ』について知っているか、あるいは持っているかを確かめに来たのだけど――」 口火を切ったのは怜音さんだった。 2年前までこの部屋に住んでいた事から始まり、不思議な縁でとある不思議な雑貨店から不思議な手袋、つまり『コピーグローブ』をゲットしたものの新居に引っ越した時に片方を失ってしまった――「ヒマさえあれば部屋中の隅から隅まで徹底的に探してさぁ。 それでも発見できないもんだから徐々に範囲を拡げて、一度でも立ち寄った記憶の在る場所なんかにも足を運んでほうぼう探してたって訳」 で、ようやく元居たアパートに残ってるのでは? と考え旧居であるこの部屋に来た。 そして、今現在の住人である俺に不思議な手袋の事を聞いてみた。 「睦月クン、嘘つくの下手だから一発で持ってる、って気付いたよ? ついでに言うと『コピーグローブ』の力で睦月クンがどんな風に使ってるのも見せてもらったし」 「どんな風に見た、んすか?」 『コピーグローブ』にはカラダの部位をコピーしたりペーストする効果はあっても、記憶まで見る効果なんて無い筈。 部位の成長とか性感帯化の効果なんかも無関係だろう。 「簡単だよ? 睦月クンに俺の意識をコピペして一時的に睦月クンのカラダを乗っ取ったんだ」 「乗っ取った!?」そんなコピペが可能なのか!? 「うんうん。乗っ取れるから。今度誰かで試してごらんよ? 乗っ取ってる時、自分のカラダは眠っちゃって無防備になるのが玉に瑕、だけどね」 ここでダグラスと元鬼先輩がほぼ同じ言葉を怜音さんに告げた。 「『コピーグローブ』が何なのかも気にはなるが、俺(たち二人)の正体をどうして知ったのか話してくれ」 「じゃぁ先にそっちから話そうか。要点だけかいつまんで言うと、睦月クンのカラダを乗っ取って記憶をチェックさせてもらったその後にさ、ここの前の公園で元鬼クンたちが鬼や淫魔になってセックスしているのを見たから、だよ」 「ダグラスとのオナニーを見られてた!?」 「ちゃんと気配遮断してたのにな」 ダグラスってば気配遮断なんてスキルが使えるのか。 つうか、ダグラスとのオナニー、って何なんすか先輩。それってもはやセックスじゃないすか? 敢えて本人の名誉のためツッコミはしませんけど。 「俺のマネージャーちゃんが超優秀でさ、相手が気配遮断してようともお構いなしで見破っちゃうんだよ。んでもってマネージャーちゃんのお陰で俺も君たちの姿がバッチリ見えちゃってたのさ――以上、俺の種明かし、でした!」 なら次は俺の番だな、と元鬼先輩が姿勢を正した。 「元鬼の家のご先祖様は鬼だ、ってな言い伝えがあってな。実際、角っぽいのが生えていた人物もいたらしい。だが、俺の親父も爺さんもそんなモノは生えていない。 古文書を紐解けば300年くらい前の先祖が鬼の力を使って山賊を退けた、みたいな伝説が残っちゃいるが、ぶっちゃけ大袈裟に盛ったおとぎ話だろう、と――」 先輩自身もそう思っていた。 だけど、一年前、二十歳の誕生日を迎えた夜、先輩の中の鬼の血が目覚め、姿だけじゃなく神通力まで使える本物の「鬼」に変身した。300年ぶりの先祖返りって事らしい。 「本当に驚いた。同時に、誰にも知られてはいけないとも思った。特に、睦月、お前には……。怖がられるのも、嫌われるのも嫌だったしな」 もしかして先輩って俺の事、好きなのかな? カラダも顔も普通で、見どころなんか何も無いのに。 先輩の後を受けダグラスが話しだした。 「光も音も封じて人間には気取られない筈の気配遮断がなんで破られてたのかは後で聞きたいんだけど、ともかく、レオンの言う通り俺は淫魔。ダグラスって人間のカラダに宿ってるんだ」 人間としてのダグラスは2年ほど前に亡くなっているらしい。 「だが、ダグラスは死ぬ前に淫魔、つまり俺の召喚に成功した。死んだ後はカラダを自由にしていいが、代わりにダグラスの両親を悲しませないよう、親があの世にいくまでは人間のふりを、息子のふりを続けて欲しい、ってな」 淫魔はダグラスと契約し、ダグラスの死後も人間として振る舞っている。 「まぁ、俺らにとっちゃ5~60年程度はあっという間だし? それぐらいの間は契約通り人間らしくやれんだけど、とは言え精液をいただかねぇと精気がカラッカラに渇いて干乾びちまう。 だもんで、乾き切る前にダグラスの親にはバレる心配の無い日本にまで精液求めてはるばるスペインからやって来たって訳。表向きは日本の大学に進学するってな理由を作ってまでな」 「淫魔としての名はなんて言うんだ?」 淫魔界ってどんなところなのかも聞いてみたいけど。本名は別にあるんだよな? 「うっ!、そいつは言えねぇ。悪いがダグラスとの契約で言えねぇようになっている。少なくともコイツの両親がこの世からオサラバするまでは言いたくても言えない」 じゃぁ最後は俺が、と話そうとしたらダグラスが遮った。 「ちょっと待った。ムツキはオナニー中に俺らの正体に気付いた上で、あらためてケンイチから俺らの正体について聞いた、だよな?」 「まぁ、そうなるなぁ」 「じゃぁケンイチもレオンと一緒に居たのか? それとも――」 いや、健一が怜音さんと会ったのは今しがた。さっきのあの浮かれっぷりはマジだと思う。 俺は健一をじっと見つめた。 お前はどうして淫魔の気配遮断を破って二人を「視る」事が出来たんだ? 健一は俺を見、そしてダグラスや元鬼先輩を見、怜音さんを見た。 「健一クンは一緒じゃ無かったよ?」怜音さんは小首を傾げている。そのポーズ、ナイス。かわいいしめちゃカッコイイ。 「……う~、こんな、こんな所で、俺まで人間じゃないってバレちまうとか。ぶっちゃけもらい事故じゃん」 「健一? おま、人間じゃない?」 健一は肯いた。否定しなかった。 「ああ。……俺は、狼男なんだ。覚醒したのは高校の卒業式の次の日だった」 「狼男!?」

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