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鷹取リュウゴ
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変新性活 インモラルグローブ  番外編・登場人物

番外編・流れ流れて元の部屋 『コピーグローブ』の片方が怜音からどうやって睦月に流れて行ったのかを語らせて欲しい。 その前に怜音は『コピーグローブ』を手に入れてから人気モデル兼ユーチューバーとして名が知られるようになるまでをさらっと述べておこう。  銀仮面の店主がいる雑貨店から戻った怜音は訝りながらも不思議な効果を謳う手袋を手に嵌め使い方や効果を知った。 睦月の時と同じように自分の目や口や、ペニスをコピーして自身にペーストしては大きく成長させてオナッてみたり、或いは満員電車で人と密着するのを利用して見知らぬ誰かのペニスをコピーしてみたり。 「やっぱり布越しでもちゃんと触れていればコピーできなくはないんだ」 手袋の効果を色々試して行くうちに怜音は知った。 カラダの部位には「意識」まで含まれているのだと。 だから怜音は自分の意識をコピーして上司にペーストした。 上司はその瞬間、上書きされもう一人の「怜音」になった。 手袋を外せば効果は切れる。切れたら上司にその間の記憶は無い。 怜音は無論、即座に退職を願い出て許しを得た。「怜音」になった上司も怜音も心からの安堵を深い息で表した。 次に怜音は新しい仕事を慎重に検討した。 だが、どの企業も前の職場を思い出させてしまうため会社に勤める選択肢は最後の最後だと視点を変えた。 となると起業かフリーランス。 資金は無い。となると起業ではなくフリーランスで仕事を取って行くしかない。 めぼしい資格は無い。際立った特技も無い。 久々に会った友人が怜音に告げた。「お前、見た目は良いんだからいっそモデルとか俳優になっちゃえば?」 無責任な事を言うなよな、と返す怜音ではあったがファッションに興味があった頃の自分を思い出した。 ただ、28歳にもなっている「出遅れ男」にモデルとしての需要などあるのだろうか? 物は試し。 ブラックな企業に戻る訳にはいかない。 失うモノなど何も無い。 怜音は業界について調べ、無名でも応募できるものには片っ端から応募し、ある有名なメディアの「超」がつくような狭き門を突破し、書類選考からオーディションにまで残る事が出来た。 「ここでしくじる訳にはいかない。せめて次につながるよう審査員の印象に残らなければ」 オーディション当日、控え室で待つ怜音は並み居る年若い「先輩」であり、有名男性モデルである一人一人に挨拶して回った。 「初めまして、怜音と申します。よろしくお願いします」 誰一人怜音にやさしい言葉をかける者はいない。皆がライバルなのだ。金と意地とプライドが全員の唇を固く結んでいる。 それでも負けるものかと怜音は握手を求め、逞しいながらスタイルの良い部分を『触れ』ては褒め称え、目元や口元を涼しく見せる美容法なども可能な限り『触れ』て尋ね回った。 「――俺にさわんじぇねぇ!」 などと怒る者もいたが、審査スタッフが見ている前で大きく声を荒げる者はほとんどいない。 素人みたいなヤツがうろついていてなんだか鬱陶しいな、くらいの反応で済んだ。 挨拶を済ませた怜音は自分の審査が始まる前にトイレの個室へと入った。 手には前もって『コピーグローブ』が装着されていた。 今や手袋には10人以上のスーパーモデルからコピーした『美点』が重層的に貼り付いている。 裸になった怜音はメイクでもするかのように手袋を嵌めた手を目元、口元、鼻先、顎、首筋に押しつけて行く。 次いで腕や胸、腹部に腰、太もも、脛へと。 基本は怜音のカタチを残しつつ調整してはコピーした各部をペーストして顔もカラダも丸ごとメイクアップ。 髪は艶やかに、肌は滑らかに、わずかな染みやホクロまで無くなり頭の先から足の爪先まで磨き抜かれた肉体美に。 そうして出来上がったのはセクシーな男の色気や匂い立つフェロモンを感じさせる美青年と化した怜音。 ダンディな渋みの中にも妖しい魅力を湛えるアラサーの新・怜音が完成した。 「え!? アイツってさっきの素人か?」 「あそこまでイケてた奴だったの?」 数人の若い先輩モデルたちと共に控え室からオーディション会場となっている部屋へと移動する。 その途中で聞こえる声に怜音は手ごたえを感じた。 審査の結果、怜音は最終選考を勝ち抜いた3人の中の一人に選ばれた。 「ポーズや表情はど素人。全然ダメだけど最も優れた逸材に違いない」 審査員の全員が同じようなコメントを怜音に投げた。 この後、怜音の元にはいくつかのモデル事務所からお誘いが来たものの、怜音はそのすべてを断った。 組織に属して動くのはもうこりごりなのだ、とは言わず、やんわりと「逃げ」た。 こうして怜音はモデルデビューを果たしたのだが、収入が安定するまでにはそれなりに波乱があった。 またユーチューブで配信するようになったきっかけも別にあるのだが、ここではひとまず割愛させてもらおう。 『コピーグローブ』の力をつかって顔や肉体をメイクアップした怜音。 厳しい最終審査に残った事実。一度「箔がつく」と今までの実績は無くとも仕事がちらほらと舞い込んで来た。 怜音はその間にファッションの勉強をし直し、ポーズや表情作りの基礎を学び、残っていた財産全てをエステや美容に注ぎ込んだ。 その甲斐あって、怜音は手袋を使わない「素」のままでもモデルとして人目を惹くレベルに達した。 ファッションやポーズの勉強がてら復習の意味も込めて動画を配信するとファンが一気に増えて行った。 そうして名が売れれば売れる程に仕事も増え、収入もまた大きくなった。 モデルデビューして3か月後、今は睦月が住んでいるアパートから都心のセキュリティマンションへと引っ越した。 敏腕マネージャー・斉木の進言と、一部のファンがアパートの前にて出待ちし始めた事がきっかけだった。 未使用だった『コピーグローブ』の片方を失ったのはこの頃だ。 すでに忙しい身となっていた怜音は荷造りと荷解きの両方において引越し業者の手を借りた。 ただ、大事な大事な未使用の『コピーグローブ』だけは自身で厳重に梱包した。 封筒に入れ、さらには薄手のボックスに入れてから念入りに段ボールの中にしまった。 不運だったのは一年で最も引越しの多い繁忙期だったことだろう。 荷物がそれほど多くない怜音の家財は同じ日に請け負っていた別の客の引越し荷物と同じトラックに乗せられた。 もう一つ不運だったのは引越しの当日、春先特有の濃霧が発生していた事だった。 ◇  さて次は、実際に引っ越し荷物の運送を担った者の証言を聞いてみよう。 一般貨物も引越し輸送も行う中堅運送会社「わくらば運送」勤務、『因果沼 飛鳥(いんがぬま あすか)』35歳。 「あ~、あの日は確か、一件目も二件目も単身引越しだったもんで、俺ともう一人のバイトで作業をしとったんですわ」 一件目、怜音の引越し荷物を積んでから移動。二件目、別アパートの学生の荷物を積み込んだ。 つまり、午前中に二件分の荷をトラックに乗せ、午後にはそれらを依頼人の新住所へ下ろさなくてはならない。 本来なら詰み込んだ荷物が混ざらないよう間仕切りやカーゴパレットを使用するのが基本。 しかし、双方とも単身引越しのため荷数が少ないので因果沼は手を抜いて、――もとい、効率を重視してしまった。 「どっちも遠距離じゃないしちゃんと離して置いてたんで、大丈夫だと思ったんだ」 濃霧により速度は控え目、前の車に追突せぬよう距離を取って走行していた。 だから余計に路面への注意がおろそかになっていた。 ぼんやり見える前方車両のタイヤは路面の異物を踏まずに通り抜けた。 わくらば運送のトラックは、異物に片方のタイヤを乗り上げてしまった。 「いやぁ、あん時は驚いたよ。まさか路上にブロックが落ちてるとは思わないだろ? 横転しちまうんじゃないかと本当に焦った」 弾むように大きく傾いたトラックは、幸いなことに横転は免れた。他の車両にも接触しないで済んだ。 助手席のバイト青年も目を白黒させていたものの無事だと知れて安堵した。 ただし、傾きが大きかったため荷台の荷物はかなりの乱れ様であった。 特に、ガムテープが剥がれて内容物が漏れている箱を見た瞬間、因果沼もバイト青年も大きなため息を禁じ得なかった。 壊れているモノが無いかを確かめながら大急ぎでこぼれた内容品を箱に戻して行く二人。 ひと目見て損傷が激しい段ボールは予備に積んでいた新しい段ボールに入れ替える。届けた時にクレームを受けないように。 目論見通り怜音ももう一件の客も文句ひとつ無く荷物を受け取り、荷台に残留物が無い事を確認してからわくらば運送の営業所へと帰還した。 ただし一つだけ、トラックの中に残っていたモノがあったのだ。 それは怜音が厳重に梱包した筈の『コピーグローブ』 段ボール箱から飛び出し、薄い箱からも抜け出し、手袋を封入している薄い紙袋だけになった状態で傷んでしまった箱の内側の隙間に挟まって置き去りになっていた。 「まったく気付かなかった。ちゃんと全部丸ごと移し替えられた、と思っていたんだが、やっぱあれだ。気持ちに焦りがあったって証拠だな」 ともあれ、片方の『コピーグローブ』を挟み込んだ段ボール箱は畳まれて因果沼が乗るトラックの荷台に置き去りのまま。 見た目が傷んだとはいえすぐに捨てなかったのは再利用には問題無かったため。 届いた荷物の中に『コピーグローブ』が入っていないと怜音が気付いたのはそれから三日後。 いつも使っているもう片方があった事と、仕事が立て込んでいて荷解きが遅れたため気付くのに時間がかかってしまった。 気が付いてすぐ、怜音はわくらば運送に連絡を入れた。 「まさかトラックに一つだけ残ってた、なんて思いもよらなかったですからねぇ。申し訳ないけどウチは間違いなく全てお届けしました、と言い切ってしまいましたよ」 怜音は全ての荷物を開いてつぶさに確かめ探し回ったのは言うまでもない。 しかし、そこに無いモノが出てくるはずもない。 それからおよそ2年弱。 怜音の後に入居した元鬼が学生寮に移り、さらにその部屋を睦月が使う事になったのだが、睦月が実家からアパートに引っ越す時に利用した業者は「わくらば運送」、担当したのは因果沼であった。 そろそろお分かりだろうか? この時も因果沼はミスを犯した。 別の学生の荷物を睦月の部屋へ一つ多く運び込んでしまったのだ。 しかも、その荷物を収めた段ボール箱には『コピーグローブ』が挟まっていた。別の学生は引越し費用を格安で抑える為、使用済みの段ボール箱を「リユース(再使用)可」、としていたためだ。 『コピーグローブ』が挟まっているなど思いもよらずに集めたアダルトグッズを詰め込み終えてガムテープで封をする。 そして因果沼のトラックに乗せられた名前も内容品も書かれていない段ボール箱は、運送中の因果沼のトラックの中で睦月の荷物に紛れ込んだ。 集めたアダルトグッズをひと箱分失った学生は悔しく思いながらも因果沼に苦情を言わなかった。 内容品が内容品だっただけに恥ずかしくて言い出せなかったのだ。 最後に、因果沼と一緒に働いていたバイト青年の言葉を聞いておこう。 「あ、俺っすか? 因果沼さんから空いてるスペースにじゃんじゃん放り込んでおけ、って言われたんでその通りにしたっすよ? はい? クローゼットすか? ええ。ひと箱置かせてもらったっす。重くない箱でしたんでてっきり衣料品だと思ったんすけど そこに置いちゃまずかったんすかね?」 こうして、『コピーグローブ』のもう片方は睦月の手へ渡ったのだった。 登場人物紹介 中原 睦月 18歳 大学1年 大学に通うため隣県から大学のある街へ引越して一人暮らしを開始。 住まいは中学・高校時代の先輩にあたる「元鬼 創一郎」がそれまで借りていた部屋を睦月に引き継ぐカタチになった。 また家財道具なども元鬼が残したモノを使い回せる事になり費用がかなり抑えられた。 お得に新生活をスタートさせて間もない睦月がクロ―ゼットの奥に見つけたのは元鬼が置き忘れて行ったらしいエロいアイテムがいくつも収められていた箱だった。 もしかしたら忘れた事に気付いて回収しに来るかも知れないと考えた睦月はエロアイテムは見なかったことにし元通り箱に戻して行く。 その時、箱の底に一枚の怪しい袋を発見。 オナニーのオカズに使える写真でも入っていれば良いなと期待して開けてみれば出て来たのは「片手」ぶんのみの薄いゴム手袋だった。 『コピーグローブ』と銘打たれたゴム手袋に酷くガッカリしたものの「ゴム手オナニーに使ってやる!」と、睦月は手袋を手に嵌める。 それが睦月に新たな目覚めと新たな学生「性活」をもたらすなどとは知らずに……。 元鬼 創一郎 21 大学3年 睦月が中一の時に転校してきた睦月の先輩。バスケットボール部に所属していた。 身長190cmのイケメンでスポーツ万能、学業成績も秀でており女の子にも持てる傑物。 しかし、浮ついた噂一つ無く高校~大学へと進学を果たし大学3年になってからはいよいよ就活に本腰をいれようとしていた。 そんな折、後輩の睦月が同じ大学に合格し通学に便利な場所へ引越しを検討していると聞いたため、睦月に使っていた自分の部屋を明け渡す事を提案した。 「先輩はどうするんすか? 俺に部屋をプレゼントしてどこに住むんですか?」 「俺は大学の寮に入る。ようやく順番待ちの空きが出たらしいからな。それに、就活に備えてバイトを減らさなくちゃなんねぇタイミングでもあったし。寮なら家賃がほぼゼロになるし逃す手は無いだろ?」 元鬼は奨学生として大学に入学したものの運悪く学生寮の抽選には漏れ民間のアパートを借りざるを得なかったのだ。 睦月に満面の笑みを浮かべる元鬼だったがその笑顔の裏には日増しに膨らむ欲望を抑え切れなくなりそうだ、との切実な思いも含まれていた。 と言うのも、元鬼のカラダには鬼の血が脈々と受け継がれ、性的な刺激や欲望があまりにも強くなると鬼に変身してしまう体質だとの秘密を抱えていたからであった。 横山 健一 18歳 大学1年 睦月の高校からの友人。大学進学と母親の再婚(引越し)が重なり念願の一人暮らしをスタートさせた。 住まいや生活資金は母の再婚相手の裕福な義父から援助してもらっている。 ようやくじっくりエッチな遊びが楽しめるぞと期待に胸も股間も膨らませている。 高校時代に陸上選手として華々しく活躍していたため入学式当日から猛烈な勧誘の嵐に遭っている。 実は狼男だった健一。高校の卒業式の次の日に狼男に覚醒した。 健一自身もすっかり忘れていたが、中学生最後の春休みの頃、オナニー出来る場所を探している内に地元の人間であれば誰も近づかない不気味な森にまで入り込んでいた。 ここならば、と健一はオナニーを開始したのだが気付いたら森の外に立っていた。 ただ、狼男に覚醒後、森の中で別の狼男から自身のアナルへ大量に種付けされていた様子をハッキリと思い出す事が出来た。 ちなみに、高校生になった健一が我慢し切れずトイレでたびたび抜いてしまうようになった要因の一つが狼男の因子を体内に宿した影響によるものだった。 この頃から健一は一段と性欲が強くなり、狼男にふさわしい肉体へと変化し始めていたのだ。 ダグラス=田山=ベルトラン 20歳? 大学1年  スペイン人の父と日本人の母を親に持つハーフ。10歳の頃にスペインに渡り二十歳の今年、日本に戻って来た。 両親は今もスペインで生活している。 と、言うのは人間としての履歴で、実は人間のふりをしている淫魔(インキュバス) 人間としてのダグラスは今から2年前、脳にできた悪性の腫瘍により余命宣告を受けた後三か月後に死亡していた。 ただ、亡くなる直前たまたま召喚された淫魔とダグラスは契約。 カラダを提供する代わりに両親が他界するまでは人として生きて心配をかけないで欲しいと頼まれた。 人より遥かに長く生きるインキュバスにとって数十年などほんの一瞬。 淫魔はダグラスの頼みを受け入れ、ダグラスが死んだ後もカラダを引き継ぎ人間・ダグラスとして振る舞っている。 ――のだが、 ずっと人間として生活していると精気が枯れてしまうため本格的に補充していく必要に迫られていた。 間宮 剛健 大学4年 22歳 睦月と同じ大学の先輩。ボディビル&フィットネス部に所属するフィジーク選手。 バランスの取れたマッチョ美ボディの持ち主。 一年ほど前からペニスが謎の肥大開始。デカ過ぎてフィジークコンテストで着用するサーフパンツを穿いても裾からはみ出るほどに。 他の部員からコンテスト出場辞退を求められていたが主人公のチンポをペーストされる事によって「ひとまず」どうにかなった。 急激にチンポサイズや筋肉量が増えたのは一年前にネットショップで買ったサプリメントによるもので、サプリには筋肉のみならずペニスを異常に成長させるオークと言う魔族の精液が素材として使用されていたためだった。 ただ、オークそのものに覚醒する確率はほぼゼロの筈だったが……。 因果沼 飛鳥 35歳 運送業 引越しも引き受けている運送会社「わくらば運送」に勤務する配送スタッフ。 睦月の単身引越しの時に荷物を運送した担当者。荷降ろしの時、別の客へ渡すべき段ボール箱を睦月の部屋に運び入れてしまう。 因果沼本人に配送ミスの意識は全く無いとは言え睦月に『コピーグローブ』を渡した原因となった人物。 夏美 怜音 30歳 モデル兼ユーチューバー  2年前、上司のパワハラにより心身共に困憊していた怜音はある日の会社帰りに不思議な雑貨屋に辿り着く。   どうやって雑貨屋に来たのか今一つ思い出せないまま店内に入り、出された美味しいコーヒーを飲みながら抱えている悩みを雑貨屋の銀仮面を付けるオーナーに打ち明けた。 怜音の身の上を全て聞いたオーナーが勧めたのはピンク色の袋に収まった『コピーグローブ』なる左右一対のアイテム。 「これは稀代の錬金術師がインキュバスの精液とピンクスライムの組織を繊維にして作り出した面白い手袋なんです。夏美さんでしたらお役に立てるかと。それに、このアイテムも夏美さんの元に行きたがってるみたいですし」 コピーグローブの効果を聞き心底驚きはしたものの、悄然とする怜音を励まそうとするあまり「嘘も方便」でこのような戯れを聞かせているのだろう、と怜音は受け止めていた。 「信じるも信じないも、また使うも使わないもご自由ですが、念のため一つ注意を。 こちらのアイテム、ひと袋に一枚ずつ入って二枚一組なんですが、普通の手袋のように左右同時に使うと喧嘩して効果が消えるそうなので使う時は一枚だけ、片方だけにしてください」 使い方や詳しい説明は手袋と一緒に封入されているペーパーをご覧いただいたら大丈夫ですよ、と口許に微笑を湛えながら銀仮面越しの笑顔で怜音に告げる。 雑貨屋を出て自宅に戻ったもののどのようにして電車やバスを乗り継いだのかがまたもや判然としない。 ハッキリしているのは雑貨屋で渡された『コピーグローブ』が確かに存在している事。 ヤケクソな気持ちのまま手袋を嵌めた怜音。 しかし、謳われた効果を実感し、男同士の快感に目覚めてからは生活が一変。 ブラックな会社を無事退職し、フリーランスのモデルへと転身した怜音はセクシーな兄貴系ユーチューバーとしても高い人気と多くのチャンネル登録者を得て忙しくも充実した日々を送るようになった。 そんな怜音の唯一の心残りは引越しの際に失われたもう片方の『コピーグローブ』だった。 フリーランスでも収入の心配がなくなった頃、セキュリティ面で不安のあるアパートから防犯がしっかりしているハイグレードマンションへ転居する事にしたのだが、未開封で未使用のまま予備として保管していたもう片方の『コピーグローブ』を、配送を依頼した運送会社のスタッフが紛失。 問い合わせたものの「残留ナシ」であると自身でもトラックの荷台を確認した上、顔出し名前出しで仕事を行う身となったため風評を恐れた怜音は運送会社への追及を諦めざるを得なかった。 ただ、それでも誰かの手に渡って悪用されてはマズいと責任を感じ、仕事の合間を縫ってもう片方の行方を探し続けていた。 怜音にその意図が無いとは言え睦月に『コピーグローブ』を授ける事になった人物の一人である。 斉木 比呂 26歳? 『夏美 怜音』のマネージャー 撮影スタジオへの送り迎えやスケジュール調整だけではなく、動画の編集や配信の補助まで受け持つ敏腕マネージャー。 また、肉便器として怜音の性処理をも引き受けている。 実は地球人ではなくスライムタイプの異星人。 地上に墜落した折に表面の7割が焼け焦げてしまっていたが、怜音の皮膚を「コピペ」した救急処置によって命を救われた。 その後、皮膜や形状を改めて若い地球人風に調整し、今の「斉木 比呂」となった。

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