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鷹取リュウゴ
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童貞同盟は如何にして瓦解したか 第三話

3変貌 第一回童貞膜検査のあった日から二日後。 ショウが学校を休んだ。 皆勤賞が狙える健康そのものなショウにしては珍しいを通り越して一大事だ。 昼休み、ショウのスマホにメッセじゃなく電話をしてみれば『あの、あ、あれだ、インフルエンザかも。伝染るかも知れないから絶対に見舞いに来るんじゃねえぞ』といつもと変わらぬ声で話す。 「こんな時期にインフル? オナニーし過ぎて腹を壊したただけなんじゃないのか?」 タケルがそんな風に言うのはこの前の童貞膜検査の時に、精力が上がってオナニーの頻度が増えた的なショウの発言を思い出したからだろう。 「ん~、そういう理由でならまだ良いんだけど……」 「マジでインフルだ、ってトキオは思ってんのか? まぁ、そっちの方も無くは無いけど」 「なぁ、タケル。正直に話して欲しい。お前もさ、精液の量増えただろ?」 「えっ? ……あぁ、よく分かったな。一回のオナニーでいつもの2倍、いや3倍は出るようになった。てか、も? って事はトキオも?」 やはり。 俺も同じだ、と答えると能天気なタケルもさすがに何かを察して押し黙った。 「俺もタケルもショウと同じ流れを辿ってるような気がするんだよ。精液の量だけじゃなくてオナニーの回数も。 最近、前以上にムラムラしやすくなってるだろ?」 「そういやそうだな。ショウも急な絶倫ぶりに戸惑ってたみたいだったが」 「ああ。でさ、その理由ってやっぱ童貞膜しか考えられないんだよな」 「おう。やっぱそれか」 俺が口にするまでも無くタケルも同じ考えに至っていたようだ。 「だから、ショウが休んだ本当の理由は聞いてみなきゃ分からないけど、ショウの身に起きる事はこれから俺とタケルにも起こりそうな気がするんだ」 「ショウだけ先に『チェリーエイド』を使ったんだもんな。妙な反応だって先に出るのは当然か」 俺と話す時のタケルはとても察しが良い。会話する相手に合わせるのがすこぶる上手いのだ。 「ああ。だからこそショウの状況をちゃんと知っておいた方が良いと思う。打てる対策が打てなくなる前に」 タケルが裏表のない笑顔を俺に向けた。 「トキオはやっぱ賢いな。勉強は俺らと変わんねぇけど、なんて言うかさ、物事を色んな方向から見る目を持ってるよ。 俺、トキオのそう言うトコ素直に尊敬しちまう」 「褒めたって何も出ねぇって」 俺こそタケルのようにまっすぐ人を褒められる部分は羨ましいし尊敬している。 ちな、ショウに関して言えば、少し短絡的というか先走って物事にあたってしまう所はあるけど、困ったときは必ず駆けつけてくれる優しさや情の厚さ、迷っている時の突破力なんかは三人の中で一番しっかりと持っている奴なのだ。 慎重で臆病な俺にとっちゃタケルもショウも自慢のダチなのだ。 ま、本人の前ではこんな事絶対に言わないけど。 言えば有頂天になってマウント取って来るようなウザさがあるのも知っているし。 「――で? どうする?」 タケルの顔にも不安が浮かんでいる。 「ショウと話す。今、どんな異変が起きているのかも知りたいし、その異変が俺とタケルにも起こる可能性を相談したい。 だから、放課後ショウに会いに行って見ようかと思う」 「ぜってー来るなってさっき言ってたよな? 大丈夫か?」 「行く前にタケルとした今の会話をまんまメッセージでぶつけてみる。それで反応が無ければ別の手を考える。でもさ、ショウって強引そうに見えて案外やさしいだろ?  『チェリーエイド』でカラダがヤベェ事になってるのならきっと俺らを心配して会おうって言ってくれると思うんだよな」 だから俺は昼休みが終わる前に電話じゃなくてメッセージにして送ってやった。 そして、案の定『分かった。お前らにアレを勧めたのは俺だもんな。マジでビックリすると思うけどウチに来てくれ』と、返って来た。 ◇  ショウの家は高校から歩いて15分ほどの場所にある。 俺とタケルは徒歩じゃキツイ距離なので自転車で通っているがショウだけは徒歩通学だ。 高校の規則で家が徒歩15分以内のエリアの生徒には自転車通学が認められていない。 蒸し暑さを感じるものの自転車を漕げば風はまだ爽やか。6~7分とばせばショウの自宅に到着。 一戸建てじゃ無く去年できたばかりの高層マンションだから来客用の駐輪場に自転車を停め、建物入り口にてショウの住む部屋番号を押して到着した事を知らせる。 『……おう、了解。いま開けるから上がって来てくれ』 ホテルの中みたいに綺麗なエントランスを抜け、規模の割に数の多いエレベーターで13階まで昇る。 そして目的のドアのインターホンを押すとすぐにドアが開いた。 「入ってくれ……」 バスローブみたいなガウンを着たショウが暗い顔で俺たちを招き入れた。 「お邪魔します」 「うぃーっす、お邪魔しまっす!」 「親父さんは?」 ショウの母親は随分前に親父さんと離婚していて今は父とショウの二人暮らし。 「親父は二日前にジブラルタル海峡を通過したって連絡が来たから今は地中海だな。帰りは三か月後になる」 両親の離婚に関してショウはとっくに吹っ切れているので俺もタケルもそれほど構える必要は無い。 「それはまた遠い所に。豪華客船のクルーの仕事って大変だろうな」 中学からずっと一人暮らし同然なのにちゃんと生活を維持しているショウには俺もタケルも敬意しかない。 「ショウの家がこのマンションに引っ越してから俺ら来たのって初めてだよな? すげぇオシャレでカッケー」 タケルが窓の外に拡がる高層からの風景に目を見張り、市街地に埋もれるような自宅近辺を探しては「お、あれが俺んちだな」なんて見つけて喜んでいる。 まぁ、タケルの家は老舗の温泉旅館のお隣さんだから目印がハッキリしている。 その間にショウは、俺とタケルのためにドリンクを冷蔵庫から出して用意してくれていた。 一々買いに行くのが面倒なのだろう。廊下で見かけた段ボール箱と同じ銘柄のミネラルウォーターだった。 せっかくなので少し飲んで口を潤してから本題に入った。 「昼にメッセで送った通り、ショウ、『チェリーエイド』のせいでカラダに異変が起きてるんじゃないか?  そして、その異変は数日遅れで俺とタケルにも起こるんだろう?」 タケルは大きく開放的な窓の向こうを眺めるフリをしつつ背中で俺とショウの話を聞いている。 もちろんショウだってタケルの動きとその意味は理解している。 二対一で向き合われたら話しにくいもんな。 「……童貞膜の検査つって集まった時に言っただろ? 俺、やけに精力がアップしてオナっても収まりがつきにくくて精液の量が増えて来た、って」 敢えて余計な相槌は挟まずショウのペースに任せる。 「でさ、実はさ、もう一発や二発程度じゃ全然収まんなくて、最低10発は抜かないと萎えなくなってたんだ」 「10発!?」 「そいつはさすがに多過ぎる!」 俺もタケルも思わず口に出た。 苦笑を浮かべたショウが「俺だってそう思う」と吐き出す。 「絶倫だなんて浮かれてる場合じゃないな、って。けど、ヌいたってすぐムラムラしちまうし、ヌきたくなったら勃起しちまうし、勃起したらヌイて収める以外に方法が無い。 朝に10発、夜に10発、それが5日ほど前からの俺の状態だった」 一回あたり10発、かける2!? それで毎日20発だと!? そこまでヌきまくったらチンポが擦り切れてしまうんじゃないか? いや、冗談ではなく。 「箱ティッシュが二日で空になるんだ。おかしいだろ? 明らかに射精し過ぎだって。回数もアレだけど一発当たりの精液の量もバカみたく多いんだ。 でもさ、それでもまだ、オナニーして出すモン出しときゃ何とかなってたんだ」 俺はさりげなく部屋のゴミ箱の山盛りになっているであろうザーメンティッシュを探した。 しかし、そういう類のモノは見当たらなかった。 「やめろトキオ、使用済みティッシュを探すんじゃねーよ」 おっと、バレてた。 「ゴミ箱からだとすぐに溢れちまうからゴミ袋へ直接放り込んでいるんだ。で、各フロアにゴミ出し専用のコーナーがあるから袋が一杯になったらその都度持って行ってるんだ」 下のエントランスまで一々降りなくていいのって便利だな。 「ザーメンティッシュについてはこれぐらいにして、俺のカラダに起きたもう一つの異変なんだが……、引くと思うがよく見てくれ」 ショウは膝下まで隠すガウンをサッと脱ぎ捨てた。 中には何も身に付けておらず素っ裸だった。 が、裸なのは問題じゃない。 「うわ!」 「嘘だろ……」 いつの間にかタケルも俺の隣に来てショウの裸体を見つめていた。 そして、二人してしばし言葉を失っていた。 何せ、ショウのカラダが―― 「なぁ、こんな風になるなんて誰が思う?」 真っ黒な童貞膜が首の根元から膝下までを覆っていた。 しかも、覆われている部分は筋肉がバキバキに発達していてスーパーマッチョな肉体と化している。 ドンと張り出す大胸筋、肩や首にかけていかつく盛り上がる僧帽筋や三角筋。 ボコボコに割れて板チョコみたいな腹筋、分厚い肉の鎧と化した背筋。 腕も太腿も別人のような太さになっていて、腕を軽く曲げれば人の頭みたいな力こぶが上腕にボゴォと持ち上がった。 そんなビルダーばりのマッチョボディをつややかに覆う漆黒の童貞膜にはそれぞれの筋肉の「カタチ」をより際立たせて強調するように、筋肉の部位を区切る白く輝くラインが入っている。 また、白いラインの行きつく先となる胸の中央には縦横5cm程の菱形の青い結晶が浮き出ていて、心臓みたいにドクンドクンと脈打つように淡く明滅してはエネルギーを循環させている。 「カラダも、だが、チンポもヤベェ……」 「ああ。どっちもデカ過ぎんだろ……」 俺もタケルも改めて息を呑んだのはショウの股間にあるチンポを見た時だ。 黒い皮膜に覆われるショウのチンポが膝にまで達している。 こんなに巨大なのにだらんとぶら下がっているから勃起はしていない。にも関わらず亀頭がズル剥け。 ショウも俺と同じ仮性包茎だったはずなのに包皮はカリの手前までしか包んでいない。 なのに、巨大チンポの付け根にあるべき大事な「タマ」が見当たらない。 「ショウ……、キンタマはどこに? チンポに比例してサイズアップしたんじゃないのか?」 「どこにも見当たらないな。まさか、無くなっちまった?」 俺を見て、それからタケルの方を向いたショウは首を左右に振った。 「無くなったんじゃない。ちゃんと在る。ただ、場所はこっちに移動したみたいだが……」 ショウは尻を指さした。 俺もタケルも意味が理解できずポカンと口を開けた。 「あ~、要するに俺のケツの中身が全部キンタマになっちまってんだ」 「はあ!?」 「ケツがキンタマだと!?」 ケツの中が巨大キンタマになっているなんて聞かされたら「驚く」以外の何が出来る? ガウンを脱いだショウからもたらされる変化と衝撃と情報が多すぎて、俺は正直混乱し始めていた。 俺の常識や知識では到底理解できない。全てが絵空事。まるで現実そっくりなヴァーチャル世界の出来事じゃないかとさえ思い始めていた。 「おい、トキオ。ふらついている場合じゃない。お前の予測じゃ俺らも数日であんな風に、ショウみたいになっちまうんだろう? ちょっとマッチョ化したとか、ちょっとチンポがデカくなった、なんてレベルじゃねえ。ボディビルダーでもあんなに仕上がってるヤツなんてそうそういないんじゃないか?」 タケルは高3になってからはほとんど顔を出していないけど、ボクシング部の部員なのでカラダづくりに関しては色々と詳しい。 減量も、筋肉増加も自身で経験済みだった。 「あのボリュームのカラダじゃ制服はもちろん普段着も着られねぇ。それと、周囲の目が色々とうるさくなる。あと――」 「ショウ、食事はどうしてるんだ? 着る服が一つも無いとしたらコンビニに行くのも難しいんだろう?」 視線を逸らしたショウが顔を赤く染めた。童貞膜によって真っ黒ではあってもさっきから全裸になっているのに今更羞恥心? 「じ、実は……」 出前でしのいでいるのだろうか? 海沿いの田舎町とは言え出前アプリを開けばそれなりに種類を選ぶことはできる。 「ざ、ザー……」 「ざー?」 「ザーメンをさ……」 「うん、ザーメンがどうかしたのか?」 「ああ、オナニーした後、ティッシュで一々捨てるのがもう面倒になってさ、コップにザーメンを受けて飲んでるんだよ」 「飲む!?」 「コップで!?」 顔を上げたショウは照れながらもうなずいた。 「トキオとタケルが家に来る事になったから、その前にある程度射精して収めておかないと、と思って二人が到着する少し前までコップにザーメンを射精してたんだ。 もちろん、お前らが帰ったら後で飲むつもりだ」 話しながらショウの股間がピクピク震えている。 おまけにチンポの角度が微妙に上を向き始めていませんか? ねぇ、もしもーし? 「まだバスルームにおきっぱだから、お前らも飲みたければ飲んでみてくれ。凄く美味くて驚くぞ?」 絶対に拒否させて頂く! 自分の精液でも「おえぇ!」案件なのに、なんで他の奴の精液なんぞを口にしなきゃならないんだ! 「ショウが精液を飲もうが飲むまいが、どっちでもいいんだが――」 できればそこは止めてあげようよタケル。お腹壊したらどうすんのさ。 「なぁ、トキオ。俺らが来た時は意気消沈していたが、今のショウはどうだ? なんだかいやに自信があるっつうか、満更でもなさそうな雰囲気じゃないか?」 そういや、そうだ。 俺らが来た直後は「こんなカラダになってしまってどうしよう」なんて嘆息していたのに、今見るショウは恍惚感がある上に、どことなくニヤ付きが抑え切れない、今の状態をむしろ歓迎している顔つきになっている。 「そういや俺も咽喉が乾いたな。ドリンク取って来よう」 ショウが童貞膜に覆われたマッチョボディを操り部屋の外へ出た。多分、冷蔵庫で冷やしているドリンクを取りに行ったんだろう。 「俺とトキオもショウの後を追ってああなっちまうのか? 何とか防ぐ手は無いのか?」 キャパを超える情報の中、なんとか頭の中を整理してベストな方策をひねり出す。 「確か、誰かとセックスするとか他人の体液を浴びれば童貞膜は簡単に剥がれちゃうんだよな? だったらさ、俺とタケルとで――」 「バカ言え。何で俺がトキオとセックスしなきゃなんねぇんだよ」 「違う違う。セックスしなくていいんだよ。それこそ唾液でも汗でも、めちゃくちゃ嫌だけど小便でもいい筈」 「なるほど。そう言う事か。なら早速剥ぎ取っておこうぜ。 それに、ショウのカラダからも童貞膜を削ってやればあれほどのマッチョなカラダであっても元に戻るんじゃねぇ?」 「その可能性はあるな。つうか、それに賭けるしかない」 汗は自在に掻いたりはできないし量が少なすぎる。手に汗握ったところでチンポの童貞膜の全ては剥がせない。 なら唾液か小便か。いや、やっぱ小便は抵抗が大きいな。 使える体液は他にないだろうか?

童貞同盟は如何にして瓦解したか 第三話

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