11晩夏と性欲と魔性の果実 三日後、ビーチに来る客もすっかり減ってしまいこの夏における海の家の営業が終了した。 俺とユウヤの夏休みはまだ半月ほど残ってるものの今までのように海の家に居候する訳にもいかず、渋々自宅のアパートに戻ってきた。 「来年の夏になったらまた会えるんだし、俺らもマランガの実を作りたいし。それまではじっくりこのカラダに養分を蓄えて行こうぜ?」 拗ねるユウヤに放った言葉はそのまんま俺自身にも刺さるものだ。 なので有言実行。 養分となる人間の精液を集めるため俺たちは行動を開始した。 「擬態を解かなくてもパラネイターの力が使えるのは便利だよな」 手始めに仕事帰りの若いサラリーマンをターゲットに設定。駅前にて良さげな男が出て来るまでじっと待つ。 するとユウヤが先に動いた。 「……俺、あの人にする」 俺は無言でうなずいた。頑張れユウヤ。 駅のロータリーから足早に去って行く男を追ったユウヤもすぐに見えなくなった。 さて、じゃぁ俺の獲物はどいつだ? と周囲を探っているとスーツ越しでもガタイの良さが窺えるサラリーマンが駅の階段から下りて来た。 「お、いい精液持ってそうだな」 男は俺の存在になんかまるで気付かず目の前を通り過ぎて行く。 耳にワイヤレスイヤホンを挿しているのでスマホに入れた音楽でも聴いているのだろう。 前を歩く男の後を間隔を取ってついて行く。 すぐにタクシーにでも乗り込まれたらアウトだったが幸いなことに男は徒歩でずんずん進む。 そして、周囲に人がいなくなった辺りで俺は誘惑フェロモンを放ちながら男のすぐそばに近づく。 「……なんだ? 花の香り?」 誘惑フェロモンは花の芳香。嗅いだら最後、激しい劣情に見舞われ性欲の奴隷と化す。たとえそれが同じ男であろうとも。 ニオイを感じて立ち止まった男の前に出た。もっこりと膨らむ男のスラックスをぬるりと撫でる。 「ううっ! お、お前は!?」 男のワイヤレスイヤホンを耳から抜いた俺は呪文の言葉を男に吐いた。 「なぁ? あんたの精液を俺にくれよ」 公園の中、街灯の届かぬ暗がり。下半身を露わにした男が俺のケツにチンポをぶち込み腰を前後に振る。 「うあ! イグゥッ! またイクッ! んくぅぅーーっ! また! 俺の精液が! 射精る゛ぅ゛っ!」 4度目の発射ながら男の精液は濃厚で量もたっぷり。初めての「食事」にしては想像以上の中身の良さにケツの奥がギュンギュン震える。 「くぉおっ! そ、それっ! やべぇっ! また! イッちまうっ!」 『マランガ』を3本使って仕上げた俺のカラダは確かに高性能だった。飲み込んだチンポをどう扱えば満足させ、どう精液を搾り取れるかを瞬時に判断してくれる。 アナルの中の形状を相手のチンポがもっとも感じる状態に意識せずとも変えてしまえる。 「はぁ、はぁ、んはっ、はぁ、も、もっと、もっといっぱい、気持ち良くなりてぇ……」 場所が場所だけにあまり時間はかけたくない。 誰かに見られるリスクは避けたいからだ。 「いや、今夜はこれぐらいにしておこうぜ。俺もあんたの精液は気に入った。だからさ、連絡先聞かせてくれないか?」 「そ、そんな……、俺はもっとお前のアナルに……」 「約束する。また俺のケツ使って欲しいし。あんただって帰宅がこれ以上遅くなったら不信感持たれちまうだろう?」 薬指に嵌められた細い指輪に視線を送る。 「そ、それは、まぁ……」 こんな風に俺は精液供給元となる男を次々と確保。日に日に養分が体内に蓄積されていくのを実感していた。 ただ、やっぱりダイチさんと会えないのはとても寂しい。 この日の俺は「食事」を摂るよりもダイチさんからもらった『マランガ』を使う事にした。 『パラネイター』の中でもこの使い方を知っている者はそう多くないらしい。フウガさんやカイルさん、ダイチさんを除けばごく少数だけが知っているイレギュラーな使い方……。 ダイチさんを想像しただけでチンポがめちゃくちゃ勃起するものだから先にしっかりとオナって射精しておいた。 だから部屋の中は俺の精液のニオイが充満していた。 擬態を解除して緑色筋肉怪人の姿に戻ったら再びアナルとチンポを刺激してやる。 「んっ! ぐぅっ! キモチ、イイッ! ううっ!」 快感が高まり興奮がカラダを熱くさせる。すると臍の奥でムズムズと何かが膨張し、やがてそれは臍の穴をメリメリこじ開けながらカラダの中からズブゥと頭を出した。 「んくぅっ! ふひ、んぎぃっ!」 突き出て来たモノは俺のつぼみ。ベロリと花弁が開けばそれはアマリリスの花として咲いてくれる。 『パラネイター』にとってはもう一つの生殖器。チンポではなくマンコが花の奥に存在している。 卑猥な粘液を吐き出す花マンコの中にダイチさんの『マランガ』を挿入。 その時、全身が破裂しそうな快感が俺を襲い意識を失いかけていた。だが、なんとか持ちこたえた俺は、『マランガ』を内部に閉じ込めた花マンコに巨大にさせた自分のチンポを刺し込み、ビュルドビュ! と精液を発射。 「はぁ、はぁ、んっ、こ、これで、いいんだよ、な?」 アマリリスの花弁がハラハラと散り落ちる。 『マランガ』を飲み込んだ花マンコがモコ、モコモコ、と膨らみ、隆起していく。 「うぐうっ! く、苦しいっ!」 圧迫される苦痛だけが感じられる。悶える俺を無視して花マンコとその周囲がさらに肥大、肥大、肥大して、ついには立派な孕み腹に。 あっという間に妊婦のボテ腹になった。 俺の腹の中でゴリゴリ動く物体がある。早く「そいつ」を俺は吐き出したい。ああ、早く、ソレをこの目で確かめたい。 不意にビリリと電流のような刺激が全身を貫いた。 立っていられなくて床にへたりこむと花マンコの内部で成長し切った「そいつ」が内側からメリメリと肉の扉を押し開くようにヴァギナを拡げて頭を出した。 「ふーっ! ふーーっ! うぐぅ、う、産まれた?」 頭だけではなく全身が俺の腹から這い出てきた。 緑色をした赤ん坊だ。 赤ん坊はすぐに俺のミルクを求めてチンポにむしゃぶりついた。小さな舌で鈴口をレロレロ舐められたらあっという間にキてしまって精液を発射。 ゴクゴクと赤ん坊は残らず飲み干していく。一発だけでは足りないらしくすぐにお代わりを求めて催促する。 俺は求められるがままに精液を何度も発射した。 発射した精液を飲むたびに赤ん坊はぐんぐん成長し、赤ん坊から幼稚園児、幼稚園児から小学生、小学生から中学生、 そして高校生くらいの体格に。 「もうほとんどダイチさんだ……」 「でも、これじゃぁまるでコウヘイの弟だろ? やっぱり本体と同じ姿にならせて欲しい」 若々しいダイチさんが俺の精液をおねだりしてチンポをしゃぶり、口で精液を受けると次はアナルで飲みたいと言う。 請われるままに少年ダイチさんのアナルにも精液をたっぷりと放出してやるとまた一段と成長が進んで「本体」と同じ姿、同じ年齢、声もオーラも全く同じ「ダイチさん」になった。 「自己複製。つまりはクローンってやつだ。だが、感覚は本体と共有しているんでこっちの俺が見聞きしたことや感じたことはあちらでも受け止めている」 「じゃ、じゃぁ、本体のダイチさんは今何をしているか分かる?」 「当然。精神をクローンに移動させて眠ってやがるな」 「精神をクローンに? と言う事は……」 「ああ。本体の俺がクローンのカラダを借りた状態だな。つーことで、久しぶりだなコウヘイ。いや、一週間くらいじゃ久しぶりとは言わないか?」 俺はダイチさんに飛びつき思い切り抱きしめた。 「会いたかったよぉ~! ダイチさん! 会いたかった~!」 「っはは、どうしたどうした? 俺も会いたかったが随分と大袈裟だなぁ。車で2時間も走れば本体の俺にも会えるじゃないか」 「それでも! それでもダイチさんと会えないのは寂しいんだよ! 2時間って近いようで遠いんだから!」 俺の頭を優しくなでるダイチさんの手がとても暖かい。 「……コウヘイが大学を卒業したらさ、こっちに来ないか? それまではクローン体で我慢してもらうしかないが」 「行く! 絶対に行くよ! 来年の夏にも絶対!」 「そうだった。来年もコウヘイは大学だったな。よし! だったら来年の夏はコウヘイの『初・マランガ結実』を 迎える準備をして待っててやるからな」 「あ、ありがとう。俺、ダイチさんにすっかり甘えてる……」 「それでいいんだ。年下のわがままをきくのも年長者の特権だからな」 「そういえばダイチさん、ダイチさんの年齢っていくつなの? 24歳って本当?」 撫でる手をピタリと止めたダイチさん。マズい事を聞いちゃったのかな? 「……んじゅうご、だ」 「ん?」 「35、だ」 「35? なんだ、もっと上かと思った」 「驚くほどでもなかったか?」 「まぁ、正直言ってそうかな。パラネイターは不老でも不死でもないって言ってたけど、長く生きるんでしょ?」 「そうだ。フウガもカイルも俺よりはるかに年上だろう。たぶん……、いや、知りたければ本人に聞いてみてくれ。俺も正確には知らないんだ」 海の家における上下関係が曖昧な理由はここにあるのだろう。 「年齢がどうとか、みんな気にならなくなるんだね」 「そういう事。互いに受粉し合って新たなマランガを実らせる以外はそれほど重要じゃなくなる」 「だったら俺とのセックスも重要じゃない?」 ダイチさんが俺の額を小さくデコピンした。 「バカ言うな。コウヘイだけは例外だ。初めてお前を見て、お前がパラネイターに成った時の姿を幻視した時から俺は、コウヘイに心を奪われている。 食事としてのセックスは他の男ともやるが、食事としてじゃなく愛するためにセックスしたくなるのは、コウヘイ、お前だけだよ」 俺はダイチさんにキスをした。 舌同士を絡めて深く、長いキスを。 「ダイチさんとセックスしたい。俺もダイチさんを愛したい。いつもダイチさんを感じていたい」 急にダイチさんてば人間に擬態して褐色肌のマッチョ男になった。 「いらっしゃい! ビーチでナンパしてたお兄さんたちっしょ? 結果はどうだった?」 「え? いきなりどうしたの、ダイチさ――」 思い出した。 ダイチさんはこうやって俺たちに初めてアプローチしたんだった。 俺も『パラネイター』から人間の姿に戻った。ただ、戻っても筋肉の量は減らず理想だったマッチョ体形のまま。 「どうもこうも。全然ダメっす。目の前のお兄さん以外に目が入らなくなってしまって。どんどん好きになっちゃうんですが?」 「……ブハッ!」 「アハ、はははっ!」 ひとしきり俺とダイチさんは声を出して笑った。 そして、笑いを収めた俺たちは再び緑色の怪人に戻って―― 終