1・高校生、初めて『セクスフォーマー』を装着する 注文した覚えがないのに届いた荷物を前にして不安な気持ちになるのは当たり前だと思う。 「宛て名は俺で間違いないけど、何で俺に?」 有名なフリマアプリが差出人名に書かれているものの俺はそのフリマサイトにアカウントを持っていないし、ましてや注文などもしていない。 なので、時折耳にする「送りつけ詐欺」じゃないか? と疑った。 しかし、ラベルの隅に『当商品は発送人からのギフト品のため料金は一切発生致しません』と小さく記載されているのを見つけ、ようやくホッと息を吐いた。 なるほどこれは俺へのプレゼントだったんだ。 「てことは、中を開けたら誰からのプレゼントだったかが分かるんだな? 俺の誕生日が明日だからサプライズ、って訳だ」 俺は明日、6月6日に18歳の誕生日を迎える。 受験生でもあるし取り立てて祝って欲しいとも思っちゃいないが、こうして誕生日を気に掛けてもらえるのは素直に嬉しい。 片手でも持てるサイズの箱で、持ち上げても非常に軽い。 中身のプレゼントを取り出そうとするとまた箱になっている。 二重包装とは厳重だなと少々面倒臭く思いながらも内側の箱を引っ張り出す。 内箱には商品名が書いてあった。 『セクスフォーマー』 「セクスフォーマーって……。なんか、エロい響き……」 封をしているテープを剥がし内箱のふたを開けた。 カードタイプの案内と二つ折りの簡単な説明書、その下にあったのは銀色に光る「輪」 「ブレスレット? リストバンド?」 シルバーに似た色の腕輪だった。 ただし幅が2cmと太く小さい液晶パネルが埋め込まれている。 そのせいでなんだかアップ◯ウォッチのようにも見える。 【最新型スマートデバイス『セクスフォーマー』をお買い上げ下さいまして誠にありがとうございます。 この取扱説明書をよく読んで大事に保管しておいて下さい】 添付された説明書の書き出しはごく普通でありきたりだった。 【当商品はウェアラブルデバイスのため手首に装着する仕様になっております。 (ウェアラブルデバイスとは身に付けるタイプの情報機器です) 装着したセクスフォーマーのコードリーダーで画像データを読み取ってご利用下さい】 「ふむふむ。んで、画像データってのを読み込むための専用のアプリがあって、先にそのアプリで俺のアカウントを作れ、と」 2か月前に買ったばかりのスマホを持ち上げせっかくなので専用アプリを落としてみるかとタップしてみると、すでに見慣れないアイコンが増えている事と「ダウンロードが完了しました」との通知が表示された。 「いつの間に? 俺が操作する前にアプリがもう入っているとはね。なんだろ? 最新の機器ってこういう感じで勝手に通信し合ってんの?」 よく分かんねぇけど、まぁいいか、と呟きながらアプリを起動させてみると、『先にセクスフォーマーを装着して下さい』との文字だけが表示され先に進めなくなってしまった。 「やっぱなー。こっちのブレスレットと同期してんだ。んじゃぁ、着けてみるか――」 銀色に光るリングに左の手を通す。 すると、その動きを待っていたかのようにリングは音も無くシュッと狭まり俺の手首をピッタリと締め付けた。 「うわ!? コイツ、自動で小さくなったぞ!?」 隙間なく手首を締めつけているものの締め付け感は無くまさに「ジャストフィット」している。 ―フォン♪ スマホに通知音が鳴った。 見れば【セクスフォーマーの装着を確認しました。引き続きアカウントを作成して下さい】と現われている。 「ま、面倒だけど仕方ないな」 指示された通りアカウント名を設定し、順に必要な情報を入力していく。 そして最後に――「うん? 好みのタイプについて下記のカテゴリーから選べって? それは……」 『カッコイイ・カワイイ・クール・エレガント・ワイルド・ダンディ・ファニーフェイス・セクシー・美丈夫・男盛り……』 他にもカテゴリー別にたくさんのキーワードが続いている。 そんなキーワードを眺めていると俺の脳裏に一人の男が浮かんだ。 その男とは、高校に入学して初めての体育の授業の時に出会った男。つまりは高校の体育教師だ。今は俺の担任でもある。 「丸鍋先生……。やっぱ俺の推しは『丸鍋 純鉄』先生だし、好みもそうなるな」 男臭いのにむさくるしくはなく、朗らかで気さくながら真剣な場面での真摯な表情は勇ましく、大人の魅力もありながら少年のような照れ笑いがとても可愛い。 「丸鍋先生の良い所はいっぱあるけど、やっぱアソコも立派な所がたまらんよなぁ」 昨年の夏。 2年生だった時の水泳の授業は大変だった。 丸鍋先生ってばすっごい際どいビキニで授業を行っていたからだ。 ぶっちゃけ目のやり場に困る。ついつい「食い入るように」見つめてしまって、そんな俺の行動が周囲にバレはしないかとヒヤりとした。 でも、竿の形までハッキリ見えてしまう程くっきり盛り上がっているのだから見るなと言われたって見てしまう。 「なぁ、あれって見せつけてるのかな?」 「勃起してなくてあのサイズってヤバくない?」 「セクシーつうかセクハラボディだよな? 男なのに変な気持ちになりそうだ」 気になったのは俺だけじゃなかった。 心の声が表に出ていたのかとギョッとしたが、他の生徒の囁きが俺の耳に入っていたのだ。 その囁きの一つ一つに同意しながらふと気づくと、また丸鍋のこんもりと膨らんでいる部分を追い掛け注目してしまう。 皆が居る前で自分の股間が反応したらヤバイじゃないかと敢えて視線を卑猥な股間からずらしてみれば、丸鍋の引き締まった尻や腰、 割れた腹筋や逞しく張り出す大胸筋なんかのマッチョな肉体美に悩殺されてしまう。 結局、俺の股間は反応してしまい慌てて水に飛び込んで隠さざるを得なくなる事が何度もあった。 そんな憧れの体育教師が今年の春から俺のクラスの担任教師になった。 体育の授業以外でも丸鍋を鑑賞できるのか、と俺は内心小躍りして喜んだ。 接する時間が増えればワンチャンあるんじゃないか? 下心を含んだ期待の花が一斉に開花した。 「って、いやいや。ワンチャンなんてある訳ないない。あんなに顔もカラダもイケてるんだから付き合ってる彼女の一人や二人居たっておかしくないもんな。そもそも男には興味が無いだろうし。……そう、俺なんかじゃつり合いも取れねぇし」 咲いたものの期待の花が散るのは実に早かった。 『好みのタイプは[デカマラ・マッチョ・イケメン]――ですね? 以上でアカウント登録は完了です』 「へっ? いつのまに打ち込んでたんだ? いや、確かにそれで合ってるけどさぁ」 まるで俺の脳内を読み込んだかのような反応に違和感を覚えつつ、間違いとは言えないため渋々納得する。 画面が切り替わったらいよいよ手首に着けた「セクスフォーマー」と言う最新アイテムにて遊ぶ準備が整ったようだ。 ブレスレットの液晶部分が明るくなった。 『セクスフォーマー、読み取りモードに入りました。アプリに表示された男性リストのページからなりたい男性の画像を選んで下さい』 「え? なりたい……男性?」 スマホに目を戻してみると時雄好みの男の画像アイコンがずらりと並んでいるではないか。 ためしに一人を選んでみれば、『レオ・26歳・185cm78キロ』と言ったアカウント名や簡単なプロフィールと共に画像が拡大して全身が表示された。 「へぇ、カッコいいなぁ、しかもアソコもなかなかデカい……」 画像は着衣バージョンと全裸バージョンの2種類があり、左右にスライドさせるだけで切り替わった。 再び小さいアイコンに戻し他の男も適当に選んでは詳細を覗いて行く。 そうして最初のアイコン一覧から2ページ進んで3ページ目に入った時だった。 『NEW!』の小さい文字付きアイコンで俺の推し体育教師である「丸鍋 純鉄」の顔を見つけたのだ。 「うわ!? 丸鍋先生? なんでリストの中に入ってんの? しかも『NEW!』ってどう言う意味?」 丸鍋先生のアイコンを強く押した。 『テツ・31歳・181cm85キロ』 着衣バージョンから全裸バージョンにドキドキしながらスライドさせた。 「うわ~、やっぱデケぇ! こんなデカいチンポをあのビキニに押し込んでたのかよ!」 スマホの小さい画面でも股間にぶら下がる丸鍋のイチモツは20cmを優に超えているようだった。 指をおくって股間部分だけをさらに拡大させてやれば、太い血管がゴリゴリ浮かんだイカツい竿からエラの張ったズル剥け亀頭がズルゥと頭を出し肉色の光を反射している。 「マジエロチンポだよなぁ。太いしデカいし、タマも凄ぇ大きいし。水泳の時は勃起してなかったんだろうけど、ここまで大きければ隠しようがないって事だよなぁ」 丸鍋先生のチンポに見惚れていると腕のリングが催促するかのように音を響かせた。 ―フォンッ♪ 『変身したい男性の画像を選択して決定ボタンを押してください』 「変身!? マジかよ……。でも、先生みたくなれるものならなってみたい。でも、そんな事有り得ないしなぁ。 ただ、本当に先生みたいになれるんなら、今よりもっと自信が持てるし、その勢いで先生に告ってみたりするかも知れないな」 俺の脳内では逞しい大人の肉体を得た自分が丸鍋先生の前に裸で立ち、「先生、どう? 俺、見違えた? 先生みたいにエロいカラダでしょ? 今日は生徒と先生って枠を外して男同士で気持ち良くなりませんか?」と囁きながら敢えて丸鍋に滾るチンポを握らせぐっと抱き寄せていた。 「先生、俺ね、前から先生の事好きだったんだ。だけど先生って俺に、いや、男に興味なんて無いんでしょう? 分かってはいたけどやっぱり我慢できないんだ。一度でいいから先生、俺とセックスを――――」 ―フォン♪ 『変身したい男性の画像を選択して決定ボタンを押してください』 ―フォン♪ 『変身したい男性の画像を選択して決定ボタンを押してください』 「ああもう、うるさいな! 妄想する時間くらいくれたっていいじゃんか! はいはい、分かりました! わーかーりーまーしーた~!」 「セクスフォーマー」の催促に耐え兼ねた俺は妄想タイムを打ちきってスマホ画面の「丸鍋先生」を選択して決定ボタンを押した。 すると、「セクスフォーマー」の小さな液晶画面に「データ受信完了、ただちに使用者にインストールします」と文字が浮かび、 インストール中を示す横棒ゲージに切り替わる。 「インストールって何をどこにインしてんだろうな?」 最新型のデバイス「らしい」と言うだけの理解で指示通りに進めてきていたせいだった。 なりたい男性の画像を銀色の腕輪に読ませた事から何がどうなっていくのか、など想像も付かなかった。 「うわぁ!?」 インストールゲージが少しだけ右に伸び『5%完了』した時に「それ」は起こった。いや、始まったと言った方がいいだろう。 手首の「セクスフォーマー」から銀色に光る線が伸び、じわじわと拡がり始めたのだ。 「えっ!? えっ!? ナニコレ! だんだん拡がってくじゃん!」 伸びる光の線は縦横正方形の格子状、グリッド線となって手首から下腕を覆い、肘にまで到達しようとしていた。 さらに驚くべき事にはグリッドに覆われた部分の色が真っ黒に変色して行く事だった。 皮膚はもちろん身に付けている衣服まで漆黒の闇色へと融けて同化していく。手首の「セクスフォーマー」だけが変わらず銀に輝いている。 『10%完了』 「はぁ!? ちょ! 何だよこれっ!」 光のグリッド線が肩までやって来た。追いかけるようにして黒く変色した領域が登って来る。 痛みは無い。が、明らかに自分の意志で動かせない。黒くなった部分だけ切り離されたかのように「繋がり」を感じなくなっている。 「ちょ!? ヤバいってこれ! ストップ! 終了! き、強制終了しないと! 思ってたのと全然違うじゃん! ストーップ!」 思わず左手首の「セクスフォーマー」を外そうとして動ける右手で掴む。が、ビクともしない。皮膚と密着したかのようにズレも回転もしない。 「くっそぉ! 外れねぇっ! こんのぉっ!」 『30%完了』 グリッド線が肩から頭部全体を飲み込み真っ黒に変えてしまった。なのに自分がどういう状態なのかが「見える」 諦めずに何とか「セクスフォーム」を取り外そうともがいていた俺だったが、ここで自分の意志で動けなくなった。 (くそっ! くそぉっ! カラダが動かせなくなっちまった!) 焦る俺とは裏腹に、カラダがひとりでに動き始めた。 グッと背筋を伸ばしてビシッと姿勢を正したかと思うと両脚を肩幅くらいに開き、両腕もやや広げながら軽く引き上げ胸を張る―― いわゆるボディビル大会における「リラックスポーズ」と呼ばれるポーズを取ったのだ。 なぜそんな言葉を俺が知っているのか。 俺は以前、丸鍋先生に「趣味は何なんすか?」と聞いた事があった。 その時、丸鍋先生は「う~ん、そうだなぁ、休みの日にゃジム行って筋トレしていたりもするが、ざっくり言うと『ボディビル』ってことになるな」 「ボディビルっすか。だからそんなに筋肉ムキムキなんすね。大会に出たりもするんすか?」 「まぁな。五月雨(俺のこと)も興味があるなら鍛えてみるか?」 「あ、えーと、考えておきます」 「ははは。急に誘われたって難しいもんな。そうだ、俺のお古だが参考にコイツをお前にやろう」 渡されたのは「ボディビルの基本」と書かれた一冊の本。 筋トレの行い方や基本的な用語、そしてボディビル大会にて選手がとるポーズの種類などが画像付きで詳しく載っていた。 (はぁ? え? な、何で俺、リラックスポーズを取ってんの? て言うか、勝手に俺のカラダが動いてたよな?) 『50%完了』 グリッド線は肩を超え右の手首にまで到達し、頭から下腹部まで上半身にも及んだ。 リラックスポーズのまま身動きが取れない。黒い領域がグリッド線を追い掛け上半身全てを黒一色にしてしまう。 すると、奇妙な事にじわじわと快感が、ムクリと頭を持ち上げる性的な欲求が恐怖や困惑を押しのけて膨らんで来たのだ。 「なんでこんな時に! 身動き取れない状態に興奮してんのかよ俺は!」 気付いてしまうともうダメだ。 ムラムラし始めたカラダと心は素直に股間へ現われ、チンポがグググと勃起し始める。 『75%完了』 上半身から下半身に降りて行くグリッド線は両膝に達した。 黒い領域もズルズルと下り、勃起した股間を飲み込んだ。 すると、穿いていたはずの部屋着のジャージや下着のボクブリを無視してチンポが黒いままズルンと突き出した。 (はぁ、はぁ、すげぇ、チンポが熱い……、カラダが疼く……、すんげぇムラムラしてきた……、ああ、早くチンポ弄ってヌきてぇ……、 はぁ、はぁ、オナニーしてぇ……、ん゛んっ、セックスしてぇ……。超セックスしてぇーーーーーっ!) 童貞でセックスした事なんかないのに脳内には別の男と肌を擦りつけ合い、肌の温もりを感じながらチンポをまさぐり合っている光景が広がった。 『100%完了。インストールしたデータを展開します』 「うぐぐ! うごお゛お゛ぁおおおおおおおおおーーーーーーっ!」 足のつま先まで光るグリッド線に覆われると、ほとんど間を置かずグリッド線を残したまま足先まで真っ黒に染まった。 そして俺は、俺は……。