SamSuka
鷹取リュウゴ
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秘密の男娼サブスクリプション 1

 思えば、学生時代にヤって以来なんだかんだ6年もリアルはご無沙汰になっていたんだよな。 性欲はもちろんあるし縁があれば彼氏くらい欲しいと思っちゃいるけど、俺はモテない人間だとの自覚はある。 だから、積極的に売り込むことや相手を求めて動くのは億劫になって何もしてこなかった。 そんなだから社会人になって何年もなるのに何も無いのは当然だった。 我慢できなければ自慰で処理して、それで良しとしていた。 だけど、後輩はエロいサブスクなんてのを紹介してから俺は変わった。 変わった自覚はあんまりなかったけど、サブスクで味わえるようになった快感が俺をもっと淫らでもっと行動的な男に変えていったのだ。 ただ、これでは分からないだろ? エロいサブスクについても、俺がどう行動的になったのかも。 はは、そうせっつくなって。 いつも俺の話を聞いてくれたお前には最後までちゃんと話してやるって。 1男日照りと秘密のサブスク  「ねぇねぇハル先輩~、ここだけの秘密にして欲しいんすけどお勧めしたいサブスクがあるんすよ~」 俺より2年後輩の染野がぐい吞みの中身を飲み干してから妙にニヤけた酔眼を俺に向けた。 「サブスクって言うとアレだろ? 音楽とか動画とか定額で課金して利用し放題な最近流行りのヤツだろ? そんなのはもうやってるし今以上に増やす気はないんだが」 そもそも秘密ってのを俺にバラしてもいいのか? との意味も匂わせるようにやんわりと否定してやった。 「いえいえ~。そういう二次元コンテンツのサブスクじゃなくてリアルに体感するものなんすよ」 「リアルに体感?」 質問を返した時点ですでに染野の術中に嵌められたようなものだ。 「ええ。そうなんす。簡単に言うとエロいサブスクっす」 ここが社内なら染野が「エロ」と言った時点で染野のためを思って会話を打ち切ってしまうのだが、今、俺と染野が向かい合って座っている場所は最近オープンしたばかりの真新しい居酒屋だ。 3年にわたる例の感染症の影響で足が遠のいていた繁華街に来てみれば、初めて目にする新規の店がいくつも暖簾を掲げていて、今夜もその中の一軒を開拓してやろうと訪れていたのだった。 そんな目新しい居酒屋のテーブル端に置いてあったカードを一枚抜いた染野は、ウェブサイトへの行き方やアカウントを作る時に必要なパスコードをカード裏に書いてから俺に渡した。 「つうかさ、お前みたいなイケメンならエロいサブスクなんて必要ないだろうに」 「んなコトないっすよぉ~。健全な男子たるもの不健全なアダルトコンテンツの一つや二つ、お世話になってたりするものっす」 うーん、イマイチ分かるような分からないような。 話を聞きながらブランド鯵のカルパッチョを一枚口に放り込み、次に「幻の」と名高く値段もクソ高い日本酒を口に含む。 すっきりとした咽喉ごしと鼻腔を抜ける芳醇な香りがハーブをまとった鯵の風味を引き立ててより一層味わい深くなる。 オープン記念で全てのアルコールが5割引となる期間だったからこそ可能な贅沢で、普段飲むような安酒とは大違いの美酒とのマリアージュにより自然と顔がほころぶ。 今のところ今回の新規開拓は成功と言える。酒も肴も雰囲気も申し分ない。なので次のつまみは肉系を試してみようか。 店員を呼んで豚の角煮と牛串カツを注文。そして、残っていたカルパッチョを平らげ酒を口にする染野に念のためサブスクへの懸念を伝えた。 「でもなぁ、エロ系のサブスクなんてあれだろ? 下心を剥きだしにした野郎から上手い事言って金だけ巻き上げようとしてるんじゃないのか?」 「そんな事は全然無いっす……、うわ~、やっぱこのお酒ヤバイっすね! こんなに呑みやすいと何杯でも飲めてしまう!」 お猪口の中身を咽喉に流し込み『純米大吟醸三年蔵仕込み清酒・菊の益荒男(きくのますらお)』の奥深い味と香りに目を見張る染野。 こういう素直な反応をする良い奴なのだが、いかんせん物事を表面だけで判断しがちな危うさがある。 この前だって「半額」ってな宣伝を鵜呑みにして風俗に行ったら実は仲介手数料を別途請求され結局は元値と同じ金額を支払う羽目になった、なんて嘆いていたし。 いかにもぼったくりそうな謳い文句に釣られる染野にも油断があったと言わざるを得ない。 それとだ、「溜まってたから処理したくって~」とか俺に言うなよな。こっちこそ何年も男日照りで溜まりまくってるっつぅの! ――じゃなくって……、 悪い連中にとっていいカモにならないようくれぐれも気を付けてくれよ? そんな俺の心配を知ってか知らずか染野は手酌でグビグビやっては至福の笑みを俺に向けている。 「ペースが早いな。あんま飲みすぎんなよ? 前みたく店を出た瞬間ゲロっちまうなんざ勘弁してくれい」 「あ~、その節は大変すみませんでした……。では、今からは控え目にしておきます」 ったく、何度も言うが染野はイケメンなんだから俺なんか誘わず言い寄ってくる女どもを誘えばいいのに。 それに風俗なんか行かなくたって夜のお相手などよりどりみどりだろう? 一々指摘するのは野暮だし男の嫉妬みたくカッコ悪いから言わないけど。 本人の自己肯定感が低いのか、それとも自分の容姿の良さに気付いていないのか。まさか、俺と同じで女に興味が無い男だったりとか? ……まぁ、そうだとしてもこっちから男好きかどうかを詮索する気は毛頭ない。 恰好つけるつもりは無いが俺を慕って「飲みに連れて行ってください!」と誘うかわいい後輩にとって「良き先輩」でありたいし。 「さぁて、次はどのお酒を注文しましょうか? ハル先輩もまだまだ飲めるっしょ?」 俺のぐい吞みに『菊の益荒男』を注ぎきった染野がドリンクメニューを拡げながら聞いてきた。 さっき控え目にすると言ったのをもう忘れているのかコイツは。頼むのならせめて度数の高い酒には手を出すなよ? ◇  べろんべろんではないもののしっかりと酔っぱらった染野をタクシーに押し込み、先に染野の自宅に寄ってもらってから ようやく自分の住処へと戻った。 んで、すぐにベッドインするのがいつもの流れなんだけど染野から聞いた秘密の「エロ系サブスク」が頭にこびりついてたもんだからついつい調べてしまった。 「下心剥き出してんのは俺の方じゃないか」 メモ書きのカードを見ながら口許が自嘲で歪む。俺にだって性欲はあるしセックスもしたい。ただ、特定の相手はいない。右手が常に俺を慰めている。 染野みたいなイケメンだったら気になった相手を口説いたりもしていただろうが、俺みたいな平凡なモブ顔では邪険にされるのが関の山。 それと、同じ社内の男を物色しようものならセクハラ認定されて最悪の事態を招きかねない。だからあまりにも環境が近い男と深く関わるのは避けておきたい。 かと言って出会いを求めて具体的な行動も努力もしていないのだから相手など見つかる訳がない。 と、まぁ、それらしい言い訳はいくらでも出てくるけど、要は俺自身が怠惰に生きて来た報いとして年単位のぼっちを味わっているだけなのだ。 「えーと? 確か『淫化ローズ』ってサイトから『ヴァンキッシュ』に飛ぶんだったな」 スマホで検索していくとちゃんと染野が言っていたサイトに到達した。 【ヴァンキッシュは会員様向けにアダルトなひと時を提供しているサブスクリプションサービスです】 一応、それっぽいロゴと簡単な説明文に違和感はない。 が、それも擬装かも知れない。用心してサイトの先に進んでみた。 【ご契約期間内であれば何度でもご利用可能です。また、契約の解除は一か月単位でいつでも可能です】 続けて月額の利用料金、決済方法などの説明があり、会員登録に必要な個人情報の入力欄が表示された。 順にメールアドレスや名前を入れていくと「性指向」の選択欄があって、対象が同性か異性なのかを選べるようになっていた。 「ちゃんとゲイ向けに設定が可能なのは今どきって感じだな」 【フリートライアルは完全無料でご利用いただけます。また自動継続にはならないので継続希望のお申込みがなければそのままご解約となります】 エロ系にしては親切じゃないか。自動継続でないのなら「やっぱいらね」となった時は放置でいいようだし。 フリートライアル期間が5日間なのは短いが、月額料金が思ったほど高くはないのだから仕方がない。 【恐れ入りますがフリートライアル期間中のサービス提供については当社の「おまかせ」のみとなっております。予めご了承下さい】  気付けば俺は入力欄を全部埋めて会員登録まで済ませていた。 「明日からフリートライアルになったみたいだが――」 肝心のサービス内容をまだ見ていなかった。「アダルト」と言っても幅が広いのに迂闊と言えば迂闊だ。 大人の玩具を送ってくるのかオカズ動画のアドレスが送られるのか、はたまたデリヘルみたいに生身の相手とヤれるのか。 染野の奴、「リアル」とか「体感」とか口にしてたもんな―― 「――いや、さすがに一か月たったの1万で生身の男相手は無いな。風俗に行きゃ一回でこの倍は取られるし」 それでも会員登録をキャンセルしないのは「秘すれば花なり」なんて言葉もあるけど、分からない謎の部分があるからこそ逆に内容を確認してみたくなってしまうからだろう。 そう思わせるようにサイト自体も設計されているに違いない。 「ったく、俺も染野に偉そうなことは言えないな……」 【四万 春孝様、会員登録ありがとうございます! あなたのウェブ会員証をメールでお送りしました!】 文章を読みながらしみじみと呟く。 そして、最後に本番セックスしたのがもう6年も前になるのだな、と時間の早さに驚きもする。 ヤった相手の顔なんてもうボヤけて思い出せないが、それが初めての行為だっただけに人肌の温もりだけはまだ忘れられずにいる。 そして、緊張し過ぎて中々勃起しなかったり相手のフェラだけであっさりイってしまったりした「思い出」に苦笑する。 『次はいつ会える?』 とメールを送ったら返事が無くそれっきりになってしまった事も……。 本気にはなっていなかったけどそれなりに傷ついた記憶もよみがえってしまって胸の奥がチクチク痛む。 が、そのせいでリアルセックスを避けていた訳じゃない。 さっきも言った通り俺自身が積極的に動かなかった事や仕事に没頭してた事、そして何より、俺みたいなモブ顔なんかモテないってのを十分理解していたからだ。 「あ~、なんか昔のことを思い出したら酔いがすっかり醒めちまったぜ。それに眠気まで飛んじまった」 時刻はとっくに午前1時を過ぎていたが、ぽっかり胸に空いた空白は物理的に埋めてやらないとな。 棚からお気に入りのディルドを取り出しバスルームに向かった。 「たまにはアナルをたっぷり弄ってやんねぇと」 簡単にシャワ浣をしたらローションをディルドに垂らして干乾びたケツマンコにズブブと飲み込ませていく。 「うぅ、キッツ、つぅ……、あぐ、う、久しぶり、だから、すっかり閉じちまってやが、る、ぐっ、ぅう、んっ」 圧迫感の中から快感の息吹が生まれるまでに少々手間取ってしまったものの、ムクリと起き上がった淫らな心地良さを見逃さずに掴んだら、あとはあまり力まず自然に任せるようにしてディルドの感触をケツ穴で確かめるのみ。 そうすれば俺みたいな冴えない男でも蕩ける様な快感をケツでたっぷり味わえるのだから。 「ん゛っ、ぁああ、イイッ! ケツがぁ、キモチ、イイィ゛ッ!」 ディルドでのアナニーは気持ちいい。ちゃんと動きに合わせて快感を流し込んでくれる。 それでもやっぱ、リアルなセックスを、人肌の温もりを感じたい。好みの男と愛撫し合って、甘い囁きにドキドキしながらディルドではなく生のチンポでケツ穴を貫かれたい。 そんな切ない気持ちがアナルにも響いたのか、前に使った時よりもディルドが本物のチンポのように感じられた。 「んぐぅぉおおお! もうっ! い、い゛ イグ! イクイクイクゥゥゥーーーーー! ウゥ゛ッ」 ビュグッ! と噴き出たザーメンの匂いが腹に沿って立ち上って来る。 アナルの奥がビクビクとディルドをしゃぶり続けている。 「……はぁ、はぁっ、はぁ、キモチイイ……、でも――」 でも、独りでは埋めきれない虚無感をも強く感じてしまった俺は、オーガズムの息を吐き出しながら酷く惨めな気分になっていた。

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