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鷹取リュウゴ
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秘密の男娼サブスクリプション 11

一夜明けて、ダチの直樹ってばやけに機嫌がよくなっている。 昨日のゲッソリとした表情とは打って変わって。 しきりに調子がいいと口にする上に俺と交際したいとまで迫って来た。 急に何を言い出すんだ、とやんわり逃げていたら送迎タクシーの運転手がやって来た。 「会社からのお手配でお迎えに参りました」 おかしい。 どケチな上司が俺のためにタクシーなんて用意するはずがない。 となると、騙して俺をどこかに連れて行こうとしているに違いない。 タクシーへの乗車を拒否したら運転手の男はドロリと融けて饅頭みたいなスライムになり、次に元の中年のオッサンではなく若くて金髪ソフトモヒカンの巨根マッチョになっていた。 ******* 11スライム細胞とナノマシン  「あれ? なんか、やけに調子がいい……、うん? これは……」 翌朝、直樹の声で目が覚めた俺はすぐに会社の上司に本日は体調不良のため休みをくれと嘘の連絡を入れた。 すると、上司も思う所があったのか疑いもせずサクッと休むことを許可してくれた。 あまつさえ「どうせなら完全に回復するまで3~4日休んでおけ」とまで。 俺はその言葉に甘えて今週いっぱい休ませてもらう事にした。 きっと上司は失踪した社員の事で俺以上に翻弄されているのだろう。部署の中では染野一人だけだがそれでも部下の一人と連絡がつかない事態がいかに最悪かくらいは想像に難くない。 俺なんぞに構っていられない、ってのが本当のところだとイメージできる。 そんな社内事情はさて置き、いやに起き抜けから明るい直樹の様子が気になっていた。 「朝っぱらから元気そうで何よりだが、どうしたんだよ?」 昨日とは別人のように目の下の黒い隈が消え、俺の記憶にあるシャキッとした直樹に戻っていた。 「あぁ、いや……、調子が凄く良いんだよ。特にスライム化した右腕がしっかり安定してるっつうか、気を緩めても勝手にスライムにならないと言うか……」 「安全な隠れ場所でぐっすり眠れたから?」 「う~ん、それもあるかも知れないけど、これって……、これはまるで、状態安定化ナノマシンを体内に取り込んだ直後に似ている……」 「なら良かったじゃん。体内に残ってるナノマシンが頑張っているのかもな」 「う~ん……、そういうレベルの調子の良さとは一線を画している感じなんだけどなぁ」 スライムに変化する右腕をさすりながら何度も曲げ伸ばしを繰り返していた直樹が俺を見て微笑んだ。 「うん、やっぱ春孝と一緒にいると安心する。すごく居心地がいいんだ。だからさ、俺らこのまま付き合わない?」 「バカ言うなって」 「セックスしてしみじみ思ったんだ。カラダの相性抜群で、変に気張らず自然体でいられるお前となら、俺、もっと色んな事に頑張れる気がする」 「実家の工場をほったらかしにしてこっちへ来れんのかよ?」 「今だって工場長にはメールで指示を出してるし、それに、俺はモノづくりよりもセールスの方が肌に合ってるから一人ぐらい居なくなっても問題はないさ」 外堀を埋めて来やがったこの野郎。 「じゃ、じゃぁさ、今は状態が安定していてもしばらくすりゃ腕の状態がまた不安定になるんだろ? 新しいナノマシンはどうやって手に入れるつもりなんだ?」 「……むぅ、やっぱソコがネックになるよな。一か月おきに新しいナノマシンを取り込むことも大事なんだが、いつ何時右腕以外の部分までスライムが拡大するかが未知数でさ。 もしかしたら死ぬまで右腕だけなのかも知れないが、そいつは俺の希望的観測に過ぎないし」 右手と一緒に左手を前にして開いたり閉じたりを繰り返す直樹。 「ま! 気持ちまで不安定になってちゃダメだ、ってお前のチンポを味わってる時に気付いたんだ。だからさ、俺と付き合って俺を支えてくれないか?」 一周回ってまたこういう事を言う。 「直樹の方は俺の支えにならねぇのかよ?」 「今すぐは難しい。だけど、そうなれるよう努力する。……って、こんな告白じゃあやっぱキツいっすか? 『四万 春孝』さん」 「いきなりさん付けで呼ぶな。変に意識しちまうだろうが」 「それを狙ってるんだけど?」 「お前なぁ……」 ここで立ち上がった直樹の手が俺の肩を掴んだ。迫る直樹の顔、そして唇。 ダチとしてではなく一人の男として直樹を見れば、俺なんかよりもイケメンで、性格も明るくて話し上手で、口許だってキリっとしていて、 柔らかそうな唇がとても気持ちよさそう……。 ピーンポーン♪ 「……ぅひっ!?」 「くそっ! もう少しだったのに!」 あと2cmで俺と直樹はキスするところだったがインターホンが鳴った途端、直樹は青ざめクローゼットの中に隠れてしまった。 まさかもう直樹の追っ手が俺と一緒に居る事を嗅ぎ付けたのか? 恐る恐るカメラに映る映像をモニターで確認すると、サスペンダー付きのYシャツに蝶ネクタイ、そして黒い制帽を頭に被っている実直そうな中年の男が映っていた。 『恐れ入ります。〇〇タクシーの斧田、と申します。会社の方からのご依頼により四万様をお迎えに参りました。ご在宅でしたらどうぞよろしくお願いします』 タクシーの運転手が俺を迎えに? 運転手以外に人影は見えない。 が、どうも奇妙だ。朝一で数日休んで良いと上司から許可をもらったばっかだぞ? 「すみません。どこの会社でしょう? 俺は今週いっぱい休むと連絡を入れたばかりなんですけど?」 『さようですか。ただ、私も詳しい事は存じ上げませんので何ともご説明は致しかねるのですが、四万様を迎えに行けとだけ依頼されましたのでこうして伺った次第です』 揺さぶってみたけどボロが出ない。 堂々と応じる運転手の様子に俺の方が動揺する。やっぱ上司の気が変わってただちに出社せよ、となったのだろうか? 「じゃぁ、タクシー料金の事もありますので一度上司に確認してみます」 『いえ。先に頂いてますので料金は一切発生しません。速やかにご乗車ください』 「先に?」 『はい』 これは嘘だ。 ケチな上司が俺を呼ぶために身銭を切る筈がない。 飲み会でさえ割り勘で太っ腹を見せたためしがない上司なのに。 「せっかくですがそのタクシーには乗れません。私の上司はとにかくケチ……、いえ、金銭の管理にうるさい人ですので私を出社させるためなどに迎えの車を手配する訳がありません。とにかくお引き取り下さい」 ここで初めて柔和な表情が曇った。 『困りましたね……、ここまで慎重だとは』 「とにかく一旦お引き取り下さい。俺からは以上です」 『お、お待ちください! 実は会社からの迎えではありません! 実はあなたに協力をお願いしたく伺ったのです!』 「はい? 協力? 俺に?」 『そうなんです。騙そうとしてしまい誠に申し訳ありません。きちんとお話いたしますので少しだけでも聞いて頂けませんか?』 「あれ? この人……、俺にナノマシンをくれる協力者さんだ」 いつの間にかクローゼットから這い出て俺の背後に立っていた直樹がインターホンのモニターに映っている人物を見て呟いた。 「えっ!? この人って直樹にナノマシンをこっそり渡してた人だったのか!」 となれば事情が違う。 直樹にも関わるし、俺に協力して欲しいってのも気になる。 ひとまず直樹には再びクローゼットに隠れてもらってからタクシー運転手を部屋の中に招き入れた。 「ありがとうございます。そして、あらためて嘘を吐いてあなたを連れ出そうとした事をお詫びします」 正座して深々と頭を下げたタクシー運転手は改めて名前を『斧田 塔矢』だと名乗り、自身の事を俺に伝えた。 「私、タクシーでお客様を運ぶのが本業なのですが、四万様がご利用中のサブスクリプションサービス『ヴァンキッシュ』にも所属し、副業をさせて頂いている者なのです」 「と言うことはヴァンキッシャーって人ですかね?」 「おや? その呼び方をご存知と言う事はある程度我々について知っていらっしゃるのでしょうか?」 もてなす意味ではなく単に自分の咽喉が乾いたからついでに斧田さんにも冷たいお茶を用意した。 「わざわざありがとうございます。では、遠慮なく」 コップに次いだ冷やし緑茶を一口飲んだ斧田さんはもう一度俺に礼を伝えた。 「それで、俺に協力して欲しい事ってのは何なんでしょう?」 「まず、結論からお伝えします。四万様に我々を救って頂きたいのです」 「はい? 救う? 俺が、えと、ヴァンキッシャーの皆さんを?」 「その通りです。私たちは今、非常に危い状況に陥っているのです」 「具体的に言いますと?」 「ヴァンキッシャーのほとんどの者が一昨日より肉体の制御が不能になってしまい変身が維持できないのです」 「変身、ですか。斧田さんもヴァンキッシャーとおっしゃってましたがあなたも変身されるんですか?」 「はい。もちろんです。よろしければご覧になりますか?」 変身なんて荒唐無稽だけど興味が無い訳じゃない。俺は「ぜひ」と応じた。 すると、斧田さんのカラダがドロドロに融けて透明な水まんじゅうみたいなスライムの塊になったかと思うと、すぐさま形をヒト型に戻し、 派手な金色ソフトモヒカンの髪に褐色の肌を備えた筋肉ムキムキのボディビルダーになった。 ついでに言うと全裸なので股間にぶら下がっているイツモツも丸見えで、馬のペニスみたいに扁平なズル剥け亀頭を備えた超巨根だった。 「とまぁ、こんな風に変身できんだが、これで納得いったか?」 声と口調の変化に絶句してしまう。見た目的には似つかわしいけどさ。 「あ~、悪ぃ。変身してこの姿になると性格や言葉遣いも変わっちまうんだ。しばらくは我慢してくれ」 「りょ、了解……」 それにしても筋肉のボリュームが半端無い。おまけにチンポがでけぇ。俺はウマナミ巨根にどうしても目が行ってしまうのを抑えられなかった。 「俺のチンポに興味深々みてぇだけど後にしてもらえるか? 先に聞いておいてもらいたい事があっからよ」 「う、うす!」 「だはははっ! そう身構えんなって! 変身してもお前を取って食う訳じゃねぇからさ!」 そう言って笑った斧田さん改め「トウヤ」は残りの冷やし緑茶を一気に飲み干した。 ◇  「その研究所ではスライム細胞を創る事が目的ではなく、ナノテクノロジーを使って細胞を強化するとか若く保つなんかを主として研究してたんだが、ある時、実験中に偶然生まれたのがスライム細胞だったらしい」 トウヤは自分のカラダを構成するスライム細胞の誕生から語りだした。 が、若干長いので大きく割愛。 俺に関係がある部分までまとめると――、 ――例の感染症の煽りを受け研究所を支えてきたスポンサーがいくつか撤退した。故に研究所の存続が大ピンチに陥った。 しかし、これまでの研究の成果を用いてアダルトサブスクリプションサービスを開始したら、破竹の勢いで増えて行く会員から上がって来る月々の基本料金だけではなく多額のチップも莫大な収益となって研究所を潤すようになっていった。 しかし、そうなると人間、欲がさらに出るもので、より多くの収入を得るためさらに会員を増やし、増えた会員にサービスを提供するスタッフも増員しようとした。 結果、望んでもいない人間にまで強引にスライム細胞を植え付けヴァンキッシャーにしてしまうようになっていった。 「俺なんかはよ、自殺してぇとほざく奴や、もう人間なんかやめてぇなんて言う奴に限ってスライム細胞を与えていたんだぜ? 無理矢理ヴァンキッシャーにしちまってもロクなコトにゃなんねぇって思ってたからよ」 ひと月ほど前のある日、変身状態が安定しないヴァンキッシャーを研究所へタクシーで緊急搬送した。 ヴァンキッシャーたちからボス、と呼ばれている若い研究員は「まだ開発途上のナノマシンだけど人としての記憶が消え去ってからでは遅いしね」とその新型ナノマシンをヴァンキッシャーに与えた。 「聞けばよぉ、ナノマシンに搭載されているデータのたった一行だけが今までのナノマシンと異なってるんだと。 その一行ってのが、『ナノマシンはナノマシン自身を護れ』、てな文言らしい。 ただ、その一行のお陰で毎月のように新しいナノマシンを体に注入する必要がなくなって、それぞれのヴァンキッシャーの自由度は格段に上がるんだって、ボスは笑って語ってたんだがな」 しかし、付け加えたその一行がもたらしたのはヴァンキッシャーの自由などではなくヴァンキッシャーの完全なる『奴隷化』だった。 ヴァンキッシャーのカラダは新型ナノマシンにとってただ単に都合のいい器。ナノマシンを護り、増殖させるためだけに存在する苗床なのだと開発者の意図しない方向へ向かって行った。 「ややこしくなっちまうから新型ナノマシンは『ミュータント(変異株)ナノマシン』と呼ぶことになった」 でもって、まっさきに餌食となったのがミュータントナノマシンの危険性に気付いたボスだった」 ボスを手中に収めたミュータントナノマシンは次にマザースライム細胞をカラダに宿すコーディネーターたちを狙った。 コーディネーターはボスとトウヤを含め5体存在していたが、ボスは真っ先にトウヤ以外のコーディネーターをミュータントナノマシンの奴隷に変え、その指示に従って動く肉人形にしてしまった。 「普通のナノマシンみてぇに腕に一発ブスっと注射を打つ程度では既存のナノマシンに数で負けちまうんだ。一つ一つがいかに強力だとだとしても、だ。 それなりの量を相手にまとめてぶち込まねばなんねぇ。その方法ってのが手っ取り早く言やセックスだ。 だもんでミュータントナノマシンを相手に植え付けるにゃミュータントナノマシンがたっぷり含まれてる精液を大量に飲ませるか、アナルに何発も種付けして奴隷に変えていったのさ」  初めの内は拡散のスピードが鈍くとも、それでもミュータントナノマシンの肉奴隷になったヴァンキッシャーは日に日に増えていった。 ヴァンキッシャーでないのなら人間にスライム細胞を与えて無理やりにでもヴァンキッシャーにしてしまう事例もさらに増えた。 そもそも定着率が2割に満たないスライム細胞をむやみに人間に与えたからと言ってそう簡単に全員がヴァンキッシャーになる訳ではない。 秘密保持の点からもスライム細胞を人間に与えるのは慎重に、相手の適正の有無を見極めてから行うべきだとトウヤはボスに、そして他のコーディネーターにも強く意見した。 だが、返って来たのは冷ややかな目と、信じられない言葉だった。 「『秘密などどうでもいい』、と言いやがった。有り得ねぇ……。俺らの存在が世間にバレりゃ大騒ぎになるに決まってんのによ。 なのにボスもアイツらも俺に『そんな事よりもセックスしよう』って迫って来やがった。この時点でやっと俺は気付いた。 ボスたちはイカれてやがるってな」 ただ、ミュータントナノマシンにとって盲点だったのはヴァンキッシャーは一体につき「一体」だけでは無い事だった。 「実はボスもよぉ、こっそり自分の予備のカラダを別の場所に置いてあったんだ。ただ、そっちまでミュータントナノマシンに発見されちまっては今度こそおしまいだからってんで、今のところこっちから連絡を取るのは不可能だ」 「予備のカラダって?」 「ああ、俺らヴァンキッシャーのカラダを構成しているのはスライムだから自由に分裂できるんだ。こんな風にな――ふぬんっ!」 グニャグニャと歪んだトウヤの背中がメリメリと盛り上がっったら、その中から金髪モヒカンが頭を出し、グチュ、ズルンと這い出て新しいトウヤが元のトウヤの横に並んだ。 サイズも見た目も全くの一緒。うり二つのマッチョ馬チン巨根。 「うわ、すご……」 「「これで驚いてもらってはダメだぜ」」 同時にしゃべった2体のトウヤはさらに分裂を繰り返し、あっという間に10体ものトウヤが俺の前に姿を現した! 「「「「「とまぁ、こんな風にいくらでも数を増やせるんだ」」」」」 10人がいっせいに話すからもの凄くエコーが掛かったように聞こえてしまう。 だが、ここまで増えたら部屋ん中が窮屈過ぎる! 「「「「お披露目はこれぐらいにしとくか」」」」 トウヤは次々と合体し、また一体だけになった。 「そんなに凄い事ができるのに……、俺なんか何もできないただの人間なのに、どうして俺に救って欲しいだなんて頼ろうとするんだ?」 「理屈はまだ解明されちゃいないんだが、お前の精液を浴びたヴァンキッシャーはミュータントナノマシンの支配を防いだんだよ。 セイタやカイト、リョウにレンジにカエデって名に覚えがあるだろ? そう、フリートライアル中にお前とセックスした5体のヴァンキッシャーだ。 あいつらも騙されて今やミュータントナノマシンの巣窟になってるCAIの本部に入っちまってよ、ボスたちの精液をケツに仕込まれちまったんだが、肉奴隷にゃならなかった。 5体の共通点は何だ? って探ってたらお前さんとのセックスが浮上したって訳さ。フリートライアル最終日にもアイツら全員とおもいきりヤりあったろ? それならお前の精液には特別な何かがあるに違いねぇ、ってな」 「俺の精液が特別? いや、そんな訳は無いと思うけど……」 ここでクローゼットのドアがバンッと開け放たれた。 「いや! やっぱそうだったんだ! 春孝の精液は特別だ! 俺の腕がこんなに安定してるのは春孝の精液を取り込んだからに違いないぜ!」 「直樹! おま! 出てきちまって大丈夫かよ!」 「大丈夫さ。だってそのトウヤってやつは斧田さんでもあるんだし。俺に安定化ナノマシンをこっそり分けてくれていた恩人だから……」 「花園! お前、こんな所に隠れてやがったのか。いやぁ~今回は悪かった! 待ち合わせの場所に行けなくってよ! なんせ俺自身が追われていたし、ヤバい仲間を安全な場所まで急いで運んだりと東奔西走してたんだわ!」 ここで俺と直樹とが友達同士で昨晩からこの部屋に匿っていた事情を簡単に説明した。 「なるほどな。つまり春孝は早くも一人救ったって訳だ! いやぁ見込んだ甲斐があるってもだんぜ! わははは!」 しかし、ピタッと笑いを収めたトウヤはまた真剣な顔つきで俺に頭を下げた。 「頼む! 春孝! お前しかいねぇ! お前の力を貸してくれ! ヴァンキッシャーになって人生をやり直してる連中だって大勢いるんだ! 俺はそいつらを見捨てられねぇ! ミュータントナノマシンの! データなんぞの肉奴隷のままにしたくはねぇんだ! なぜか直樹までトウヤと一緒になって頭を下げている。 「なぁ春孝~! トウヤさんに協力してやろうぜ?」 「いや、あのな直樹。お前、昨日まであんなビクビクしてたくせになんで今日はやたらと積極的になってんだよ? トウヤさんはお前に友好的なのかも知れないけど他のヴァンキッシャーの人たちは違うんだろう? だったらお前も俺も関わるべきじゃないじゃないか」 「言うべきか否か迷っていたが、ええいっ! ここまで事態が悪化してる時に躊躇ってる場合じゃねぇ!」 一人で悶絶していたトウヤがバッと俺の手を握った。 「えっ?!」 「あのな春孝。セイタやカイトはお前の会社の社員だ。本業はサラリーマン、副業として『ヴァンキッシュ』で仕事を請け負うヴァンキッシャーをやっている」 「はぁ!? そうなんですか!?」 「そうだ。俺があいつらの秘密を種明かしするなんざ本来やっちゃいけねぇんだが事が事だけに今は特例だ。 ……セイタは『染野 聖太』、カイトは『笛吹 魁人』と名乗って働いている」 「染野! 笛吹も!? 二人がヴァンキッシャーだったのか!」 「そうだ。恐らく今、巷を騒がせている大量失踪事件で失踪してる奴らはみんなヴァンキッシャーだ」 「じゃぁまさか、隣に住んでい梅室さんや、彗星学園の磐城先生も……」 「そのまさか、だ。何度も言いたくはないが本来は本人の許しがあっても口にすべきことじゃない。が、春孝にどうしても協力してもらいてぇからタブーを犯して話させてもらった」 「……そうか、失踪しちまった染野も笛吹もヴァンキッシャーだったのなら協力するしかない。アイツらは会社の後輩と同僚でもあるし、何より、セイタともカイトともまたセックスしてぇって俺は思っている」 「は、春孝……」 ホッとしたような、それでいて寂しそうな顔を向ける直樹。すまねぇ。俺、お前と付き合う資格は無ぇよ。だってお前以外の奴ともセックスしてぇと本人の前で言うような奴なんだぜ? 「よっしゃ!! それじゃぁ早速俺のタクシーに乗ってくれや! 急いで『アイツら』と合流しねぇと!」

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