触手が俺の脳を、意識や自我、精神的な面までカラダと同じように作り変えた事を理解していた。 なのに冷静に受け入れ、そればかりかこの状態に喜びを感じているのもまた触手に依るものなのだろう。 それでも記憶はある。人間的な意識も有る。 性欲の対象は男に切り替わったものの何の問題も無い、と感じている。 いま、目の前には俺由来の触手に寄生されて出来上がった新たな触手人間がゆっくりと立ち上がろうとしている。 触手を材料とする皮から吐き出され、白く生臭い湯気をまとうマッチョな触手人間が。 「……キミで3人目。どうだい? そのカラダ、気に入ってくれただろう?」 腋やアナルからズリュズリュ触手を出したり引っ込めたりして確かめていた男が俺に顔を向けた。 「最高だ。心から礼を言うぜ」 「いや、礼には及ばないさ。代わりにキミを主人公にした小説を書かせてもらうつもりだし」 「俺をネタに?」 「ああ。『触手配達員の淫乱デリバリー』なんてのを思いついたんだ。リアルに表現したいから近いうちにキミの仕事に同行させてもらえるかな?」 「俺の仕事に? それってまさか、配達と同時に俺の触手を受取人に寄生させろってか?」 「ああ。嫌ならやらなくてもいいけど、俺の目の前でやってくれたらご褒美として俺以外の触手人間ともセックスさせてあげよう」 「そのハナシ乗った。だが、その前にアンタをじっくり味わいたいんだが?」 俺は別室のドアを閉じると男に向けて触手を伸ばした。 男もまた仕上がったばかりのカラダから生える触手を俺のものに絡ませヌチュヌチュと響かせた。 さぁ、キミの触手を心ゆくまで感じさせれくれ……。 全身が震える快感と新しい物語を生み出すユニークな閃きを俺に与えてくれ……。 ******** 7触手絵描きと触手小説家 マッチョな外見に変える「触手スーツ」が繭の役割を終えると背面スリットがひとりでにベロンと拡がり、蛇が脱皮するかのように「中身」が這い出てきた。 「中身」とはもちろん新生した大久保クンだ。 カラダを覆う彼の触手がズルズル引き戻され全裸の大久保クンが現れる。 スーツを着る前よりも筋肉が肥大したマッスルボディ。股間には腕並みに巨大化したチンポが湯気を立てている。 顔は元と同じ童顔なままだからカラダとのギャップが凄い事になっている。 意識が戻る前にもう少し彼のアナルやクチマンを〇〇してやろうとチンポを向けたらむくりと起きあがった。 くそ、もう少しまどろんでいてくれても良かったんだけどな。 「……あの~、俺がスーツの触手に〇〇れている最中に何発アナルにぶち込んだか分かってるんですか? 9発ですよ? 9発。 ここぞとばかりにケツマンコを堪能してくれたみたいですけど、いい加減にしてもらえます? それに、アナルヴァージンと人間のカラダを同時に捨てさせるなんて、ほんと、マジ信じられない」 クレームを申し立てる割りに大久保クンの目は俺のチンポに釘付けだし、ヒクヒク亀頭が揺れて反応しちゃってるのがなんともかわいい。 「俺の執筆の役に立てるなら何でもしてくれるんだろ? だったら俺と同じ触手人間になってくれてもいいじゃないか」 「……その言葉を先に、人間の時に言われて俺が了解するとでも?」 「思う訳が無い」 「……はぁ。もういいです。そんな嬉しそうに欲情しきった顔で言われたらこれ以上はもう、何も言う気が無くなりました」 「大久保クンだって満更でもないんだろ? オカズにしてたマッチョな肉体にデカいチンポ。触手も生やせてぶっちゃけなんでも有りレベルのエロさを手に入れられてさ」 「終わり良ければ全て良し、じゃぁ無いんですよ? これから俺、どうやって生きて行けばいいんですか? 精液が主食になっちまってんですよ?」 「俺と一緒に生きて行けばいいんじゃない? 精液だって二人がかりなら何とかなるだろうし」 「またそんな能天気な……。でも、先生がどうしても、って言うなら――」 「どうしても。俺は大久保クンのアナルがとても気に入ったんだ」 大久保クンの頬が赤くなっていく。 「……本当にこんな人を好きになっていいのか俺……」 「ん? 何か言ったかい?」 「いえ、何でもないです。でも責任は取ってもらいたいので俺もここに引っ越してきます。いいですよね?」 「ええ~? 同棲するってこと? 部屋が窮屈になっちまうなぁ~」 「い・い・で・す・よ・ね!」 顔はかわいくてもカラダがゴツイから圧が半端無い。しかも凄く真剣だから思わずうんとうなずいちまった。 「今後は俺が先生のパートナーとして迂闊な行為をしでかさないよう見張らせて頂きますからね!」 大久保クン、触手人間になったせいでこんな性格になったのか、或いは元々こうだったのか。 「え? 見張る? いやいや、そんなに俺信用ないの? 誰にでも触手を植え付ける野郎だと思われてる?」 「俺の親切心を利用して触手付きスーツを着せて、身も心も触手に堕とすような人をどう信用せよ、と?」 「あっ、はい。すみませんでした……」 不意に大久保クンがぷっと噴き出した。 「もう……、なんなんですか? この会話。……憎めない人ですね、先生って」 「そう? だったらもう一戦ヤらないかい? 俺が触手の扱いをもっと教えてあげるよ」 脇から生やした触手をズルルと大久保クンに巻き付けた。 「そんなの教えてもらわなくたってちゃんと頭の中に刻み込まれていますから。先生はただ単に俺のアナルで気持ち良くなりたいだけなんでしょ?」 「まぁね」 「そこは嘘でもいいから違うと言って欲しいんですが」 「逆だよ。あれこれ言ってるけど本音は実にシンプルでさ、大久保クンのアナルに俺はメロメロになっているんだ。 だからその点について嘘は言えない。他はいくらでも言えるけど、俺は本気さ」 「物書きってホント、なんでも上手く言いますよね。アナル以外の部分も本気になって欲しいんですけど」 「それはこれから、かな。色々と試してみない事には分からないし」 大久保クンが俺の触手を掴んで口に咥えた。 「う! イイッ! 気持ちイイ!」 ニュブニュブ舐めながら俺を見つめる。何かを期待するような視線が俺の胸を、触手どもを熱くざわつかせる。 「先生と同じで俺も色々試させてもらいます。小説のネタになるような事もいっぱいしてあげますから覚悟してくださいね」 ギラついた欲望を向けたかと思うと背中からたくさんの触手を伸ばして俺の手足を拘束した。 「先生に差し上げたあのイラスト。マッチョな男が触手に〇〇れてよがり狂ってた絵ですけど、あの絵を描いてる時、俺は男じゃなくて触手の側に立って描いていたんですよ? そんなことをいつも考えてる俺に触手を与えたらどうなるか? ええ、そうです、今から先生をあのマッチョ野郎と同じ目に遭わせてあげます。 俺の触手であらゆる部位を〇〇れ、嬲られて〇〇的に精液を搾り取ってあげます。覚悟してください」 「ま、待った待った! それって俺が大久保クンにしてあげようと……」 「先手必勝です。今度は俺に〇〇れて俺のチンポと触手で絶頂しまくってもらいます」 伸ばした俺の触手は全て大久保クンの触手に封じ込められてしまった。四つん這いにさせられた俺は尻をクッと高く引き起こされた。 こうなればもう、アナルに触手を生やしてぶち込まれる大久保クンのチンポを触手責めにしちまおうと尻奥に力を込めた。だが一向に生えてくる気配が無い。 あれ? なんでだろう? 「先生、ケツ穴をそんなにヒクヒクさせて、俺のチンポがそんなに欲しいんですか? となると俺も期待に応えないといけませんね。 俺、先生の精液が一滴も出なくなるまで先生のアナルを責め続けます。先生が無理だと拒んでもずっとチンポをぶち込んで種付けし続けるつもりなので」 「そいつも俺がヤろうとしてた事じゃん! つか俺、精液が尽きる事は無いから終わりが無いってぁっぐぅっ! ぬぐぐぐぅぅぅっ!」 大久保クンのデカいチンポが俺のケツに入り込んできた! ドクドク流れ込んで来る淫液、いや、熱く脈打つ太い肉棒の感触が最高にアガる! 痺れるような快感がせぐり上がってより深いところで大久保クンを感じようと内部へ引きずり込んでしまう! 「ううっ、すげ、ケツの中に、先生に! 吸いこ、ま、れるっ!」 俺の両腕を掴んで腰を前後にピストンし始めたらもうダメだった。 下半身に力が入らなくなるほどの快感がアナルから流れ出して、俺のカラダの全てがオナホにでもなったかのように大久保クンのチンポを感じ取っていた。 「す、げぇ、もっと、もっとぉ! 俺に! 俺にチンポを! ケツん中が融けるっ! 気持ち良くてドロドロになっちまう! ああ、もっとくれぇ! チンポぉ! チンポ堪んねぇ! デカいチンポで俺を狂わせてくれぇぇぇーーーーーーっ!」 イキそうになったら大久保クンの極太触手が先端の口をグパァと拡げて俺のチンポをずっぽり飲み込んだ! 「ぐひぇぇぇーーーっ! イイ゛ーーーッ! イグイグ! キモチ良すぎるぅぅぅーーーっ! チンポの中にも触手が! 入り込んでるっ! ぎひぃぃぃ! ザーメン出るぅぅーーーっ! イグゥッ! 出ちまうぅぐぐぐ、ぐひぃぃーーーーーっ!」 ◇ 大久保クンが引っ越して来たのはそれから一週間後。 荷物置き場にしていた部屋を空けるだけで良かったのは彼が持参した荷物がそれほど多くなかったからだ。 その間に起きためぼしい事と言えば、新作を書き始めた俺の様子を見に来た編集が、いつの間に見つけたのか「触手スーツ」を勝手に着て、勝手に触手人間になっちまっていたことだろう。 執筆作業に夢中になって2時間後、ふと手洗いに立ったらクローゼットの前で触手繭状態になっていたのだから是非もない。 仕上がってから気が済むまで俺とセックスして触手の生えるカラダにも満足した奴はこんな事を言い出した。 「これからは私が先生の身もカラダもお世話したいと思います。なのでこちらに同居しても?」 身もカラダもってどっちもカラダじゃねーか! と言うツッコミはしないでいたけど、もちろん俺は断った。 数日後には大久保クンが来る手筈になっているのだから。 これ以上俺の生活スペースを狭められてはたまったもんじゃない。 「俺以外の作家さんの面倒はどうすんだよ? これからデビューする予定の新人さんも受け持っているんだろう?」 断られて凹んでいる編集にもう一つ。 「それとな、お前は他の男に触手を植え付けるの禁止。特に作家さん相手には、だ。何故って? そんなもん少し考えりゃ分かるだろ? パワハラ扱いされちまうぞ?」 俺の言葉の半分はもちろん偽善。半分は建て前。 触手を植え付けられた者にとってはパワハラだなんて微塵も感じない筈。なのに禁じたのはある予感があったからだ。 「これ以上同類が増えたら俺の周囲が騒がしくなるに違いない。となると、セックス相手に困らなくなる以上に執筆の妨げになっちまう。 なぁ? 触手の『俺』だって騒々しいのはごめんだろう?」 その通りだ、と頭の片隅で肯定する意志を感じた。 「精液が欲しくなりゃ触手でいかようにも人間から搾り取れる。もちろん相手にバレないようにな」 それでもグチグチ俺との同居を求めていた編集にこう告げた。 「我慢できなくなったらいつでも来い。俺か大久保クンが相手してやるから。ひとまずそれで様子を見てみろって」 『また俺の知らないところで勝手に決めてる!』と大久保クンに叱られちまうなと思うものの最後はきっと許してくれるだろうと確信している。 何せ編集は俺よりもイケメンで俺よりも良いカラダになっちまっていたからだ。 まさに大久保クンが描いていた触手に〇〇れているイケメン野郎のように。 それはひとまず置いておいて。 大久保クンが引っ越してきた翌日、まるで状況を見透かしたかのようにお隣りの須崎さんが訪れた。 「おお~! 朝霧さん、見違えましたよ。そんな素敵な体格になっておられるという事は、雲居さんから貰ったアイテムをお使いになったんですね?」 「ええ。結局は使っちゃいました。最初は信じていなかったくせに今は感謝しかありません」 「それはそうでしょう。効果の凄さだけは使用しないと実感できませんし。ところで――」 「はい?」 「もう雲居さんの所へお話には行かれました?」 「いえ。まだですが」 「あの人、アイテムを渡した人に代金としてお金よりも経験談を求めるんですよ。これから会いに行く予定なんですけど朝霧さんも一緒にいかがですか?」 「一緒に? それでは須崎さんと雲居さんの邪魔になるだけでしょう?」 「……もしかして、俺たちの関係、察してます?」 「ええ、なんとなく。凄く親しそうでしたし、男の世界を知った今となっては態度の一つ一つが何を意味していたのかも理解できますから」 ここで大久保クンが寝ぼけ眼で触手を生やしたまま俺たちの前に出て来てしまった。 昨夜徹夜で俺の小説の挿絵を描いてくれていたせいだ。 「お、大久保クンっ! ソレ! 戻して! 早くっ!」 「うん? ……うわぁっ!?」 急いで部屋に戻ったけど時すでに遅し。バッチリ見られちまった。 「あ、あの――」 「いいですね。俺も触手を生やしてみたくなりました。生やさなくたってお二人とセックスしたいものですが」 「す、須崎さん?」 「あはは。俺だってこう見えてカラダやチンポには自信があるんですよ。ただ、やっぱり雲居さんにこれまでの色々をいっぱいお話してあげて下さい。 なんでしたら先ほどのあの方もご一緒に」 「大久保クンも?」 「はい。雲居さんは人間が大好きですから」 なんだか雲居という人物が人間では無いと仄めかされているような? 俺は部屋の影に隠れた大久保クンに経緯を説明して須崎さんと一緒にあの不思議な雑貨店に向かう事にした。 住んでいるマンションの隣りにあるくせに今の今まで微塵も行ってみようとは思いつかなかった『慰昆堂』へ。 「その前にちょっとだけお時間をください。雲居オーナーにお話する前に新しい触手ネタを思い付いたものですから。 今度のネタは特異な能力を持つ超巨根の隣人と触手人間が人外の経営するショップで知り合い、肉体関係を結ぶという内容です」 須崎さんが心底驚いたと目を丸くした。 「なんで分かったんですか? 俺が超巨根だって。いつかの折に口に出していましていましたか?」 「いいえ、ただの思いつき、だったんですけど……」 「凄いな……。『事実は小説よりも奇なり』って言いますけど、朝霧さんと大久保さんが同意して下さるなら、その小説ネタ、事実にしてみませんか?」 須崎さんのデカいブツがスラックスを押し上げビクビクしてやがる。 その先端を追えば腹部ではなくネクタイの結び目の辺りになっていて俺も大久保クンも唖然としてしまった。 「頑張って半勃ちくらいには抑えてはいるんですけどね。いやはや、すみません」 「「それで半勃ちかよ!?」」 シンクロした俺と大久保クンの声に須崎さんは照れ臭そうに頭をコクっと下げた。 男臭くてカッコイイ男が見せる隙だらけの仕草の破壊力。大久保クンまでぼーっとしちゃって、凄まじいの一語に尽きる。 「事実にしてしまうのはやぶさかではないんですけど、須崎さんの事までネタにしちゃって良いんですか?」 「構いません。それで朝霧先生の作品が一層エロく輝いてくれるのなら。先生の大ファンである雲居さんも喜ぶでしょうし」 その言葉の裏には須崎さんが雲居オーナーをどれほど思っているのかが窺えた。 ――他の男とセックスしようとも揺るがない絆。 俺は思わず大久保クンを見つめた。彼と俺も須崎さんたちのような強いつながりをこれから築いていけるのだろうか? 大久保クンが俺を見返して呟いた。 「任せて下さい。触手小説家『出釜 乱人』先生の作品を一番最初に読んでオカズにするのは俺ですから。これから先ずっと……」 「それじゃぁ大久保クンの全触手がイけるほどのエロい作品を仕上げなきゃいけないな! 色んな男を触手に堕としてインスピレーションをもっと高めて」 終 登場人物紹介 朝霧 礼(あさぎり れい)31歳 官能小説作家 ペンネームは『出釜 乱人(でかま らんと)』 スランプに陥り新作が書けなくなっていた。 大久保 飛鳥(おおくぼ あすか)23歳 イラストレーター 童顔のため高校生くらいに見える。 御剣 涼真(みつるぎ りょうま)30歳 某出版社勤務の編集者 担当作家のマネージャー的な仕事を担っている。 作品中に個人名は出てこず「編集」のみで表現されている。 雲居 アラン(くもい あらん) 年齢不詳 雑貨店・慰昆堂のオーナー。正体は蜘蛛の怪人。人面マスクで若い青年に擬態している。 怪人とは言え人畜無害だったが、須崎との出会いにより人間に対し更にフレンドリーになった。 売っている物はオーナーが買い集めた物だけでは無く、人づてに流れて来たモノも多い。 趣味は人間観察。 須崎 遼平(すざき りょうへい) 32歳 「雲居 アラン」のパートナー。慰昆堂の隣にあるマンションに住んでいる。 かつては慰昆堂の客の一人だったが、とある出来事によって巨大なペニスとマッチョなボディを手に入れた。 (詳しくはPIXIVに投稿済みの小説『糸』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8869045 をご参照ください)