オーガニックバイオスキンなる全身タイツを知った俺たちは、 脱童貞をするためそのタイツで女になって互いに童貞を捨てようと考えた。 宣伝によるとスキンを身に着ければほとんど本物の女になれると言う。 股間だって画像を見る限り雄ではなく雌にしか見えない状態になっていた。 バイトして頑張って貯めたお金を注ぎ込み、俺たちはようやく夢とドロドロな欲望を満たせるアイテムを手に入れたのだ――はずなのだが……。 「え? なにコレ……、この胸の膨らみは、パイオツではなく大胸筋? 待て待て! 股間のコイツってばマンコじゃなくてチンコじゃねぇか!」 返品は不可。お金は戻らない。 さぁどうする? どうしよう俺たち! ********** 1お届けもの 「ようやく来た……」 「ああ、待ちに待った俺たち二人の……」 密封された段ボール箱を前にゴクリと咽喉が鳴る俺と誠二。中身を傷つけないようテープを外し蓋を開けて中身を覗く。 「おお、これが――」 「『オーガニックバイオスキン』か」 注文した時の画像よりも若干肌の色が濃いようだ。だが、小麦色感があって健康的でいい。 ドキドキしながら緩衝材を外してビニールのパッケージごと中身を取り出す。 重たくはないけど軽くもない。素材が丈夫だからだろう。思ったよりもズシッとしている。 「こんなもので女になれるなんて、現物を見ても驚きだぜ」 「だよな。アソコもリアルに再現できます! って、どんなのか早く知りたい!」 誠二と俺がニヤリと笑う。股間はすでに勃起していた。期待でズキズキするくらいガチガチになっている。 それと言うのもこの3か月。バイトで稼いだ金をためて二人で半分ずつ出し合ってようやく手に入れた最新のアダルトグッズ。 着るだけで本物の女そっくりに変身できちゃう驚異のスキンスーツ・『オーガニックバイオスキン』がやっと届いたからだ。 注文通りに仕上がっているのならスキンスーツを着るだけで俺たちの欲望を細部まで具現化した女性型ラブドールになれると言う訳なのだ。 どっちが先に身に付けて女になるのかはじゃんけんで決めてある。 勝ったのは誠二。負けたのは俺。無念だが先に童貞を脱するのは誠二に譲らなくてはならない。 まぁ、交替で着る約束なので俺も後ほどマンコに嵌めれる訳だが。 「感覚をリンクさせるため素肌に直接着なくちゃダメなんだろ? だったらまずは二人とも全裸になっておこうぜ?」 「あ、ああ、しかし、お前に俺の裸を見られる日が来ようとはな」 「言うな和希。萎えちまうだろうが。ここに至った苦悩の日々を忘れたか?」 映えない、モテない、勇気がない。もちろんセックス経験も無い。ないない尽くしで童貞のまま今日まで月日を重ねてしまった。 コンパに参加すればモブ扱い。気になった子にアピールしてもスルーされ、街でナンパするほどの勇気も無い。 二十歳までには脱童貞! なんて誠二と共に頑張ってみたものの折れた心を立て直すだけで精一杯。何も無いままあっさり二十歳の誕生日を越えて今に至っている。 「おっと悪かった。女になった俺で思い切り童貞を捨ててくれ」 ◇ 「こじらせ童貞」二人が開き直ってバカなことをやろうとしている。その自覚はもちろんある。 だが、リアルで相手が見つけられないのならフェイクでもいじゃないか。 お互いに全身スーツを着てラブドールになってさ、本物じゃないけど女に変身して脱童貞を図るくらい良いと思うんだよ俺は。 そんな変身を可能にするアイテム、『オーガニックバイオスキン』なるモノの存在を最初に見つけたのは誠二だった。 朝早くに同じアパートの隣に住んでいる誠二が俺の部屋に飛び込んできて、手にしていたスマホを俺に付きつけた。 「な? 何だよ?」 「いいから、このページ読んでみろ」 鬼気迫る勢いだったものだから俺は誠二のスマホを受け取って表示されているサイトを読んだ。 『オーガニックバイオスキン』を着れば生身のラブドールに、超リアルな女性のカラダになれるとの事。 受ける感触や感覚がそのまま着用者に伝わり伸縮性に富んだ材質なので着心地も抜群。 サンプルの画像を目にした俺は、それがラブドールにはとても見えなかった。本物の女じゃないか。顔も肌もオッパイも、もちろん股間のアソコだって本物にしか見えなかった。 「すげぇな……」朝勃ちのブースト無く普通に勃起していた。 「だろ?」 誠二の目が語っていた。俺と考えている事は一緒だ、と。 追い込まれた童貞野郎の望みはただ一つ。この際、中身が男だろうが見た目が女ならば良し、と言う事。 溜まりに溜まった性欲に、好奇心の油を注げばたちまち埋み火は大きな炎へと燃え上がった。 誠二の手を強く握って握手を交わす。 「ぜってー買おう」 「和希ならそう言ってくれると信じてた」 ただ、値段が高い。学生の身である俺らにとってポンと払える金額じゃない。 「だが、払う価値はあるよな? 画像で見る限り本物と区別がつかねぇぞ?」 「期待のし過ぎは禁物だ。宣伝のために盛ってるだろうし。ただ、それでも期待しちまうな」 俺も誠二も頑張った。 講義が終わればバイトに励み、3か月かけてお互いに15万円もの大金を用意した。 望みを託して注文した商品が今日、今か今かと待っていた俺たちの元にようやく届いたのだ。 ◇ 「税込み価格30万円……。頼む、どうかその使い心地を俺らに余すことなく示してくれ」 誠二ったら手を組んでスキンに祈りを捧げてやがる。 俺も同感。せめて大ハズレじゃありませんように。費やした時間と金を無駄にしたと思わせないでくれ。 ビニールの中から取り出したスキンをゆっくり拡げる。実物を持ってみるとまさにホンモノの皮膚の質感。 「……あれ? 髪の毛、短くないか? こんなショートヘアにしてたか?」 確かに短い。短すぎる。肩にかかる長さの髪じゃない。 「あれあれ? サイズ、でかくね?」 確かにデカい。サイズ指定は無くフリーサイズだったけれど、これじゃぁまるで……。 「待て待て……。俺の見間違いか? 嘘だろ? 何で顎に髭があるんだ?」 頭部の、顎に当たる部分にラウンド髭があるではないか。髭をつけてくれと頼んだ覚えなど無い。 嫌な予感で冷や汗が流れた。 まさか、まさか―― 「ああ、もう、ダメだ……」 誠二ががくりと膝をついた。 俺も「その」部分を見て言葉を失った。 「在るよ……。在ってはならないモノが、在る……」 拡げて見えて来た股間部分。陰毛の繁みのその下に付いていたものは、細長い棒状「モノ」。要するにチンポ。ペニス、男性器……。 「バカな……。どうして『男』が届いたんだ?」 注文したのはひと月前。衛生上の問題で返品は不可だから慎重に女性型を選択した筈。間違っていたなど有り得ない。 もう一度スマホで注文履歴を確かめる。 「発送しました!」のメールから辿って商品サイトを、次いで注文のページにとんだ。 「……はううっ! そんな! 嘘だと言ってくれ!」 手が震えた。まさか! と、バカな! 二つの言葉が頭の中をぐるぐる回る。 俺は表示画面を出したままスマホを誠二に渡した。 「あ~……」 誠二も次の言葉が出なかった。 「どこで間違えたんだ? 誠二にも見てもらったのに!」 男性型、女性型を選択するチェックボックスにはしっかりと「男性型」にチェックが入っていた。 「分からねぇ……。どこをどう見落としたたんだ?」 髪の長さや皮膚の色、目や鼻の形、大事なオッパイのデカさやマンコの大小まで俺たちの欲望を受け止めるにふさわしい「見た目」と「パフォーマンス」になるよう事細かにカスタマイズして、ようやく仕上がった俺たちだけの女性型ラブドール化スキン。 なのに、なんて事だ。 最後の最後、チェックボックスを間違えてしまったがために見た目・サイズ共に「おまかせ」にて男性型『オーガニックバイオスキン』として注文を受け付けられていた。 覆水盆に返らず。 開封してもしていなくても商品の特性上返品は不可。 30万円もの大金と3か月の努力が水の泡と化した。 ミスった自分が悪いのは分かってる。だから余計に、無性に腹が立った。脱童貞のために捧げた30万円(一人あたり15万円)はもう二度と返ってこない。 誠二も無言なのは俺と同じくこの結果に憤っているからに違いない。何故もっと、もっともっと確かめておかなかったんだ。 こんな調子だから何度合コンに参加したって歯牙にもかけられず、SNSで知り合って、どうにかリアルに持って行っても会って5秒で「ごめんなさい」を言われちまうんだ。 萎えたチンポ。重く澱んだ空気。ネガティブな記憶が再生される。悔しすぎて涙が出ちまう。 黙ったまま段ボール箱に戻そうとした。その手を誠二が止めた。 「……んだよ?」 「まだだ」 「は?」 「まだ諦めるな。この文章を読んでみろ」 「うん?」 さし戻されたスマホに出ていたのは商品の宣伝の一部分。、 『――当オーガニックバイオスキンを着用し、ハイグレードな男性になって女性を魅了するもよし、同じ男性を――』 「……が?」 「こいつで『ハイグレードな男性』になって女を魅了しろとある。要はこれを着ればイケメンなれる。だったらまだワンチャンあるんじゃねぇ?」 「なるほど。それはそうかも……」 ひと筋の光明が見えてきた。さすが誠二。頭の回転が速い。 このスキンでイケメン男に変身すれば女を落とせるんじゃないか? 戻しかけた野郎タイプのスキンを見下ろす。そうだ……、俺の、俺たちの思い、努力、30万円……、このまま無駄に終わらせてなるものか! 「で? 着るのは、やっぱ……」 「和希、ハイグレードなイケメンになってみたいだろ? ジャンケンの結果だってお前が先に着ることになったし」 「わかった。ただ、マジで『使える』かどうか誠二の目で確かめてくれるか?」 絶望するのはまだ早いとは言え未確認のまま使うのは危険すぎる。注文した時と同じ愚を〇〇訳にはいかない。 ちゃんと『使える』のかチェックせねば。 運用する前に見た目、サイズ、着心地、等々を身に付けて確かめなくては。 「んっ、おお?……」 背中のスリットに腕を入れてみたら凄くキモチイイ。すべすべで、なめらかで、それでいて人肌みたいにシットリしていて吸い付いて来る。 両腕を入れたら次は下半身。 順に脚を通してチンポを細長い部分「袋」に入れ込む。 「ぅあ……、なんか、いい……」 着るだけで気持ちイイ。見ればニセモノの筋肉が本物みたいにピクピク動いて、血管までもがゴリッと浮かんでいる。 マジでリアル。まるでスキン自体が生きているみたいだ。 胸でだらんと垂れている頭部をいよいよ被る。目の位置を合わせて何度か瞬きを繰り返す。 誠二が「おお~!」と俺を見つめた。 「どうだ?」 俺の口から出た声は「俺」じゃなかった。 「うわ、声も変わるのか」 渋いイケボが口から出て我が耳に戻る。 触っていないのに背中のスリットがミチミチ勝手に閉じて行く。さすが最新型だと感心しているとチンポがスキンのサイズに合わせて大きくなった。 「うぉおお!? 俺のチンポが!」 余りまくってた部分を満たすように体積を増やす俺のチンポ。 気持ち良い感覚を俺に流しながらたちまちの内に30センチもの巨根になった。 「ぬほぉぉ! き、亀頭がズル剥けでメチャ感じるぅ!」 仮性包茎な「中身」なのにズル剥け亀頭のスキン。触れたらマジで亀頭を触ったかのような気持ちよさが! 「やべぇな和希。超イケメンのエロマッチョになってんぞ?」 写メった全身を俺に見せた。 「すげぇ~! これ、俺?」 目視でも筋肉ムキムキになってるのは分かっていたけど、こうやって他人目線で見ればいかにマッチョなのかがよく分かる。 太い首に盛り上がる肩。極太の腕にはこんもりとした力こぶ。 バーン! と張りだす大胸筋はまるでオッパイのようで、その下はボコボコに割れているシックスパック。 デカいチンポと丸太のようにパッツパツな太もも。 背面からも撮ってもらって見れば分厚い背筋からV字にながれてくびれた腰や、プリっと締まって小気味よく持ち上がってるケツタブが異様になまめかしく画面から迫る。 顔は顎周りにラウンド髭を生やしたちょいワイルドな30歳くらい男盛りのイケメン。 キリっとした眉と少し垂れた目が人懐っこく、高くすっきりとした鼻の下には思わず触れてみたくなるような唇が。 「マジでイケメンじゃん。ここまでリアルに再現できるとはな」 ラブドールなんかじゃなくて生身の人間、本物の男じゃないか。 誠二が俺のチンポを掴んだ。 「んおっ!」 「このデカマラ。感度は良さそうだがちゃんと使えるのか? 試してみた方が良くないか?」 「試すつっても、何をどうやって?」 女じゃなくて男なんだし。チンポをシコってオナニーして見せろってか? 「試すんだからセックスに決まってるだろ? 今の和希はただ単にかっこいい男になった訳じゃない。アダルトグッズでもあるんだ。エッチな玩具になってんだから用途に沿う使い方をしてやらなくちゃな」 「はい?」 誠二の手が俺の尻を掴んでやらしく揉んだ! 「はぅぅん! ぉぉお!?」 甘酸っぱい心地よさが流れ込んでカラダの奥がキュンとした! 「今の和希は、そう、もう和希じゃねぇ。男だとか、女じゃねぇとか、もう……、もう……そんなの関係ねぇ!」 振り向けば誠二の目が完全に「イって」いる! どうした? なんで俺に発情しちまってるんだ? 止めとけ! ダメだって! 冷静になれ! 正気に戻れ誠二! よく見ろ! 俺は男だって! スキンを着ていても男だぞ! んな、ハァハァしてんじゃねぇ! ストップ! ストーーーーープ! 「もう止まれねぇ。ムラムラしちまって抑えきれねぇ。男にこんなエロい気持ちになったのは初めてだけど、今のお前となら、いや、兄貴となら俺、セックスしてぇ……。兄貴を〇〇たくて堪んねぇ~~~~!」 誠二の手が前にも伸びデカいチンポを握りしめた。 「う゛ふぅっ! あ、兄貴? 俺を、〇〇!?」 男同士なだけでもあれだけど、俺が誠二に〇〇れる側なの!? 体格から見りゃ俺の方が遥かにごついってのに!? 気持ち良さで誠二を振り払えなくなる。もっと触って、もっと愛撫して、もっと、もっと……。 「んあっ!?」 ケツを揉んでいた手を滑らせ俺の尻の谷間の奥深くをするっと撫でた。 「感じる声も超セクシーだよ、兄貴……。なぁ、いいだろ? この中の具合、俺に確かめさせて……」 「はい!? え? ちょ! せ、誠二! 待てよ誠二! そんなのダメに決まって……、んっ! が! あぁ、あ゛!」