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鷹取リュウゴ
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末那識の慾尾 4

導師を引き受けた河村さんとラブホテルにやって来た。 いよいよ男と男で性行為をするのだと身構え、心臓は高く脈打ってしまう。 欲望の大きさを滲ませながらもあくまで紳士的な河村さん。 そんな河村さんが昂る尻尾を俺に見せつけ「もう一つ」の姿を見せつける。 河村さんの手が俺の膨らんだ股間を撫でつけいよいよ始まる―― 「止めて! 止めてよぉっ! 父さんっ! 俺は拓斗だよっ!」 視界が歪んだ。 目の前には俺の首に手をかけている父さんがいた。 なぜ? どうして! 訳が分からない。でも確かに俺は思い出した。父さんに殺されそうになる前に犯されていたことを。 父さんだけじゃない。母さんの愛人にも―― ********* 4噴き出した過去  車は校外キャンパスの敷地を出るとバイパスを抜けてラブホテルに向かっていた。 「こういうトコ、行くのは初めて?」 助手席の俺は無言でうなずいた。 「どうしても嫌ならやめておくけど?」 俺は首を左右に振った。 「いいねぇ。覚悟は決まったんだ?」 すぐには答えられず車窓を流れた看板が目に焼き付いた。 そこには『やるなら今でしょ!』と少し前に流布した文句が。 ほどなく俺は車を降りた。 意外なほどケバケバしくなくシティホテルと変わりない外観の建物だった。   「まぁ、普通に泊まる人もいるくらいだしね。部屋にある備品なんかでセックスのためのホテルだって分かるけど」 無人のチェックインコーナーで部屋を選んでカードキーを受け取ったらそのカードがエレベーターを操作するためのカギになっていた。 5階に至る僅かな時間、緊張で口が堅くなる。 上昇する金属の箱の中、振り向けば河村さんが俺の方をねっとりと見つめる。俺は慌てて目を逸らす。 「さぁ、どうぞ。無料のドリンクなんかもあるから何か飲むかい? それともシャワーを先に浴びる?」 流れと言うか勢いでここまで来てしまった。いよいよ本番行為に及ぶのかと思うと今更ながらプチパニック状態になってしまう。 「お、俺は、やっぱり、その……」 「……いいんだよ? 気持ちの整理が付くまで待ってるから。ん~と、そうだな、じゃぁドリンクを飲もう」 あくまで強引に進めようとしない紳士な河村さんに少しほっとしてしまう。 だけど、股間の膨らみはさっきよりもハッキリと河村さんの欲望を示している。 紳士的なのは不慣れな俺に気遣っているだけなのだ。 ベッドに腰かけていると河村さんが部屋に備え付けの冷蔵庫から取り出したペットボトルのサイダーを俺に渡した。 「五十嵐くんてギリ未成年でしょ? だからアルコールじゃなくて炭酸ジュース。俺も、車の運転があるからビールは止めてただのお茶にしておくよ」 キャップを開けてしゅわしゅわ音を立てる液体を咽喉に流し込む。 飲んでいたら河村さんが「面白いものを見せてあげる」とお茶の入ったペットボトルを両手で持ち、尻尾を前に回してボトルの飲み口を咥えた。 「五十嵐くんのはまだ剥けて無いだろうからできないと思うけど、覚醒して先っぽの皮が剥けたらこんな使い方も可能になる」 そう言った河村さんは尻尾でそのままボトルの中身を吸い上げジュルルと飲み干してしまった。 「うわ、尻尾で飲めるなんて……」 「ふぅ……。ごちそうさま。って感じで御覧の通りさ」 「皮が剥けるなんて、チンポみたいだ……」 「その通り。尻尾の竿部分は人によって獣毛が生えてたり蛇みたいになってたり、或いは鱗があったりと違ってるんだけど先端部分だけは共通しててさ、理屈は分からないけど剥けたらみんな亀頭みたいな見た目になっているんだ。 五十嵐くんはまだ覚醒していないから口を窄めた蛇みたいになっているけど覚醒したら皮が剥けて中の亀頭っぽいのが露出するから」 そう説明する河村さんの尻尾は根元まで赤褐色の蛇みたいな俺の尻尾とは微妙に違っていて、細かな産毛の生えた植物の蔓のような見た目をしている。 剥けた先端部分こそ肉色で亀頭にそっくりなのに、尻尾の付け根から先端までのほとんどが黒ずんだ濃緑色を帯びていた。 「チンポなみに俺の尻尾も気になって来たかい? うんうん、良い傾向だ。五十嵐くんが自力で覚醒に至らなかったのは他人への興味の薄さ、もあったんじゃないかと俺は思っている。 今までの話を聞いた感じでは、だけどね」 「自力で覚醒に到る人ってのもいるんですか?」 「むしろほとんどの尻尾持ちはそうだろうね。俺の導師になってくれた同僚も、他の尻尾持ちの奴もだいたいは自力で覚醒に至ってる。 導師によって覚醒した人ってのは俺の知る限りまだ一人しかいないな」 「もしかして有働ですか?」 「有働くん? いや、違う違う。ああ、そういや有働くんも高校の先生に導師になってもらったって言っていたっけ。 じゃぁ、彼も入れたら二人になるな」 「なら俺の知らない人なんですね」 「紹介しようか? でも、その前にさ……」 俺の隣に腰を下ろした河村さんが俺の太ももをぬるりと撫でた。 「気持ちが落ち着いてきたのならそろそろ始めようか? なに、怖がることはない。君はただ、快感を追い求め、感じてくれていたらいいんだ」 ◇  衣服を全て脱ぎ捨て眼鏡を外した河村さんはやはり細身で華奢な体つきだった。 股間で勃起しているチンポだけが凄く立派で大きい。 「さて、俺の本当の姿を見てもらおうか」 河村さんの尻尾がギュンッ! と撥ね上がった。 そうして尻尾がビクビク揺れたかと思うと河村さんのカラダが―― 「えぇ!? は? ま、マジで……?」 ゴキゴキと歪な音を立て、河村さんのカラダの形が変形、いや、変身し始めたのだ。 「んっ! ぅお! ぐ、っくぅ! ふっ! ん゛う゛ぅ゛っ!」 尻尾からのエネルギーが流れ込む下腹部にボコボコッと筋肉の瘤が浮かんだ。 続けて上の腹筋も内から押し出され盛り上がってシックスパック、いや、エイトパックに成していく。 腹部が終われば胸に。 大胸筋がメキメキ盛り上がってアメコミヒーローみたいな分厚い胸板に成長。 そんな胸板に合わせて肩がグググと拡がり首や腕に巻き付く筋肉がいかついサイズへ。 背中の筋肉がグッ、ググッと膨張し、開いた両脇の隙間からも広くたくましくなった背筋が覗く。 上半身の凄まじい変身ぶりに目を奪われている間にスリムだった太ももはアメフト選手みたいな極太に、膝下の筋肉までもが中にレンガブロックでも仕込んだかのようにデカくなった。 「ふぅぅ……、とまぁ、『こっち』も俺にとっては本来の姿って訳」 股間で勃起しているチンポまで筋肉肥大したかのようにサイズを大きくしていて超巨根と化している。 「このマッチョなカラダが本来の姿?」 ボディビルダーとプロレスラーを足して2で割ったような逞しい肉体。 「そう。ちゃんと尻尾を覚醒させるとね、自身の欲望に見合う肉体になる。尻尾がカラダを作り変えてくれる。それこそ快楽を追及するにふさわしいカタチへ、とね」 「尻尾がカラダを、作り変える……」 「深く考える必要なんてないさ。このカラダの方がより気持ち良さを味わえる、ってだけだから」 ヒクヒクと震える河村さんの亀頭から透明な粘液がトロッと溢れてツーと垂れていく。 「あはは、早くヤりたいって興奮してるのがバレバレだね。さっきも言った通り俺は五十嵐君に欲情してる。導師として、でなければとっくに襲ってるくらいに、ね」 そう言って眼鏡を外した河村さんの顔はさっきまでのいかにも研究者と言った草食系の顔立ちでは無く、欲望を剥き出しにした肉食系の、獲物を狙って今にも跳びかかりそうなギラギラした目を向ける雄の顔だった。 「さぁ、おいで……。五十嵐君の中に眠っている欲望、いや魂を開放してあげよう。尻尾を受け入れ、新しい自分に生まれ変わるのを手伝ってあげるよ」 「いや、でも、俺は……、今のままでも……」 「うん? そんなにも俺に興奮してるってのに? 半分眠ったままのような今の状態で本当にいいのかい?」 迫るように視線を強くした河村さんの手が俺の股間に触れた。 ギンギンに堅くなっていた俺のムスコを撫で回したら電気が走ったかのように全身が痺れた。 俺の尻尾がビクンビクンと撥ねるほどに。 熱くギラつく視線を弱めてふっと微笑みを浮かべた河村さんが俺の耳に囁いた。 「ほら、いつまでも中途半端じゃ苦しいよ? 覚醒して、一皮剥けてしまえば色んな悩みが軽くなるし明日を迎えるのが楽しみになる。 五十嵐君にとって明日はどう? 人生、生きてるって実感はあるかい? 欲しい快楽はちゃんと追い求められているかい?」 「お、俺は……」 不意に涙が出て来た。 なぜこんな時に思い出したのか。 それは―― 「俺は、あぁ、そうだ……、今、思い出した……。父さんに殺されそうになった時、その前に犯されていたんだ……」 「はぁ? 何だって? 実の父親に? 殺されそうにって!?」 河村さんが目を丸くした。 閉じ込められていた記憶が突然開放された。 「――父さんは俺を、泣きながら犯してたんだ。母さんの姿を俺に重ねて、母さんに似ているとは言っても子供だった俺に跨って、何度も何度も、父さんは俺に――うううっ!」 頭が割れそうに痛い!  思い出してはいけないものを思い出したせいだ。 目の前の景色がぐらりと揺れて、歪んで、立っている事すらできない。 「や、やめっ! 止めてよ! 父さんっ! 俺は母さんじゃない! 俺は! 母さんじゃなくて拓斗だって! お願いだよ! いつもの父さんに戻ってよ!!」 「落ち付くんだ五十嵐君! 君の前にいるのは父親じゃない! 意識をしっかり持つんだ!」 「あああ゛! ああああーーーーーーっ!」 思い出した! 思い出した! もう一つ思い出した! 俺は父さんに犯されて殺される前に、母さんの不倫相手だった男にも犯されていたんだ! アイツは母さんだけでは足りなくて俺にも! 俺にまでどす黒いチンポをぶち込んで泣き叫ぶ俺を嗤って、見下ろしながら腰を振っていたんだ! それも、一度や二度じゃなくて何度も。母さんが留守の時にもやって来て何度も俺を押し倒し、股を開かせて……。 父さんはきっと、何かのタイミングで俺がアイツに犯されている様子を見たに違いない。 だからこそ母さんの名前を呼びながら、 「お前も●●(母さん)みたいにアイツの、あんな野郎のチンポで気持ちよく感じてんのか? ああ? どうなんだ?  答えろ! 答えてくれよぉ!  おお、俺は……、俺はなんでこんな、こんな事を……、ごめんな、ごめんなぁ拓斗~」 父さんは、母さんの不倫相手だったアイツだけじゃなく自分のチンポでもよがる俺に絶望したんだろう。 そして、実の息子と関係を持ってしまったことを激しく後悔して、許せなくなって、俺を殺して自殺しようと決意したんだ。 俺のせいじゃないか。 俺が追い詰めたんじゃないか。 父親を死に追いやった俺がのうのうと快楽を追い求めていいのか? 男が性の対象だと気づいていなかった訳じゃない。記憶を閉じて、その事実から目を逸らしていただけで。 ああ、そうだ。父さん、どうして俺も一緒に連れて行ってくれなかった? どうして、もう少し長く首を絞め続けてくれなかった? どうして俺を残して、自分だけ先に死んでしまったんだ? 父さん、何故、あなたは俺と一緒に―― 「――もう止めなさい! 止めるんだ! 五十嵐君! それはただの記憶だから! 過去の記憶に振り回されるんじゃない! 今を! 明日を! 君だけのこれからを生きるんだ!」 なんだか温かいものに包まれた。 柔らかい? いや、それなりに弾力のある硬さも感じられる。 ああ、これは河村さんのカラダだ。 あの逞しい胸で、全身で、俺は抱きしめられているんだ。 温かい……。心地いい……。力強い……。 ◇  「……どう? 少しは落ち着いたかい?」 「……すみません」 欠落していた、と言うよりも身を護るために封じた過去の記憶が急に眼前に広がったせいで狂乱状態に陥った俺は、あろうことか河村さんへ本気で殴りかかっていたらしい。 だけど、マッチョになった河村さんには少しもダメージにはならず、傷一つ負わせることはできなかったようだ。 「とにかく五十嵐君に怪我がなくてよかった。先に元の姿になっておいて良かったよ。でなきゃ抑え込めなかっただろうし」 「……本当にご迷惑をおかけしてすみません……。河村さんこそ大丈夫ですか?」 「俺は大丈夫。この筋肉は飾りじゃなくてちゃんとパワーがあるし。怪我なんか尻尾の力ですぐに治せるから。でも、そうかぁ、う~ん……。 五十嵐君が自力で覚醒できなかった一番の理由はソレだね? 聞く気はなかったけど君の叫びである程度は判断できてしまった」 「本当は、俺は……、男の人が好きなのに同じくらい恐怖を持っています。それを、たった今、思い出しました」 「それだけ辛い目に遭ったんだね。よし、それじゃ五十嵐君が抱えていた色々をさ、良ければ改めて俺にも聞かせてくれる? それとも、過去のトラウマがフラッシュバックしてパニックになったばかりじゃ厳しいかな?」 俺はもう一つ冷たいドリンクをもらって咽喉を潤した。 「いえ……大丈夫、です……。話させて下さい。俺は、河村さんに聞いて欲しい……」 こんなにも俺に欲情している状態を見せつけながら、それでもまだ俺を強引に押し倒そうとはしない。 いかつく逞しい肉体からは、父さんとは違って傷ついても死を選ばない安心感がある。 さっき会ったばかりの俺なんかのために、導師として俺の全てを受け止めようとしている。 信頼して良い相手だと、初めて肩を預けていい人だと思えた。 「……セックス、後まわしになってしまってごめんなさい……」 「いいんだよ。正直言って今すぐヤりたいのはヤりたいけど、無理強いなんて俺の主義じゃないから。 それにさ、五十嵐君だって胸の内を全部ぶちまけてスッキリしたくなったんでしょ? だったらそっち優先だ! 今にも俺のチンポが暴発しちまいそうで情けないけど、そこはもう死ぬ気で我慢するさ!」 ビクビク揺れ動く河村さんのデカいチンポったら、ますます我慢汁を溢れさせている。 あ~、生殺し状態ってやつだよな。男にとってマジでこれは辛い。けど、俺に気遣って話を聞こうと言ってくれているのを無下にするのも悪い。 ここはやはり甘えさせてもらおう。 でないと俺は、覚醒したって明日が来るのを楽しみになんてきっとできないだろうし。 顔を上げたら河村さんが生唾を飲み込み必死に欲望に耐えている表情になっている。 それがなんだか面白くて、ちょっとかわいらしくも見えて、俺は思わず噴き出した。 「あ~、笑ってしまってすみません。なんだか、その、凄く――」 「笑いたい時は笑っていいんだよ? それが自然なんだから」

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