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鷹取リュウゴ
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寄生魔竜人の性蝕アドバンテージ 18

 違和感は次第に大きくなっていた。 他の魔竜人たちは産んだ種を使って人間に寄生させ繁殖していかない現状をおかしいと思っていないのか、と。 饗庭野と別れる寸前に告げられた言葉も頭にこびりついていた。 単に俺が神経質になってただけなのか? しかし、高校の体育館に集まる魔竜人が少しずつ減っていくのが気になった。 地元へ戻ったという話は聞いていない。 お伽衆の吾門くんに聞けば「クロム様から別任務でも言い渡されたのでは?」とにべもない。 初めて来たときは体育館を埋め尽くして満員状態だったのに……。 ********* 18赤魔竜人の悩みと消えゆく同朋  東城と一緒に辰ケ引町にやってきて1週間。 辰ケ引高校の体育館に行って魔竜人同士でセックスするか、宿舎になっている家に戻って寝ているか、だけの日々を過ごした。 その繰り返しに疑問を持っているのは俺だけ。 いや、お伽衆に選ばれた饗庭野もきっと俺と同じ筈。確証はないけれどそんな気がする。 疑問と言うのはさ、辰ケ引高校に籠っていてはいくら交尾して「種」を産んでも繁殖できないし、 寄生対象が周囲にいくらでもいるH大学のほうがまだ好条件じゃないか、って事。 生活の場は別だと指示され離れていく饗庭野はどうして俺にだけ「他の魔竜人を守ってやってくれ」なんて言い残したのだろう? 食事にせよ交尾にせよ興奮状態が冷めると頭をよぎるのは饗庭野のその言葉だった。 更に数日後、同じアパートの住人で俺の「種」を寄生させた緑魔竜人の一体の姿が消えた。 前の日には高校の体育館で精液を派手にぶっ放しているのを目にして「俺も負けられないな」、なんて思ったのを覚えている。 なのに、宿舎の家に戻ってみればそいつはいつまでも帰って来なかった。 他の者に聞けば「居残って誰かとお代わりでもしてんじゃね?」と気にも留めていない。 確かに夜通しヤって朝帰りしてくる奴もいないわけじゃないが、日が落ちたと同時にお伽衆の魔竜人たちがずかずか入って、体育館に散らばる産みたての「種」を黙々と集める姿を目にすればほとんどの奴は興が冷めて寮や宿舎に帰っていた。 結局、次の日の朝になってもそいつの姿は見えなかった。 「きっとまだ体育館に残ってんだろう」 まったく心配する素振りも見せず明るく言い放つ仮島先輩たちに不安を覚えたものの、東城も「体育館にいけばいまだに腰を振ってたりしてるんじゃね?」などと言う。 俺が不安がっているだけなのか?  なるほど、案外そうかも知れない。 いつもの時刻に宿舎から高校の体育館に行ってみれば、――そいつの姿はどこにも無かった。 「沢村さんと一緒に辰ケ引へ来られた〇〇さんの居所? さぁ、僕は知りませんが……、クロム様から別の任務を授かったんではないでしょうか?」 見かけた東城の弟、お伽衆の吾門くんに聞いてみたらそんな答えが返って来た。 「急に誰にも告げずに任務を命じられる事もあるのか?」 「詳しくは僕も。ただ、クロム様は間違うはずありませんから僕たちには分からなくても勢力拡大に向けて、色々と企画されておられるのかと」 「だったらクロム様に直接聞いてみるか。なぁ、クロム様はどこに?」 「今日は終日生物室にいらっしゃるそうです。取り次いでも応じられる可能性は低いかと」 クロム様、人間の時は生物教師の「松宮 黒夢」であるため生物室を主な居場所にしている。 だからこそ生物室には強力な二重結界が張られ許された者しか入れない「聖域」となっている。 吾門くん曰く『隣の教室で聞き耳を立てても音どころか気配も漏れてこない分厚い結界』だそうだ。 そんな会話をしていると東城と仮島先輩から「お前の精液を朝飯にしたい」と迫られなし崩し的に食事セックスが始まった。 昼頃までたっぷり食事して気持ち良くなっていると、今度は波多野と言う黄魔竜人から「交尾したい」と誘われた。 仮島先輩みたいな緑魔竜人や東城(兄)のような青魔竜人ではなく黄魔竜人との交尾は初めてになる。 少し身構えてしまったけれど波多野の太い腕が俺をぐいと抱き寄せスリットに指をぬるりと這わせたら途端に力みが抜けた。 「二人で元気な種を産んでクロム様に捧げようぜ?」 「どうせなら捧げず他の人間に寄生させたいんだけど」 そう返したら波多野は目を丸くして両手を振って否定した。 「ダメダメ! クロム様のご要望に応じないと! ここの結界の維持にも必要だって言われただろう?」 「……こんなに毎日、皆が産んだ種を回収してまだ足りないのか……」 「俺たちを強化するための実験にも使っているのだし、成功したら残った種を俺たちに戻して下さる! 今はただ信じてお渡ししていこうぜ!」 笑い飛ばす波多野。 顔をしかめる俺。 間違っているのは俺の方? クロム様を信じ切れていない俺の方こそおかしいのか? クロム様は俺たち魔竜人の始祖。いわば親のような存在なのだから、敢えて俺たちに害を成す筈はない。なのになぜ、どうしてこうも不安になるのか―― 「――うん? これは?」 目の前には黒精液が注がれたグラスが差し出されている。 顔を上げると吾門くんだった。 「よろしければどうですか? これを飲めば気分は爽やかに、そして精力はぐんとみなぎりますよ?」 朝食で一汗かいた魔竜人たちに吾門くんは黒精液を勧めて回っていた。 波多野も東城もグイッと飲み干し空いたグラスを吾門くんに返す。俺も急いで飲み干しグラスだけを渡した。皆はうっとりと目を細めて美味いと口にするが、俺はいつも通り変な風味に感じてしまう。 「っしゃぁ! 黒精液、美味ぇーっ! それじゃぁ始めようぜぇ!」 波多野が膝を落とし俺のスリットを「食い気味」にベロベロ舐めだす。 「んあ゛あ゛あ゛ーーーっ! すげぇーーーーっ!」 甘い電流が走り抜けると俺の思考は全部セックスの奔流に投げ落とされる。 あとはカラダが求めるまま流れに乗り、波多野とスリット同士を密着させグチュグチュ、ギチュギチュ、と漕いで行くだけ。 二つのタマが合体し、新たに二つのタマを作り、波多野のスリットの奥へ一つだけ送り出す。 俺もまた波多野から一つを受け取り、残しておいた一つと絡みあい、もつれ合って一つにまとまり新しい「種」に仕上がる。 とてつもない快感を伴いながら俺と波多野は「種」を産んだ。 俺の「種」は赤、波多野は「緑」 「沢村さん、素晴らしい! 相手が黄魔竜人だとしても赤の種を産めるなんてとても希少ですから! いやぁ~! クロム様もお喜びになられますよ!」 俺の「種」をすかさず回収した吾門くんが俺を褒めた。 「波多野先生は、また緑っすか? せっかく僕と同じ黄魔竜人なのにずっと緑の種ばかりっすね? いえ、一般種が悪いとは言いませんけどご自身の繁殖能力に見合ってないんじゃないですかぁ?」 吾門くんの冷ややかな評価に波多野は身をすくませ、「この事はクロム様には黙っていてくれ」と懇願している。 「ま、まぁまぁ波多野さん、無事に気持ち良く産めたんだしそこまで怯えなくても。またいつでも俺と交尾してやってください。すごく気持ち良かったですから」と励ました。 パッと明るい表情で顔を上げたかと思うとすぐにまたシュンとなる波多野。吾門くんは空のグラスをまとめて籠に入れ、振り返ることもなく体育館を後にした。 「……違う、俺は、俺はやれる……、お伽衆のあいつに負けないくらいクロム様のお役に立てる、立てる筈なんだ……」 亜門くんが去った方向を睨みながら呪文みたいに低く呟く波多野は何かに取り憑かれているようだった。 ◇  さらに数日が経った。 饗庭野は何をやっているのか分からないまま体育館で合流できていない。 お伽衆とはそんなに忙しいのか? クロム様だって体育館でまったく見かけることが無い。 俺たちが合流した時の歓迎の挨拶で対面して以来、一度も出て来てはくれない。 見かけるのは吾門くんばかり。 どうしてなのか俺たちの後にやってくる魔竜人が一体も無い。 まるで俺たちが最後であると言わんばかりだ。 だが、一番の問題はそこじゃない。 俺と同じ宿舎の緑魔竜人が消えたと思ったら今度は波多野まで見かけなくなった。 さらに言えば、体育館に集まっていた魔竜人の数が、俺たちが到着した直後よりも少なくなっている。 一歩下がれば他の魔竜人の尻尾や背にぶつかってしまうほど狭い状態だったのに、気付けばたっぷりと隙間が出来ていて大きい動きをしても触れ合うことがなくなっている。 東城も仮島先輩も「沢村は気にしすぎだって! どうせ体育館が窮屈だからってんで体育館の外でサカってんだろう」と、にべもない。 そんな風にばらけたら吾門くんが「種」を回収する手間が増えるから基本的には体育館の中で食事と交尾を、って初日に言われていたのにな。 なんて思ってたら亜門くんがそばに来ていて、すっと黒精液入りのグラスを俺に渡した。 「なぁ、吾門くん? このごろ体育館に来る個体数、減っちゃいないか?」 東城にした質問を吾門くんにもしてみた。 「そうでしょうか? 僕にはそんな風に見えないんですが」 「波多野はどこへ? クロム様から特別な任務を与えられたのか?」 「波多野先生に特別な任務? 黄魔竜人なのに緑の種しか産めないような無能にクロム様が何かを命令されることはありません」 無表情に吐き捨てる吾門くんが心なしか恐ろしく見える。 能面みたいな顔で「早く飲んでください」とせっつかれたものだから俺は慌ててグラスを空にした。 「……兄貴でさえ沢村さんと交尾したら黄色の種を産んだのに、波多野先生は僕とも、沢村さんとの交尾でも緑の種ばかり。見掛け倒しって言葉通りですね」 「んな、仲間に向けてそこまで悪く言ってやるなよ? クロム様の実験が完成して今まで以上に強化されたら一斉に人間たちへ種を植え付けまくる予定なんだろ?」 「は? クロム様がそのような事を言われてましたか?」 能面みたいな吾門くの顔の上に軽い苛立ちと言うか不機嫌なしわができている。 「いや、直接聞いたわけじゃないけど……。俺たち魔竜人の使命っつうか、基本行動っつうか。人間に種を寄生させ圧倒的な数でもってこの星を支配するのが最終目標なんだよな?」 初めて「種」と俺とが一つになり、魔竜人として生まれ変わったとき脳内に流れ込んできた知識の中にはっきりと読み取れていた行動指針。 俺たちは侵略者、この星を支配する者。そのために繁殖する上で幾つものアドバンテージ(優位性)を獲得している。 だが、初めのうちは慎重に、じわじわと密かに数を増やし、多数を占めた段階で一気に残りの人間どもを飲み込む……、のだと。 「沢村さん、ここにいる以上クロム様を第一に考えましょう。それと、クロム様がおっしゃられてもいないのに、変な忖度をしてクロム様の内心を代弁なさらないでください。 そう言うのってはっきり言って迷惑です。 僕は、少なくともクロム様からそのような方針を聞いたことはありません」 これほどぴしゃりと叱られてしまうなんて思ってみなかったので反論もできずに口ごもっていたら―― 『おいおい~、あんまり責めないでやってくれよ? 彼は俺たちの間では共通する一般論を語っただけじゃないか~』 三週間ぶりに聞く声だった。 声だけで誰かすぐに分かった。 「悍馬さん!」 つい「饗庭野」ではなく下の名前で呼んでしまった。 やはり俺はこの男が大好きなんだ、と思い知らされた瞬間でもあった。 体の一部が瞬時に熱くなった。饗庭野とセックスしたい! 饗庭野の精液が欲しい! 饗庭野のチンポを感じたい! 饗庭野のカラダの温もりを! 匂いを! すべてを! 思わずハグしていた。 東城も仮島先輩も目を丸くしていたし、能面フェイスな吾門くんでさえ驚きを隠せていなかった。 「待たせたな~。亮真」 「ずっとどこに行ってたんだよ! 心配したじゃんかよぉ!」 涙が出てしまった。俺も驚いた。あれ? なんで俺、泣いてんの? って。 「……饗庭野さん? クロム様の側で控えていなくてはならないのにどうして体育館に?」 「そんなつれないコト言うなよ吾門くん。どうしてもしなきゃいけないことがあったからに決まってるだろう」 「しなきゃ、いけないこと?」 吾門くんが訝し気に饗庭野を見つめた。 「そう。この目で確かめないといけなくってな。 ……うん、やはりそうか……。なぁ、吾門くん、他のお伽衆はどこへ?」 瞬間、吾門くんが人形のように固まった。

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