3 困惑オナボイス 講義中でもふと気付けばあのASMRの音がして耳と頭の中を舐め始める。 しかも、あろう事か初めて会話した倉知さんの声にイメージを重ねて。 なぜ倉知さんをイメージするのか。 どうしていつもオカズに使う女の卑猥な声や喘ぎや、息遣いではなく、俺と同じ男で再生されるのか。 その理由はともかく疼く股間を大人しくさせるため講義に意識を強く向け、必要以上にテキストに目を走らせていた。 さて、午前の講義を終えれば昼休みを挟んで3限目4限目の講義を受けるのだが、これらの講義はタツミやマナブは取っていないため二人ともどこかへ行ってしまった。 きっとマナブは同人誌づくりに役立つ資料を求めて図書館か書店へ。 タツミはいつものナンパスポットであるカフェにでも行っているのだろう。 独り寂しく学食で昼飯を食べているとまたしてもASMRの耳舐め音が聞こえだして俺をゾクリと震わせた。 昨日、一度聞いただけでここまで頭に残るとは。 むしろ今朝よりもハッキリと明瞭な音と感触が耳穴と脳内を舐め回している。 しかも、今回もまたグチュグチュ舐めて吐息を吐くのは同じ男、倉知さんにダブらせちまうなんて。 敢えてお気に入りの、オカズにしている女の悶え声を記憶から引っ張り出して倉知さんを追い出そうとしてみても無駄だった。 「ったく、どうなってんだよ……」 ヒクつくチンポを無視しようと試みたが「一定のライン」を超えたのだろう、もはや手遅れ状態になっている。 こういう時に限ってカタチが浮き出やすいジョガーパンツだもんでTシャツの裾をしっかり前に下ろし空になった定食のトレーを返却口に戻す。 「昨日、部屋中にぶちまけるほど馬鹿みたいに射精したんじゃねぇのかよ?」 自虐的に呟こうとも股間の盛り上がりはいささかも衰えない。 何十人もの男が俺の部屋に来てオナったかのような大量の精液の後始末でかなりの時間を費やした訳だが、マジで誰かが入ってきてたのでは? と、思って念のため玄関のカギを確かめてみるとちゃんと施錠されていた。 窓ももちろん開けっ放しにはしていない。 つまり、完全な密室なのだから信じられないほどの量であれ、床に精液をぶっ放した存在はやはり俺、と言うことになる。 「ヤバすんぎ。俺、我ながらオナニー好きっつっても、音だけであんなに出しちゃえるんだ? ここんとこイっても不発感があってイマイチばっかだったのに」 昨夜の状況を思い出していると余計にムラムラ感が加速する。 また耳の奥でASMRの耳舐め音がヌチャヌチャ鳴り響き、俺を犯す。 「くそっ! ああ、もうっ!」 仕方ない。ちゃんとヌいてやらないとダメだ。 俺はすれ違う奴の視線が股間に向かわないようさりげなく体を斜めに傾けながら先を急ぐ。 目的地は学内でも滅多に人が来ない不便な場所にあるトイレ。 到着して中をうかがうと思った通り誰も入っていない。俺は個室のドアを閉め勃起チンポを引っ張り出す。 ―ビチュ! 「うえぇ」 ビィンッ! パンツを下げた瞬間飛び出したチンポから先走りが顔に飛んで来やがった。 すっかり濡れそぼってドロドロの亀頭を握れば甘痒い疼きがズクンと込み上げ、抗いようのない欲求に従いグチュグチュとチンポを刺激する。 「んはぁ……」 『んう゛! ヌチュ、クチュ、んふ、はぁはぁ、くぅ、うう、ズルチュ、ニュブ、グニュ』 またASMRのヤラシイ耳舐め音が鳴り始めた。 『あはぁ、すげ、も、超キモチイイ……、も、もっとぉ』 ……うん? 今の声もASMRか? 俺の記憶からの再生音だったか? 何か違うような……。 『んぐ! イイッ! チンポが融けちまいそうや……。はぁ、はぁ、ん゛ぅ! もっと、そう、奥までしゃぶってくれ……』 『んむ、あむ、ジュブルルッ! すっかり、んふ、元気になっちゃったね……。クチュ、チュブ……』 っ!? やっぱ違う! これはASMRじゃない! 倉知さんの声とも似ていない! 誰かが隣の個室トイレで、リアルにエッチな行為をやっているんだ! 昨日のASMRには会話なんか入っていなかった。 ひたすら深い耳舐めと、湿った吐息だけ。 思わず俺は手を止め息は、――呼吸を止めるのはさすがに無理だから息を小さくひそめ隣の個室の行為に耳を傾けた。 『……はぁ、たまらへんなぁ……、そうや、そのまま、うぅ、続けて、くれ……』 『ジュルルルッ! ニュブ、チュク、はぁ、はぁ、んっ! 先走りが、いっぱい、出てるよぉ……、チュプ、ニュブブ』 『お前かて、んふ、チンポからぎょうさん垂らしてるやん……、っむう、ううっ! 締め付けが、ぅあ゛! たまんねぇ~!』 『しゃぶる、だけ、んむ、で、イイの? アナは、弄んなくても? クニュ、ジュブルルッ、ズチュゥ……』 『はぁっ、はぁ、はぁ、いや、んう゛、ヤってくれ……、んひ、ぅあ、ソコっ! ア゛! アアア゛! アカン! も、だ、ダメだっ!』 『もう、イキそう? イっちゃう? いいよ。取り合えず一発、出しちゃう? ふじゅるるっ! ジュブちゅ! ズチュゥゥゥ!』 『ぅあ゛! イグゥ! うぉぉ! お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ーーーーーーーーーっ!』 (イク! お、俺も! 釣られてイクゥゥッ!) ――ドビュゥッ! ビュグ! ドビュルルッ! ブシュゥーーーーッ! 声を控え目にしていても静かなトイレではよく通る。 ましてすぐそば。ひと蹴りで破れる薄い板一枚を挟んだだけの隣りの個室であれば猶更。 しかも、声の主はどことなく、……いや、かなり「タツミ」と「マナブ」に似ていた。 飛び出した俺の精液が個室の壁面だけではなく俺の右手や竿伝いに太ももまでドロドロにしている。 トイレットペーパーを何度も引きちぎって白濁液の痕跡を最小化する。 手もチンポも太ももも。そして壁面もぬぐい取る。 それでもまだ俺のチンポは萎えてくれない。 無理矢理パンツに収めジョガーパンツを腰まで上げる。 「やっぱダメか」 一発、しかも隣の「声」でイった程度では大人しくなってくれなかった。 ゆっくりドアを開け外に誰も居ない事を確かめてから個室から出てみた。 気になる「お隣り」はすでにもぬけの殻。卑猥なニオイが残っていて先ほどの声は幻聴ではないのだと告げている。 問題は――「俺は、また男のエッチ声をオカズにしてイったんだよな……。と、言うことは……」 女じゃなく男に興奮していた事実を俺に示している。 いきなり、急に、性的対象が切り替わるなんてあるんだろうか? ともあれ、大人しくなってくれるどころか余計にムラムラしてしまったのは「お隣り」が原因なのはハッキリしている。 しかも、追加でまたもやASMRの耳舐め音がヌチュヌチュと聞こえるのだから萎える筈がない。 「受講なんてもう、とても無理だ……」 穿き直したもののパツパツにテントを張って自己主張する愚息には逆らえない。 俺は午後からの講義を諦め自宅アパートに戻ることにした。 帰ってからやる事は一つ。 裸になってベッドに横たわりワイヤレスイヤホンを両耳に押し込み、スマホのダウンロードフォルダから昨日と同じファイルを選択する。 「――? あ、2つめのファイルしか開かねーじゃん」 構わず2番目のファイルをタップし再生を開始。 『ヌチュ……、グチュグチュ、ズチュルルッ! んふぅぅ~、シュルル……』 「ぬひぃぃっ!」 耳じゃない。 リアルに感じられた部位は「うなじ」 唾液をたっぷり乗せた舌がうなじを這い、そしてゆっくり移動して首の付け根、背中、腋をニュルニュル舐め回している! 『う゛っ、フシュルルッ! んふ……チュブ、ヌリュ……クチュ……』 快感で背がビクンと弾む。仰向けになっているカラダの下に誰かがいて、長く伸びる舌でジュルジュル舐られている。 目を閉じれば左右にも誰かが居て、俺の腕を持ち上げ腋をレロレロ舐め回している。 「うぅくっ! んはぁ! イイッ! キモチ、イイィィ~」 思わずチンポに手が伸びる。そのまま扱いてイかせてやりたくなる。 しかし、音声だけの存在が俺の手を撥ねのける。まだ早い、と言わんばかりにチンポを触れさせてくれない。 「……んだよぉ~。チンポ、しこりてぇよぉ~、チンポ、たまんねぇんだよぉ~」 『ニュル、クチュクチュ、んふ、ヌリュ、グニュ、ズリュリュ、ルロォ~』 見えないそいつは黙って俺の上半身に舌を這わせている。じれったい疼き、ゾクゾクとした快感、チンポを扱きたいのに扱かせてくれない苦痛――、情けないけれど俺は口に出して懇願していた。 「んはぁ~! あっ! すげぇ、腋がぁ、腋が感じるっ! 背中も! 首も! ぬあ、あああ! もぉチンポぉ! チンポを扱かせてくれよぉ~! も、イキたいよぉ! チンポ、グチュグチュしてぇ~! もっともっとシコって、気持ち良くなりてぇ~! イカせてくれよぉ~!」 ここで不意に耳の奥に舌がジュルルと入って来た。 「んひぃ!?」 その舌は昨日よりもハッキリと俺の脳内をかき混ぜ、ある一部に音で出来た「何か」を流し込んだ。 「んが!? あふ! んぁぁぁあああ! ア゛ーーーッ! いぎひぃぃぃーーーっ!」 甘酸っぱいマーマレードのような、いつまでも味わっていたい、舐めていたいような蜜がドロリと脳の一画を占め、周囲の組織を取り込み同化していく。 なぜかそんな光景が、脳内なんて見える訳ないのに視界を覆う暗闇のスクリーンに拡がっていた。 そんな俺の様子をじっと見下ろすモノが二体。 互いのペニスを擦りつけ白濁汁を飛ばしながらほくそ笑んでいるとも知らずに俺は……。