SamSuka
鷹取リュウゴ
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形状記憶コンドーム ZERO1

1深海からの贈り物  潜水調査船が潜った先は、十数年前に海底火山が噴火し、ようやく調査可能なレベルにまで活動が落ち着いてきた海域であった。 とは言え水中の浮遊物は今だ多く、50mも潜れば海面からの光はもう届かない。 泳ぐ魚影がほとんど見られないのは、いまだに水質のpH値が生物に取って好ましくないレベルである 証拠と言える。 静かに潜航する調査船が照らす水中には下から上へブクブクと盛んに登る泡の柱。 温度を計測してみると泡の温度は70度もあった。 潜れば潜るほど水温は上昇し、海面下300mでは42度になっていた。ちなみに、海面付近が15度であるからまだまだ海底面は高温であるとの証拠だろう。 真っ暗闇の海中を潜り続けて600m、海底面に到達。海水温は60度近い。 ライトが照らし出す海底面からは噴水のように黒い柱を立てた熱水噴出孔がいくつも確認できる。 さらに、熱水に含まれていたであろう成分が凝固、沈殿した堆積物の層も見て取れる。 そんな海底熱水鉱床とも言われる堆積物中の元素を好む細菌類やバクテリアと、それらを捕食する生物 が作りだす生成物に調査船はロボットアームを伸ばし、希少なサンプルとして採取して行く。 1時間後、潜水調査船の活動時間限界が近づき、速やかに上昇するよう海上の本船から指示が届いた。 調査員たちはロボットアームを引き戻し、今回も任務が無事に終われそうな事に安堵の息を吐く。 ――その時だ。 船外モニターの真っ黒な画面の端に小さく光る物体を捉えた。 いや、光る物体は正確に言うならば発光物ではなく、調査船のライトを受け反射しているに過ぎないが、 ライトを浴びたソレは鏡のような反射率をもって調査員の目にキラキラと飛び込んだ。 モニター越しでは無く小さい窓から直接視野に収めた調査員たちは人形のように口を閉ざし黙り込んだ。 さらに、一言も発しないまま無表情の調査員たちは一旦引き戻したアームを再び伸ばし、輝く物体を掴む。 大きさは直径10cmほど。サンプル回収容器に収納し船内に格納する。 この間、時間にすればほんの5分ほどの出来事であった。 だが、わずか5分とは言え調査船が海上に浮上し切る前に船内の電源や酸素が枯渇してしまえば調査員の命にかかわる重大事故となってしまう。 本船からはただちに海面に上昇するようひっきりなしに命令が届く。 しかしながら誰も声を出さず、命令に対する返事も一切無い。 次いで、調査船の中を映すカメラが映像を拾わなくなり音声も絶えた。 まるで深海の闇に融けてしまったかのように潜水調査船の状況が本船からは見えなくなり、常に繋がっている筈の通信が全て途絶えたまま海面に上昇する。  後に、命令を無視する行動を取った調査員にこの時のことを尋ねてみたところ、「何も覚えていない」、と全員が答えている。   海面に戻る指令を受け「いつも通り」に浮上していたが、途中で何故か眠ってしまったようだ、と。 調査船内部に火山性ガスが入り込んだのでは? 軽度の減圧症(潜水病)ではないか? との見方が出る中、調査員たちは半ば強制的に病院へ送られ綿密な身体検査を受けた。 だが、何一つ異常は見られず健康体であるとのお墨付きが出ただけであった。  2か月後、海洋研究所の3人の若いスタッフが退職した。 退職したスタッフの1人は助手として勤務していた20歳の「加賀美 具里人」 加賀美の先輩として指導していた24歳の「田丸 修」 そして、31歳の「佐奈 英二」の3名である。 3名はいずれも潜水調査船に乗船していた者たちである。 待遇に不満があった訳でも、人間関係でトラブルがあった訳でもない突然の退職に研究所は何度もその 理由を、そして、退職後の展望について3人に問い質した。 しかし、3人とも「私事都合により退職する」「次の仕事は未定」と述べるばかりで詳細は一切語らなかった。 当然ながら上司は引き止めたが、3人は決意を変えず海洋研究所を後にした。  さらに半年後。   3人の元海洋研究員は一つの会社を立ち上げた。 社名は「コンバート」と言う。 わずかな退職金を出し合い設立したその会社は海洋とは無縁のアイテムを扱う会社であった。 男性が使用する避妊具として最もポピュラーであり普及している「コンドーム」を製造、ならびに販売するのを目的としているのだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  町外れの一軒家。 隣合う敷地に建物は一つも無い。 周囲は耕作放棄されて荒れ果てた農地。潅木が生え雑草が生い茂るに任せてある 農地はあと数年で開拓前の森林に戻るだろう。 そんな場所にある建物がコンバート社の本拠である。 ただし、社名を記載した看板などは無いため、この建物がコンバート社であるとは関係者以外に知られることは無い。  一軒家の中に入って見よう。 一階、車庫と玄関とに分かれた入り口がある。 車庫から内部に入るドアもあるが、玄関から中に進もう。 吹き抜けの玄関ホールからは2階へと続く階段とそのまま奥に伸びる廊下が見える。 廊下を進むと北欧家具の置かれた30畳もあるリビング、大型冷蔵庫が2機設置されたキッチン。 大人が4人は余裕で入れる広々としたバスルームと、隣にはガラス張りのシャワールーム。 玄関に戻り2階へと上がる。 10畳ほどのベッドルームが3室。雑木林しか見えないバルコニー。 それぞれのフロアにはもちろんトイレがある。 一見すると少しばかり贅沢な仕様の別荘と見えなくもない。 ただし、ちょっと待って欲しい。バスルームとシャワールームの間にもう一枚ドアがある。 このドアはクローゼットでもトイレのドアでも無い。 開ければ地下へと降りる階段が現れる。  やたらと湿度の高い地下への階段を降りると一つの広間に到着する。 階段に向かって手前にはダンベルやクランチ台、エアロバイク、チェストプレスなど豊富に筋トレマシンが並んでいる。 そして、それら筋トレマシンの奥には出来上がった製品をパッケージングする機械が2つ置かれている。 一つはコンドームをビニールのフィルムに包んでいく機械。 そしてもう一つはフィルムにパックされたコンドームを箱詰めし、密封するための機械である。 コンドームの製造会社らしい設備とも言えるが、いくつか足りない。 まず、シリコンなりラバーなりをコンドームの「カタチ」に成型するマシンが一つも無い。 そして、肝心の材料はどこに保管しているのだろうか? 地下室はもとより一軒家の周囲にも、車庫の中にも材料を保管している様子はない。 ましてや、外部の工場との取り引きも行っていないため他所からコンドームを運びこむことも無い。 包装する機械だけで製造する機械が無いと言う文字通り片手落ちの設備。 工場としての機能より目立つ筋トレマシンの数々。 あと、もう一つだけ見落としている場所がある。 大きな鏡を壁に貼りつけた筋トレマシンのスペースに、電子錠を掛けられた黒い金庫がある。 縦、横、奥行きがそれぞれ1mもある頑丈な正方形の金庫だ。 中には何が入っているのか。 電子錠は8ケタの暗証番号を入力しなければならない。 ただ、今回は特別に開けておいてもらった。 重い取っ手を引き金庫の扉を開ける。 金庫の壁が分厚いため内部は非常に小さな空間しかない。 そんな空間に収められていたモノは、照明の光を反射してキラキラと輝いている。 これは、何か? ――すでにお気づきであろう。 海底の熱水鉱床調査で3人が最後に採取した物体であった。 琥珀のように透明かつ淡黄色を見せる直径10cmほどの物体。 手に取ってみれば非常に軽く、それに弾力がある。指で押すとズブズブと飲み込み、指を離すとゆっくり元の形状に戻る。 まるで低反発マットに使われるウレタン素材のような柔らかな弾力性だ。 鉱物なのか、それとも有機物なのか? 見る角度によって色まで変化する。 ただ、一つ確実に言えることは……、一つ、……確実に……。 言えるのは……。 「…………う、うぅ……」 「どうです? 使ってみたくなってきたんじゃありませんか? 否定したって無駄ですよ。 だって、あなたの股間は欲望をそのまま示してるんでしから」 声はまるで深海から脳へと直接語りかけているようであった。 暗い海の底へ、命を生み出した原初の海の中へ引きずり込まれてしまうような声だ。 「我慢などしないでいいんです。と言うか、我慢できる訳ないですし。あなたのヤりたいようにヤれば良いんです。それを咎めるニンゲンなど、ここにはおりませんから」 理性や常識は沈み込み、その反対に熱水噴出孔の如く激しく勃起し滾る雄の欲望。 膨大な熱量を保持し今か今かと噴火の時を待つマグマのように淫らな本能がドクドクと股間の一部分に凝集しボコボコと掻きたてられる。 「招かれた男」は、金庫の中から取り出したモノを優しく愛撫するよう扱き始めていた。 2コンバート社    「狩野 正」は加賀美がコンバートの社員にとスカウトして来た男である。 元はあるサファリパークの飼育員であったが、オーナーとの不和が原因で解雇されてしまったのだ。 表向きは自己都合で退職となっているが、実態はその逆である。 動物たちの飼育環境を改善して欲しいと何度も要望を上げていたものの、目先の利益を優先するオーナーは むしろ改善するどころか改悪するばかりであった。 そんな状況になっても諦めずに直訴を何度もする内、オーナーに疎まれ退職せざるを得なくなってしまったのである。 狩野は動物が大好きな男である。 よって後ろ髪を引かれる思いを抱きつつサファリパークを後にし、また、生活は日に日に荒んでいった。 加賀美と知り合ったのはそんな時であった。 貯えの底が尽きそうなのを知りつつ、居酒屋で明るい時間から酒を飲み愚痴を吐く狩野。 加賀美が狩野の横に座り、手頃な相槌を入れながら狩野の身の上話を聞く。 初めて会う相手なのに狩野は細かく手ぶりを添えて話す。いや、むしろ初めて会う誰とも知らぬ相手だからこそ 正直に、損得勘定抜きで話せた部分もあっただろう。    動物への扱いをまるでわかっちゃいない。  同僚や上司もオーナーにちゃんと進言できない腑抜けばかりだ。  やれ温泉だ、ホテルだ、とかける金の使い道がおかしいんじゃないか? サファリパークがメインの施設であり最大の売りである筈だ。 「年を追うごとに飼育員は減らされ、エサも質の悪いものに代えられ、少しずつ弱ってんのに獣医すら呼ばねぇとか、サファリパークのオーナー失格なんだよ、アイツは!」 「それは、酷いですね。動物好きなら猶更だ」 「……高校出てすぐに就職したんだ。ああ、そうだ。サファリに、だよ。動物と関われる仕事がしたかったから。 頭は悪いんで獣医学部に進学なんてできそうにないしな」 「それから7年。いま、25歳なんですよね? この先、どうされるんです? 探せばまだ色々と選べる年齢でしょう?」 「できれば同じような仕事に就きたいけど、大学も出てないんじゃまずは無理だろう。 かと言って動物園の売店なんかじゃ返って未練が募って気分がムカつきそうだし。いっそ全く違う職業の方が良いんじゃないか、って考えもある」 「なら、丁度良かった。我が社で働いてみませんか? と言ってもまだ起業したばっかりですけど」 「我が社? 起業?」 「そうです。狩野さんにソノ気があるんでしたら詳しいお話もさせて頂きます」 酔眼を加賀美に向けつつ、狩野は努めて冷静に思考を巡らし結論を出した。 「……詳しく聞かせてくれ。俺にできそうな仕事なら良いけどな」 「ありがとうございます。では、善は急げって言いますし、早速明日の朝にでもお迎えに上がります」 加賀美はそう言うと席を立ち、2人分の勘定を済ませた。 「さぁ、狩野さんも今日はほどほどにして帰りましょう。飲み過ぎて二日酔い状態ではちゃんとイデア喚起や概念結合ができませんから」 「い、イデア? ガイネン? ケツゴウ? 何だソリャ?」 「説明は明日します。それでは明日」  翌朝、加賀美は早朝とも呼べるような時刻に狩野の部屋にやって来た。 寝起きでぼんやりしていた狩野ではあったが昨日、加賀美を見送った後言われた通りすぐに店を出て 酒を控えていたのは、それなりに期待するところがあったためだろう。 大急ぎで身支度を整え、玄関先で待つ加賀美の前に現われる。 「あ~、スーツではなくて普段着で結構ですよ」 「いや、しかし一応面接みたいなものなんだろう?」 「そうですね。面接と言えなくもないですけど、スーツじゃ動きにくいでしょうし、もっとラフな格好が良いと思います」 「そうなのか?」 「はい!」 実技的な部分も面接に含まれるのだろうか? 狩野は加賀美の言葉を信じ、スーツから普段の外出着に着替え直す。 Tシャツの上に紺のパーカー。下はジーンズである。 迎えに来た加賀美にしても緑のスタジャンに派手なバックルのベルトを締めたスキニーパンツなのだから、 ラフな恰好で業務する仕事なのだろう、と狩野は想像した。  加賀美の車はワインレッドのセダンであった。 助手席に乗り込んだ狩野はしきりに仕事の内容やどんな会社なのか? と加賀美に尋ねた。 だが、「細かい事は社に着いてから」とばかり答えるため、狩野は途中から話しかけることも止めてしまった。 気まずい空気を和らげるために加賀美は少しだけ口を開いた。 「……会社はコンバート、と名付けました。扱うものは避妊具です」 「避妊具?」 「有り体に言うとコンドームですね」 「は? コンドーム?」 狩野にとって別に未知のモノでは無く、むしろ身近に有る存在であった。 「ご存知ですか?」 「いや、知ってるも何も、この歳でコンドームも知らないような世間知らずじゃねぇし……」 「なら話が早い。狩野さんも知ってらっしゃるコンドームの製造及び販売を行う会社、それがコンバートです」 狩野は湧き上がる疑問を再び加賀美にぶつけたが、いずれも「社に到着したら」とはぐらかされてしまった。 「狩野さんにあまり先入観を持って頂きたくないので、多くをお話できず申し訳なく思います。 これもイデア喚起を速やかに行い、明瞭な概念との結合を果たして頂きたいから、なんです」 「……そいつが一番訳分かんねぇんだが……」 市街地を抜け山地に入る。 車は狭い谷間に存在するいくつかの集落を抜け、標高を300mほど駆け登る。 小さな峠道を登り切ると道路際にまで腕を伸ばす広葉樹の枝が奥へ離れ、一つのまとまりを持った平地、 広闊な原野へと踊り出た。 草深い原野の一角に、築年のまだ浅い別荘のような建物がある。 「会社はあれです。到着しました」 「周囲には何も無いんだなぁ。コンビニくらいないと不便じゃないか?」 「正直なところそうなんですけど、できるだけ周囲に人目が無い事を優先したもんですから、こんな場所になってしまったんです」 「モノがコンドームだから?」 「まぁ、そんな所です――さぁ、お疲れ様でした。どうぞ降りてください」 赤いセダンが別荘風の一軒家の前に停車。加賀美は車を車庫へ入れるため狩野を先に降ろした。 一軒家の前には片側一車線の道路。ただし通行する車両はほとんど見られない。 それ以外は低木と風にそよぐ草が繁るだけの野原、そして少し離れた位置には野原を囲む壁のような雑木林。 「……ずいぶんと僻地だな」 「でしょう? 一番近い商店まで車で30分はかかりますから」 「ぬお!?」 小さく独り言として呟いただけの言葉に背後から思いがけなく反応を得て狩野は少したじろいだ。 「お、驚かすんじゃねぇよ……後ろにいるなんて少しも気づかなかったぞ?」 「ははは。こう見えて気配を消すのが得意なんですよ。僕は。さぁ、中へどうぞ」 「あ、ああ」 玄関に通され靴を脱ぐ狩野。 「いわゆる社長さんなんかもここに居て、いや、いらっしゃるのか?」 「うーん……社長と言っていいのかな? まぁ、ともかくまとめ役って言うか代表っぽい人物には後ほどご紹介させて頂きます。 狩野さんが社長をやりたいんでしたら入社後立候補されてみてはいかがでしょう?」 「おい。冗談なんかよしてくれ。こっちは真面目に聞いてんだしよ」 「そうですね。僕たちの実情などお知らせするにはまだ早過ぎました。まずはGOMと結合をして頂かないと」 先を進む加賀美の後を追いながら狩野は「結合とか、GOMって何のことだ?」 と尋ねる。 「GOMとは『Greate Ocean’s Material』の頭文字を取って名付けたものです。もう一つの名前の方が僕としては由来にふさわしいと思ってるんですが」 「もう一つ?」 「『Growing Obscene Material』って名前です」 「グ、グロウ? アブ? アブ、シン? ……俺は英語とかさっぱりだし、まぁ、由来も興味は無いな」 「ええ。良いんですよ。気にしないで下さい。単にGOM(ゴム)と呼んでいる物があるんだ、って 程度の認識で十分です」 加賀美はそう言いながらバスルームとシャワールームの間のドアを押し開き、狩野を中へ誘った。 弱い照明だけが頼りの階段を降りてゆく。 傾斜は厳しくはないが足元が見づらく必然的に足取りは慎重になる。 ゆっくりと階段を降りるにつれ湿度があがりじめじめとした空気が肌にまとわりつく。 汗が滲むのは気温が高いためでは無く湿度の高さが原因だろう。 階段を降りきった先にももう一つドアがあった。加賀美に続いて狩野もドアを潜る。 「うお!? 何だここは!」 ずらりと並ぶ筋トレマシン。 壁の一面は大きな鏡になっており、さながらフィットネスジムそのままの空間が広がっていた。 他方、筋トレマシンが無いエリアには見慣れない機械が二基据えられ、まるでジムにはふさわしくない 異質な構造物として鎮座していた。 「ここでコンドームの製造を行っています。我が社の心臓部です」 「えっ!? ここで? こんなジムみてぇな場所が工場?」 「はい。実は我が社のコンドームは完全な手作り、自家生産で製造しています。なので、一日あたりの生産量は一人あたり100個くらいが限度になります」 「は? いや、俺もコンドームの工場なんて入った事ないから詳しくは知らないが、手作りのコンドームなんて聞いた事ないぞ?  それに、ここが製造工場だって言われたって、はいそうですね、って言えねぇよ! どう見たって筋トレマシンばっかじゃねぇか!」 「まぁ、そう言われても嘘は一つも言ってません。製造するにあたっては筋トレマシンを使う方が効率よく行えるから置いているだけで、 それ以上でも以下でもないんです。 僕だって変身してコンドームの製造を行う場合はこれらのマシンを使ったほうが早く製造できますし」 「お、お前、今なんつった? へ、変身? コンドームの製造?」 「ああ、いけない。狩野さんに先入観を与えちゃイデアの喚起に悪影響が出かねないのに。まぁ、今の言葉は気にしないで下さい」 「気にするなって言われたって、気にするに決まってんだろ?」 加賀美は数ある筋トレマシンを避けてジムエリアの端に狩野を引っ張った。 そこには1m四方もある黒い金庫が設置されている。 「この中に『GOM』が保管されています。まずは手に取って頂いて、心を『GOM』に委ねてください」 「あ、あのさ、その前に他の社員さんは? 社長さんはどこにいるんだよ? 何でこの中には誰も居ないんだ?」 「それよりもまずは狩野さんと『GOM』との結合が先です。狩野さんの本質であるイデアを呼び覚まし、 そのイデアより産みだされた姿である概念と肉体を結合させ、新たなる姿へと覚醒して頂きたいのです」 「ちょ、……や、やっぱ訳分かんねぇ……悪いけど俺、もう帰らせてもらう――っ!?」 後ずさりしていた狩野は目を見開いたまま呻き声を上げた。 「さぁ、どうぞ見てください。綺麗でしょう? これが『GOM』です。どうぞお持ちください」 開けた金庫の中から琥珀に似た黄色い物体を取り出し狩野の前に差し出した。 見た瞬間、狩野の中の「常識」の糸がプツンと切れた。 手にした瞬間、狩野の中で新たな「常識」が目覚め、ムクムクと膨張し始めた。 硬い鉱物のような外見とは裏腹に、持って見ると柔らかく弾力がある。 グニグニと揉み込めば形を自在に変え、揉むのを辞めれば再び丸みを帯びた元の形に戻る。 「もっと揉んで、扱いて、撫でまわしてやって下さい。狩野さんのペニスだと思って、マスターベーションをしている時のように」 「マ、マスター、ベーション……俺の、オ、オナニー……」 狩野は『GOM』から視線を外してはいないが、瞳からどんどん生気が抜け、虚ろに淀んでいく。 そうして、グニャグニャと揉み扱く手は次第に自身の性器を弄る時と同じような動きへと変わっていった。 「そうそう。その調子です。狩野さんの本能のままに、欲望のままに『GOM』の感触を味わって愉しんで下さい。 その間、僕も狩野さんをオカズにさせて頂きますので」 加賀美はそう言うとジャケットやジーンズをさっと脱ぎ去った。 服の下から現われたのは発達した筋肉を見せつける逞しい肉体であり、股間から聳えるふてぶてしい巨大ペニスである。 「ふんっ」と強く息を吐き股間へ意識を集中させると、加賀美のペニス、いや尿道口からドロリと緑色の粘液が迸った。 粘り気が強いためなのだろう。 緑色の粘液はペニスの先から垂れ落ちることなく陰茎全体をゆっくりと伝って緑にコーティングして行く。 「ぐっ! ぬ、ぐ、くくっ!」 加賀美のペニスがまた緑色の粘液を吐き出した。ドプッ、ヌプッ、と立て続けに噴き出る粘液。 しかし、それらもまた地面に雫となって落ちたりはせず、陰茎から睾丸、さらにその周囲へと緑の領域を広げて行く。 その横で狩野はひたすら『GOM』を上下に扱いていた。 扱けば扱くほど柔らかいながらも『GOM』はペニスのように細長い形状を取り、亀頭と同じように上部がくびれ、 下方には二つの玉を収めたような陰嚢とそっくりな姿へと変化した。 黄色い琥珀色のままペニス型になった『GOM』 それは完全に勃起した狩野のペニスと全く同じサイズ、同じ形、同じ弾力を持っていた。 魅入られたかのようにペニス型の『GOM』を扱き続けていると、亀頭の先端部からヌルルと粘液が溢れ出た。 狩野は迷わずその亀頭部分を口に含み、チュルチュルと粘液を味わう。 「はぁ、はぁ、んふ! ふっ! はぁ、ああ、美味ぇ、気持ちいい、美味ぇ……」 粘液を舐め味わうと狩野もまた衣服を荒々しく剥ぐように脱いで行く。 『GOM』を咥えたままトランクスを外し、全裸になった狩野。 その股間でいきり勃つ狩野のイチモツもまたダラダラと我慢汁をこぼしていた。 「が、我慢できねぇ、はぁ、はぁ、お、俺、の、ケツん中に、コイツをぶち込んで、はぁ、はぁ、思い切り気持ち良く、な、なりてぇ……」 どんどん行動がエスカレートして行く狩野を見て、加賀美はドビュル! と緑色の粘液を大量にペニスから吐き出した! 粘液は腹部から胸部、頭まで覆い、下半身もまたすっかり緑色一色に包まれていた。 そうして、隙間なく緑の粘液が加賀美の全身を埋め尽くすと、ゴキ、バキ、ギチギチと異様な音が鳴り始める。 加賀美の筋肉と言う筋肉がさらに大きく肥大し、骨格のサイズまでもが別の何かへと変わってゆく。 身長がググンと伸び180cmだった背丈が230cmへと50cmもアップした。 左右の肩がゴキッ! メキメキ! と膨らみ、背面でモコモコ隆起する僧帽筋が首周りまで太くする。 それと同時に大胸筋が何度か脈打つように膨らんだり縮んだりを繰り返したかと思うと、ひと際「ズムンッ!」と高く隆起し、最大値の分厚いままで大胸筋が固定された。 腋の下からは厳つく肥大した腹斜筋が「エラ」のように覗き、ボコボコと盛り上がる腹筋のシックスパックと相まって幅の広い二等辺三角形を上半身に生み出した。  下半身もまた上半身に見合うよう大腿筋、ヒラメ筋をモコモコ盛り上げ、ヒップラインもむっちりとした膨らみを見せる豊満な尻へと成長した。 続いて、ヘソの部分からペニスの付け根に縦に裂け目が生まれ縦割れのスリットへと変化すると、 加賀美の大きなペニスがズブズブとスリットの中に引き込まれ埋没してしまった。 最後に、頭部の目に当たる部分だけが黒く変色し、大胸筋の二つの乳首が親指のように大きく勃起して 加賀美の変化は止まった。 緑色のラバースーツを全身にまとったようなマッチョ男。この姿を加賀美は「グリードマン」と呼んでいた。 3概念結合  『GOM』を見た時から狩野は堕ちていた。 ぷつりと切られた常識の代わりにズブズブ入ってきたのは淫らな欲望である。 女性への性的興味は『GOM』によって秒単位で抹消され、新たに埋め込まれた欲望の対象は同性、すわなち「男」、であった。 狩野の手の中で扱かれていた『GOM』は男性のシンボルへと姿を変え、シンボルを嬲れば嬲るほど 快感が狩野にも感じられていた。 したたる『GOM』の先走りを味わい、ゴクリと飲み込んでみればペニスでは無く尻の奥が、アナルの内部がジンジンと疼きだす。 狩野は堪らず衣服を全て脱ぎ去り全裸になると、未だかつて排泄以外に使用したことなど無い窄まりの 一極に、『GOM』の切っ先を押し当てた。 「ひぐぅ!」 秘部に触れた『GOM』は自ら動いて狩野の内部へと侵入し始める。 「いひ! あ゛っ! んが! がはぁぁあ゛っ!」 初めての感覚に狩野はのけ反り、目を白くした。 生き物のように『GOM』は狩野の体内へ入り込み、彼のアナルの内部を排泄口ではなく性交に特化した新たな組織へと変成させてゆく。 「が! ひぎ! い゛! い゛っあ゛あ゛っ! ぎぁあ゛あ゛っ! はひぃぃっ!」 新たな組織に置き換わってゆくのは『GOM』と接触しているアナル付近だけではない。 作り変えられた組織は隣の組織を侵しては置き換えて行き、新たに「ヒトとは異なる細胞」にしてしまうと、 その細胞の周りに接するヒト細胞を次々と異生物細胞へと改変させていった。 まるでドミノのように狩野の肉体はアナルから連鎖浸食され、加工され、新たに再構築されて行く。 その間、狩野の脳には膨大な快感信号が送られ、かつて経験したことのないレベルの猛烈な快楽を味わわされていた。 「がひぃっぃっ! んぎぼぢぃぃーーーっ! ぎも゛っぢぃぃぃぃよぉぉぉーーーーーーっ!」 狩野のチンポはパンパンに怒張し、襲い来る絶頂感によってしきりにビクビク撥ねている。 しかし精液は一切発射されていない。「空打ち」ばかりで終わっていた。 こんな状態が続いていては狩野でなくとも堪ったものではない。 精液を思いっ切りチンポから噴き上げ、沸点に達している絶頂の熱を速やかに放出してやりたいだろう。 精巣で過剰に生産されている大量の精液がイキ場を探して暴れている。 やがて、 股間の内部ではち切れんばかりに膨張した射精欲は、狩野の視界に不思議な光景を出現させた。 かつての勤務先、サファリパークで飼育していた動物たちが見えたのだ。 熊、トラ、狼、ワニ、馬、イルカ……。 そして、狩野が退職する最後の日まで気にかけていた黒豹。 程よく引き締まった筋肉質な肢体、ツヤのあるなめらかな黒い毛並み、ゆらゆらと舐めるように揺れる黒い尻尾。 狩野はとてもカッコイイ、と思った。 カッコイイだけじゃなく、ひどくイヤラシイ、とも思った。 そう思った瞬間、黒豹はスックと起きあがり、両手、両足を人間のモノのように変化させた。 (うわ、な、何がどうなってんだ? ……だが、相変わらずなんてエロい体だ……) 四肢を人のものに変えた黒豹の姿がさらに変化した。 ググッ、ググッと大胸筋を大きく形作り、腹筋をボコボコ隆起させ、肩から首にかけて太く逞しいラインを見せる。 また、引き締まった腰の下に続く二本の脚がギシギシと軋みながら筋肉を大きく、太く成長させていった 変化が落ち着いた黒豹は最早首から上だけが「黒豹」のままであり、首から下の大半は筋肉質な男性の肉体となっている。 違いがあるとすれば、黒く艶やかな獣毛が全身を覆い、ゆらゆらとたなびく尻尾が存在している点である。 (獣人……。こいつは黒豹の獣人だ。狼男の黒豹タイプってやつだ) 黒豹の獣人は狩野の前に屈み、狩野の股間から聳える雄のシンボルを愛おしそうにジュブジュブしゃぶり始めた。 「はぐぅぉおおお! き、ぎもちぃぃっ!」 堪らず狩野は黒豹男のマズルにドビュゥと精液を「発射」してしまった。 (イけた! イけた? さっきまであれほどの快感でもイけなかったのに? 何で急にザーメンが出やがったんだ? でも、そんな事はどうだっていい! もっと射精してぇ! もっともっとぶっ放してぇ!) 狩野は両手で黒豹男の頭を掴み、腰を思い切り前後に振った。 あまりの気持ち良さにまたもや大量に吐精。 (くっ! 凄ぇ! なんてキモチイイんだ! てか、コイツの口だけじゃなくケツも犯してみてぇ!) 狩野がそう思った瞬間、黒豹の頭だったものが二つの丸い丘を持つ「尻」になっていた。 黒豹男の尻を掴んで、ペニスを深々と獣人アナルに挿入していたのだ。 (う゛う゛ぉぉぉおおおおお! 締まる! すんげぇ締め付けやがる! ぎもぢぃぃ! ぎもぢぃぃぃ! ぎもぢぃぃーーーっ!) 容赦なくピストンし、陰茎の根元まで押し込んで黒豹男のケツを味わう。 やがて堪えきれず絶頂を迎えた狩野。ドビュドビュと黒豹男に種付けしていた時、ふと振り向いた黒豹男と目が合った。 黒曜石のような黒い瞳が歓喜に濡れ涙をこぼしていた。 狩野だけじゃなく黒豹男もまた凄絶な快感を得て鼻梁をヒクヒク膨らませて胸を上下させていた。 体の向きを変えた黒豹男の顔が狩野の顔と近くなった。ゆっくりと、しかし確実に狩野の唇に黒豹のマズルが重なった。 マズルの先を舐めるようなキスだ。牙を気にしつつも舌を伸ばし狩野の口内をジュルジュルと舐り味わう黒豹。 「んぐぅぅっ!?」 いきなり狩野のアナルがカっと熱くなった。 何故なら、狩野が覆いかぶさってキスをしていた筈だったのだが再び目を開けると、今度は黒豹男が上になり、狩野が下になっていて、狩野のアナルに黒豹の男のペニスを挿入されつつあったからだ。 何故? と問う眼差しを黒豹男に向けると、言葉にはしなかったが「今度は俺の番だろ?」と伝わってきた。 ヌブヌブと太い肉棒が狩野を穿つ。 ギチギチと唸るアナルから全身に弾ける快感の電流。 「くっそ、堪んねぇ! もっど! もっどぉお前のチンポを俺にぃ! 俺にくれぇぇ!」 しがみついていなければ振り落とされそうになるほどの激しい快感の波が狩野の体内で暴れ狂う。とっくにトコロテンでイっているにも関わらず 狩野は黒豹男に「次」をせがむ。 「もっとくれぇぇ! 俺をもっと狂わせてくれぇ! お前の全てを! お前を全部俺にくれよぉぉぉーーーっ!」 刹那、狩野のカラダがドロドロと溶けて黒豹男のペニスに吸いこまれてしまった。 「あぎあぎぎゃひぃぃぎくくいいいいくいく、イクイクお、俺! 溶けてる! イクイッチャウ! イッヂャウヨォ! ドロッドロんなってイクイクイクイクぅぅーーーーーっ!」 ――ジュプンッ! 黒豹男がブルルッ! と身を震わせた。 そうして、 ゆっくりと目を開けると、狩野は自身が黒豹男になっている事に気が付いた。 「うぉ! イグ! イッグゥゥーーーーッ!」 ビィン! と勃起した黒豹男、いや獣人になった狩野のペニスから白い体液がドビュウッ! と噴き上がる。 膝をガクガク揺らして何度も何度も精液を放出する。 そんな快感の中、狩野は意識が少しずつ解け、バラバラになって行くのを感じていた。 「……ああ、あ、お、俺は、獣人に、黒豹、に……」 黒豹男になった狩野の腰を背後から掴んだ者がいた。それは黒い毛並みを見せるヒグマの頭を持ち、 レスラーの如くがっちりとした巨漢だった。 有無を言わさず挿し込んで来たクマ男の凶悪なほどに太いペニスが黒豹・狩野のアナルを穿った。 「あがあががが!? がぎひぃぃぃーーーー!」 あまりの圧迫感に涙がこぼれたものの、グチュグチュとクマの巨根が狩野の中をかき混ぜれば、 あっという間にアナルから猛烈な快感が湧き起こり、再び狩野をドロドロに融かし、クマ男のチンポに吸い取られて行く。 すると、狩野は黒豹男からクマ男になっていた。 グローブのような大きな掌を見つめ、どうなっているのか? と首をかしげる。 しかし、考えている暇はない。クマ男の背後に立った馬男が長く太いペニスを突き込んできたからだ。 狩野はクマ男から黒い馬男に変化した。 馬男の次はイルカに。 そして狼に、トラに、ワニに。 獣人に犯されカラダが融けるたびに、狩野は自分を犯した獣人へと変身を重ねていった。


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