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鷹取リュウゴ
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俺たちの新しい七不思議 1 プロローグ

1夏と言えば……  台風が接近中と言うニュースを受け、午後からは部活も夏期講習も急遽取りやめになった。 俺たちはそれをチャンスと捉え、かねてから計画していた肝試し……、いや「伝説創り」を実行に移すことにした。 参加メンバーは俺とリョウタとヒロキ、そしてマサヒロの4人。 17時に高校の裏門に集合。 念のため先生に見つかって咎められた場合は「忘れ物をして取りに来た」と言う理由で口裏を合わせるつもりだ。  家が近い3人は一旦帰宅してから集まることになった。俺は、と言うと少し遠い上に誰もいない家に戻っても寂しいだけなので 高校近くの公園や昔よく遊びに行っていたゲーセンに立ち寄って時間を潰してから約束通り17時丁度に裏門に来た。 雨はまだ降っていないけど分厚い雲が足早に流れ、ぬるくて強い風が吹いている。 待っているとリョウタたちが揃って裏門前にやって来た。 「本当に誰も居ないみたいだな。さすが大雨洪水警報」 「つうか、裏門の鍵、開いてんのか? 来たのに中に入れないんじゃ意味ないんだけど」 ヒロキとマサヒロは外側から校舎を仰ぎ見てリョウタに尋ねた。 「へっへー、実は裏門の鍵の番号、知ってんだよねー」 門の鍵は数字を合わせるタイプの南京錠で、リョウタはその数字を知っていた。 「前に開きっぱなしになってた時に正解の数をチラ見して覚えてたのさ」 裏門はゴミ置き場に近いから清掃業者の人が鍵を中途半端な状態にしたまま帰ることがあるらしい。 リョウタが裏門の南京錠を外し門を開ける。 俺たちは少し警戒しながら校内に潜入。 ここで先生に見つかったりしたら忘れ物を取りに来たと言う言い訳も多分通じない。 「…………よし、やっぱり誰も居なかったみたいだな」 「まずは成功っと」 「さぁて、どっからアタックする? 音楽室? それともコンピューター室?」 照明が消された校舎の中は曇り空の光だけだと随分と薄暗い。じわじわとヤバイ雰囲気が感じられる。 「ここはやっぱさ、七不思議の順に攻めるのが王道じゃね?」 ヒロキの言う七不思議とは、我が高校にて昔から伝えられてきた怪奇現象のことだ。 第一に西校舎の3階のトイレは誰もいないのに個室から人の声が聞こえる不思議。 第二に美術室の石こう像の一つが向きを変えても常にこちらに向いている不思議。 第三に体育館の地下倉庫にはたびたび血の跡がある不思議。 第四は利用者がいないにも関わらず保健室のベッドが暖かいと言う不思議。 第五はプール脇の更衣室のロッカールームがプールが無い日に限って濡れている不思議。 第六には音楽室のメトロノームが勝手にリズムを刻み始める不思議。 第七は東校舎屋上に上がると、ひとりでにドアが閉まると言う不思議。 「それからコンピューター室には誰も立ち上げたりしていないのに、いつも1台だけオンになっている パソコンがある不思議、だったよな?」 ヒロキが高校に伝わる不思議を改めてみんなに告げたけど、不思議の数、七つじゃないよな。 「それなら七不思議じゃなくて八不思議じゃん」 俺より先にリョウタが至極普通なツッコミを入れる。 「まぁ、その辺りは適当でいいんじゃね? コンピュータ室って5年ほど前にできたらしいしな」 マサヒロの言う通りで、この七不思議は年によって微妙に変わっている。 第一不思議のトイレにしたって「前は西校舎3階じゃなくてクラブハウスのトイレだった って聞いたぞ?」なんて言う人もいるくらいだし。 「ま、そうだな。数なんて大した問題じゃない。この八つの不思議が事実はどうなのかを確かめて、 その上で俺らが九番目の『新しい不思議』を作り上げてやるんだ。来年春に卒業しちまう俺らから在校生への置き土産として」 言い出しっぺのリョウタがニヤっと微笑む。 今回のプランは学校の八不思議を確かめる好奇心ももちろんあるけど、本当の狙いは「新しい不思議」を卒業記念に残すのが目的なのだ。 夏休みが終わって二学期が始まれば受験に向けてほとんどの生徒がまっしぐらになる。 部活は引退、体育祭や文化祭なんかの行事も主役は2年生へと渡し、授業が終われば有志の先生による 受験対策講座に足を運んだり、学校外の塾や予備校の現役受験生教室に行く者もいる。 なので、このままだと大した「爪跡」も残さないまま流されるようにして高校を卒業してしまう。 それでは何だか勿体ないじゃないか、この高校で過ごした3年間の日々や思い出が結局カタチとしては卒業名簿とアルバムだけになるなんて、あまりにも切なくないか? と言いだし、リョウタの提案で「不思議の調査」と「新しい不思議の創作」を思い立ったのだ。 「さあて、順に行くとしますか!」 マサヒロがバットを持つ振りで素振りを見せる。 フォームの整ったスイングができるのは、さすが野球部で活躍してただけのことはある。 「台風のお陰でラッキーだよな! 誰にも邪魔されずに七不思議を確かめられるなんてな」 ヒロキも足を大きく開いてストレッチをしている。陸上部で走り込む前のいつもの準備運動だ。 「そうだな。んで、もしも本当に幽霊が出やがったら、俺のタックルをお見舞いしてやるぜ!」 腰を低くして顔を上げるリョウタ。がっしりとした体格はラグビー部と普段の筋トレの賜物なのだ。 3人と違って運動系の部活じゃない俺は、特にテンションを高めるルーチン(お決まりの行動)など無い。 「いつも通り」ついて行くだけだけど、楽しみであることには間違いない。 「そうだ、スマホは全員持っているよな?」 リョウタの問いにヒロキもマサヒロも肯いた。 「なら良いんだ。万が一はぐれちまって何かあったらすぐに連絡し合おうぜ。それと……」 リョウタが不意に言葉を詰まらせ俺を凝視した。 なんだろう?  俺も気になって後ろを振り向いた。 ――さっき通ってきた裏門と塀があるだけだ。風で木の葉がなびいてるけど雨はまだ降りだしちゃいない。 「リョウタ? どうした?」 ヒロキが不安になって声を掛けた。 「……あ、いや、気のせいか。……何でもない」 「い、いきなり雰囲気だすのはやめろよー。ちょっとビビったじゃんよ」 「悪い、風で飛んできた葉っぱに驚いたんだよ」 確かに風はまた強くなっているみたいで、時折「ビュゥッ」と音がしている。 日没の時刻には早いけど、厚みを増した雲のせいで一段と暗くなっていた。 校舎の中はさらに暗く、非常灯の赤いランプが不気味さを醸し出している。 「さ、さぁ、行こうぜ。せっかくのチャンスを無駄にしたくはないだろ?」 俺もヒロキもリョウタもマサヒロの言葉に肯いた。 まずは、西校舎の3階へ向かう。 もう一度リョウタが振り向いて俺の方をじっと『見た』 何だろう? また吹き飛ばされた葉っぱが気になったんだろうか?


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