聖夜のマッチョパーティ 3
Added 2018-12-23 12:17:34 +0000 UTC3 ディナータイムの出会い タキシードに着替えてメインダイニングに足を踏み入れた瞬間、圧巻の光景に息を飲んだ。 マリンブルーの天井から銀河のように煌めくシャンデリアにも、ビュッフェ形式で選べる豪華なクリスマス料理の数々にも目を見張ったが、 それ以上に驚きなのは入っている客の多さ、そしていずれ劣らぬガタイの良さとカッコ良さ、であった。 「うわ、一体何人いるんだ? 凄い人数だな。それに――」 タンクトップの男、カラダにぴったり張りつくトレーニングウェアを着ている者、胸までしか隠れないTシャツを 着て臍や腹筋を丸出しにしている者、 皆が自慢の肉体を最低限の衣服でもって見せつけるように食事を愉しんでいる。 圧倒される、とはまさしく今の俺の事だろう。 思わず生唾をゴクリと飲み込む。 ドレスコードは特に無いようで、タキシードを着ている者の方が少数だった。 「どうしたんだい? そんな所に立ったままだと食事ができないよ?」 「ひゃ!?」 振り向くと褐色に短髪のマッチョな男が立っていた。年齢は俺より上だろう。 薄手のニット越しに男のボディラインが浮き出て、ボコボコの輪郭をそのまま見せつけている。 また、ガタイもイケてる上に、顔だちがスッキリした雄っぽさが溢れててとてもカッコイイ……。正統派二枚目って言い方が似合う人だ。 「あ、す、すみません、邪魔しちゃって。なんか俺、圧倒されちゃって、通路を塞いじゃってましたね」 「あ! あ~、言い方がまずかったな。俺が食事できない、って事じゃないんだ。君が、って意味だったんだが」 「そう、だったんですね。俺なんかに気遣いして頂いて、ありがとうございます」 「ん? 俺なんか、って……。謙遜かな? スーツがガタイにフィットしてとても素敵なのに。あまり卑屈な言葉は似合わないな。おっと、立ち話なんてこれぐらいにして席に着いて食べようじゃないか」 男がウェイターに声を掛け、「どうぞこちらのお席へ」と案内され俺のそばから離れて行く。 「うん? 君も一緒にどうだい? それとも、俺とじゃイヤかな?」 「い、いえ! そんなことないです!」 俺も慌てて男とウェイターの後に続く。 席に通された俺と男は、お皿を手に中央の大テーブルから美味そうな食事を好きなだけ選んでいく。 骨つきのローストチキンのほか銀皿に山と積まれた生ハム。 レモンとバジルの香りが爽やかなハーブソーセージ。 脂が少なく柔らかい和牛フィレ肉のステーキにはシンプルに岩塩を乗せ、しっとりジューシーなローストビーフに、ブランド豚のカツレツもある。 種類が多すぎて数えきれないくらいだけど、肉系のメニューが特に充実していた。 ドリンクは定番のワインやビールの他、最高級の紅茶やコーヒー、薬草茶、ハーブティーのほかミキシングされたプロテインがドリンクサーバーに並んでいた。 またデザートとして3段になっているクリスマスケーキやブッシュ・ド・ノエル。シュトーレンやレープクーヘンと言うクッキーで作られた家のカタチのヘキセンハウスに、 雪玉みたいなボルボローネ、サクランボがふんだんに乗っているキルシュトルテやブランデーの薫りのクリスマスプディングも用意されている。 美味しい食事にありつきながら向かい側に座る男と話しをする。 男の名前は「亮一」さん。 ニットの内側から首にぶら下げていたネームプレートを取り出して俺に見せた。 年齢は32歳。俺より12歳も上だった。そんなに離れてるようには見えなかったので驚いてしまった。 俺もポケットから下の名前と年齢とが書かれたネームプレートを引っ張り出し首に下げる。 「へぇ~、冬賀(とうが)クンは20歳かぁ。その歳でそのガタイ。相当ハードなトレーニングを積んできたんだろうね?」 トレーニングなどしていない。ただし、不思議なドリンク一本でこのカラダですよ、とも流石に言えない。 フロントの男は俺を控え室から出す間際、「このドリンクについては極秘でお願いします。もしも口に出した場合、お客様には……」海に放り出すとか? 「罰として賠償金を請求することになります。金額は最低でも億単位とお考え下さい」 と、釘を刺されているのだ。 「いえ。それよりも亮一さんこそ32には見えないです。もっと若い、それこそ俺と2、3しか違わない、って思ってました」 「そうかい? 嬉しい事言ってくれるね。まぁ、見た目以上にコッチがいつまでもヤンチャなので、そろそろ大人っぽく落ち付いて欲しい所だけど」 亮一さんは視線を自分の股間へと向けた。 「わ、わ、若いほうが良いですよ! てか、亮一さんのお歳くらいからが一番の男盛りですし! げ、元気なのが一番です!」 「あっはは! 良いね! 冬賀クンと話すと楽しいよ! で、良かったらさ――」 声を小さくした亮一さん。 「どれくらい俺のムスコが元気なのか、この後、確かめてみてくれるかい?」 「あ! え!? あの! えっと、そ、それは……」 いきなりこんなカッコいい人から誘われちゃうとどうしていいのか分からなくなる。即答できず戸惑っていると 「ああ、ちょっと急ぎすぎたかな? 無理しなくていいから、ゆっくり考えて欲しいな。できればOKの返事を待っているから」 「あ、は、はい……」 早くも反応し始めようとする俺のムスコの高ぶり。展開の早さに面食らってるだけで心の中ではとっくにOKと返していた。 「――おっと! 亮一さんじゃないっすか! お久しぶりです! 今回はパーティに参加していたんですね!」 亮一さんの後ろを通り過ぎようとしていた男が急に立ち止まって声を掛けてきた。 タンクトップからはみ出る僧帽筋がモリモリと山のように盛り上がり、極太の首や腕周りでも筋肉がひしめいている。もの凄いバルクの人物だ。 「やぁ、和彦じゃないか。久しぶり。正確には2年ぶりの参加になるかな?」 プロレスラーみたいに精悍な顔だちとイカツイ雰囲気。亮一さんとは異なる系統だけど、この人だって凄くカッコいい。 「ああ、そうだ。紹介するよ。こいつは和彦。歳は、ええと、いくつになるんだっけ?」 「忘れちゃったんすかぁ? 俺は28っすよ! もしかして俺の肌触りやブツのデカさまで忘れたんじゃないっすよね?」 「しばらく触って無いからどんなのだったか忘れてるね」 「うえぇ~? じゃぁ、亮一さんに覚え直してもらわないといけないっす!」 「和彦、こちらの素敵な人は――」、と亮一さんが俺に手を向け和彦と呼ばれている人物に紹介してくれた。 「こちらの彼は冬賀(とうが)クン。二十歳なんだって」 「あ、ど、ども! 冬賀です! よ、よろしくお願いします!」 思わず席を立ってお辞儀をする。 「…………」 ? 何で無反応? つうか、何だろう、この「間」は。 じろじろ俺を睨んでるし。 「えーと、ゴホン! 和彦。いつまで固まっているつもりなんだ?」 「へっ? あ! ああ! いや、ゴメン! スーツ越しでも凄いかっけーカラダしてるし股間も超デカそうで、つい見惚れてしまって」 申し訳ない、と和彦さんが頭を下げるので「いえ、大丈夫ですから」と、言おうとしたけど確かに股間が盛り上がっているのがバレバレ状態だったので慌てて股間を隠す。 「亮一さ~ん? どっからこんな凄い奴連れて来たんすかぁ~? 相変わらず美味そうな素材を見つけるのが神技って言うか、職人技って言うか」 「知り合ったのはこのダイニングで。ほんの十数分前さ」 「えっ!? そうなの? って事は、まだ亮一さんの『御手付き』じゃないんですね?」 「人聞きが悪いなぁ。でも、まぁ、そうだよ。先に唾付けておこうとお誘いはしてるけど」 「なーんだ。じゃぁ、俺が先に行かせてもらっちゃってもいいんすね!」 和彦さんが顔を俺に戻した。 「えっと、改めて、俺は和彦っす。冬賀(とうが)くん、だっけ? すんげぇカッコイイんでひと目惚れしてしまいました。 良かったら俺とも仲良くして欲しいっす!」 「は、はい! こちらこそ、仲良くして下さい!」 和彦さんは俺と亮一さんの座っているテーブルに、さっきまで自分が使っていた席から食べかけの食器やグラスを運んで来た。 「いいのか? 向こうの友人たちの相手をしなくて」 「いいの、いいの! 冬賀くんや亮一さんのほうがレベルが上っすから!」 しょうがないなぁ、と言いつつ特に困った風でも無い亮一さん。 和彦さんは初見とは打って変わって人懐っこい印象になっていた。俺の事、カッコイイって褒めてくれたからかな? イカツいけど、人を寄せ付けない感じでは無い。 話し出すと余計に親しみが持てる。 「ちなみに、お二人ともどんなお仕事されているんですか?」 亮一さんと和彦さんが箸とフォークを止めて、ほんの数秒、互いに目と目で会話していた。 「えーと、ルールってほどのモノじゃないけど、このパーティの間は立場とか、仕事とか、まぁ、現実を忘れて、楽しもうってのが暗黙の了解でね。 例えば、同じ会社の上司と部下が偶然鉢合わせたとしても、それはそれ、として上下関係を持ち込んだりしないようにしているんだ」 亮一さんはとても穏やかな、それでいてしっかりとした口調で俺に告げた。 口から出た言葉は取り消せやしない。俺は、答えられない質問を、2人にしてしまったんだ、と悔やんだ。 「いやぁ~、だけどさ、冬賀くんは初めてパーティに来て色々知らない事だらけなんすよね? じゃぁ、お近づきの印に特別サービスで教えちゃってもいいんじゃないっすか?」 和彦さんが亮一さんと相談し、結局亮一さんも「それじゃぁ」とOKを出した。 「俺は、プロレスラーをやってるっす。覆面してるんで素顔はほとんどの人が知らないんじゃないかな? 『バルク・ザ・ギャラクシー』ってリングネームっす」 「えっ!? ギャ、ギャラクシーさん!?」 しー! と口に指を当てて声を低くするよう和彦さんにたしなめられた。 「っす、すみません。てか、あなたが、あの……」 人気プロレスラー『ザ・ギャラクシー』は、ギャラクティカボンバー、コスモスペシャル、ブラックホールディバインなど強力かつ派手な技を 使いこなす一流選手にして、覆面ながらイケメンレスラーとして女性からの支持も高いので有名だ。 ――あの大胸筋でベッドの宇宙に放り投げて欲しい ――逞しい腕に抱かれて、無重力のときめきを感じたい ある雑誌の「抱かれたい男ランキング」の記事で、バルク・ザ・ギャラクシーは俳優やアイドルと並び堂々7位にランクインしていた。 そうかぁ、和彦さんがあの覆面レスラーのギャラクシーさんだったとは。 「そして、俺の本業はスーツアクターでね、和彦みたいに仕事中は顔出ししない仕事をしている」 「ここ何年かの戦隊ヒーローは一通りやってるんでしょ? 亮一さん」 「まぁ、そうだな。剣神戦隊からは途切れずに仕事はもらえている」 「うわ~! 俺、見てましたよ! 剣神戦隊ガンブレードもですけど、爆勇戦隊ゴーバインも、星獣戦隊オランジアも! 亮一さんって凄いなぁ」 「いやいや、そんな大した事じゃないよ」と照れる亮一さん。その仕草や表情が可愛らしく見えてしまう。 この後は食事を摂りながら二人して「二十歳でこのガタイ? 凄いなぁ。俺だってさすがにそこまでのカラダにはなってなかったっなぁ」 とか、 「ここまで魅力的な顔とカラダの持ち主はそうそういるもんじゃない。今回は冬賀クンに会えただけでも来た甲斐があったと言えるな」なんて、 代わる代わる褒めまくられていた。 「あれ?」 急にダイニングホールを照らしていたシャンデリアの照明が落とされ、代わって奥の舞台にスポットライトが向けられた。 「今年もあの企画をするんだな?」 「そうみたいっすね。前回は俺が[出す]側で、超キツかったんですけど、今回は呼ばれなかったっす」 亮一さんと和彦さんが複雑な顔になった。嬉しそうな、それでいて困ったような。微妙な笑顔を見せる。 テーブルごとにスタッフが回って小さなカードを配っている。 ほどなく、俺たちのテーブルにもスタッフがやってきて、1人に1枚ずつカードを渡していった。 「ビンゴ大会? へぇ~」 カードの上にランダムな数字の書かれた「窓」が横5行、縦5列、全部で25マス作られている。 中央の1マスだけはFREEだから最初に開けておくのだ。 「いよいよパーティーの出し物って感じですね!」 「まぁ、そうだね。冬賀クンはビンゴに当たったらどうするんだい?」 「? え? ええと、普通に受け取っちゃうと思いますが?」 「う~ん、そうかー。そりゃそうだよなぁ~」 眉を寄せて残念そうにする亮一さん。何か良くない商品なんだろうか? 「う~ん……、今更だけどさ、冬賀って船に乗る時にパンフもらってなかったりする?」 和彦さんが聞いてきたので「はい」と答える。 何せ参加条件に合わなくて、別室でカラダをマッチョ化するドリンクを飲まされていたからそれ所じゃなかった。 「パンフなんてあったんですか?」 「招待状と引き換えにフロントで渡されるんだよ。そうか~、冬賀クンはもらって無いんだ。パンフに目を通してたら もう少し違った反応するよなぁ、やっぱり」 かなり大事な情報が載っていたんだろうか? 今更フロントにもらいに行くのは、何だか気が引けるなぁ。 黙って居たら亮一さんが話してくれた。 「パンフレットにはね、この『クリスマスクルージング』でのイベントスケジュールや船内の見取り図、決まり事なんかが書いてあるんだよ」 そんな大事なパンフだったら一部欲しかった。やっぱり後でもらいに行こう。 「あ、そうそう。ビンゴ大会の後は飛び入り参加自由の『マッチョライブショー』があって、23時過ぎになれば――」 『お食事中のみなさーん! メリーーー! クリスマーーーース! おっ待たせいたしましたぁ!! いよいよビンゴ大会スタートのお時間と相成りました! お手元にお配りしたカードをしっかりとチェックしていって下さいねぇ! 先着順に豪華商品、豪華特典を授与させていただきまーっす!』 舞台に現れたビキニパンツ一枚に蝶ネクタイの司会者(この人も凄く筋肉ムキムキだ)が、マイクからテンションの高い声をダイニングホールに響かせた。 『さぁて、今回のビンゴマシンたちに入ってきて頂きましょうっ! どうぞ~!!』 舞台袖から一人、また一人と堂々たる筋肉ボディの男たちが登場し、合計5人になった。 皆、白いケツワレ一丁で、腰の部分にAとか、Bなどと書かれた丸い札を付けている。 『簡単にお名前だけ自己紹介して頂きましょう~! 一番左のAの彼からぁ~、ぃよろしくぅ!!』 「え、Aのビンゴマシンをさせてもらう事になりました、勇也っす。よ、よろしくお願いします」 「あの、健一です。Bのビンゴマシンになりました。が、頑張り、ます……」 「おいっす! 今年もビンゴマシンさせてもらう事になりました! Cで頑張りまっす! 弘樹でーす!」 「あ、はいっ! Dのビンゴマシンです! 治樹です。よろしくです!」 「えーと、ビンゴマシンのEを担当します。慎二っす。よろしくっす」 5人ともやけに顔が赤くなっている。つうか、上気してるみたいだ。ケツワレの前がはち切れんばかりにモッコリ盛り上がってて、 今にも中の肉棒がニョッキリ&ポロリしそうなくらいになっている。 「し、司会者ぁ! は、早くしてくれ!」 辛そうな声が飛んだ。叫んだのはビンゴマシンB役の健一、って人からだ。 『はっはっは! 今にも出ちゃいそうなビンゴマシンさんがいるようですけど、順番は動かしません! ここは堪えてもらいましょう! では、Aさん! 記念すべき一発目をヒリ出しちゃってくださいな!』 ヒリ出す、だと!?