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鷹取リュウゴ
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聖夜のマッチョパーティ 5

5マッチョライブショー  ナイトラウンジ『詰漫』は、照明をぐっと抑えた薄暗い空間になっていた。 天井に天の河をあしらった星空風の装飾を施し、回転するミラーボールがキラキラ光を反射している。 「へぇ~、雰囲気良いですね!」 「……それにしても」 「ええ、……予想以上、っす」 亮一さんと和彦さんの視線が俺に釘づけになっている。 俺もだけど、2人ともビルパン一丁で惜しげもなく筋肉を晒している。 亮一さんは本当に無駄のないシャープな筋肉で触れれば斬れそうなエッジのあるバッキバキ体型。 対して和彦さんは、程よく脂肪の乗った、しかしながら内側からはち切れんばかりに隆起する分厚い筋肉のバルクマッチョなレスラー体型、本物のプロレスラーだけにさすがとしか言いようがない。 一旦部屋に戻って貰った賞品を下ろし、スーツから着替えてビルパン一丁になり、待っていた亮一さんと和彦さんに合流して ナイトラウンジまで移動。 「なぁ、冬賀クン。明日もこのショーはあるし、やっぱり今夜は今から俺の部屋に来ないか? 君と二人だけで過ごしたい気分なんだが」 「待って下さい、亮一さん。冬賀は俺も興味津々なんすから。さっき言った3人で、ってのも譲歩した表現ですし、本当は俺だって冬賀と二人だけになりたいんす」 移動しながらこんな「さや当て」を俺の前で繰り広げるものだから、俺としてもどう対処していいのか分からず、 結果、曖昧な返事に終始してしまう。 ナイトラウンジに到着したら急に口数の減った二人。心配しながらマッチョなボーイに案内され席に通される。 ふかふかのソファ、小さなテーブル。 サーモンのマリネやカットされたチーズが並べられ、ドリンクをメニューから好きなものを選ぶ。 俺はあまりアルコールに強く無いので度数の低いモーゼルワインを。 亮一さんはウィスキー、和彦さんは黒ビールを注文して口にする。 ラウンジに入っている客の数は5~60人ってとこだろう。席の間隔が広いから決して窮屈では無い。しかし、 まばらで寂しいと言う訳でも無い。程よい込み具合だ。 静かでムーディーなピアノ曲が急にテンポの速いテクノサウンドに切り替わった。 『お待たせしました! これよりマッチョライブショーを開催いたします! 出演されるモデルの方にはクルージングをお楽しみ中のお客様にも飛び入りで参加して頂いてます!  皆さま! 暖かい拍手と共にお迎え下さい!』 ラウンジの奥にセットされた舞台にスポットライトが向けられ、テクノサウンドからドラムンベースが効いた妖艶なダンスミュージックが響き始めた。 と同時に紫やピンクの光が舞台を包み、青いレーザービームがビートに合わせてリズミカルに跳ね回る。 『トップを飾るはこの男! レイジ! カモンッ!』 際どいホットパンツ姿で現われたのはレイジと呼ばれた褐色マッチョの青年だ。 舞台の高さを活かして出るなりバク宙を決め、腰を前に突き出しくねくねと左右にくねらせた。 「うわ! すげぇ! それに、セクシーですねぇ」 レイジの色っぽい動きに思わず興奮気味に感想を口にする。 「冬賀クンの方がセクシーだ。少なくとも俺にはそう見えている」 たはは。ほんと、亮一さんはぐいぐい攻めてくるタイプの人だったんだ。慣れてないからくすぐったいんですよね。言わないけど。 「亮一さんの後に言うのは癪っすけど、マジ俺も同意見です。冬賀はセクシーだし、筋肉だって半端無いほど マッチョでガタイが最高なんすけど、ちゃんと抱きしめてないとどこかに消えてしまいそうな危うさも感じるんすよね。 だから余計に俺のモノにしたくなる……」 うう、和彦さんが獣みたいな視線を俺に投げて来る。これは、冗談とかじゃなくマジな目だ。隙を見せれば一瞬で俺、和彦さんに食われちまう。 危いって意味なら和彦さんのほうが俺なんかよりも危険な野獣じゃないですか! 『さぁ、お次はコイツだ! 決めてやれ! ショウ!』 コミカルなロボットダンスの動きで舞台中央へ現われたのは股間に六尺褌だけの長身マッチョ。 不意に動きを止め頭を床に着けたかと思うともの凄い早さでヘッドスピンを繰り出した! かと思うとヘッドスピンをピタッと止め、何の反動も付けずに体幹の筋肉だけで上体を起こし起立する。 相当な筋力と柔軟性が必要な動きだと俺でも目で見てイメージできる。 「かっこいいダンスですね。俺じゃとても無理だろうな」 「だったら俺と一緒にレッスンを受けてみるかい? 知人に教えるのが素晴らしく上手い男が居てね、俺もそいつの指導を時々受けたりするんだ」 「それ、ヤツカスタジオのベックさんじゃないすか? だったら俺も知り合いですけど。冬賀がもしダンスに興味があるのなら紹介するよ?」 亮一さんと和彦さんがそれぞれ俺の呟きに食い付いてくれる。ありがたいんだけど、ちょっと困る。 「あ、あはは、そ、そうですねぇ。じゃぁ、気が向いたら、って事で。今はまだ、その……」 「相談したくなったらいつでもおいで。待ってるから」 「亮一さんじゃなくて俺に言ってくれれば、力ずくで予約まで取ってあげるからな」 むんっ! と腕を上げて力こぶを見せつける和彦さん。マジで力ずくで予約なんかもぎ取られた日には、俺の肩身が狭くなるだけだろう。 『そして最後はこの男! このクルーズにご乗船頂いたお客様からの刺客! ハイパーボディ野郎! その名は! キョウタロウ!』 黒い帽子、股間に黒いレザーのTバック、たくましい肩や大胸筋を区切るように締め付けるハーネスがTバックに接続されている、 いわゆる「ボンデージ」と言う衣装を身に着けた俺と年の近そうな男がスッと舞台に登場した。 かと思うと口から出した舌をウネウネと揺らめかせながら全身を両手で愛撫する。 その煽情的でエロティックな動きと表情に俺は一瞬だけど音楽が耳に入らず、食い入るようにダンサーのキョウタロウを見つめた。 「……冬賀クンが見入っちゃうのも分かるな。このダンサー、ずば抜けている。前の二人を完全に食ってるぞ」 「そうっすね。なんだか、一つ一つの動きが際どいんだけど、それだけじゃないモノを感じさせます」 キョウタロウの妖しいダンスに夢中になっているのは俺だけじゃない。このナイトラウンジに居る全員が彼の 姿態を見つめている。 音楽に合わせて腰を前後に振るだけで彼とのセックスが脳内で映像化されてしまうし、唇を開いただけで彼にフェラチオをされているかのような気分になってしまう。 股間は痛いほど勃起してしまい、ビルパン一丁の観客全員が俺と同じように股間を激しく盛り上げていた。 「完全にただの客じゃないっすね。ここまで盛り上げてくれるなんて。初めて見る男っすけど今まで招待されていなかったのが不思議っすよ」 「俺も未知の人物だな。こちらの冬賀クンと言い、あのダンサーと言い、まだまだ隠れた逸材がいるって事なんだろう。 ……俺も負けていられないな」 亮一さんと和彦さんの感嘆の声をうっすらと耳に入れながら、俺はキョウタロウの動きを追い続けていた。 背を向けて引き締まったお尻を客席に向ける。Tバックだからほぼお尻は丸出しだ。 そして背をかがめてお尻を突き出す。それだけで俺は彼のアナルを犯しているような気分になってしまう。 ケツに食い込む紐部分を引っ張ってパチンと弾ませた。ハッと我に返るもののもっとその奥の穴まで見たい欲望が芽生えて来る。 なんてヤラシイお尻だろうか。 またカラダを正面に戻し帽子をクイと軽く持ち上げる。キョウタロウの目元までがライトに照らされハッキリと見えた。 その時―― 「あっ! き、きょうちゃん!?」 俺は自分でもビックリするくらいの声で叫んでいた。 そして、その声が場違いだと二秒後に気付き、席に埋もれるようにして恥を耐えなければならなくなった。 「……もしかして、冬賀クンの知り合いだった?」 「詮索はしたかねぇけど、実際そうなのか? 冬賀」 「……ええ。見間違いでなければ、キョウタロウは、俺の、中学時代の友人だと思います……」 テーブルに突っ伏したまま二人に返事をする。 見間違い、と言ったけれど99%恭太郎に違いない。 向こうは俺を忘れているかも知れないが、俺は忘れたりはしない。 目じりからこめかみに向けて一本の傷跡があった。それは、俺に取って忘れられない。忘れてはいけない「思い出」の傷跡なのだから。 「……すみません、俺、ちょっと疲れたので先に部屋に戻って休もうと思います。お二人はこのままマッチョライブショーを楽しんでて下さい……」 何か言いたそうだった亮一さんと和彦さんを残し、俺は一人でナイトラウンジから出て行った。


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