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鷹取リュウゴ
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聖夜のマッチョパーティ 9

9マイ・スイートルーム     何とかチンポを落ち着かせて亮一さんたちに「ひとまず自分の部屋に戻ります」と言うと、あっさりと俺を解放してくれた。 あんなに誘いまくってた割に意外だった。 部屋に戻ると千切れた服は綺麗に片付けられ、入り口そばのミニテーブルにパンフレットが置かれていた。 「ええと、『クリスマスクルーズ及び、客船・黒蜜のご案内』か」 表紙をめくれば冒頭はごく普通の挨拶から始まり、筋肉を愛好する紳士諸兄の素晴らしいクリスマスの思い出になれるよう スタッフ一同心を込めてサービスをご提供いたします。主催・マッチョパーティより、ってな感じで文章が綴られている。 次のページはクリスマスクルーズの旅程が日ごとに載っていた。 「一日目、17時に出港の後、翌二日目の10時にK港に寄港。初日と同じ17時にK港から出港し、三日目9時にM港に寄港して15時に出港。 そして最終日になる4日目の16時に出発した最初の港に戻りクルージングは終了、か」 招待状には集合場所と参加条件程度しか書いていなかったからこれでようやくクリスマスクルージングが3泊4日の船旅なのだと知った。 次にはディナータイムやランチタイムなどの設定時間、バーやナイトラウンジの営業時間、プールや大浴場の時間がそれぞれ記載されている。 ジムだけは『いつでも利用可能』とある。さすが「マッチョの集い」らしいな、と感心した。 「問題のミッドナイトタイムについては……お、あったあった――」 バー・白蜜で聞いた気になる言葉がこれでようやくハッキリとする。 「深夜12時よりスタートで、場所は6階の全エリア。終了は朝5時です、か」 詳細について書いてある文章を目で追う。 ――この時間帯において6階にいらっしゃるお客様はどちら様もセックスOKと見なされますので、体調不良の方や特定のお相手とのみ愉しまれたい方はお越しになりませんようお願いいたします。 「きょうちゃんの言ってた通りなんだ。6階に上がった時点で誰とでもセックスできちゃうのか」 ――貴重品は持ち込まないようにお願いいたします。照明を落としておりますので紛失された場合非常に発見しづらくなっています。 よほど暗いんだろう。 ――ローション、コンドーム等はエレベーターホールに準備しております。 ちゃんとゴムを付けてやろうぜ、って事か。 ――失禁或いは脱糞などをされた場合は速やかにスタッフへお申しつけ下さい。 ……ま、まぁ、汚物臭が充満したら興ざめになる人もいるだろうし。 これ以外にも禁止事項や決まり事が何点か書かれていた。 興味はあるものの怖くもあって、俺のような童貞男が足を向けていい場所じゃないような気がする。 亮一さんや和彦さんだったら経験も多そうだしカッコいいからモテるだろうし、さぞかしセックスできちゃうんだろうな。 「……俺も、6階のフロアに行けば、誰かとセックスできるのかな」 好奇心と性欲を司るブラック冬賀が「行ってみればいいんだよ! 気になってるんだろう? 今の俺のカラダなら絶対大丈夫だって!」 と背中を押すものの、常識と理性のホワイト冬賀が「ヤバイ奴に絡まれたらどうするんだ? それに、童貞の俺がいきなり本番なんてできんのかよ? アナルセックスは慣れない内は痛いだけじゃぁなかったか?」 と、前のめりになる俺を引き戻す。 「そうだ! 俺が掘られるんじゃなくて、相手を掘る側だったら痛い思いはしなくてすむよな……じゃなくて! 見ず知らずの奴とあっさりセックスに及んでもいいのか?」 せめて、「この人となら」と心を通わせられる相手とカラダを重ねるべきなんじゃないか? だけど徐々にホワイト冬賀がブラック冬賀に敗れ、「せっかくの機会なんだし確認の意味も込めて体験してみても良いんじゃないか」ってなって来た。 そ、そうだよな。きょうちゃんも行こうとしてたみたいだし、亮一さんや和彦さんも楽しみにしてたイベントの一つっぽいし。 「気になるし、やっぱちょっぴり覗きに行ってみよう。無理っぽい感じだったらすぐに出てくればいいんだし」 ――コンッ! ココン! ようやく意を決して6階のミッドナイトタイムイベント、つまりハッテン場へ行く気持ちが固まって腰を上げかけたらドアをノックする音が飛び込んで来た。 ――コンコンッ! 「誰だろ? きょうちゃんかな?」 ドアの覗き穴から訪問者を確認してみた。 案の定きょうちゃんだった。 ドアを開けたら赤い短パンに赤いベスト、そして赤いとんがり帽子をかぶったきょうちゃんが立っていた。 「よぉ。取りあえず、中、入っていいか?」 「あ、うん。どうぞ」 きょうちゃんは部屋の中に入るなり俺にワイングラスを渡した。 「うん?」 「お前と飲みたくてさ。これ」 ベストの中からワインの瓶を取り出しニィっと微笑んだ。 「白ワイン? 俺、あんまり酒は強くないんだけど……」 「こいつはシャンパン。度数は低いから酒が弱くても美味しく飲めると思うぜ」 「シャンパンなんだ。へぇ~」 ラベルを見ると『Erezione』と書かれていた。 エレジオネかな? 自分で買って来たの? と聞けば船内にあるリカーショップからタダでもらって来たと言う。 ソファに腰を下ろしコルク栓に栓抜きをねじり込むきょうちゃん。 「部屋の備え付けの冷蔵庫にはシャンパンは用意されてないんだよ。だけど、今日はお前と再会できた記念日だろ? だから、もう少しじっくり祝いてぇ、と思って」 「きょうちゃん……」 ――トントン。 「あれ? またノックだ……」 覗き穴から見てみたら和彦さんの姿が窺えた。 きょうちゃんみたいに赤い短パンに赤いベスト、そして頭に赤いとんがり帽子。 「よっ! まだ寝てなくて良かったぜ。もう少し冬賀と話したいと思ってな。中、いいか?」 「あ、はい。良いですけど――今……」 俺が答えを言い終る前にずんずんと部屋の奥まで入っていく和彦さん。 「うわ! お、お前! 来てやがったのか!」 すぐにきょうちゃんの姿を見つけて目を吊り上げたものの、すぐに柔和な表情に戻った。 「……ふうん? そうか、お前も同じか」 俺にじゃ無くきょうちゃんに向けて言った。 「て、事は、先輩も?」 「あぁ。そうだ」 「うん? え?」 俺は2人の会話の意味が掴めず改めて和彦さんに尋ねた。 「俺も冬賀ともう少し飲みたい気分なんだ。キョウタロウには先を越されちまったが」 そう言うと和彦さんもソファーの前のテーブルに一本の瓶を置いた。 『発泡日本酒・後朝(きぬぎぬ)』 「スパークリングワインならぬスパークリング日本酒ってやつだ。冬賀は飲んだコトあるか?」 「いえ、まだないですね」 「じゃぁ、一度試しに飲んでみてはどうだ? とても口当たりが軽いし日本酒って概念が一新される凄く飲みやすい酒なんだ」 キャップをひねった瞬間、軽く「ポンッ!」と音が鳴った。 ――トン、トトトン、トン 「またノック?」 俺がドアに向かうと 「もう一人の先輩すかね」 「だろうな。亮一さんだろう」 と、呟き合っている。 覗き穴から……うわ、思いっきりこっちを見つめているなぁ亮一さん。ドアの内側の俺に満面の笑顔だ。 「冬賀クン、もう少し付き合ってもらっていいかな? このまま今日と言う日が終わるなんて少々勿体ない気がしてね……」 爽やかな笑顔と共に部屋に入っていいかい? と俺に尋ねる。 断る理由などないから普通に「どうぞ」と中に通す。 「……うす……」 きょうちゃんが小さく頭を下げた。 「ははは! やっぱり来たんすねぇ亮一さんも!」 予測が当たって笑う和彦さん。 そして、参ったなぁ、と苦笑いする亮一さん。 亮一さんも赤い短パンに赤いベスト、赤いとんがり帽子だ。 何でここまで三人の衣装が揃っているの? 何で?」 「あ~。この服かい? これ、借りたサンタクロースの衣装でね。そう言う訳でこれ、サンタさんからの差し入れだよ」 亮一さんはフトコロから発泡性貴腐ワインを取り出し小さなグラスにゆっくりと注ぎ入れた。 「これはね、甘い貴腐ワインだけど微かに発泡性があってのどごしが軽いんだ」 見ればソファーの前のテーブルは、グラスだらけになっていた。 「先に入ってた二人も同じこと考えてたみたいだね。じゃぁ、皆まで言わずとも理解してると見越して、 俺も冬賀クンにアプローチしてみよう」


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