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鷹取リュウゴ
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パラサイトヒーローの誕生 2 

2パラサイトヒーロー    新宮はスマホを立ち上げニュースを開いた。 【瑠璃光山の発光現象】 ◯月×日未明、瑠璃光山の山頂付近において爆発音と共に巨大な発光があったと麓の住民から通報が寄せられた。 警察が調べたところ山頂付近の樹木が広範囲に焼けていたため落雷による山火事であると断定。 負傷者はいない模様だが、雨によって地盤が緩んでいるため山頂へは立ち入り禁止となっている。 「――山火事じゃないんだけどな。真相はサクッと揉み消されてるって訳だ」  一か月前、新宮は瑠璃光山にあった「究極生物研究所」で三種の寄生生物を投与されると言う実験を施された。 まず一つは隕石から採取された地球外寄生生物。 二つ目は2億年前の化石から蘇えった古代寄生生物。 三つ目は様々な実験により異常進化した未来型寄生生物。 新宮はこの時の事を、悪夢のような実験を思い出していた。 登山の最中、目玉の怪物に拉致され、気が付いたら素っ裸のまま白衣の連中によってベッドに拘束されていた事。 そして、妖しい色を放つ液体を腕に三本も注射されてしまった事。 その液体の中身が寄生生物である、と耳に入り恐怖で一杯になっていた事。 三本の液体が体の中に入って来た途端、新宮は意識を失った。 昏睡状態の新宮だったが不思議なことに外界の様子が理解できた。 新宮とは別の実験体の一体が暴走し研究員たちを捕食し始めた。 ところが無差別に捕食するのではなく他の実験体や廃棄処分待ちの失敗作には目もくれない。 研究員たちは暴走体を押し留めようと催涙ガスや麻痺弾を撃ち込んだものの効果は無かった。 大混乱の中、蓄えられていた可燃性のガスタンクに引火し大爆発が起こってしまった。 逃げ遅れた研究員たちは全員が消し炭と化し、逃げ伸びた研究員は暴走体によって彼の胃袋へと送り込まれた。 新宮は一面の焼け野原で目覚めた。 雨が激しく降る中、どうして自分は無傷なのだろうと自問し、記憶をまさぐった。 爆発の炎と衝撃が到達する寸前、新宮のカラダは硬質な金属へと変化した。 そうして、金属になったカラダの周囲にさらに金属の盾をドーム型に作り出し、灼熱の爆風から本体を守り抜いていたのだ。 もちろんだがこの防御機構は新宮に寄生した生物によるものである。 右腕に意識を向けると、その時と同じように右腕は銀色の金属になった。 それとは別に左腕に力を込めると青い色をしたゼリーのような状態へと変わった。力を緩めるとドロリと融け、 再び力を入れればプルンとした腕へと戻る。 最後に下半身に意識を向けるとペニスを押しのけるようにして灰色の触手がズビュルと何本も生えてきた。 うねる灰色の触手は先端をくびれさせて亀頭のように膨らむと、メリメリと灰色の皮膜を押し下げ肉色の顔をのぞかせる。 「うっ、く、ぁぁ、キモチ、いい……」 このまま快感を求めたいところだったが新宮は何とか堪えて冷静さを取り戻した。 瓦礫と化した元・研究所で雨に打たれて自慰などしている場合では無い。 まずは安全な場所へ移動し、これからの事を考えねばならない。 「これから、俺、どうやって生きて行こう……もう、普通の人間じゃ無いけど……」 自分に寄生している生物はそもそも何なのか、このカラダにどんな作用をもたらすのか(その一端は研究所の爆発時と今しがた知れた部分はあったが)、 そして、これから自分のカラダがどうなっていくのか、寄生生物によって自我や意志まで乗っ取られはしないか。 疑問はいくつも湧き起こる。 しかし、答えがすぐに得られる訳でも無い、とも新宮は理解していた。 ――ベキン 雨音とは違う音色が新宮の耳に届いた。と、同時にかすかに人間の臭いを感じた。 「!? 誰か生存者がいるのか?」 臭いをたどり音の発生したあたりに向かう。 割れたガラス片や鋭利に裂けた瓦礫で傷つかないよう膝から下は金属に変えてから移動した。 新宮はごく自然に自分のカラダを変化させ、少し間を置いてから苦笑した。 「なんにも考えずにこんな芸当できちまうなんて、やっぱり俺、ヒトじゃなくなっちまったんだな……」 「――う、うぅ……」 「っ!?」 焼け焦げたコンクリートの柱の間に生存者が挟まっていた。 だが、カラダのほとんどが押し潰されており顔も酷く焼けただれていた。 とても人の力では動きそうもない柱だったが新宮が力強く押してみると柱はいとも簡単に砕け散り、挟まっていた生存者をたやすく引き出せてしまった。 「……あ、りが、……とう。も、もうワタシは、無理、だ……、もう、……助からない……」 声の質からみてまだ若い。手首に焼け残った白衣が少しだけ見える。研究員の一人だったのだろう。 「いいから、黙ってろ」 助けてやる、と言いかけて声を飲み込んだ新宮。自分をこんなカラダにしてしまった連中の一人、だと思うと、 果たして手を差し伸べる必要があるのか? との疑念が脳裏を過ったのだ。 しかし、今の自分であればあと数分で消えそうな命であってももっと引き伸ばすことが可能だろう、とも理解できる。 「……わ、悪かった……私たちが、悪かったんだ……じ、実験体が、暴走、したのも、我々が彼を、そう創ったから、なんだ……止めて、くれ、止めて欲しい、キミが誰かは、分からない、が、た、たのむ……」 声を搾って悔恨の気持ちと共に依頼される新宮。 「止めろ? だったら自分の手で止めてやれよ。しっかり生きて自分の目的を果たすんだ」 「は……はは、そ、そうかも、知れない、な……だけど…………」 「お、おいっ!」 新宮は両腕を青いゼリー状に変え、研究員のカラダを包み込んだ。 こうすれば再び細胞が活性化し、焼けた肉体であっても蘇生できると判断したからだ。 予想通り研究員の焦げた皮膚が新しく綺麗に生まれ変わり、焼けただれた顔も元の状態へと再生した。 しかし、研究員のまぶたが二度と開くことは無かった。 包み込んでいたゼリーを研究員から引き戻しヒトの腕に戻した新宮は、研究員のカラダを持ち上げ荒れ果てた研究所の敷地を出て森に入り、ひと際大きな巨木の根元に横たえた。 「……命を弄んだ罪は罪として、あんたの願い、引き受けてやるよ。名前とか知らねぇけど、あの世では安らかにな……」 深く息を吐いた新宮は、全身に力を込めた。 ――グプ!! モコモコ……グチュ! グジュル! ヌチュンッ! グブ! ブジュル! 全身を青いゼリーに変え、頭部と股間を金属で覆うと腋や背中から生えた灰色の触手が首から下に巻き付き再び肉体と融合。 体のフォルムを鍛え抜かれたボディビルダーの如く盛り上げた。 凄まじくマッチョな肉体となった新宮の肩がメキメキと撥ね上がって反りかえると、手首から肘にかけてズブブと鋭いブレードが生えて来た。 「――もうここいらには暴走体どころか誰も居ないようだな。生き残った奴らもよっぽど遠くまで行っちまったようだ。 ……しかし、つくづく俺ってば不運だよなぁ。無理矢理人間をやめさせられたってのに、よりによってやめさせた奴の願いを聞く羽目になっちまうとか。 俺と同じ実験体として仲間である奴を探し出してぶっ倒さなくちゃならなくなるなんて、な」 新宮はメタルフェイスのまま「ふふっ」と微笑んだ。 「まるでヒーローみたいじゃん? つうか、この姿じゃ俺の方が悪の怪人みたいだよな? 一体今の俺ってどっちなんだろうな?」 腕のブレードをシュッと滑らせる。 すると、背後の岩が両断され左右に割れた。 「寄生されたヒーロー……パラサイトヒーローか。ま、恰好はアレだから名乗るとすりゃ『エヴィルブレード』って感じだな」  新宮はニュースサイトを閉じ暗転した画面に映る自分の顔を見た。 少し以前よりかは険しい顔つきになったものの、「人間・新宮 真」の顔であった。


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